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第二十四章 アメリカ大陸編其の三 南米で遺跡発掘にゃ~

682 惰眠好きも考えものにゃ~

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 猫の島で楽しく遊んだら、皆は三ツ鳥居から直帰。玉藻は日ノ本へ帰る予定みたいなので、そのまま猫の国について来た。
 キャットタワーに帰ってからは、わしは猫の島リーゾート計画を考えなくてはいけないので、玉藻の相手なんてしてやれない。

「また寝ておるのか……暇ならわらわの訓練に付き合ってくれんか?」

 いや、まだ一年も時間があるので、やる気が起きないわしはお昼寝。しかし帰ると思っていた玉藻がわしの首根っこを掴んでソウに爆走するので、訓練に付き合わされてしまった。
 もちろんリータ達も訓練していたのでそれを見ていたが、全員本気でわしに暴力を振るうので、場所を黒い森に変えた。

 だって玉藻に手加減抜きでやられたら、奴隷が全員吹き飛んで仕事にならんのじゃもん。わしらが本気でやったら、暴風が吹き荒れるぐらい気付けよ!!

 そんな訓練をしていたある日の休日、お客が来たと聞いたら徳川家康だったので、お昼寝を邪魔された。
 話を聞くと西の地の旅が終わったから、一度江戸に戻って、台湾を見てから南の地を回るそうだ。

 その事を酒を飲みながら聞いていたら、気付いたらエリザベスキャット号の上。それも日ノ本最高戦力の玉藻、お玉、家康、秀忠の揃い踏み。猫ファミリーに、いつの間にやって来たのかわからないイサベレまで乗ってやがった。
 さらに、ちびっこ天皇とべティも乗っていて、わしの思考が追い付かない。

「にゃんでわしはこんにゃところに居るんにゃ~~~!!」

 なので叫んでみたら、リータが教えてくれた。

 昨夜は玉藻と家康にわしが酒を飲まされている間に、海の調査が決まっていたとのこと。それを双子王女が女王に一報を入れたら、イサベレも参加決定。
 朝まで飲まされたわしがグースカ寝ている内に、べティも参加したいと我が儘を言って、これも決定。
 三ツ鳥居で京に移動したら、家康は電報で秀忠を呼び出し、玉藻はお玉を誘う。その時、ちびっこ天皇の護衛が心配なので、それなら一緒に乗せてしまえとなったそうだ。

「ボクも行く気なかったんだけど……」
「ほれ? 書類なら持って来てやったから、ここで仕事すればいいじゃろう」
「ええぇぇ~」

 どうやらちびっこ天皇は仕事があったが書類仕事だったし、偶然休みが重なっていたから拉致られたっぽい。てっきり仕事はしなくていいのだと思っていたっぽい。
 なので、同じ境遇のわしとちびっこ天皇はブツブツ言いながら、エリザベスキャット号は海を行くのであったとさ。


 今回も白いサンゴ礁の調査だったので、勝手知ったる日ノ本の海。空からのナビも必要なしに、海図を見ながら白イルカを引き連れて進んでいる。
 ちびっこ二人はと言うと、初参加なので馬鹿デカイ船のクルージングが出来て楽しそう。しかし、これまた馬鹿デカイ魚を見て帰りたそう。
 同じく初参戦のお玉も、玉藻に無理矢理戦わされて帰りたそう。でも、慣れて来たら楽しそうに戦っていたので、お玉もバトルジャンキーだったのかもしれない。

 戦闘は基本、玉藻と家康は単独。猫パーティとお玉と秀忠が合同。わしを含めたちびっこ組は見学だ。
 わしが海を凍らせて足場を作る事もあるが、玉藻も海を凍らせる呪術を開発したようなので、わしの出番は少ない。もうほとんど荷物持ちだ。

 白いサンゴ礁の主も弱体化は顕著で、大きくても20メートルの白い巨大魚しかいないから、玉藻と家康は張り合いがなさそう。
 逆にリータ達は自分達にちょうどいいので、パーティをわざと減らしたり組合せを変えたりと、いろいろ試して楽しそうだ。

「うぅぅ……あたしもやりた~い!!」

 恐怖心が和らいだべティは寝ているわしをわしゃわしゃしてこんな事を言うので、わしが付き合う。
 べティをおんぶしたわしがリータの指揮下に入り、走り回って遠距離からの狙撃魔法。白い巨大魚にベティが魔法を撃ち込みまくる。

「さっきのって【ガム弾】とかいう魔法じゃにゃかった?」
「だって何してもダメージが入らないんだも~ん」

 べティはまったく戦力になっていないので、めちゃくちゃに魔法を撃っているだけ。そうこうしてたら白い巨大魚は倒れたので、次に移動。
 航行中にちょうどいい感じの黒い巨大魚が近付いて来たので、白イルカにエリザベスキャット号のプールに乗せてもらって、べティと戦わせてみた。

