上 下
695 / 755
第二十四章 アメリカ大陸編其の三 南米で遺跡発掘にゃ~

685 巨人の群れにゃ~

しおりを挟む

 黒スカンクを倒してにおいチェックも終わったら、リータ達はめちゃくちゃ褒めてくれたので、わしも鼻高々。ただ、黒スカンクを次元倉庫に入れようと近付いたら、またにおいチェックをされてしまった。

 元々風魔法で風上を作っていたからくさくないですよ? 刀で斬ったから、肉球もくさくないと思いますよ? なんかリラックスするのですか……イサベレはどこのにおいを嗅いでるんじゃ!

 リータ達を宥めていたら、イサベレがお尻辺りに顔を近付けていたのでさっさと撤収。強い獣を探さないのかと言ったら、わしを置いて走り出してしまった。
 わしも遅れまいと走り出して追い付いたと思ったら、猫パーティ全員コリスに拘束されてモフモフ言っていた。どうやらランチの時間だからコリスに止められたようだ。

 楽しくお弁当を食べたら、また爆走。黒い獣や白い獣をリータ達が蹴散らしてわしが回収して進んでいたら、白い木が増えて来た。
 さらに進むと真っ白な空間に。どうやら白い木の群生地に入ったようだ。なので、一旦外へ出て話し合う。

「イサベレさん。どんな感じですか?」
「私達じゃ敵わない強いのが一匹いる。けっこう強いのも三匹。あと、数も多い。30以上」
「主の領域に群れですか……珍しいですね。オニヒメちゃんは何か意見ある?」
「パパから習った探知魔法を使ってみたけど……」
「どうかしたの?」
「人間みたい。おっきいのも人間みたいなの」
「人間……集落でしょうか……」

 皆の話し合いを聞きながら、わしはその時を待つ。

「では、もしも人間だった場合は、シラタマさんの指示に従うってことで……行きましょう!」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
「わしにも意見を聞いてくれにゃ~~~!!」

 今度こそ作戦会議に入れると思っていたわしは、皆の道を塞いで止めた。

「なんですか?」
「やっと聞いてくれたにゃ~。嬉しいにゃ~」
「ふざけてないで早く言ってニャー」

 わしが仲間に入れてもらえたと喜んでいたら、リータとメイバイに冷たい目を向けられたので慌てて話し始める。

「まずはオニヒメ……探知魔法、もう覚えていたんだにゃ~。偉いにゃ~。探索に関してはわしを超えたんじゃないかにゃ~?」
「パパ……」
「では、行きましょう!」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
「にゃ……」

 どうやら褒め言葉は、いまはいらなかったようだ。なので空気の読めないわしを置いて、皆は白い木の群生地に入って行くのであったとさ。


 ブツブツわしの悪口を言うリータ達のあとに、わしは続く。

 でも「空気を読まない猫王」略して「KYニャー」って、よくその略し方、思い付きましたね。元の世界でも空気の読めない人はKYって言われていたんですよ。
 あ、興味ないのですか。でも、もうちょっと興味を持って欲しいな~? いまは忙しいのですか。そうですか。

 わしだけぺちゃくちゃ喋っていたら睨まれたので、お口チャック。それと同時にイサベレとオニヒメが同時に上方を見たので、全員の視線が集中した。

「人みたいですけど……モフモフですね」

 そこには、両手両足が長い毛むくじゃらの黒い生き物が木にぶら下がっていたので、リータ達はモフモフに反応している。

「アレは猿じゃにゃい? 尻尾も長いにゃ~」

 モフモフに興味のないわしが答えを言うと、何やら悩み出した。

「ウサギ族やオオカミ族みたいなものでしょうか?」
「もしも人間だったら戦いにくいニャー」

 どうやら立って歩くモフモフを多く見たせいで、リータとメイバイは猿との戦闘は躊躇ためらってしまっているようなので、わしは違う案を出す。

「じゃあ、迂回して進もうにゃ。無理して戦う必要ないにゃ~」
「あれは猿。あれは猿……」
「猿は人間じゃないニャ。人間じゃないニャ」
「無理するなと言ってるんにゃ~」
「ギャアァ~~~!」

 そこまでして戦って欲しくないわしが止めていたら、猿が奇声を発しながら飛び下り、先頭に居たリータに襲い掛かって来た。

「あ……やってしまいました……」

 しかしリータは後の先で一撃必殺。飛び掛かって来た猿をひょいっと避けて顔面を上から殴り、地面に叩き付けて殺してしまった。

「うっ……どどど、どうしましょう!? もしも人間だったら……」
「リータは殺人を犯したことになるニャー!」
「あわわわわ」
「落ち着けにゃ~。あんにゃに殺気ムンムンで襲って来たんにゃから、リータのせいじゃないにゃ。それにこれは猿にゃ。一般的にゃ猿より手足が長いから、クモザルと命名するにゃ。にゃ~? ただの狩りにゃ~」

 リータとメイバイがあまりにも取り乱しているので、わしは勝手に命名。この時わしは適当に付けたので、メキシコに棲息する猿の名前と同じだった事に気付けない。
 わしの命名で少しは二人が落ち着いて来た頃、また二匹の黒クモザルが樹上に現れて、大声で騒ぎ散らした。

「こりゃマズイにゃ。仲間を呼んでるにゃ。逃げるか戦うか、いますぐ決めろにゃ!」

 わしの言葉に、皆は目配せして頷き合う。

「「「「「やるにゃ~!」」」」」
「あ、やるんにゃ」

 さすがに逃げるかと思っていたけど、リータ達はやる気満々。士気も上がったのはいい事だと思うが、わしは予想が外れて少しテンションダウン。

「来た!!」

 イサベレが声を出した数秒後、巨大な黒クモザルの群れが樹上や地面にずらっと並んだ。

「じゃ、わしはフォローに回るから、好きにやっちゃってにゃ~」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」

