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31 ストーキングは失敗にゃ~

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 わし達が勇者パーティの写真を撮りながらつけていたら、四天王も最後の一体。骨しかないデッカいドラゴンが四天王最強とかホザいていたが、勇者パーティに粉々にされていた。

 この部屋で勇者パーティは休憩。四天王との三連戦は、レベルマックスでも疲れたみたいだ。

「四天王って名乗っていたのに、三体しか居ませんでしたね……」

 あと、四天王は名乗りをする時にいつも序列を言っていたので、さすがにハルトも気になっている。

「たしかに変ですけど、その分、楽ができたからいいじゃないですか」

 しかしサトミは楽観的。魔王に辿り着くまでに時間が取られないことは望ましいことなのだろう。

「まぁそうなんですけど……少し飛ばしすぎて、回復アイテムが心許ないです。魔王と戦うのは次回にして、一旦、引きませんか?」
「え~! 残りは魔王だけなんですから、一気に行きましょうよ~!!」
「でも、王女様に死なれては……」

 ハルトとしては、このまま戦闘に突入すると死の危険があるから撤退したいらしいが、ここで引くと魔王討伐までの時間がさらに延びて、魔物被害が広がる恐れがあるのでサトミは反対している。

 そのやり取りを、わし達は扉に開けた穴から覗き見ていた。

「聞こえづらいけど、行くか引くかで揉めてるみたいね」
「見た感じ、ハルト君が帰りたがっているから、回復アイテムとかが尽きたのかもにゃ~。パーティリーダーとして当然の判断にゃろ」
「そりゃそうだけど……また一から見守るのも面倒じゃない?」
「そうは言ってもにゃ~……」

 べティもサトミ派閥らしいので、「にゃ~にゃ~」会議。かと言って時間を掛けていたら、勇者パーティは前進か撤退を決めてしまいそうなので早めに結論を出すわしであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 勇者パーティが揉めていたら、急に扉が四角くくり貫かれて、マントの集団が現れる。

「にゃ~にゃ~。そこに御座おわすは勇者パーティのみにゃさんじゃございにゃせん? わし達は神出鬼没の旅商人でございますにゃ~。ここにHPポーションにMPポーション、各種アイテムをご用意しておりにゃす。少々割高になりにゃすが、お買いになりませんかにゃ~?」

 そのマントの集団の一人が前に出て、手を揉み揉みしながら商談を開始すると、ハルトがこれ幸いと購入……

「えっと……シラタマさんですよね? ここで何してるんですか??」

 いや、わしのことなんてバレバレ。

「シラタマにゃ? あ、白玉団子が欲しいんですにゃ。もちろん取り揃えていますにゃ~」

 それでもわしが演技を続けると……

「だからすぐバレるって言ったでしょ~」

 べティがマントのフードを取りながらネタバラシしやがった。

「にゃんでにゃ~~~!」
「その口調よ。あと、このマント。全部猫耳付いてるし、こんな所までついて来れるの、あたし達しか居ないでしょ」
「ですよにゃ~」

 いちおう反論してみたが、べティの正論に反論する気も無くなるわしであったとさ。


「まぁおふざけはここまでにゃ」

 バレてしまっちゃあ仕方がねえ。べティがまた何かツッコミを入れようとしていたが、わしはペコペコ頭を下げて黙ってもらい、ハルトと喋る。

「回復アイテムが足りないんにゃら、わしの手持ちを寄付するにゃ。他ににゃにか問題があるのかにゃ?」
「えっと……もしかして、ずっとつけてました??」
「それ、いま聞くことにゃ??」
「だって、シラタマさんの登場でいろいろと合点がいったんですも~ん!」

 ハルトいわく、魔王城に向かっている最中、急に魔物の数が減ったり、1階には急に矢印が現れただけでなく「サトミ触るな危険」と書かれた地図が手に入ったり、四天王の一体が居なかったりしていれば気付かないわけがないと言っている。

「そりゃそうですにゃ~」

 ハルトに全てを謎解きされたわしもたじたじだ。

「ま、お腹もすいてるにゃろうし、ごはんもご馳走するにゃ~」

 というわけで、うまいメシを食べさせて、ハルトの話を逸らすわしであった。


 勇者パーティがガッツいて食べているので、わし達もガツガツ食べてこれからの予定を聞き出す。
 今日はもうやる気が出ないらしく、魔王討伐は明日にするとのこと。なのでわしにセーフティーエリアがどこにあるのかと質問が来たが、しらんもんはしらん。

「え? もうすでにクリアしたのでは?」
「地図には四天王の所までしか書いてないにゃろ~」
「じゃあ、いつもどうやって寝てたのですか? セーフティーエリアに現れていませんでしたよね??」
「壁を作ってその中で寝てたにゃ。こんにゃふうににゃ」

 とりあえず土魔法で実演してあげたら、ハルトは納得しているようなしていないような。分厚いから納得してくれ。

「王女様、お風呂でもどうですにゃ~?」

 ハルトはいまいち納得していない顔をしていたので、サトミを使って話を逸らしたい。

「お風呂? まさか、私達をつけている間も入っていたのですか!?」
「声が大きいにゃ~。それがどうしたにゃ~」
「私達なんて、濡らした布で拭いていたんですよ! 居るなら居るってなんで言ってくれなかったんですか!!」
「隠密行動だったからにゃ~」

