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第二十五章 アメリカ大陸編其の四

700 白いピラミッドに登るにゃ~

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 我輩は猫又である。名前はシラタマだ。アマゾンにピラミッドは無い……

「にゃんでアマゾンにピラミッドがあるんにゃ~~~!!」

 はずなのに、鬱蒼うっそうとした森の中に、真っ白な三角錐のピラミッドが姿を現したのでわしは叫んでしまった。

「もう近付かないほうがいい」
「にゃ? うんにゃ……」

 アマゾンの中に白いピラミッドがあるので驚いていたわしであったが、イサベレの注意を受けたので、少し戻ってから戦闘機をホバーリング。
 そこで高度を上げると皆にも双眼鏡を回して、ピラミッドを見ながらわしは愚痴る。

「あんニャロ~……アマゾンでにゃにしてるんにゃ」
「あ……ひょっとして、あのピラミッドは時の賢者様が作ったのですか?」

 わしの愚痴を聞いていたリータは正解を述べたので、ここで発表。

「そうにゃ。あそこがおそらく、石の聖地『アラシャ』にゃ。時の賢者が来いと言っていた場所にゃ~」

 わしの発表に、皆は息を飲む。コリスは寝起きで頭が回っていない。

「まぁ目的地には着いたんにゃけど……さっきの攻撃はにゃんだったんにゃろ?」

 わしの問いに誰もわからないとの事なので着陸する流れとなり、大事を取ってもう少し離れた場所に移動。
 アマゾンの中に着陸するのは変な虫や寄生虫が怖いので、発見した小高い岩場に着陸した。

「もう夕方にゃし、ピラミッドは明日行こうにゃ~」

 すぐにでも行きたいところだが、何が攻撃して来たのかわからないのでは進みようがない。岩場を整地し、キャットハウスに入って夕食にしてしまう。

「あそこに何があるのでしょうね」
「船があるとかどうとか言っていたけどにゃ~……なんだか時の賢者のイメージが思っていたのと違うからにゃ~」
「ガッカリする可能性が高そうニャー」

 明日の事を思うとウキウキしたいところだが、これまでの時の賢者が残念すぎていまいち盛り上がらない。リータとメイバイもたいした物は無いと受け取っていた。

「時の賢者様の私物でも残っていたらお宝。いらないなら欲しい」

 そんな中、イサベレだけは興奮してる。東の国では知らない人のいない有名人なのだから当然の反応だろう。

「しょうもない物だったらにゃ。価値があるにゃら、応相談にゃ~」
「ケチ……体で払うから~」
「それ、イサベレにしかメリットないんにゃからやめてくれにゃ~。脱ぐにゃ!」

 イサベレに真顔で誘われても色っぽくもなんとも感じない。脱いだところで、いつもお風呂で見ているから息子さんも反応しない。

「このままお風呂に入ろうにゃ~」

 リータとメイバイも対抗して脱ぎ出したので、もうお風呂。ぶっちゃけ裸で迫られたら反応してしまいそうなんじゃもん。
 お風呂で裸なら、自然なモノ。わしはいつも通り揉み洗いされ、バススポンジになって皆が体を洗う。バススポンジにされると皆の柔らかい部分が、ガガガ……

 なんとかかんとか反応せずに乗り切ったら晩酌。ほどほどで布団に横になると、明日の事を話しながら眠りに就くのであった。


 そして翌日……

 朝食に着替えを済ませ、全員長靴を履いて猫耳マントを羽織ったら、キャットハウスを出る。

「もしも、ちょっとでも痒みや痛みがあったらすぐに言うんにゃよ~?」
「「「「「はいにゃ~」」」」」

 重装備は疫病対策。白い巨象製の装備なら、上から虫に刺される事はない。もしも服の中に入り込んでも、すぐに寄生虫でも殺せる【ノミコロース】を掛けたら健康は保たれるはずだ。

「それじゃあ、ピラミッドに向けて出発進行にゃ~!」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」

 こうしてわしたち猫パーティは、元気よく出発したのであった。


 先頭を走るのは、わしとリータ。その後ろにイサベレ。もしも何か攻撃が来たらイサベレの指示を聞いて、リータの大盾かわしが対応する。
 真ん中のメイバイに続いて、最後尾にオニヒメを乗せたコリス。後ろからの攻撃は無いだろうが、いつも通りの配置だ。

