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02 カーボエルテ王国 ハミナの町
033 上級ダンジョン6
しおりを挟む「話を聞いてくださいよ~」
ハーレムパーティのトウコは、ガン無視しで夜営の片付けをしているタピオとイロナに泣き付くが、話を聞く気配すらない。
しかし、このままではタピオたちは先に行ってしまうと感じたトウコは、半べそをかきながら片付けの邪魔をするので、ついにタピオは折れてしまった。
「さっき言ってた勝負方法なんだが……」
「なんですか!?」
やっとタピオが口をきいてくれたので、喜ぶトウコ。
「俺たち仮通行証しか持ってないから、ラスボスと戦えないんだ」
「アレだけ強いのに……」
「これ、証拠な」
嘘だと騒ぎそうに感じたタピオは、アイテムボックスから用紙を取り出してトウコに見せた。
「というわけだから、勝負はできない。ごめんな」
提示したルールでは、タピオたちが冒険者規約違反になると説得したら引いてもらえるかと思うが、トウコは引くことを知らない。
「では、ボス部屋の前までどちらが早く到着するか勝負です! 僕たちは何度も潜っているから、先に行ってもらってかまいませんよ」
「まぁそれなら……」
「やった! ありがとうございます!!」
タピオが受けると言ったら、大袈裟に喜ぶトウコ。ただ、早く出発したいタピオはルール確認をして、お互いの名前とルールを書いた用紙を交換する。
これは、タピオたちのほうが遥かに早く到着するので、ボス部屋の前で待機するのが面倒だからの措置。どちらも時間の無駄にならないように、ボス部屋の前で用紙を確認したら負けを認めるルールとしたのだ。
タピオに言いくるめられたトウコは、ようやく自分の夜営の撤収に戻り、タピオたちはさっさと出発。地下への階段を歩いているところで、イロナが質問する姿があった。
「ところで、何を賭けた勝負をしているのだ?」
トウコ、痛恨のミス。景品も無しに勝負を吹っ掛けていたことに気付かず、タピオと勝負を受けるサインまでしてしまっていた。
「さあ? プライドかな??」
「ククク。主殿は意地悪だな。気付いていて教えてやらなかっただろう」
「きっと勝てたらなんでもいいんだろ」
「でも、負ける気はないのだろう?」
「負けるも何も……普通にやって負ける気がしないし」
「違いない。ククク」
「まぁこの階で追い付かれても面倒だし、飛ばして行くか」
地下41階は、モンスターも39階と変わりなかったので、宝箱を無視して一気に制覇し、念のため42階も早目にクリアしてしまう。
地下43階からは、ついにタピオの剣の出番。本来の戦い方になったタピオの前では、ランクの上がったモンスターがボロ雑巾のように飛んで行くので、宝箱を探しながらでも地下42階と変わらぬ時間でクリアとなった。
「前も思ったが、その剣はいいな」
オーガジェネラルの群れを倒したら、イロナはタピオの大剣を見ていた。
「そうでもないぞ。頑丈さを優先したから切れ味が悪いし重いんだよ」
「いま使っている剣はすぐに折れてしまいそうだから、少しの間貸してくれないか?」
「いいけど……壊さないでくれよ?」
「わかっている」
タピオから中華包丁みたいな大きな剣を受け取ったイロナは、数度振り回してみるが、今まで普通の大きさの剣しか使っていなかったので、いまいちしっくり来ないようだ。
だが、試すまでは剣を離すつもりもないようなので、タピオも違う武器を用意する。
タピオのサブ武器は、片刃のショートアックス。こちらも厚みがあって切れ味は悪いが、頑丈なのでタピオが使う分なら折れない。ただ、剣のようにマジックアイテムが付いていないので、いざという時に使えないのだ。
「斧か……まだまだ面白い武器を持っていそうだな」
「あるっちゃあるけど……先を急ごう」
イロナに興味を持たれると全ての武器を折られそうなので、とりあえず歩き出すタピオ。その先の角を曲がった大きな空間でさっそくモンスターの群れと出会ったので、イロナの興味が移って助かっていた。
モンスターの群れは、アイアンスコーピオン。鉄のような外皮を持つモンスターで、尾には毒を持っている。見た目は重量級なのだが、虫だけあって動きが素早く、群れで押し寄せられたら中堅冒険者でもあっと言う間に殺されることもある。
そんな危険なモンスターに、タピオは盾を構えて突撃。先頭のアイアンスコーピオンがぶつかったら一直線に吹っ飛び、後ろのアイアンスコーピオンが次々と巻き込まれる。
タピオが足を止めるとアイアンスコーピオンが突撃してくるが、それもシールドバッシュで弾き返し、仲間を巻き込む。右からくれば、ショートアックスでブッ飛ばし、同じ展開に。
その間イロナは、足並みの乱れたアイアンスコーピオンに突撃。何匹も一撃で叩き割り、深追いせずにタピオの後ろに戻る。
それを何度か繰り返し、アイアンスコーピオンの数が減って来るとタピオは一際巨大なジャイアントスコーピオンに突撃。アイアンスコーピオンを弾き飛ばし、一対一に持ち込む。
タピオがジャイアントスコーピオンを止めている間に、イロナは走り回ってアイアンスコーピオンを一掃。タピオのおかげでほとんど瀕死だったため、剣だけでなく蹴りでも倒せたので、手数が増えてあっと言う間に倒していた。
「こっちは終わったぞ」
「お! ちょいまち」
イロナがタピオの後ろにつくと、タピオはシールドバッシュでジャイアントスコーピオンを吹っ飛ばし、軽口を叩く。
「ホント、イロナは頼りになるな」
「主殿もな。ここまでやりやすく戦ってくれる仲間は初めて見たぞ。些かHPは減らしすぎだがな」
「じゃあ、アイツはイロナに任せようか」
「主殿のレベルアップのためなんだから、一緒にやるぞ」
「う、うん……わかった。じゃあ、分かれて倒すか」
「おう!」
結局は、タピオに全てを譲ってくれないイロナ。二人は左右に分かれてジャイアントスコーピオンと戦うのであった。
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