「喰らえ! 【エクスプロージョン】!!」

 エリザベスキャット号のプールで臨戦態勢だった黒い巨大魚に、べティの得意魔法が炸裂。おもちゃのピストルから飛び出した光の玉は、黒い巨大魚の顔に直撃して爆発を引き起こした。

「フフン。やってやったわ」

 べティはピストルの先から出てもいない煙を吹き消した振りをしてドヤ顔。

「あの~? お魚さん、めっちゃ怒ってるんにゃけど……」

 しかし、黒い巨大魚は水鉄砲を乱射して暴れまくっているので、【光盾】で守ってあげているわしが教えてあげた。

「ま、いまのあたしの力量じゃ、あんなもんよね」
「どうでもいいけど、さっきの魔法って得意魔法じゃにゃいの? 前回より規模は大きかったけどあんまり効いてないにゃ~」
「敵にダメージを与えたら、あとは前衛が処理するからいいのよ!」
「一人で倒せるようになれにゃ~」

 たしかに爆発を引き起こす魔法は、強力な範囲攻撃魔法なので大規模な群れにはちょうどいいかもしれないが、如何せんべティの魔力量では必殺まで持って行けない。
 なので、暴れる黒い巨大魚は、わしの刀でさくっと首を落としてトドメを刺すのであった。

「ところでにゃんだけど、その【エクスプロージョン】って魔法、派手だから使っているわけじゃないよにゃ?」
「ギクッ……」
「もっと実用的にゃ魔法を使えにゃ~」

 わしの予想通り、べティは見た目で使っていたので説教。ネチネチと無駄に魔力消費量が多いだろうと論理的に追い詰めて、べティを泣かせてしまうわしであったとさ。


 べティを泣かせてしまうというトラブルと、べティを泣かせてしまってリータ達に怒られるトラブルはあったが、そのお陰で【エクスプロージョン】なる魔法は封印できたからいい結果だろう。
 べティに普通の風魔法を使わせたほうが黒い巨大魚にダメージがあるし、普通に倒していたし……

「へっへ~ん。どんなもんよ!」
「魔法が上手いんにゃから、最初からそうしろにゃ~」

 鼻高々のべティの鼻っ柱は早目に叩き折るわし。こんなに調子に乗っていて、ハンターとしてよく生きていけたなと説教していたら、べティはリータの後ろに隠れやがった。

「え~ん。おっちゃんがいじめる~」
「誰がおっちゃんにゃ~~~!!」

 魂年齢同年代の者におっちゃん呼ばわりされる筋合いはない。体年齢も一緒なんだから、おっちゃんは失礼だ。

「べティちゃん。シラタマお兄ちゃんは、べティちゃんの為に言ってるんだから、ちょっとは反省しようね~?」

 意外や意外、リータにべティの嘘泣きは通じなくなっていたのはいいことなのだが、べティとわしはいささか納得がいかない。

「だから子供扱いしないでよ~」
「いつからわしはべティのお兄ちゃんになったんにゃ~」

 なんだかべティとからむとわしまで子供扱いされるので極力近付きたくないのだが、皆から面倒見ろと言われて海の調査は続くのであった。


 今回の海の調査は三日も掛からず終了。これだけ主が弱くなっているのなら、今度こそ日ノ本だけでやって欲しいのだが、次の調査が一年後に延びただけ。
 リータ達が快く受けていたので、わしも絶対参加なんだとか。てか、主が弱すぎると面白くないから、休眠期間を作ったらしい……

 今回も舞鶴の港町に寄ってみたが、現猫神あらねこがみのわしは相変わらず居心地が悪い。さらに現人神あらひとがみのちびっこ天皇の登場で、民は「えらいこっちゃえらいこっちゃ」のお祭り騒ぎ。
 ここで宴会をしようと思っていたけど、撤退を余儀無くされて、飛行機で京に移動。鴨川の床でお疲れ様会の開始だ。

 例の如くわしの乾杯の音頭となりそうだったので、ここはちびっこ天皇をよいしょしまくって代わってもらった。

「え~。猫の国の協力もそうだが、日ノ本の海の安寧には、天皇家、徳川家、共に手を取り合うことが不可欠だ。これからも頼んだぞ」
「「「「はっ!」」」」
「では、両家、並びに、猫の国の友好にかんぱいにゃ~!」
「「「「「かんぱいにゃ~!」」」」」

 ちびっこ天皇のせいで皆の語尾に「にゃ」が付いてるが、一気に杯を開けて拍手で始まる宴。
 京の料理人による取れ立てピチピチの巨大魚料理が並び、わし達はほっぺを押さえてモリモリ食べる。あのべティでさえ褒めていたので、京料理はやはり日本の宝だ。

 天皇家、徳川家共に、今回の調査の結果にお互い褒め合って楽しく食べていたのに、イサベレがわし達の次の冒険がいつになるのかと言い出してからは、話が変な方向に行ってしまった。

