上 下
30 / 360
02 カーボエルテ王国 ハミナの町

027 休日と準備

しおりを挟む

 朝からイロナとイチャイチャしたまではよかったタピオは、空中コンボを喰らって気絶中。そこに宿屋の従業員の男がノックをし、イロナが毛布をまとって対応していた。
 どうやら朝食を運んで来たらしいのでイロナが普通に中に通したら、床にうつ伏せで倒れる裸のタピオが従業員の目に入る。従業員は慌てて目を逸らし、「朝からお楽しみでしたね」という目を向けてからすぐに出て行った。

 イロナは扉が閉じられると、腹がへっていたこともあり朝食を取るが、タピオは起きる気配がない。少しは自分が悪い自覚があるのか、朝食を食べたら超重量のタピオをお姫様抱っこでベッドに運び、その腕の中で眠りに就いていた。

 それから昼頃、またノックの音が響き、タピオが目覚めた。

「つつつ……おん……! イロナだった」

 例の如くイロナの顔を見て驚いたタピオは、すぐにイロナだと気付いて落ち着きを取り戻す。今回は、イロナはまだ目覚めていないようだ。
 そうしてホッとしたのも束の間。またノックの音がしたので、タピオはズボンだけ穿いて対応する。
 どうやら従業員がランチを運んで来たようで、イロナはベッドに入っていることもあり、中に通して朝食のワゴンと交換してもらう。その時「朝からお盛んですね」と声を掛けられて、タピオは苦笑いしかできなかった。


 ランチをテーブルに並べたらタピオはイロナを起こし、席についてバクバク食べる。

「朝のアレで忘れていたが、今日はダンジョン行かないのか?」
「あ~。元々今日は、昼まで寝て準備するつもりだったんだ」
「準備??」
「上級ダンジョンは深いからな。もしものために一週間は潜れる食料が必要だ。携帯食もイロナに不評だったし、もうちょっとうまい物を探してみよう」
「ならば、習った料理を試してみたいから、その食材も買ってくれ」
「おお~。それは楽しみだな」

 ランチを素早く済ませた二人は受付で出掛ける旨を伝えると、腕を組んで広場にて買い物をする。
 タピオの持っていた携帯食は、半年は食べられる物だったため味は二の次。他を探したら一週間程度の携帯食はそこそこ美味しく、各種味見をしてから購入していた。

 それからイロナリクエストの食材を買うと、準備万端。宿屋に帰って明日からのダンジョン攻略に向けて静養に努め……

「さあ! 夜は何をする!!」

 られず、イロナの押し売りが始まった。

「あ、えっと……朝したからいいかな? それに明日から忙しいし、疲れることはちょっと……」

 今朝のダメージが抜けていないタピオは拒否。また気絶して眠ると、確実に明日に響くと思っての防衛本能なのだろう。

「なるほどな。ならば、我がマッサージをしてやろう」

 しかしイロナは、タピオのHPを削ってから寝るという選択肢を提示した。

「俺! 俺がやる! イロナの体を触りたいな~?」
「主殿のエッチ」

 当然、イロナの馬鹿力でHPを削られたくないタピオは、自分がやると手を上げて危険の回避。イロナもどこで習ったかわからないセリフを真顔で吐いて横になったので、マッサージを受けてくれるようだ。

「もう少し力を入れられないか?」

 腰を揉まれるイロナには、タピオのマッサージを受けても効かない。

「けっこう本気なんだけど……これでどうだ!」
「うむ。それだ。そのまま続けろ。ふぅ~……」

 タピオはめいいっぱい力を込めると、イロナから気持ち良さそうな吐息が漏れるのだが、いまいち合点がいかない。自分から痛くも辛くもないマッサージを選んだのにめちゃくちゃ疲れる。
 だが、女の柔肌に触れることに免疫のないタピオは、汗を流しながらも股間はモッコリ。朝、イロナに握り潰されかけたこともあり、イロナの体に当たらないように気を付けながら全身マッサージを続ける。

 それから小一時間……イロナからのストップは掛からず、タピオが疲労でギブアップを告げようとした頃、イロナの寝息が聞こえて来た。

「寝たのか……あ~。疲れた~」

 疲労困憊のタピオはさっきお風呂に入ったにも拘わらず、びっしょりの汗を流してさっぱり。ついでにタピオのタピオもさっぱりさせて、イロナの隣で横になる。
 タピオは本当に疲れていたのか、横になった瞬間に眠り落ちたのであった。


 翌朝……

 お肌ピチピチのイロナとお肌ガサガサのタピオは出掛ける準備。今日のダンジョンは上級ということもあり、イロナは一番いい軽鎧を身にまとい、タピオはドロップアイテムで持っていた、ちょっといい胸当てを装備した。
 準備が整うと宿を引き払い、上級ダンジョンに向かう。そこで衛兵に書類を提出し、舐めるように装備を見られるが、人数が少ないから気を付けるようにと言われただけで通される。

 こうしてタピオとイロナは長い階段を下り、上級ダンジョンに足を踏み入れたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

試される愛の果て

野村にれ
恋愛
一つの爵位の差も大きいとされるデュラート王国。 スノー・レリリス伯爵令嬢は、恵まれた家庭環境とは言えず、 8歳の頃から家族と離れて、祖父母と暮らしていた。 8年後、学園に入学しなくてはならず、生家に戻ることになった。 その後、思いがけない相手から婚約を申し込まれることになるが、 それは喜ぶべき縁談ではなかった。 断ることなったはずが、相手と関わることによって、 知りたくもない思惑が明らかになっていく。

【完結】言いたくてしかたない

野村にれ
恋愛
異世界に転生したご令嬢が、 婚約者が別の令嬢と親しくすることに悩むよりも、 婚約破棄されるかもしれないことに悩むよりも、 自身のどうにもならない事情に、悩まされる姿を描く。 『この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません』

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※コミカライズスタートしました! 2023年9月21日に第一巻、2024年3月21日に第二巻が発売されました 2024年8月中旬第三巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙
BL
ハーララ帝国第四皇子であるエルネスティ・トゥーレ・タルヴィッキ・ニコ・ハーララはある日、高熱を出して倒れた。数日間悪夢に魘され、目が覚めた彼が口にした言葉は…… 「皇帝なんて興味ねえ!俺は魔法陣究める!」 天使のような容姿に有るまじき口調で、これまでの人生を全否定するものだった。 * * * * * * * * * 母親である第二皇妃の傀儡だった皇子が前世を思い出して、我が道を行くようになるお話。主人公は研究者気質の変人皇子で、お相手は真面目な専属護衛騎士です。 ○注意◯ ・基本コメディ時折シリアス。 ・健全なBL(予定)なので、R-15は保険。 ・最初は恋愛要素が少なめ。 ・主人公を筆頭に登場人物が変人ばっかり。 ・本来の役割を見失ったルビ。 ・おおまかな話の構成はしているが、基本的に行き当たりばったり。 エロエロだったり切なかったりとBLには重い話が多いなと思ったので、ライトなBLを自家供給しようと突発的に書いたお話です。行き当たりばったりの展開が作者にもわからないお話ですが、よろしくお願いします。 2020/09/05 内容紹介及びタグを一部修正しました。

【R18】らぶえっち短編集

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)  R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。 ※R18に※ ※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。 ※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。 ※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。 ※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

処理中です...