猫王様の千年股旅

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猫歴15年~49年

猫歴22年その2にゃ~

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 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。子供たちの教育パパをしていたのに、教育ママに奪い取られたから寂しい。

 子供たちの訓練を開始して半年が過ぎた頃、もうそろそろ実践訓練をしてもいい頃合いかと思い、また海の近くまで飛んで、猫パーティで狩り。
 ママたちの暴走は止められないから、ちょうどいい感じの黒い獣をわしが捕まえて持って来てあげた。

「「「ええぇぇ……」」」

 そしたら、3人とも引き気味。もうわしに倒せとかも言っちゃってる。

「無傷で連れて来てやったんにゃから、そう言うにゃ~。合図したら拘束を解くから気合い入れるんにゃよ~?」
「「「うぅぅ……にゃ~~~!!」」」

 ややヤケクソに見えるけど、気合いが入ったとも思えるので、カウントダウンをして獣を拘束している土魔法を解除したら戦闘の開始。
 5メートルクラスは簡単に倒していたので、次のステップ。8メートル、10メートルの黒い獣をわしが運んで戦わせる。さすがにここまで大きいと勝手が違うので苦戦していた。
 でも、インホワは違うらしい。

「ゼェゼェ……余裕だったにゃ~。ゼェゼェ」
「息切れしまくっていてよく言えるにゃ!?」

 バカだから……

「次を持って来いにゃ~!! ゼェゼェ……」
「次はメイバイを持って来てやるにゃ……」
「休憩しにゃ~す!」

 インホワは調子に乗りがちなので、早めの処置。ママを出したら一発だ。ということは、メイバイにも殺されかけたのかな?


 それからも訓練と狩りの実践を続け、白い獣とも戦わせてあげていたら月日は流れ、キャットタワーに帰ることも増えたので夜景を見ながら家族でワイワイしていたら、オニヒメが大事な話があるとのこと。
 なんだか真剣な顔をしているから、わしとリータとメイバイ、あとお姉ちゃん設定のコリスを連れて離れに移動した。

「それでどうしたにゃ?」
「うん……子供ができたから結婚しようと思って……」
「こ、子供……けけけ、結婚、にゃ……うっにゃああぁぁああぁぁ~~~!?」

 突然のオニヒメの爆弾発言に、わしはとんでもなく取り乱した。それはキャットタワーを揺らす程の激震だ。
 なのでリータとメイバイがわしを抱き上げ、落ち着くまで空中で貧乏揺すりをやらされた。

「わしのぉ~、オニヒメをぉ~、傷物にしたのわぁ~、どこのどいつにゃあぁぁ~~~」
「ちょっと黙ってて!」
「私たちが話を聞くにゃ~!」

 わしの動きが止まったから2人は下ろしてくれたけど、怒りは収まっていないので口を塞がれた。

「子供ができたのは本当?」
「うん……ワンヂェンさんに聞いたら、できてるかもって言うから、診てもらったの……」
「どうして彼氏がいるのに教えてくれなかったんニャー」
「パパが反対すると思って……」
「シラタマさんだって……反対しそうですね」
「うんニャ……絶対に邪魔するニャ……」

 わしが娘の幸せを喜ばないと思われているのは心外だ。嫌がらせはしたいと思うけど、嫌われたくないから葛藤は凄いと思うけど……

「それで……結婚して産むのよね?」
「うん。でも、どうしていいかわからなくて……」
「まずは彼氏を連れて来なくちゃだニャ。すぐに会えるニャー?」
「大学生だから、わりと時間は取りやすいと思う」
「じゃあ、明日会いましょうか」
「忙しくなるニャー!」

 というわけで、オニヒメの彼氏来襲というイベントは明日に決まったのだが……

「いい加減にしないと、パパ死んじゃうよ?」

 わしは口を塞がれて息ができなかったので気絶中。

「シラタマさん!?」
「死んじゃダメニャー!!」

 なので、王様暗殺未遂の犯人のリータとメイバイに心肺蘇生されて息を吹き返すわしであったとさ。


 翌日わしが起きたら、記憶障害。昨日のことをまったく覚えていなかったので、リータとメイバイに聞いたらあとで話すとのこと。
 朝ごはんを済ませ、超絶技巧の撫で回しを受けて眠らされ、起きたのは10時半。キャットタワーの地上庭園にあるテーブル席にわしが着いたところでネタバラし。泡吹いて倒れた。コリスだけは最初から知ってたんだって。

