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第二十五章 アメリカ大陸編其の四
718 手記の解読にゃ~
しおりを挟む「ノルンちゃんだよ~!」
わしがトボトボとピラミッドから出て、キャットハウスで休んでいるリータ達と合流したら、ノルンは元気よく自己紹介。すると、リータとメイバイが眠気眼をこすりながら体を起こした。
「ノルンちゃんって……外に連れ出していいのですか?」
「にゃんかこれがスペシャルプレゼントだったんにゃ……」
「ノンノンノン。これじゃなくて、ノルンちゃんだよ」
「ノルンちゃんって何を食べるニャー?」
「イチゴみっちゅなんだよ」
「それは設定って言ってたにゃろ~」
メイバイの質問にノルンがボケるので、わしは元気なくツッコミ。また面倒臭いやり取りをしなくてはいけないかと思ったが、ノルンは命に関わる事なので教えてくれる。
「毎日魔力をくれたらいいんだよ。動かなくなっていたら魔力を節約するスリープモードだから、すぐに補給してくれたらいいんだよ」
「ふ~ん……魔力をやらなければ、ずっと寝てるんにゃ……」
「ネグレクトは重罪なんだよ!」
ノルンがわしの考えを読んで頭をポコポコして来るので、リータとメイバイが超怖い。
「シラタマさ~ん?」
「シラタマ殿~?」
「ちゃんとお世話しにゃす! でも、リータ達にも手伝って欲しいにゃ~」
高々ゴーレムの育児放棄を二人が怒っていたので、わしはスリスリごまスリ。いちおう二人も手伝ってくれるようだが魔力をやればいいだけなので、手伝いは必要ないかもしれない。
「これでいいにゃ?」
「いただくんだよ~」
とりあえず、ノルンにエサやり。説明通りわしが人差し指に魔力を集めたら、ノルンはしがみついてムチャクチャするのでこちょばい。
「なんだかいやらしいですね」
「ベロベロ舐めてるニャー」
「かみやがったにゃ!?」
ノルンは魔力を吸っていると思われるが、わしには嫌がらせしてるとしか思えない。こんなの人前でやったら、わしがやらせているみたいで世間体が悪すぎる。
「ゲッフ~。くったくっただよ~」
魔力を吸い終わると、ノルンはげっぷを吐きながらテーブルの上で横たわるので、わしは注意する。
「もうちょっとマナーよくできにゃい?」
「それはシラタマの行動しだいなんだよ。ノルンちゃんのマスターであるシラタマの行動を見て育つように作られているんだよ」
「わしはそんにゃ下品なことしにゃいから、よく見ておけにゃ~」
もう朝方と言う事もあり、皆のディナーはとっくに済んでいたのでわしだけ夜食か朝食かわからない食事。いちおう皆とも食べていたのだが、動き疲れたので丸々一食分は食べてしまった。
これでわしは大満足。ダイニングの端に移動して横になる。
「ゲッフ~。くったくったにゃ~」
「シラタマさん……ノルンちゃんそっくりですよ?」
「これ、シラタマ殿のせいでノルンちゃんのマナーが悪いんじゃないかニャー?」
「ち、違うにゃ! 初期設定が悪いんにゃ!!」
「初期設定は、記念館内部で見たシラタマなんだよ」
「そうにゃの!?」
ノルン曰く、もうすでにわしをトレースしていて変更は不可らしい。なのでお風呂で揉み洗いされるのもマネされ、ゴロゴロ喉を鳴らすのもマネされ、寝言もマネされてうっとうしいわしであった。
「おそようにゃ~」
「おそようだよ~」
昨日は朝方まで働いたので、昼過ぎまでの睡眠を許されたわしはノルンと一緒にキャットハウスを出て、作業中のリータ達に声を掛けた。
「面白い記述は見付かったかにゃ?」
「はい。やはり『裏手記』が抜けていたページと合致しましたよ」
「白象教も出て来たニャー」
「お~。これで完全版が作れるにゃ~」
「それがそうとも言えないんです」
「にゃ~?」
「時々、単語が抜けてるんだよニャー。ここなんだけど……」
「にゃににゃにゃ?」
メイバイに裏手記に書かれている一文を見せてもらったら、わしはその部分を読んでみる。
「スサノオノミコトから授かった機械時計で作ったとにゃってるけど……どこに抜けてる箇所があるにゃ?」
「「えっ!?」」
二人は驚きながら裏手記に目を通しているが、わしは驚きの理由がわからない。
「スサノオ様なんて書いてませんよね?」
「うんニャー。時計も書いてないニャー」
「書いてるにゃ~。わし、嘘つかないにゃ~」
「じゃあ、ここはどうですか?」
「それもスサノオにゃ」
「ここはどうニャー?」
「それはイザナギノミコトにゃ」
リータとメイバイが矢継ぎ早に質問して、わしが間髪入れずに答える事で、お互い文字が読める事と読めない事は事実だと受け取った。
「読めない所は神様とオーパーツみたいにゃし、つまりこれは、スサノオが邪魔しているみたいだにゃ」
「どうしてそんなことをしているのでしょうね」
「わしも口止めされてるから、それと一緒にゃろ。スサノオのことで、上手く説明できないことがあったにゃろ?」
「あ~。何度もどもっていてわかりにくかったニャー。でも、なんでシラタマ殿は読めるんだろうニャー?」
「さあにゃ~? スサノオも知ってるし、スサノオから時の賢者の説明を受けたからかにゃ~?? 同郷の転生者ってのも原因かもしれないし、べティにも読ませてみようにゃ」
とりあえず話を区切ったら、わしだけ遅いランチの開始。コリスも食べたそうにしていたので一緒にランチ。リータ達の手記の話を聞きながらモグモグしていたら、イサベレがわしが楽しみに残していた皿を奪った。
