猫王様の千年股旅

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猫歴15年~49年

猫歴31年その3にゃ~

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 我が輩は猫である。名前はシラタマ。もうちょっと驚いてほしいな~?

 白髪の集団はわしの見た目に反応が薄すぎるので、驚いた顔が見てみたい。

「ほれ? 写真にゃ」
「「「「「なんじゃこりゃ~~~!」」」」」
「ほれ? テレビと映画にゃ」
「「「「「なんじゃこりゃ~~~!」」」」」

 というわけで、写真と動画を見せてあげたらわしも大満足。やっぱりこうでないとな。

「別に静かなままでもよかったんじゃない?」
「マスターは天邪鬼あまのじゃくなんだよ~」

 ベティとノルンには不評みたい。猫パーティの半分ぐらいは苦笑いしてるから、好評だと思う。笑っているのは変わらないもん。
 しかしこのままでは歓迎の宴が始まらないので、テレビ等は一旦次元倉庫行き。ブーイングが凄かったが、心を鬼にして料理を作らせる。ベティたちに「お前のせい」と言われたけど……


 ようやく宴が始まり料理が並んだけど、素材の味頼み。肉は焼いたか煮た物だけ。その調理法を見ていたら海水を掛けるか漬けるかなので、肉がうまくなかったら食えたもんじゃないだろう。コリスはモリモリ食ってる。

「ベティ。ステーキでも焼いて、こいつらに料理のなんたるかを教えてやれにゃ」
「確かに……こんなにいいお肉の牛さんが泣いてるわね。いっちょやってやりますか」
「あ、わしにはレアでよろしくにゃ~」
「あんたも食うんか~い!」

 なので、猫パーティ専属シェフ、ベティの出番。ちょっと文句を言われたけど、わしの次元倉庫から出したベティ専用キッチンで料理を始めてくれた。

 焼き上がりを待つ間、わしはテーブルに乗っている白いブドウをつまみながら長のお爺さんみたいなお婆さん、ニコーレと話をする。

「このブドウはうまいにゃ~。ここで栽培してるんだったかにゃ?」
「うむ。その酒は、このブドウから作られているんじゃ」
「おお~。にゃんて濃厚にゃ味わいにゃ~」

 勧められた白ワインを飲んだら、ソムリエみたいなことを言ってあげたかったけど、これが限界。しかし、めちゃくちゃうまいには変わりない。
 どうやらブドウを栽培している理由は、完全に嗜好品。そもそもここは魔力濃度が高すぎるから、人間でもほとんど食べなくても生活ができてしまう。
 だが、口寂しさはあるから甘みとお酒のためにブドウを栽培し、暇潰しを兼ねて漁や狩りをしているんだって。

「にゃるほどにゃ~……ここに足りないモノは娯楽だけって感じかにゃ?」
「考えたことはなかったが、そうなりますな」
「う~ん……どうしよっかにゃ~……」
「何を悩んでいるんじゃ?」

 考えていても仕方がないので、わしは悩みを口にする。

「わしは猫の国っていう、この集落みたいなところで長をしてるんにゃけど、わしたちの旅の目的に、孤立している人間を手助けするってのがあるんにゃ。だいたいの人は生活に困っているから物々交換とかしてたんにゃけど、さほど困ってないと言われるとにゃ~……」
「はあ……そんなに生き残りがいるのか……」
「あ、その説明も忘れてたにゃ。これがこの世界にゃ~……」
「そんなに!?」

 とりあえず地球儀を使って人間の分布と規模を説明してあげたら、ニコーレもめっちゃ驚いてくれた。やったね!

