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02 変わった世界にゃ~

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「気持ちはわかるわ。あたしも最初は騒ぎ散らしたし……」

 どうやらべティはノルンからUFOの操縦を教わって、ひとまず窓ぐらいの大きさで外を見えるようにしようと呪文を唱えたそうだ。
 すると、窓枠からの景色は真っ青。何かが浮いていたので、UFO全体から周りを見えるようにしたら、どう見ても元の世界ではなかったので死ぬほど騒いでいたらしい。
 でも、わしとコリスは人をダメにするベッドに頭まで埋まっていたから、まったく声が聞こえてなかったっぽい。

「ふ~ん……やっぱりこのベッド凄いにゃ~。にゃんとか作れないかにゃ?」
「そんなことより、この事態をどうするか考えてよ~」
「わかってるから現実逃避してるんにゃろ~」

 ちょっとボケて気持ちを落ち着かせようとしているのに、べティが現実に引き戻すのでわしも逃げるわけにはいかない。

「とりあえず、二人がにゃにかしたってのはないんだよにゃ?」
「うん。それは確実」
「エネルギーも無しに瞬間移動なんてできないんだよ」

 べティもノルンも真面目な目をしているので、嘘は言ってないのだろう。

「じゃあ、ここがどこかはわかるすべはないのかにゃ?」
「あ、そうなんだよ。現在地がわかる機能があるんだよ」

 ノルンが石板に触れて呪文を唱えると、見たこともない文字が浮かぶので翻訳は任せる。

「第三世界……トネジー惑星ってなってるんだよ」
「う~ん……惑星の名前にゃんか出されても太陽系ぐらいしかわからにゃいしにゃ~……てか、第三世界ってにゃに??」
「世界の番号なんだよ。ちなみにノルンちゃん達の世界は第四世界なんだよ」
「てことは~……平行世界の隣に飛んだってことだにゃ」
「そう言ってるんだこのすっとこどっこいだよ」

 ノルンの口が悪いのは設定なのでムカつくけどスルーして、わしは話を続ける。

「とにゃると、こんにゃことができるのは絞られるにゃ……」
「どういうこと?」

 べティの問いに、わしは声を大にして叫ぶ。

「アマテラス! お前にゃろ! にゃにしやがったにゃ~~~!!」

 わしはアマテラスオオミカミと繋がりがあるから叫んだら出て来ると思ったが、反応は無し。なので、次の候補に当たり散らす。

「ツクヨミ! お前にゃろ! さっさと元の世界に戻せにゃ~~~!!」

 ツクヨミノミコトは何度も愚痴を聞いてあげた関係があるので叫んでみたが、こちらからも反応は無し。
 普段、二柱を呼んでも無視されることが多いが、こんな酷いことをしでかしたなら何かしらのメッセージがあると思ったけど、どれだけわめいても二柱は出て来なかった。

「大丈夫?」
「チッ……。絶対にどっちかにゃんだけどにゃ~」
「ツクヨミ様のことはわからないけど、アマテラス様がそんなことするのかな?」
「べティはちょっとしか会ったことがないから知らないんにゃ。わし達にゃんて、あの三柱に夢の中で散々にゃ目にあわされているんだからにゃ。あ、そうにゃ。ツクヨミ様、会いた~い! って、心を込めて言ってみてにゃ~」
「いやよ。愚痴言いに現れるんでしょ? みんなから聞いてるよ」
「そこをにゃんとか! このピンチを脱するにはそれしかないんにゃ~」

 誰もツクヨミファンクラブに入ってくれる人が現れないのでは仕方がない。

「ここはスサノオが気付いてくれるのを待つか、二柱が現れるのを待つしかないにゃ~」
「それじゃあ、それまで異世界探検してみようよ!」
「う~ん……やることもにゃいし、それしかにゃいか」

 べティの案に乗るのはしゃくだが、このまま空中で待機しているわけにもいかないので、今後の方針を話し合う。

「まずは、あの町に向かうってことでいいかにゃ?」
「そうね。そのあとあっちの不気味な建物に向かってみましょう」
「ま、時間があればにゃ~」

 とりあえず目的地が決まったので、方位磁石を取り出して向きの確認。いちおうこの惑星にも磁力があるのか、方位磁石の針は北に向いたので、町がある東の方向にUFOを進ませる。

