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猫歴4年~14年
猫歴14年にゃ~
しおりを挟む我が輩は猫である。名前はシラタマだ。教師の教師ではない。
暇潰しに中学校に通い出したわしであったが、教師がわしの授業を受けたいとなり、生徒の授業にならないと言われて数日で追い出されてしまっては仕方がない。
なのでお昼寝生活に戻ったのだが、リータとメイバイがそれを許してくれないので、朝のうちは戦闘訓練。お昼からは子供たちと遊ぼうと思ったけど「学校のお友達と遊ぶの」と言ってわしと遊んでくれなくなったので、ふて寝。
どっちみちお昼寝生活になっているからリータたちがうるさいので、最近では旅商人なんかをしている。
「さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃいにゃ~。そこの奥さん、今日はいい香辛料が入っているにゃよ~?」
ここはアラスカ州南東部に住むアレウト族の集落。何度か来たことがあるので、猫のわしを見てもこういう生き物だと諦めている。
「今度は何を始めたのでしょうか?」
アレウト族はわしを囲むだけでそれ以上近付かない。ていうか、英語で喋っていたからまったく伝わっていなかったので、高齢の酋長が代表して近付いて来た。なので、慌てて念話を繋いで相手をする。
「おっと。言葉が通じなかったんだったにゃ。商売しに来たんにゃけど、みんにゃと取り持ってくれにゃい?」
「商売とは??」
「あ~。そこからにゃ~」
酋長には「物々交換で何か欲しい物を交換するよ」と言ってあげたら嬉しそう。でも、すぐに残念そうな顔に変わった。
「どうしたにゃ?」
「交換したいのは山々なのですが、こちらから出す物がなくて……」
「だよにゃ~。まぁにゃんでもいいから、いらない物をみんにゃに持って来させろにゃ。ひょっとしたら、うちではお宝になるかもしれないにゃ~」
「それでよろしいのなら……」
酋長は自信なさげに住民に説明してくれたのでしばらく待ったら、数々のゴ……商品を持った住人が集まった。
「こんにゃもんかにゃ?」
「はあ……これで何と交換してくれるのでしょうか?」
「今回は初回にゃから、これらを持ち込んでくれた住人には、1人1個、好きにゃ物を選ばせてあげるにゃ~」
「いいのですか!?」
「持ってけ泥棒にゃ~。にゃははは」
驚いている酋長に通訳させ、住人を順番に並ばせると商売の開始。商品の説明をして、ゴ……アレウト族の商品を受け取る。やはり食料品関連が人気なので、まとめ買いして来た砂糖や香辛料が飛ぶように売れている。
中には宝石をくれる住人がいたので、その者には5個追加で支払う。それでも宝石のほうが価値が高いが、今回の大赤字分の補填に回させてもらおう。
てか、わしがこんな利益にもならない旅商人をしている理由は、各部族が生き残っているかの確認と、足りない物資の支給だ。
この世界は強い獣のせいで移動もままならないので、こうも隔離された空間で誰とも合わず暮らしていたら流行り病で全員倒れるかもしれないし、それでなくても栄養が偏っているので、体調面も心配だからちょっとは手助けが必要だろう。
しかし、助けすぎても受け取ってもらえないかもしれないし、部族独自の発展を妨げてしまうだろうから、物々交換をすると言っているのだ。
でも、子供は別。子供を整列させたら一口大のチョコを口に放り込んでいき、全員ぶっ倒す。「うんめぇ~!」とか言ってのたうち回っているだけだから、体は大事ない。
子供たちは「ギブミーチョコレート」とか言ってもっと欲しそうだけど、心を鬼にして今日は配らない。大人がめっちゃ獣を狩るような目で見てるんじゃもん。だからこそ、残らない物にしたのだ。
でも、ちょっとかわいそうなので子供にはオモチャをプレゼント。日本古来のオモチャだけど、その発想はなかったのか楽しく遊んでいる。
商売が終わったら、酋長と一緒にティータイムだ。
「この度は、本当にありがとうございました。子供たちもあんなに楽しそうで」
「いいにゃいいにゃ。こっちも多少はメリットがあるからにゃ。次回からは、この辺を用意できるにゃら数を揃えておいてくれるかにゃ?」
ひとまず酋長には値段が付きそうな物を見せて、無理がない程度に作ったり探したりする仕事を与える。
「これを多く用意すれば、我らが潤うということですか……」
「だにゃ。数を用意できないというのにゃら、他にも方法があるけど、やってみるにゃ?」
「聞かせてください!」
前のめりの酋長には寒さに強い農作物の種を渡して、育てられるかどうか試してもらう。
「これを育てて物々交換に使えばいいのですね」
「それでもいいし、増やした物を自分たちで食べてもいいし、加工して価値を高めてもいいにゃ」
「この種に、それほどの使い道が!?」
「まぁこの過酷にゃ環境で育てられたらだけどにゃ」
「が、頑張ります!!」
「あんまり無理するにゃよ~? 疲弊して倒れたら元も子もないにゃ~」
酋長はメラメラと闘志を燃やしていたが、種は実験程度の数しか渡していないから大丈夫だろう。そんなにすぐ育つ物でもないと説明したから大丈夫だろう……寝てね?