「にゃに~? それ、最後に食べようとしてたんにゃけど~」
「私にも日本語教えて。じゃないとわからない」
どうやらイサベレは、読みたくてもリータとメイバイが読み上げる物しか聞けないので日本語を教えて欲しいようだ。
「それにゃら、猫の街に学校があるから通えにゃ~」
「いますぐ読みたい」
「一朝一夕で読めるわけないにゃろ~。返してくれにゃ~」
イサベレが聞き分けが悪いので、わしの頭の上で寝転んでいるノルンを鷲掴みにして助けを求める。
「ノルンちゃんって、英語で喋ってるよにゃ? 日本語はできないにゃ?」
「ノルンちゃんはバイリンガルだから朝飯前なんだよ」
「お~。じゃあ、文字も読めるのかにゃ~? 出来るにゃら、イサベレに読み聞かせしてあげてにゃ~」
「お安いご用なんだよ!」
ノルンを頼ってみたら、全てが解決。イサベレに読み聞かせが出来るし、ノルンも押し付けられる。これでわしが楽しみに取っておいたお肉が食べられると思ったら、イサベレの手の先には皿しか残っていなかった……
「コリス! にゃんで食べるんにゃ~」
「だって、めのまえにあったから食べてもいいのかと……」
「コリスはしょうがないにゃ~」
「ホロッホロッ」
イサベレが皿を持って行った場所が悪かっただけなので、コリスを怒るのは筋違いだ。なので、コリスは撫でておいた。
「コリスの席はアソコで、お皿に届かないんだよ。シラタマはそんなこともわからないアホなんだよ」
ノルンが真実を語ってくれても無視。コリスはちょっと歩いた所で肉が目の前に来たから反射的に食べただけだから、怒るに怒れない。コリスは肉を狙って移動したわけではないのだ~!!
皆からチョロイ的なことを言われながらランチを追加してコリスと食べ終えたら、わしはその辺にハンモックを作ってゴロン。横になったまま、ノルン取り扱い説明書や禁書に目を通してみる。
取り扱い説明書は、ノルンちゃんの整備の仕方か……どっかに性格が良くなる方法が書いてあればいいんじゃが、魔法陣だらけで読むのが面倒じゃ。それに本自体が小さいから読みづらい。
よく読んでおけとは言われたけど、本人から聞けるし、帰ってから専門家に見せよっと。
ま、ノルンちゃんのことはこれでいいや。禁書に目を通してみよう。……ふむふむ、次元船の取り扱い説明書か……ノルンが使っていた言葉が片仮名で書いておるな。
でもこれって、原本はどこにあるんじゃろ? UFOの中にあったのかな??
それで途中からは~……手記か? いや、愚痴?? うわっ……王様や宗教家をめちゃくちゃ罵っておる。そんな酷い目にあっていたんじゃ……
いやいや、懺悔してるページもある。なんじゃこの本? 説明書以外は支離滅裂じゃ。丸々1ページ「呪う」って書いてるページもあるし……
あ、一ヶ所だけスサノオって書いてる。これ、スサノオに対して言ってたの? あの二人に何があったんじゃろう……
禁書をペラペラと捲って斜め読みしていたらわしはすぐに眠っていたらしく、気付いたら3時のおやつの時間。
お菓子を並べたら、リータ達にも進捗状況を聞いてみる。
「どれぐらい進んでいるにゃ?」
「一巻が長いのでまったくです」
「二人じゃお手上げニャー」
「イサベレはどうにゃ?」
「一巻を聞くだけで一日が終わりそう」
「じゃあ、続きは猫の国に帰ってからしようかにゃ~? モグモグ」
わしがモグモグしなから方針を決めると、皆もモグモグ賛成。頭を使う作業をしていたから、脳が疲れているようだ。コリスとオニヒメはいつも通り。
わしはモグモグしながら、禁書を斜め読み。すると、リータに取り上げられた。今回は食べ物ではないので好きにさせてあげていたら、リータは禁書をペラペラ捲っては首を傾げている。
「愚痴ばっかにゃろ?」
「愚痴ですか? ずっと真っ白なんですけど……」
「にゃ~? 最初は説明書になってるんにゃけど」
リータだけでなく、誰が読んでも真っ白と言うので、ノルンにも質問してみる。
「ノルンちゃんは読めるにゃ?」
「説明書しか書いてないんだよ」
「そこは読めるんにゃ……てことは、どういうことなんにゃろ??」
また新たな謎が生まれたのでノルンに裏手記も読ませてみたら、リータ達と同じ所しか読めないとの事なので、ゴーレムにも禁止事項が適用されていると思われる。
説明書が読めるのは、ノルンの頭の中にすでにインプットされているからだと思われるが、確証は得られなかった。
「あ、そうにゃ。時の賢者の装備品の確認が終わってなかったにゃ~」
時の賢者の装備は皆に渡してしまうとわしの見てないところで確認されそうだったので昨日は出さなかったから、さっそくイサベレにフル装備させて見た。
「お~。フォログラムの時の賢者みたいにゃ~。魔法撃ってにゃ~」
適当に褒めたらイサベレはご満悦。杖に付いた攻撃魔法の魔法陣を使ったり、靴に付いた魔法陣で素早く走ったりするイサベレを見ながら、わし達はやんややんやと盛り上がるのであった。
そして翌日……
「さてと……あとは南を見てから帰ろっかにゃ~?」
「「「「「にゃ~~~!」」」」」
わしの案に、皆は力強く返してくれる。
「それじゃあ、出発進行にゃ~!」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
こうしてわしたち猫パーティを乗せた戦闘機は離陸し、時の賢者が作った白いピラミッドをあとにして、アメリカ大陸の最南端に向けて飛び立ったのであった……
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