「おお~。まったく揺れないにゃ~」
「フフン。あたしの操縦のおかげね」

 突然異世界に来たせいで驚いていてそれどころではなかったが、これはUFOの初フライト。わしが興奮していたら、キャプテンべティがドヤ顔してる。

「これには各種制御装置があるから、どんなに錐揉みしても揺れないんだよ。さっき説明したことを忘れるなんて、べティもシラタマに負けず劣らずのパッパラパーなんだよ」
「ちょっ! バラさないでよ~」

 ノルンにバラされたべティは、早くもドヤ顔は崩れる。しかし、ツッコミはそれだけでいいとは思えないので、わしが教えてあげる。

「べティ……バカにされてるにゃよ?」
「あっ! 誰がシラタマ君みたいなのよ!!」
「それだとわしがパッパラパーになっちゃうにゃ~」

 そう。ノルンはわしまで馬鹿扱いしていたからべティに訂正させようと思ったが、上手くいかない。

「こう見えて、猫の国では天才で通ってるにゃ~」
「それ、元の世界の知識使ってるだけでしょ?」
「素の頭じゃ、ノルンちゃんと円周率対決しても勝てなかったんだよ」
「たしかにズルしてるけど~! てか、ゴーレムのノルンちゃんに記憶力で勝てるわけないにゃろ~!!」

 なので自分で訂正しようとしたが、元々学の無いジジイだったので、簡単に二人に論破されるのであった。


「はいはい。天才天才。それより、このままあの町の前に降りるの?」

 わしがスネてコリスのモフモフに埋もれていたら、べティがおざなりに慰めて話も変えやがった。文句のひとつも言いたかったが、わしは心が広いのでやめておいてやる。

「UFOはビックリする可能性もあるしにゃ~……適当に森の中に降りてにゃ~」
「オッケー。開けた場所が見付かったら降りるわ」

 キャプテンべティはノルンと相談しながら操縦していたので、この間にわしはコリスを起こして身支度。
 エサをちらつかせ、腕ごとばっくり食べられ、引っこ抜いたら頭を撫でる。そして頭には大きな赤いリボンをつけて、人型に変身してもいいように首には前掛け。
 この前掛けはちょっと紐を調整してやるだけで、変身魔法で人型になった時にはワンピースになる優れ物なのだ。

 そうこうしていたら、べティから降りる旨を聞いて操縦を任せ……

「ちょっ! 床は元に戻してにゃ~」
「そ、そうね。あたしもヤバかった……」

 床が透明のままでは、垂直着陸は怖すぎる。べティも怖かったのか、何やら股間辺りを確認していた。

「チビったんにゃろ?」
「そんなわけないでしょ! レディーになんてこと言うのよ!!」

 なので、わしがベティをからかっていたら、UFOは森の中に着陸したのであった。


 全員が降りると、UFOはわしの次元倉庫の中へ。こんな大きな物でも時間が停止している多次元に送れるとは、便利な魔法だ。

「それじゃあ、しゅっぱ~つ!」
「わしが危険の確認してからにゃ~」

 べティはまだキャプテン気分が抜けていなかったので、ここからはリーダーを奪い取り、わしは「新・猫パーティ」の結成。危険の有無は探知魔法を使って確認する。

「どう? なんか居る??」
「チラホラにゃんか居るんにゃけど……変な反応にゃ」
「変って??」
「普通の動物っぽくないんだよにゃ~。例えばそれにゃ」
「へ??」

 わしが指差した物は、液体がゼラチン状に丸く固まった物。そのバスケットボールみたいな物体は、プルプルと震えながらわし達に近付いて来ている。

「な、何これ? 生きてるの??」
「たぶんスライムってヤツじゃないかにゃ~??」
「スライム? スライムって、頭が尖って大きな目がふたつあるんじゃないの?」
「そういうスライムも居るんにゃけど……べティのスライム観、古くにゃい? それってドラ〇エにゃろ??」
「え!? 他にもスライム出て来るゲームあるの!?」