芽が出るまで起きていようとしている酋長には、ちゃんと寝るように促し、年に2回は顔を出すと言って猫の国に帰るわしであった。
暇な時にわしが旅商人をして過ごしていたら、何をしているのかとベティに聞かれたのでそのまま伝えたら「手伝ってあげちゃうぞっ」と、デレられた。何事かと思ったら、ボランティアをしていると勘違いしたっぽい。
なので「キモッ!」と断ったら、噛み付くし泣くしで連れて行くしかなかった。ベティはボランティアが趣味なんだって。
ベティと二人だけで行動したことによって、リータたちが浮気だなんだと怖いので活動内容を言ったら、やはりボランティアと勘違い。リータたちもついて来ることになったので、暇潰しがガッツリボランティアの会に様変わり。
わしが商売と技術担当、ベティは炊き出し担当、リータとメイバイは農業担当、コリスとオニヒメは子供と遊ぶ担当だ。
日によって、側室のエミリとお春とつゆ、子供たちも後学のためにメンバー入りしたりチェンジしたりして、猫の国王族は人知れずボランティアに精を出している。
確かにわしが始めたことだけど、こんなに大々的になるとサボれないから、ベティに話をしたのは失敗だったかもしれない。
わし、田舎でのんびりしようと思っていただけなのに~~~!
ちょっとした思い付きが忙しくなってしまったので、アメリカ大陸、ウサギ市より東にあるキカプー市に顔を出す。特に用事はないのだが、ここにはシャーマンの女性が住んでいるので、いつも相談に乗ってもらっているのだ。
「ちょっと聞いてにゃ~」
「また愚痴ですか……」
この嫌そうな顔をしている女性こそ、未来を百発百中で当てることのできる凄腕の占い師。ただ、当てすぎると大変なことが起こるとわかっているので、6割弱の的中率でごまかしているみたい。
わしが仲良くしている理由は、先代のシャーマンの謀。一族を守ってくれると予言していたのかペラペラと秘密を喋りまくったので、わしが守らなくてはいけなくなったのだ。
ちなみにキカプー族が猫の国に属するようになったのは、シャーマンが入れてほしいと言って来たから。
わしはそんなつもりはこれっぽっちもなかったのだが、相談を聞いてもらう時には必ず美味しいお菓子を持って行っていたので、シャーマンは猫の国に入りたくなったそうだ。
だがしかし、自分から言うのは気が引けたのか、わしから誘われるのを待っていたけど愚痴しか言わず。それならば、何か占ってその褒美で入ろうと思ったらしいが、愚痴しか言わず。
あまり未来を知りすぎると面白くないから自分のことを占いたくなかったみたいだが、いくら先の未来を見てもわしは愚痴しか言わず。
「ここに何しに来てんねん! ええかげん占って行けやぁぁ!!」
なので、ある日突然シャーマンにめちゃくちゃキレられた。わしとしては、大変なことが起こるなら、シャーマンのほうから言って来ると思っていただけなのに……
そのことも説明して誠心誠意謝罪したら、シャーマンも言いすぎたと謝って来た。それと、キカプー族を騙してでも説得するから猫の国に入れてくれとも言われたので、わしのほうから誘ってあげたのだ。占い師が騙すなよ。
キカプー族は元々ハリケーン被害からわしたちが助けてあげたし、立派な建物も建ててあげたのだから、軽く誘ったら酋長はすぐに乗って来た。
たまにお土産でお菓子を配っていたから、酋長も猫の国に入りたいと常々思っていたんだって。シャーマンのほうから言ってくれるのを待っていたとも言っていた。シャイな部族だ。
もちろん猫の国になったからにはけっこう援助してあげたが、キカプー族は人数が少ないのでまだ村レベル。
ちょっと遠いけどお隣のクリフ・パレスにあるウサギ市までは道路を作ったから、アメリカ大陸ではこのふたつの市が交遊して、勝手に大きくなって行けばいいとわしは考えている。
「それでにゃ。リータとメイバイが働けってうるさいんにゃ~」
「はあ……」
あと、心の中で「何回同じこと言うねん! ボケ~!!」と言っているシャーマンには、わしの愚痴を聞くだけでいいからキレないことを祈っているのであった。
「ところで……今日も占って行かないのでしょうか?」
「にゃ? まぁ……いまのところ間に合ってるかにゃ??」
「いいかげん占って行ってくださいよ~。私の存在意義なんですよ~」
確かに代替わりしてから一回も占ってもらったことがないし、シャーマンが涙目になっているのでかわいそうだから、わしはいい質問を捻り出す。
「う~ん……じゃあ、猫市の明日の天気を占ってもらおうかにゃ?」
「んなもん、どうでもええがな!!」
「なんか占えって言ったのはそっちにゃろ~」
ようやく出て来たのは、天気の話。そんなもの日常会話レベルなので、シャーマンはキレて教えてくれないのであったとさ。
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