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04 要塞都市にゃ~

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「「「「おお~」」」」

 要塞都市に入ったわしたち新・猫パーティは、おのぼりさん。猫の国や元の世界とも似ていない景色が車の外に広がっているのだから仕方がない。

「何あの家。浮いてるわよ?」
「あっちにゃんか、キノコみたいにゃ家があるにゃ~」
「なんであの家はひっくり返っているんだよ?」

 町の中は、これでもかってぐらいファンタジー要素が盛り盛りなので、わしやべティやノルンはずっとキョロキョロしている。コリスはいつも通りニコニコしてる。

「ここは各国からの応援が駆け付けてくれていますから、様々な種族が居るのです。建物もそれに合わせて作られています」
「ホンマにゃ! あっちにバニーガールが居るにゃ~!!」

 サトミがガイドさんみたいなことを言ってくれたけど、わし達はそれよりも人種が気になる。
 ウサギ耳を生やした人種。二足歩行のトカゲ。立って歩く獣達。本物のエルフやドワーフ。翼を持つ人間やブタっぽい人間……あ、太っているだけですか。

 猫の国より多種多様な人種が歩いているのでわしが呆気に取られていると、べティがわしの尻尾をクイクイッと引っ張った。

「なんかコリスちゃんがそわそわしてるわよ?」
「にゃ? ああ。晩ごはんの時間だにゃ。コリス、これつまんでおいてにゃ~」

 わし達は異世界の景色に感動していてお腹の減りには気付いていなかったが、コリスのお腹を誤魔化すことはできなかったようだ。
 なので、子供なら一本で満腹になる高級串焼き十本を支給して、晩飯までの繋ぎにしてもらう。その間に、わしはサトミに相談。

「手持ちのお金は使えないと思うから、物を換金したいにゃ~。そんにゃ場所はないかにゃ?」
「ドロップアイテムは冒険者ギルドに持ち込めば換金できますけど……あっ! 食事も宿に泊まるお金も無いのですね。でしたら、うちにお泊まりください。命を助けていただいたのですから、それぐらいはさせてください!」
「さすがにお城に行くのは緊張するにゃ~」
「「「王様なのに?」」」
「にゃ……」

 皆にツッコまれたというわけで、今日の宿はサトミのはからいでお城に決定。車を走らせて直行。サトミには軽い食事と質素な部屋をお願いしたのだが、全て無視。
 この要塞都市で指揮を取っているというアジフ国の武闘王なるゴツイおっさん、シンゲンとの会食となった。

「シラタマ王よ。娘を助けていただき、本当に感謝している」
「いいにゃいいにゃ。それと、わしは王様はやってるけど、この世界にはその民も居にゃいんだから、一般人と同じ扱いにしてくれにゃ」
「なるほど。民あっての王か……まったくその通りだな。がっはっはっ」
「というわけで、マナーも気にせず食べさせてもらうにゃ~」

 ぶっちゃけフレンチのフルコースが満漢全席みたいに並んでいたからどう食べていいかもわからない。だから王様から下りたというわけだ。
 一般人なら手掴みで食べても大丈夫なはず。シンゲンも笑っているから、おとがめは無し。コリスとわしとでガンガン食べまくる。

「ちょっとシラタマ君。せめてナイフとフォークで食べなさい。あたしが恥ずかしいでしょ」

 べティからわしだけ怒られたけど……

 テーブルから料理が消え行く中、サトミは何も食べないノルンを心配していた。

「お口に合わなかったみたいですね。何か食べられる物を持って来させましょうか?」
「それじゃあ、イチゴみっちゅ頼むんだよ」
「はい。イチゴですね……」
「持って来なくていいにゃ~」

 わしが止めると、サトミが首を傾げる。

「救い主に何も食べさせないわけには……」
「ノルンちゃんはゴーレムと説明したにゃ~。食べられないのに、必ずこのセリフを言うから困るんだよにゃ~」
「じゃあ、何を食べるのですか?」
「それも説明したにゃ~。ま、見たほうが早いかにゃ。ノルンちゃん、ごはんにゃ~」
「いただくんだよ~」