 サトミに話を振ったのも失敗。初日から顔を出してくれていればとうるさいので、露天風呂を出して女子チームを送り込んだ。
 これでうるさい奴を排除できたと思ったが、ハルトが残っていたので「今まで何してやがった」とやっぱりうるさい。なので「四天王が復活するかも?」と警戒させてやり過ごすわしであった。

 女子チームがサッパリした顔で長いお風呂から上がって来たら、バスで待機してもらい、男チームとモフモフチームのお風呂。わしは男チームとモフモフチームを兼ねている。
 ちなみにコリスは女の子だけど、リス。服も着ていないので、ハルトに見られてもどうってことがないのでわしが揉み洗い。ハルトもフェンリルのレオを揉み洗いして、ゆっくりと疲れを落とす。

 女子チームにはいちおう見張りを頼んでいたけど、四天王が復活するどころか魔物の一匹も現れなかったので、ここで寝ても大丈夫そう。
 念の為、部屋の角に土魔法で作った壁と天井を二重にして、ゆっくり眠るわし達であった。


 翌日……

「持ってけ泥棒にゃ~!」

 要塞都市で購入した回復アイテムや補助アイテム、魔王城で手に入れた装備品やアイテムをわしは叩き売り。ハルトは遠慮がちだったが、サトミは遠慮なく奪い取って行った。

「うんにゃ。みんにゃ見違えたにゃ~」

 装備品は要塞都市で買った物よりいい物だったので、勇者パーティの底上げになったと思われるので、カメラでパシャリ。

「これで魔王とも存分に戦えるにゃろ?」
「はい……でも、シラタマさんに頼り切りのような……」

 ハルトは勇者として、おんぶに抱っこは情けないような感じになっていたので、わしは否定する。

「ここまで来たのは勇者パーティの実力にゃ。わしはにゃにもしてないにゃろ?」
「いえ、地図とか……」
「あ、それはしたにゃ。でも、魔物を倒したのは勇者パーティにゃ。四天王を倒したのも勇者パーティにゃ」
「一体少なかったですけど……」
「あ、それもしたにゃ。だけど、手伝ったのはそれだけにゃ。ハルト君だって、これまでの戦闘で手応えはあったにゃろ?」
「まぁ……はい……」

 たしかに手助けし過ぎな所はあったが、戦闘に関しては一切手助けしていないのでハルトも認めるしかない。

「残りは魔王だけにゃ。いまの勇者パーティにゃら確実に倒せるはずにゃ。さっさと倒して、みんにゃを安心させてあげようにゃ~」
「……はい!」

 魔王の復活に不安視している民の顔を思い出させてあげたら、ようやくハルトにもやる気が戻ったので、わしは「どうぞどうぞ」と続きを譲る。

「皆さん……シラタマさんの力を借り過ぎている感は否めませんが、これはチャンスです。シラタマさんのおかげでゆっくり休めました。シラタマさんのおかげで装備やアイテムも整いました。僕たちにはシラタマさんがついています! 必ずや魔王を倒して帰りましょうにゃ~!!」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」

 ハルトの演説にはわしが出過ぎ。あと、ハルトまで語尾に「にゃ」と付けるから皆の返事が「にゃ~!」になっていると思われる。しかし、気合いが入っているのでわしは何も言えない。

「にゃ~……」

 わしもいちおう拳を上げて、勇者パーティのあとをトボトボと続くのであった。


 テンションの下がっていたわしであったが、これは勇者パーティの晴れ舞台。前に回り込んで写真を撮りまくる。
 そんなことをしながら進んでいたら、道が途絶えた。

「向こうには床があるのですが……どうやって渡るのでしょうか?」

 目に見えるのは、両側に壁。向こう岸までは10メートルはありそうな落とし穴。ビルで言ったら4、5階はありそうな深い穴があるので、何故か全員わしを見た。

「探したら橋が現れるスイッチがあるとかかにゃ? いや、透明の床があるんにゃけど……」

 探知魔法を飛ばしてみたらクネクネ曲がる床があったのだが、ここを渡るのは面倒くさそう。

「これでいいかにゃ? 渡っちゃってにゃ~」
「「「「「はいにゃ~」」」」」

 なので、土魔法で頑丈な橋を作って、皆に渡ってもらうわしであった。


 透明な床は使わずに土でできた橋を渡り切った先には、また床の無い行き止まり。しかしそこには、どう見ても不自然な円形の床が浮かんでいる。

「これに乗れということでしょうか?」
「たぶんにゃ~」
「全員乗るのは、ちょっと厳しいですね……」
「たしかに数人余っちゃいそうにゃスペースだにゃ。勇者パーティで行っちゃってにゃ~」
「……わかりました」

 ハルトは頷くと、サトミ達と床に乗って振り返った。

「では、先に行って待ってますね」
「わし達のことは気にせず、魔王を倒すんにゃ~」

 くして、勇者パーティは魔王が待つであろう上のフロアへ昇って行ったのであった……

 パシャパシャッ!

「なんで先に着いてるんですか!!」

 勇者パーティが魔王のフロアに着いた瞬間、先回りして待ち構えていたわしが写真に撮ったら、ハルトに怒鳴られるのであったとさ。
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