 べティはわしより30年ぐらい早く死んでいるので、スライム観の差異が起こっているが、そんな場合ではない。

「これは敵か味方かわからにゃいし、避けて行こうにゃ~」
「【ファイヤーボール】! ……え?」
「勝手に攻撃するにゃ~!!」

 残念ながら時すでに遅し。べティはおもちゃのピストルから火の玉を飛ばしてスライムに当ててしまった。

「あれ??」
「にゃ~??」

 火の玉は見事にスライムに命中したのだが、わし達の思っていた展開にならず。スライムは熱しられて破裂したように見えたが、その後はパラパラと完全に姿を消したのだ。

「何か落ちたわね」

 そしてその位置には、小指大の石のような物がポトッと落ちたので、べティは拾ってよく見ている。

「宝石みたい……ちょっと魔力を含んでいるかも?」
「にゃんだろ? その前に、スライムの痕跡がまったく無くなってるんにゃけど……」
「そりゃ、あたしの魔法を喰らったんだから、イチコロよ~」
「オーバーキルだったのかにゃ~? まぁいいにゃ。とりあえず行こうにゃ~」

 現地の生き物を殺してしまったが、スライムといえば害のある生き物のはず。たぶんいいことをしたのだと心に言い聞かせて、わしは歩き出したのであった。


 それからしばらく歩き、探知魔法ではもうじき森が切れそうな場所まで進んだら、次の敵が現れた。

「オオカミね……」
「アレはうちのと大差ないかにゃ? 普通のサイズだから無視して行こうにゃ~」
「【ウインドランス】!」
「だから勝手に攻撃するにゃ~!」

 またしてもべティはわしの指示を無視しておもちゃのピストルから魔法を発射。その風の槍はオオカミの頭を貫き、簡単に倒れたのたが様子がおかしい。

「嘘でしょ……」
「またチリになって消えたにゃ……」

 そう。水分の多いスライムならそんな死に方があるかもしれないが、オオカミは有機物。一瞬でチリに分解されるはずがない。

「あ、なんかお肉とさっきの石が落ちてる」
「本当だにゃ……これはちょっと変にゃ世界に迷い込んでしまったかもにゃ~」
「どゆこと?」
「べティが死んでから異世界物の小説が流行ってにゃ~」

 べティの知識は古いので、わしでも知ってる程度のラノベの知識をインプット。その中で、ゲームのような世界に異世界転移する物語があると説明した。
 ちなみにべティが異世界転生したのは、魔法少女に憧れたから。魔法のアイテムを使ってフリフリした魔法少女に変身したかったそうだ。

「てことは~……魔法少女になれるの!? 死んでから思っていた世界と違っていたからガッカリしてたのよね~」
「いまその話はよくにゃい? それに、魔法少女になって精神的に持つのかにゃ??」
「い、いまは幼女なんだからいいでしょ!!」

 魂年齢百歳オーバーのべティをもっと問い詰めて精神的に追い込んでやりたかったところだが、探知魔法に気になる反応があったので、べティはコリスの背中に放り投げ、ノルンはわしの胸元に入ってもらい、わしとコリスは走り出した。

「ビックリするからもっと優しく乗せてよね~。そんなに急いでどうしたの?」
「にゃんか馬車が襲われてるから見に行こうと思ってにゃ」
「人助けってこと??」
「さあにゃ~? 人が居るかわからにゃいし、様子見にゃ。てか、次こそ勝手に攻撃するにゃよ??」
「モンスターだからいいじゃな~い」
「無駄な殺生はするにゃと言ってるんにゃ~」

 べティが言うことを聞かないので、もうチョコレートは食べさせないと言って脅す。そんな感じでワーワーやっていたら、馬車が見えて来た。

「何あの緑色の子供……」
「たぶん、ゴブリンってヤツにゃ」

 その馬車は10体以上のゴブリンの群れに襲われており、馬はすでに殺され、中に居る者は籠城するしかなくなっているように見える。

「女性の悲鳴が聞こえたわよ? ヤッちゃう??」
「物騒にゃことを言うにゃ~。あのゴブリンが原住民で、いい人かもしれないにゃろ~」
「それはないでしょ」
「可能性の話にゃ。ここはわしがやるから、べティは待機にゃ」

 べティの頭の上にノルンを置いたらわしは走り出したのだが、後ろを向いたら必死の形相でべティが走っていたので、コリスのモフモフロックで拘束してもらう。
 これで完全に邪魔者を排除できたので、わしは安心して馬車の元へと駆け出したのであった。
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