 わしが人差し指に魔力を集めると、ノルンはパタパタと飛んで来て手に抱きついた。

「うっ……ペロペロ舐めたりチューチュー吸ってるんですが……破廉恥です!」
「これはノルンちゃんの食べ方にゃ~」

 わしがやらしているわけでもないのに、サトミから汚物を見る目で見られてバツが悪いわしであった。


 猫の国のアルバムを見せ、ここにも写真のような物があるというのでサトミの赤ちゃんの頃からのアルバムを見せられながら食事を続け、お腹いっぱいになるとコリスとべティから料理の評価を聞いていたら、シンゲンが動く。

「それでシラタマは勇者と聞いたのだが、本当なのか?」
「王女様はまだ言ってるにゃ~? まったく関係ないにゃ~」

 サトミはどうしてもわしを勇者にしたいようだが、勘違いをきちんと説明したらシンゲンも納得してくれた。

「そうか。娘が迷惑を掛けてすまない」
「それは一宿一飯でチャラにゃ。いや、こんにゃ豪華な食事や部屋にゃら、貰いすぎだにゃ~」
「いやいや、命の恩人には少なすぎる」
「わし、そんにゃことしたっけ? にゃははは」

 わしが照れ隠しに笑うと、シンゲンも釣られて笑う。

「フッ……ゴブリン如きでは倒した内にも入らないか。それほどの力を持っているのなら、我が軍に入って共に戦ってはもらえないだろうか?」
「軍にゃ~……それって自由に観光できたりするにゃ?」
「……無理だろうな」
「じゃあゴメンにゃ。わし達は明日には出て行くにゃ~」
「致し方ない。もしも気が変わったら、いつでも城に来てくれ」

 シンゲンの勧誘は軽く流すことに成功。わしの実力を知っていればもっと激しく勧誘しただろうが、異世界で最強の猫と呼ばれていると知らないのでは仕方がないだろう。

「ぜったい勇者様なのに……お父様は見る目がありませんわ」

 何故かついて来るサトミは、まだ勇者とか呼んでしつこいのであった。


 メイドさんに寝室まで案内してもらったわし達は、まずはサトミを追い出した。明日の朝、迎えに来るとか言っていたけど、もういいのにな……
 それから備え付けのお風呂に入って、コリスとノルンを揉み洗い。わしもお返しで揉まれた。

「てか、にゃんでべティまで入って来てるにゃ?」
「一人だと寂しいでしょ~」
「あと、タオルで隠しても、ペッタンコにゃから意味ないんじゃにゃい?」
「なんですって!?」

 わしと同い年の幼女の胸なんて、まったく興味無し。しかしべティは現実を受け入れられないからか、ブーブー文句を言うのであったとさ。


 お風呂から上がったら、わしとコリスはベッドでブラッシングのやりあい。いつもは王妃が念入りにしてくれるのだが、二人が居ないのでは仕方がない。でも、コリスの面積、わしの何倍あるんじゃろう?
 わしのブラッシングを終えて眠りに就いたコリスを「なんだか割に合わないな~」と思いながらブラッシングを続けるわしであった。

「ところでさあ~……魔王と戦うのよね?」

 そうしていたら、隣のベッドで横になっていたべティが声を掛けて来た。

「にゃんでそんにゃ面倒なことしないといけないんにゃ~」
「そりゃ面白いからに決まってるでしょ」

 べティの性格的には、困っている人を助けたいが口に出すのは恥ずかしいからこんなことを言っていると思われるが、わしは信じられない。

「たしかに面白そうにゃけど、これは現地の問題だからにゃ~」

 わしだって、異世界転移で魔王が居たのならば、ちょっとは興味はあるけど……

「じゃあ、現地の人がダメなら助けてあげるってことね?」
「まぁ……もしもの時はにゃ」
「やった~! 勇者と呼ばれるぐらい魔物を倒しまくってやるわ!!」
「もしもの時って言ってるにゃろ~」
「おやすみ~」
「聞けにゃ~」

