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陸 嘘

34 両国の発表

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 半荘が特殊部隊を退けてすぐあと、パイロットは本国に報告を入れた。
 その報告は、すぐに大統領府にまで届いたが、門大統領にまで届くには、朝まで時間が掛かる事となった。

『なんだと!!』

 忍チューバー暗殺の失敗を聞いた門大統領は、声を荒らげる。

『武器も使えない奴に、どうやったら負けるのだ!!』

 側近に当たり散らす門大統領。
 側近は側近で、「あんなに連絡したのに、いまになって……」とか思っているが、口には出さず、詳しく説明する。

『それが、ヘリに爆弾を取り付けられて、やむなく引き返したと……』

『爆弾!? あいつは、そんな知識を持っているのか??」

『いえ、爆弾処理班が除去したのですが、その時、失敗した……』

『し、失敗!? 怪我人が出たのか!?』

『いえいえ、煙が出ただけで、怪我人はいません。忍チューバーの動画でよく出てくるアレです』

 側近が、玉を地面に投げ付ける仕草をすると、門大統領は「あ~アレか~」と反応し、煙玉の存在を思い出した。

『しかし、そんなおもちゃで騙されたのか……』

『それも一因でしょうが、忍チューバーの身体能力を把握していなかった事が、一番の失敗の原因かと……』

 側近は特殊部隊からの聞き取りを、門大統領に詳しく説明する。

『ですので、単純に戦力不足となります』

『ならば、陸海軍の兵力を集中しろ! 最悪、ミサイルも撃ち込んでもかまわん! 独島を絶対に取り戻してやる!!』

『そ、そんなに戦力を集めますと、戦争を吹っ掛けようとしていると、日本が勘違いするかもしれません」

『名目は演習でいいだろう。いちおう日本にも知らせておけ』

『はい……それと、今回の失敗は、発表しますか?』

『わざわざ失敗を教えてやる事はないだろう。それより、艦隊の編成を急げ』


 門大統領の命令を受けた側近は、各所に通達して、急ピッチで準備を整えるのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 一方その頃、日本政府官邸に、韓国から演習の知らせが届いた。

「まったくあの国は……演習をするなら、当日に発表するのはおかしいだろ」

 呆れ顔でボヤく安保総理は、防衛大臣を見る。

「昨夜も、ドンパチやっていたんだろ?」

「はい。衛星に、大きな爆発の証拠が写っています。小規模ですが、震動も感じ取れたようです」

「となると、韓国は忍チューバーを殺しに行ったわけだ。そして演習をするという事は、失敗したんだろうな」

「失敗の発表はありませんが、間違いないでしょうね」

「では、こちらから発表してあげるとするか」


 それから安保総理はマスコミの前に立ち、精査した情報を公開して、韓国の失敗を大々的に発表した。
 マスコミからは、忍チューバーの生存に感嘆の声があがったが、韓国から殺戮さつりくをしていると言われたからか、素直に喜べないようだ。
 なので、マスコミは違う話を振って、韓国や総理に攻撃する。

「韓国軍が、竹島で演習するとありましたが、日本政府として、これを許していいのですか!?」

「もちろん遺憾です。韓国政府には、厳重にやめるように働きかけています」

「これはもう、一線を越えたという事になりませんか!?」

「韓国政府には、抗議し続けていきます」

「こちらからも、艦隊を出さないのでしょうか!?」

「そ、それは……まだ演習をやると決まっていないので、情報を精査し、熟慮いたします」

「もう、韓国艦隊は出港したと、情報が入っていますよ!!」

 マスコミの総攻撃を受けた安保総理は、徐々に答えに困るが、助けが入る。

「では、時間となりましたので、質疑応答は終わります」

 劣勢になった安保総理を助けるべく、司会をしていた者は質問を打ち切り、安保総理は袖に消えて行った……


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 その安保総理の会見は、門大統領にまで届いていた。

『安保の奴……いらぬ事を言いやがって……』

 門大統領はご立腹。
 書類を投げ捨て、ごみ箱を蹴飛ばし、部屋の中は物が散乱する。
 昨夜の失敗に苛立っていたのに、逆撫でされたからには致し方ない。

 そうして一通り怒りをぶつけて冷静になり掛けたその時、側近が飛び込んで来た。

『た、大変です!』

『安保だろ? そんな事より、出港した艦隊はいつ独島に着くんだ!!』

『そんな事を言っている場合はありません! これを見てください!!』

 門大統領の怒りの声を、より大きな声で遮った側近は、ノートパソコンを開くのであった。
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