 アマゾンをけっこうな速度で走ると上からヒルが降って来るかもしれないので、わしが風魔法をバリアのように使っている。だから前方と上は大丈夫。
 水辺や沼がある場合は、ジャンプしたり木の枝を伝ったりして乗り越え、ピラミッドにかなり近付いた頃にイサベレからストップが掛かった。

「たぶん、この辺りで攻撃を受けたと思う」
「そんじゃあ歩きに変えるにゃ。リータはいちおう盾を構えておいてにゃ」
「はいにゃ~」

 リータが大盾を手に持つと、わしを先頭に歩く。わしなら黙視で避けられるし、仮に当たったとしても死にはしない。
 そうして草木を掻き分けて進み、イサベレに何度も危険の有無を確認する。

「とっくに攻撃範囲内だよにゃ~?」
「ん。でも、昨日みたいな感じはない」
「撃った奴は、たまたま通り掛かった獣なのかにゃ~?」
「どうだろう……」

 ぺちゃくちゃと喋りながらも緊張を持って進んでいたら、ついに森が切れた。

「「「「「うわぁぁ~~~」」」」」

 真っ白なピラミッドが姿を現し、その荘厳な佇そうごんなたたずまいにリータ達は感嘆の声を出す。

 デッカ……これ、クフ王のピラミッドより大きくないか? せめて歴史を超えるなよな~。

 わしはと言うと、グチグチ文句。ピラミッドは高さが200メートルぐらいあるので、キャットタワーの高さランキングがまたひとつ下がってしまったから文句も言いたくなるってものだ。

「とりあえず登ってみようにゃ~」

 ピラミッドと言えば、登る物。いちおう警戒しながら進み、真っ白な地面をわしが踏んだところで異変が。

 ガラガラドッシャーン!!

 まるで山積みした皿でも割れたかのような大きな音がしたので、わしの体はビクッと跳ねた。皆も突然の事で面食らっているようだ。

「ビックリしたにゃ~」
「本当ニャー」
「なんの音だったのでしょう?」
「さあにゃ~? イサベレはにゃにか感じなかったにゃ?」
「ぜんぜん」

 メイバイもリータも音の正体はわからず、イサベレの危険察知にも何も反応がないみたいなのでもう一歩進んでみると、また変な音が。

 にゃ~~~ん♪

「いまのシラタマ殿ニャー?」
「こんな時にまたふざけて~」
「わしじゃないにゃ~」
「じゃあ、誰ニャー?」
「知らないにゃ~」

 本当にわしじゃないのに皆は信じてくれないので、もう一歩……

 ガラガラドッシャーン!!

 また皿が割れる音が鳴った。

「これ、ピラミッドから聞こえてにゃい?」
「かもしれません」
「ちょっと戻ってみるにゃ~」

 わしが後ろ向きで一歩下がると猫の鳴き声が聞こえ、もう一歩下がると皿が割れる音。これで一旦、白い地面から離れる。

「リータ。盾を構えたまま、三歩進んでみてにゃ」
「はい」

 リータに行って来いせたらさっきの音が連続で鳴り、戻って来たら話し合う。

「にゃ~? わしじゃなかったにゃろ~??」
「そんなことより、あの音はなんの音なのでしょうね」
「さっきわしのせいにしたんにゃから謝ってにゃ~」
「ごめんごめんニャー。これでいいニャー」

 誠意ある謝罪ではなかったが、これ以上何か言うとモフられそうなので、真面目に話す。

「ひょっとしたら、獣避けの音かもしれないにゃ。最初の音にゃらビックリして逃げるかもにゃ」
「「「「「猫の鳴き声は??」」」」」
「知らないにゃ~~~」

 時の賢者の趣味なんてわしにはわからない。しかし、うるさい以外の危険は無いようなので、隊列を組んで先に進んでしまう。

「「「「「プッ……ププププ」」」」」
「にゃんで笑ってるにゃ!?」

 緊張と緩和。うるさい音と猫の鳴き声が交互に来るので、皆は何かツボに入ったみたいで笑う。たぶん、猫の鳴き声の度にわしの顔が浮かぶのだろう。
 しだいに大きくなる皆の笑い声を聞きながら、前進するわしであったとさ。


 変な防犯装置のせいで、皆の緊張感はどこへその。ピラミッドまで残り半分の地点まで進んだら、ようやく猫の鳴き声とうるさい音は消えたが、また変な音が鳴り出した。

 ビービービービー!!