 そろそろ彼氏がやって来るとのことで起こされたら、緊張でガッチガチ。もうわしは、どんな顔をしているかもわからない。

「もうちょっと威厳のある顔できません?」
「あと、涙は早いニャー」

 どうやらわしは、とぼけた顔のままで、目から涙がポロポロ落ちているみたいだ。そんな心が乱れた状態なので、お春がオニヒメが来たと言ってもまだ会えず。
 リータとメイバイがモフモフしたり涙を拭ったり鼻をチーンしてくれて、面会は15分押しで始まった。

「申し訳ありませ~~~ん!!」

 わしの顔を見た瞬間、色白で背の低い彼氏は土下座。何度も謝罪の言葉を述べるので、わしはこころよくゆる……

「それはにゃんの謝罪なんにゃ?」

 さない。怒りを通り越して、笑顔で対応する。目は笑ってないけどな!

「あの、その、順番が逆になってしまって……」
「順番が逆にゃとぉ~? その前にぃ~、お付き合いしてるとぉ~、わしに挨拶に来いにゃ~~~!! ぐふっ」

 わしが激怒すると、またリータとメイバイに口を塞がれた。

「そんな態勢じゃ足が痛いでしょ? イスに座ってくれる??」
「それにまだ名前も聞いてないニャー。あ、私たちは、2人の結婚に反対してないから、楽にしてくれていいニャー」
「はい!」

 リータとメイバイが優しく声を掛けても、彼氏は緊張マックス。カクカク動いて、やっとこさイスに座って自己紹介をする。

 彼氏の名前はセンエン22歳。ラサ市より南にある村の出身で、中学校卒業後は工場で働いていたのだが、わしが大学にスカウトしてしまったらしい……
 オニヒメとの出会いは、猫大図書館ですれ違った時に一目惚れしたとのこと。それからたまにオニヒメを見掛けると猛烈アタックしたそうだが、何度もフラれたんだって。
 でも、半年ぐらい前に、オニヒメのほうから付き合わないかと言われて天にも昇る気分になったらしい。でも、王族だったことを忘れていて、地獄に落ちる気分も味わったそうだ。

 それから密会を重ね、ついこないだオニヒメから「できちゃった」と報告を受け、わしに殺されるのではないかと夜も眠れぬ日々を過ごしていたらしい……

「娘さんをください!!」

 自己紹介を終えて数秒静かになったら、その無音が耐えられなくなってセンエンはまた土下座。

「誰がお前にゃんかにやるか!!」

 だがしかし、かわいいかわいい娘を寝取ったヤツなんか、わしは許せないから怒鳴ってしまった。

「そう……じゃあ、私は出て行く。パパ、ママ、長い間お世話になりました」

 するとオニヒメは寂しそうな顔で立ち上がるので、わしは焦る。

「じょ、冗談にゃ~。このセリフは一度言ってみたかっただけにゃ~。オニヒメは出て行かなくていいんにゃよ~??」
「じゃあ、祝福してくれる?」
「ヴ、ヴンにゃ……がはっ……」
「血を吐くほど反対してるの!?」

 わしが吐血したことによって、場は騒然。面会は30分の休憩となるのであったとさ。


 リータとメイバイにキャットタワー内に運び込まれたわしは、自分で回復魔法。実はあの吐血は、舌を思い切り噛んでしまっただけなので、そこまでたいした傷ではない。
 ただ、心の傷は深いので、リータとメイバイに愚痴を聞いてもらい、優しく撫でられてから食事会に挑む。

「はぁ~……うまいにゃろ?」
「ははは、はい!」

 とりあえずセンエンと喋ってみないことには人となりもわからないので世間話を振ったけど、あの顔は緊張して味がわからないって顔だ。嘘をついたので、マイナス1億点。

「いまは大学生だったかにゃ?」
「はは、はい!」
「にゃんの勉強をしてるにゃ?」
「て、天気についてです……」
「天気にゃ~……」
「申し訳ありませ~~~ん!」

 わしが黙ったら、センエンはまた謝罪。ちょっと間が空いただけで怒っていると思われたようだ。

「にゃに謝っているんにゃ」
「為にならないことを勉強しているので……」
「どこが為にならないにゃ。天気を予測できるようになったら、どれほど農業が助かるか……ひいては、国にどれほどの恩恵がもたらされるかわからにゃいの?」
「すみません。今までどうして晴れたり雨が降ったりするのかしか考えて来なかったので……」
「そういう人材を、大学は欲していたんにゃ。そうだにゃ~……ゆくゆくは、天気に特化した機関が作られると思うから、そのポストに君を捻じ込んでやるにゃ。そしたら王女に見合った男になれるにゃろ」