「まぁその結果、食に技術に娯楽……生活や文化が豊かになってるんにゃ。つまりここは、時が止まっている状態なんにゃ~」
「はあ……確かに我らは豊かになるなんて考えたことがなかったな……」
「たぶんそれは、寿命のせいにゃ。長生きにゃろ?」
「うむ。いや、おそらく……」
「あ、暦もないんだったにゃ。たぶん長で、300歳前後にゃ。うちの一般的にゃ人は、100歳も生きられないんにゃ」
「それは同じ人間なのか??」
「にゃはは。確かに同じとは言いにくいにゃ~。とりあえず、ベティがお肉焼いてくれたし、これ食ってみろにゃ」
「うまっ!」

 ちょうどベティが焼いたモノをリータが持って来てくれたので、一口目はニコーレに譲る。その肉の味付けは塩だけ。おそらくだが、塩もいま海水から作ったと思われる。
 そんな味付けでも、元フランス料理人のベティに掛かれば、肉は柔らかく肉汁は溢れんばかりなのだからマズイわけがない。ニコーレに至っては、同じ物かと疑うほどだ。

「ほらほら~。いろんな味付けのモノもいっぱいあるにゃよ~?」
「うまっ。うまうま。なんてうまいんじゃ~!」

 と、今回の主役はベティ。白髪の集団は、ベティの作り出す牛肉料理のとりこになるのであった……


 本当はイサベレが主役だったイスキア島訪問は、ベティに持って行かれてしまったけど、白髪の集団は新しい価値観に触れて大満足。ベティの元へ料理を教えてくれと群がっている。
 そのおかげで、反応が薄かった白髪の集団にも表情が戻ったと思われる。たぶんイサベレぐらいにはなったかな? それでも淡泊じゃけど。

 食事のあとは、腹ごなし。相撲大会を開いて白髪の集団の力量の確認。思った通り、純粋なパワーだけなら猫パーティでも勝てない人が続出。パワー担当のリータとタメを張る強者までいた。
 さすがにコリスには勝てなかったし、玉藻と家康も楽勝だ。わしは止める立場だからやってないよ。リータたちがどうしても言うから、相撲を提案したのだ。

「これではちと面白みに欠けるのう」
「うむ。殺すつもりでかかってこい!」
「殺し合いを始めるにゃよ~~~」

 でも、玉藻と家康の言葉から本気の戦闘が始まっちゃった。

「私たちも行きますよ~!」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
「リータたちまでにゃ!? やめ……ノルンちゃんは危にゃいから!!」
「ノルンちゃんもブッコロしたいんだよ~」

 さらに全員突っ込んで行くモノだからわしは止めようとしたけど、ノルンを捕まえるので精一杯だったとさ。


 白髪の集団はめっちゃ強いけど、玉藻と家康は手加減してお釣りが来る程度。しかし猫パーティは、フル装備しているのに大苦戦。どうも白髪の集団は力だけじゃなく、魔法がとんでもなく得意みたいだ。
 通常の風の刃でも、ベティ以上。炎や土魔法まで使って来るから多彩だ。コリスがいなかったら、総崩れになっていたかもしれない。
 いや、魔法に慣れたら猫パーティのチームワークがよくなって来たので互角に持ち込んだ。侍攻撃や気功といった技術差もあるみたいだ。

 わしはそれをノルンと見つつ、怪我人の手当て。幸い猫パーティには酷い怪我を負った者はいないけど、白髪の集団は斬られて血を吹き出してるもん。
 なので「やりすぎだよね~?」とノルンとペチャクチャ喋りながら治療して回っていたら、玉藻と家康がほとんど吹っ飛ばし、猫パーティにも限界が来て終了となるのであった。


「んじゃ、この2人はしばらく預かるにゃ。んで、ちょくちょく顔を出すからにゃ~」
「うむ。またやって来るのを、心待ちにしておる」

 喧嘩祭りも終わって温泉も堪能したら、2人の女性留学生を連れて三ツ鳥居を潜って帰宅。何度も足を運ぶ可能性が高かったから、設置しておいたので楽チンだ。
 この留学生には猫の国で勉強をしてもらい、自分たちの暮らしと最新の暮らしを比べてもらう係。もちろんうちの暮らしのほうが楽しいと思うので、イスキア島がどう発展したらいいかも考えてもらう予定だ。
 ちなみに留学費用は、わしが立て替えて、アルバイトで返してもらう。これだけ強ければハンターになれば一発だから、そこまで援助しなくていいもん。いや、食費がかさむから、毎週狩りに行かせないといけないかもしれない。