 今度は機械音が鳴り響き、それに続いて女性に近い声のアナウンスが英語と日本語で交互に聞こえて来た。

『警告、警告。それ以上進んだ場合、攻撃します。即刻立ち去るように』

 そのアナウンスに、わし達は止まって考える。

「来いと言ったのは向こうにゃのに、にゃんで攻撃して来るのかにゃ~?」
「なんででしょうね。でも、どうします?」
「う~ん……どんにゃ攻撃するか見てから考えるにゃ。ちょっと下がっておいてにゃ」

 リータ達がニャンニャンゾーンなるついさっき名付けた場所まで下がるのを確認したら、わしは刀を抜いて歩を進める。

『警告を無視したわね! ここで消えてなくなれ~!!』

 すると、何故かアナウンスはぶちギレ。わしはツッコミたかったが、正面のピラミッドの一部がパカッと開いて何か飛び出したので、対応せざるを得ない。

 エネルギー波? いや、わしの【御雷みかずち】に色が似てる……

 わしはコンマ数秒の世界で分析し、【吸収魔法・球】と【猫撫での剣】の合わせ技。
 雷のようなエネルギー波は【吸収魔法・球】で弱められ、【猫撫での剣】で斬って霧散。全て吸収魔法で吸い取ってやった。

 たぶん雷じゃと思うけど、痺れは無かったな。さすが神剣。これならリータの盾でもなんとかなりそうじゃ。

『警告を無視したわね! ここで消えて無くなれ~~~!!』

 一発目の攻撃を分析していたら、アナウンスはまた同じ口上。それからまた雷が飛んで来たので掻き消し、リータ達に当たらないように前進していたら、アナウンスも攻撃も止まった。
 なのでリータ達の元へと、アナウンスを聞きつつ攻撃も掻き消しながら戻るわしであった。


「ただいまにゃ~」

 わしがニャンニャンゾーンまで戻ると、リータ達が先程のやり取りを聞いて来る。

「なんだか女の人、すっごく怒ってませんでした?」
「ああ。アレはあらかじめ決められたことしか言わないから、怒っているわけではないにゃ」
「決められたことですか??」
「ずっと同じことしか言わなかったにゃろ? また向こうに行ったら同じことしか言わないにゃ」
「じゃあ、このまま進むニャー?」
「うんにゃ。リータの盾にゃら防げるから、真っ直ぐ行こうにゃ」

 リータに大盾を構えさせたら前進。警告のアナウンスを無視して進めばぶちギレのアナウンスに変わる。【吸収魔法・球】を大きく展開しておけば、大盾を構えたリータも痺れなく雷攻撃を受けられるので、楽々突破したのであった。

「たぶん、戦闘機で受けた攻撃はさっきのだったんだろうにゃ~」
「ん。あんな感じだった。でも、なんで撃って来たんだろ?」
「こんにゃ罠を用意してたから、空からの接近はダメってことだったのかにゃ~?」

 イサベレとこの施設について喋っていたら、ピラミッドに到着。2メートルはある段差の塊を触りながら喋る。

「やっぱこれって白魔鉱みたいだにゃ」
「この足元までもって……凄い量ですね」
「何も見付からなくても、これを売ったら大金持ちニャー!」
「ま、最悪切り売りしてやろうかにゃ?」
「それは酷い。ここも遺跡として残すべき」

 時の賢者の遺跡より、金に目がくらんでしまったのでイサベレに怒られてしまった。まぁ観光業でお金が取れるかもと考え、ピラミッド登山に取り掛かる。
 少し段差が大きいが、わしたち猫パーティに掛かれば楽勝。ピョンピョン飛び跳ねて登り、頂上に到着した。

「見張らしはいいけど、船らしき物はどこにあるんにゃろ?」

 皆でキョロキョロと辺りを確認していたら、リータがわしの頭をわしゃわしゃして来た。

「シラタマさん……」
「にゃに~? 毛並みが乱れるんにゃけど~?」
「アレって階段じゃないですか?」

 リータが指差す場所には、なだらかな階段。一番下には、真っ直ぐ伸びた道のような物もある。

「ひょっとしてわし達って……登る場所、間違えたかにゃ?」
「ですね……」
「だろうニャー……」

 超残念なミス。西から行かず東から行けば、防犯装置は作動しなかったのではないかと反省するわし達であったとさ。
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