 わしの話を聞かないべティもさっさと寝息を立てるのであったとさ。


 翌朝は、サトミに見付からないうちに出て行こうと考えていたのだが、全員お寝坊。いや、べティは起きていたけどわし達のことは起こしてくれなかった。
 なので、予告通りやって来たサトミに拉致られて朝食。シンゲンは忙しいらしく、もう仕事をしてるそうだ。

 身仕度を整えたら、サトミの馬車にて町中を走る。これは、車で走るとけっこう見られていたらしいので、乗り換えたというわけだ。
 意外と乗り心地のよい馬車で揺られてウトウトして進めば、冒険者ギルドに着いたとべティにめっちゃ揺すられた。

「ふにゃ~。あまり目立たないようにいこうにゃ~」

 わしは最後に馬車から降りて、あくびをしながら注意事項を述べると……

「さあ! 勇者べティ伝説の始まりよ~!!」

 べティは大声を出して冒険者ギルドの扉を潜ったのであった。

「だから目立つマネするにゃ~」

 わし達は遅れて続くのであったとさ。


「シラタマ君……たっけて~!」

 わし達がカランコロンカランと鳴る扉から入ると、さっき入ったばかりのべティがわしの後ろに隠れてしまった。

「にゃに~?」
「なんかみんな、めっちゃ見て来るのよ~」
「あんにゃこと言いながら入るからにゃ~」

 単純明快。べティが変なことを言いながら入ったので、ギルドに居た全ての冒険者が一斉に見ただけ。中には笑っている人も居るので、冗談だと受け取られているようだ。

「とりあえず、買い取りカウンターに行こうにゃ。どこかにゃ?」
「たしかあちらに……」

 サトミがついて来てしまっているので、案内をしてもらったほうが早い。わし達が動くと約半数の冒険者はわし達を目で追っていたので、王女様のサトミを見ているのだと思われる。だって、チラホラわしやコリスみたいなのが居るもん。
 買い取りカウンターに着いたら、バニーガールが接待……じゃなくて、ウサミミの受付嬢が相手をしてくれたが問題が発生。

「えぇ~。組合員じゃにゃいと、4割も安くにゃるの~?」

 そう。ゴブリン等のドロップアイテムを出したのだが、冒険者じゃないと足元を見られまくるのだ。

「はい。規則ですので」
「その冒険者になったら、にゃんかデメリットはあるにゃ?」
「えっと……どうしてデメリットがあると思うのでしょうか? 4割も高く買い取ってくれるのですよ??」
「美味しい話には裏があるもんにゃ。例えば、招集には絶対参加とかにゃ」
「ギクッ……」
「とんでもないところに配置されたりにゃ」
「ギクッ、ギクギクッ」
「ちょっとは隠せにゃ~」

 顔に出まくるバニーガールと揉めていても話が進まないので、べティに相談。

「けっこうあくどい組織みたいにゃけど、どうしよっかにゃ?」
「あくどいって……ハンターギルドでも似たような規則あるわよ。だから買い取り価格に色が付いてるんでしょ」
「そうにゃの?」
「シラタマ君……ハンターよね? ハンターの常識をなんで知らないのよ」
「初耳だからにゃ~」

 べティに説教されて思い出したが、わしがハンターになった時、説明はかなりはしょられていた。そのせいで何度も苦情を言いに行ったから、わしに常識がないわけではなく、その時担当してくれた受付嬢が悪いと確信するのであった。

「あ~……その姿じゃ、さぞ受付嬢も驚いたんじゃない? そりゃ忘れるって。シラタマ君のせいね」
「わしのせいにするにゃ~」

 べティが核心を突いて来るので、自分のせいだったのではないかとちょびっとは思ってしまうわしであったとさ。
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