 それから留学生が勉強を始めると、リータたちは厳しい訓練。玉藻と家康にしごいてもらってるよ。

「充分強いから、そこまでしなくてもいいんじゃにゃい?」
「いえ。玉藻さんと家康さんがいなければ、私たちはとっくに殺されていました」
「うんニャー。自分の身を守るために必要ニャー!!」
「あんにゃに強い人間、そうそういるわけないにゃろ~~~」

 理由は、人間如きに遅れを取ったかららしい……その鬼気迫る訓練を見ていたサクラとインホワというと、キツすぎて引いている。

「にゃんであんにゃに無理してるにゃ?」
「あんにゃに訓練されたら、俺たち追い付けないにゃ~」
「新しく見付けた部族が超強くてにゃ~。リータたちでも互角に持ち込むのがやっとだったんにゃ」
「「互角にゃらあそこまでやらにゃくていいのに……」」
「だよにゃ~? 急がなくてもいいよにゃ~??」

 最近、脳筋になりかけていた2人でも、リータたちの訓練は必要ないと言ってくれたので、わしは嬉しくなるのであった。


 白髪の集団の発見から数ヶ月。名前がないと不便なので、ハイエルフ族と命名。中国で見付けたエルフ族と同じく耳が長いし、おそらく上位互換の人種なので誰からも反対はなかった。
 このハイエルフ族は、いまのところ世界には発表していない。エルフ族だけでも国ひとつ落とせる脅威なのだから、悪いことを考えるヤツに知られると戦争の道具に使われるかもしれないからだ。

 もちろん日ノ本には知られているから、玉藻と家康が「よこせよこせ」とめっちゃうるさい。日ノ本ならこの最強人種を扱えるだろうけど、家康辺りが天下統一とか言い出しそうなので、嫌だ。
 となると、わしが管理するしかないので、ハイエルフ族には猫の国に入らないかと交渉を始めた。と、玉藻たちには言っておいた。数年は気付かないと思う。

 いちおうニコーレには「入るならうちにしときな~。気長に考えてくれていいから」と言っておいたから、嘘ではない。証拠の拇印もある。詐欺っぽいけど……


 そんなこんなで、ここ1、2年はハンター活動の多い年であったが、ついに恐れていたことが起こってしまった。

「新婦サクラ、病める時も健やかなる時も、新郎エティエンヌを愛することを誓うか」
「はいにゃ。誓いますにゃ」

 第一陣の娘、サクラ24歳とエティエンヌ23歳の結婚式だ~~~!!

 東の国では次期女王が出産するまで、王女や王子が結婚をしてはいけない決まりがあるから、数年前に結婚したさっちゃんの第一子の娘が不妊に苦しんでいたので、まだまだかかると不謹慎にもわしはほくそ笑んでいた。
 だが、昨年身籠もったと聞いたからわしは焦って、できるだけサクラとエティエンヌを引き離してやろうとハンター活動に精を出していたのに、その会えない期間が愛を育みやがったのだ!
 先日、無事出産して元気な女の子を授かったと聞いたので、皆で出産祝いをしに行ったら、サクラとエティエンヌのヤツがその場で結婚の日取りを発表しやがったから、引くに引けなくなったんじゃ~~~!!

「チッ……にゃんで上手くいかないんにゃ……」
「シラタマさん……まさかサクラの結婚を阻止しようと狩りに出ていたのですか?」
「そ、そんにゃことないにゃ~」
「その顔はそんなことある顔ニャー。いつまで経っても器の小さい猫ニャー」

 悪足掻きは、リータとメイバイにバレバレ。結婚の報告も本当はちゃぶ台返ししてやりたかったけど、サクラに嫌われたくないからできなかったの。

「だって~。サクラはパパと結婚するって言ってたの、ついこないだにゃんだも~ん」
「「それ、動画を毎日見てるからそう感じるだけにゃ~」」

 なので正直に反対と言ってみたら、ますます気持ち悪がられるわしであった。

「「「「「お姉ちゃん、おめでとうにゃ~」」」」」
「にゃ~! サクラ~。行かないでにゃ~~~」
「「「「「にゃははははは」」」」」
「「「「「あははははは」」」」」

 サクラたちの結婚式は、子供の祝福の声や、わしの涙ながらの訴えと、それを見た出席者の笑いあるいい式となったのであった……
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