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捌 助け
48 海上自衛隊の巻き
しおりを挟むプルルル~♪ プルルル~♪
海上自衛隊からの贈り物がドローンで届き、金属製の箱の中に入っていたスマホが鳴り響く。
半荘は無造作に一台のスマホを握ると、通話をタップした。
「おお! 出たな忍チューバー君!!」
スマホの通話口から、大音量の声が聞こえて、半荘はスマホを遠ざける。
「あれ? 繋がっているよな??」
大声の主は、半荘がうるさがっているとは気付かずに、大声で喋り続けている。
「ちょ、もうちょっと声のボリュームを絞ってください!」
「あ、すまんすまん」
ようやく声が小さくなると、半荘はスマホを耳に付けて喋る。
「えっと……日本の方で間違いないですよね?」
「そうだ! 私は海上自衛隊、この艦隊総司令官、東郷だ!!」
無駄に声の大きい東郷に、半荘はまたしてもスマホを耳から遠ざける。
「俺は忍チューバーこと、服部半荘です」
「知ってるぞ! がははは」
「笑っているところアレなんですけど、助けに来てくれたって事でいいんですよね?」
「そうだ! ……と、言いたいところだが、ちょ~っと、厄介な事になっていてな」
東郷の説明では、半荘を助けに出港したまではよかったのだが、途中で官邸からストップが掛かり、停船したら、やっぱり行けとお達しが下ったとのこと。
そして竹島に着いたものの、上陸は許可されておらず、韓国艦隊への攻撃も、相手の攻撃が無いと許されていないとのこと。
「て、事は……」
「打つ手無しだ。がははは」
「はぁ……」
「がはがは」笑う東郷に、半荘はため息しか出ない。
しかし、名案が浮かんだようだ。
「それなら、船を近付けたら向こうは攻撃してくるんじゃね?」
「そうしてやりたいんだが、こちらから戦争を吹っ掛けているみたいになるから、許可が下りないんだ」
「俺は大砲まで撃たれたんだぞ? それで宣戦布告にならないのか?」
「私もそう思うんだがな~……いま、法務大臣と打ち合わせ中だとさ。ちなみにだけど、韓国艦隊から、ビンビン、レーダー照射を受けてるんだけど、それでも反撃するなだと」
「えっと……もうやっちゃっていいんじゃないか?」
「我々自衛隊は、上からの指示がないと動けないんだ。じゃなきゃ、すでにぶっ放している。がははは」
かなりヤバイ事を口走る東郷に、半荘はそんな事を言っていいのと聞いたが、レーダー照射がかなりムカついていて、艦内はピリピリしているので、ちょっとしたガス抜きだと返された。
「それでだ。連絡は、このスマホを使ってくれ。無線は相手に傍受される可能性があるからな。あと、動画はバンバンアップしていいからな」
「あ~。それで、韓国を揺さぶるって事か」
「いや、私達が楽しみだからだ!」
「楽しみって……ちょっとは俺の心配してくれよ」
「がははは。すまんすまん。でもな、竹島を一人で取り返した忍チューバー君を、我々は尊敬しているんだ」
東郷は、一呼吸空けると、大声を出す。
「我々の悲願、竹島を取り返してくれて、本当にありがとう! 君は、自衛隊の……いや、日本のヒーローだ!!」
半荘は、耳がキーンとなりながら、ツッコム。
「ヒーローはいいから、助けてくれよ!!」
もちろん半荘の言葉はスルーされ、スマホやWi-Fi、金属製の箱の説明を受けて、一方的に切られてしまうのであった。
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