 黒クモザルもやる気満々で威嚇しているので、わしからの指示で各々動く。

 リータとコリスが前に出て黒クモザルの注意を引くと、二人に一斉に襲い掛かって来た。しかし二人の敵ではないので、先頭から順番に気功パンチで弾き返す。
 イサベレとメイバイは空中戦。イサベレは空気の足場を踏んで、空中に浮いている黒クモザルを細身の刀で斬り捨てる。メイバイは木を蹴って行ったり来たりしながら、小刀二刀流で空中のクモザルを斬り刻む。
 オニヒメは風魔法で対応。皆の手が間に合わない黒クモザルに向けての【鎌鼬】。正確に射貫き、皆を援護する。

 わしはと言うと、暇なもの。と、言いたいところだが、黒クモザルが援軍を呼んだようで、探知魔法には大きなクモザルが近付いていたから、戦闘空間を走り抜けた。

 白が三匹……10メートルから20メートルってところか。単体ならリータ達でもなんとかなりそうじゃけど、その後ろに50メートル近いクモザルが木を薙ぎ倒して近付いて来てるんじゃよな~。
 どうしたもんか……

 目の前の白クモザル三匹は、とりあえず【風玉】で牽制。三匹とも惹き付けてわしは相手取る。
 地上で踏み付けや拳をかわし、空中では牙や爪をかわす。わしに掛かれば、避けてカウンターは余裕なのだが、リータ達の戦闘に目を移した。

 あんだけ殺す事を躊躇っていたわりには、容赦ないな。もう殲滅してしまいそうじゃ。
 悩んで三匹とも残すとリータ達に不利になりそうじゃし、ここは真ん中のヤツだけ処理しておくか。

 わしは白クモザル三匹の猛攻を嘲笑うように避け続け、15メートル近くある白クモザルを一撃で倒せるタイミングを合わせる。

 そして空中で、わしは逆さのまま刀を抜いた。

 その直後、白クモザルは飛び移った木にぶら下がった状態で頭をポトリと落とすのであった。

 さてと……リータ達のほうも終わりそうじゃし、わしは主に向かおうとするかのう。

 二匹の白クモザルが、頭を無くして木にぶら下がっている仲間に目を向けている内に、わしは消えるのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 一方、リータ達は黒クモザルの群れを殲滅したら、集合して一塊になっていた。

「シラタマさんは……居ませんね」
「ダーリンは主に向かった」

 リータがシラタマを探すとイサベレが補足してくれたので、作戦会議に移る。

「シラタマさんが一匹倒したみたいですけど、どう思います?」
「私としては、全部残して欲しかったニャー」
「どうだろう? 三匹相手はきつかったかも??」
「ん。戦力が分散されるから厳しかった」

 リータとメイバイは数が減って残念そうにしているが、オニヒメとイサベレは相手の力量からちょうどいいと判断している。

「さすがシラタマさんということですか……」
「あんなにふざけていたのに、やっぱりやる時はやる猫ニャー」
「まぁ過保護な感じはしますけどね」
「ん。死力を尽くせば勝てたと思う」

 リータとメイバイがシラタマについて喋っていたり、イサベレも怖い事を言っていると、頭の無い白クモザルが力尽きて地面にドンッと落ちた。

「あ、こっち見たニャー」
「では、私とメイバイさんで、小さいほうを相手します。イサベレさん達は、防御重視でお願いします」
「チャンスがあれば一気に決めるけど、いい?」
「頼もしいですね。でも、そう上手くいかないと思いますから気を付けてくださいね」
「ん。わかった」

 作戦が決まると、皆は頷き合って声をあげる。

「行きますよ!」
「「「「にゃっ!!」」」」

 こうしてリータとメイバイは白クモザル小に向かい、イサベレとコリスとオニヒメは白クモザル大に向かうのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 その頃わしは、「ドーン、ドーン」と木が倒れる音の方向に走り、巨大な白クモザルが目に入った瞬間に木の頂上に飛び乗った。

 おお~……巨人じゃ。あそこまでデカイ猿が二足歩行していたら、もう巨人にしか見えんな。木を薙ぎ倒して進撃しておるし……
 てか、自分の住み処なんじゃから、自然破壊するなよ。酷いことしやがる。いつもどうやって移動しておるんじゃ? あ、たまに横向きになって通っておる。
 いちおう最小限の被害で押さえているつもりか……じゃ、わしも手伝ってやるかのう。

「【大風玉乱舞】にゃ~~~!!」

 ひとつが20メートルはある風の玉を数十個作ったら、一発目を発射。ボスクモザルは横に避けて住み処を壊すのを嫌ったのか、ヒット。と言うよりキャッチ。
 しかしわしは気にせず、ガンガン発射してボスクモザルにぶつければ、一発では動かせなかったボスクモザルは後退。その圧力は【大風玉】が増えれば増えるだけ大きくなり、ボスクモザルは電車道を作るのであった。

 あ……わしも自然破壊しておる。ごめんねごめんね~。

 ボスクモザルより多くの木を薙ぎ倒した事を若干反省しながら、わしはボスクモザルを追いかけるのであったとさ。
しおりを挟む
感想 962

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

婚約破棄は誰が為の

瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。 宣言した王太子は気付いていなかった。 この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを…… 10話程度の予定。1話約千文字です 10/9日HOTランキング5位 10/10HOTランキング1位になりました! ありがとうございます!!

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...