 始まりは酷い物であったが、天気の話では意気投合できたので、オニヒメもリータもメイバイもホッとしていた。コリスはまだ食ってる。センエンも自分の得意分野の話ができるので徐々に緊張も解けて来た。

「お義父さんは王様なのに、天気にまで精通してるなんて凄いです!」
「……」
「お、お義父さん??」
「誰がお前のお父さんにゃ~~~!!」
「ヒエッ!?」
「「「あ~あ……」」」

 センエンがお義父さんなんて言うから怒りが再燃。振り出しへ戻る。センエンはまたわしに緊張するようになり、オニヒメたちは「お義父さん」を禁止するのであったとさ。


 王女ご懐妊の一報は、オニヒメが恥ずかしいからと世間的には伏せられ、結婚式も秘密裏に行われる。
 その準備に少しかかるので、その間は子供たちの訓練は自主練を言い渡し、わしはセンエンに付きまとっていた。

「あの~……王様にずっと見られていたら、本が読みづらいのですが……」

 本棚の陰から腕を組んで無言で見ていたらセンエンもやりづらそうなので、わしは対面に座る。

「本だけでは勉強にならんにゃろ?」
「はあ……そうですね……この天気図ってのも、どうやって作るかわからないですし……」
「それは空の上からの写真が必要だからにゃ~……」
「空の上ですか?」
「よし! いまから行くにゃ~!!」
「はい??」

 というわけで、実地研修。戦闘機にセンエンを乗せて雲の上まで運んだり、台風の目を探したり、エベレストの頂上に放り出したり……わしはセンエンを連れ回してやった。

「凄いです! 空から見れば、雲はあんなふうになっていたのですね! それに気圧の変化もよくわかりました!!」
「あ、そうにゃんだ……」
「ありがとうございました!!」

 怖い思いをさせてちょっとした嫌がらせをしたかっただけなのに、センエンには通じず。そういえば大学にいる奴らなんて、わしが選んだ変人揃いなんだから、こんな実地研修はご褒美にしかならないのだ。

「次はどこに連れて行ってくれるのですか!?」
「人工衛星は難しいから、まずは地上から始めようにゃ。にゃ?」
「そんなこと言わずに~~~」

 いらんことしてセンエンの研究熱に火がついてしまったので、わしはたじたじ。相手にするのが面倒なので、わしは極力センエンに近付かなくなったとさ。


 そんなことをしていたら……

「「「「「お姉ちゃんキレイにゃ~~~」」」」」

 ついにオニヒメの結婚式になった。場所は例の如く猫会。忘れている人のために言っておくと、猫の国では教会のことを猫会と言うのだ。わしが名付けたわけじゃない。
 今回はタキシードを着たわしがウェディングドレス姿のオニヒメと腕を組み、新郎に手渡すのがミッション。涙で目がかすむので、上手くできているかわからない。いや、オニヒメに引っ張られている。

 そうしてセンエンに手渡したら、リータがコソコソと呼ぶ方へ。グイッとわしの手を引かれて、リータのヒザの上で涙を拭いながら2人の結婚式を見詰める。

「グスッ……娘が旅立つ姿は、けっこう来ますね」
「うんニャ。感動ニャー。グスッ……」
「にゃ~~~。オニヒメ~。おめでとうにゃ~~~」

 こうして300年の時を超えて幸せになるオニヒメを、わしたちは涙ながらに祝福するのであった……


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☆告知☆

 新小説『お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は転生者である。』が公開中。
 元々シラタマが入る予定だった体に猫が入ったのだから赤ちゃんの頃から様々な 問題を起こし、それを元女房がなんとかしようと奮闘するお話です。
 よろしければそちらもどうぞ~。
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