「そうじゃ。妾はそろそろアメリカに行こうと思っておったんじゃ。ウサギの街から行ったらいいのか?」

 暇人の玉藻はアメリカ行きに興味を示し……

「おお! そんな大陸があるのか。わしも南を見て回ったら、アメリカに行こうかのう」

 同じく家康も、アメリカの話を聞いて次の旅先に決定。

「冒険!? あたしも行く!!」

 当然、そんな面白そうな旅行に行くと知ったべティもうるさいので、わしは止める。

「足手まといにゃ」
「ひどっ!?」

 優しく言ってもべティは止まらないので、冷たくあしらってみたらもっとうるさくなってしまった。

「ほら? 旅先で料理人が居ると美味しい物が食べられるよ??」
「エミリにいっぱい作ってもらってるから、いつでも美味しい物が食べれるにゃ」
「うっ……じゃあ、魔法を使える幼女って、パーティに居たらよくな~い??」
「魔法幼女枠はオニヒメで埋まってるにゃ~」
「ぐっ……じゃあじゃあ、マスコット……」
「ご察しの通り、マスコット枠はわしとコリスが居るから必要ないにゃ」
「なんでそんな変なパーティなのよ~~~!!」

 変なパーティと言われても、わしが居る時点で終わってる。しかしこのおかげでべティの入る隙間がないので、なんとか諦めさせる事に成功したわしであったとさ。

 お疲れ様会は夜も深くなると終了。家康と秀忠は五条城にて一泊してから江戸に帰る。わし達は御所に一泊し、玉藻達に別れの挨拶をしてから猫の国に帰った。

 キャットタワーに戻ると、双子王女からもそろそろ冒険に行けと言われたので、近日中に出発すると言ってお昼寝。その日の夜も、船旅の疲れが出て早くに就寝となった。




 ん、んん~……花畑? あ、夢か。でも、誰かが呼んでいたような……まぁ変な夢だと面倒臭いし寝てしまおう。

 わしは夢の中で目を開けて、奇麗なお花畑の中で寝ていた事に不思議に思ったが、夢と気付いてその中でも寝ようとしたら、誰かにわしゃわしゃされたので文句を言う。

「にゃに~? リータにゃ? メイバイにゃ~??」
「まったく……あなた、猫になってから寝過ぎじゃない?」
「にゃんかこの体になってから妙に眠たいんにゃ~……にゃ?」

 声の主に顔を向けると、そこには幼女が立っていたのでわしは不思議に思う。

「べティ……じゃないにゃ。日ノ本の子にゃ??」
「あ、この姿は初めてだったっけ?」
「初めてにゃ? てことは~……誰にゃ??」
「アハハハハ。わからないのも無理ないわね。こ~んなかわいい子に輪廻転生したもんね。アハハハハ」
「そ、その笑い方は……お前にゃ??」
「ちょっと~。そこは『お前か?』じゃないと、昔の呼び方と違うでしょ。プッ。猫の口じゃ無理かしら。アハハハハ」

 声の主の正体は、元の世界での女房。いつもは若かりし日の姿で夢枕に立っていたので、幼女の姿ではわしも気付くのに遅れてしまったのだ。

「にゃったく……その笑い方は相変わらずだにゃ~」
「あなたこそ、猫が板に付いて……プププ」
「それにしても久し振りだにゃ。元気にしてたにゃ?」
「元気元気。暇な時はあなたの活躍も録画で見てたわよ」
「ああ。アマテラスチャンネルアマチャンネルにゃ。でも、まだ子供にゃから、暇でしょうがないんじゃにゃい?」
「そうでもないのよ。ひとつ上の兄が居ると言ったでしょ? その兄が面白くって面白くって……アハハハハ」
「お前がわし以外でそんにゃに笑うのは珍しいにゃ~。こっちはテレビもラジオも無いんにゃから、エピソードぐらい聞かせてくれにゃ~」

 わしのリクエストに女房は応えてくれるが、途中で大笑いするからオチは面白くない。しかし女房の笑い方は好きだったので、わしも釣られて笑い、楽しい時間が過ぎて行くのであった……





「ふにゃ~……おはようにゃ~」

 次の日の朝、リータとメイバイにいつも通りモフられて目を覚ましたわしは、目を擦りながら挨拶をした。

「昨夜はいい夢でも見ていたのですか?」
「にゃ? にゃんのこと??」
「シラタマ殿は寝てる間、ずっと笑ってたニャー」
「うなされていたら起こそうと思ったんですけどね~」
「楽しそうだったから、その顔を見てたニャー」

 どうやら二人だけでなく、コリスとオニヒメもわしの笑い声がうるさくて目が覚めたそうだ。ただ、わしが本当に楽しそうに笑っていたので起こすのは悪いと思って撫でていたようだ。

「それは悪いことをしたにゃ~。でも、にゃんの夢を見てたか忘れちゃったにゃ~」

 本当は覚えているけど、女房が出て来たなんて言うと角が立つ。言わないほうが身の為だろう。
 それに夢なんて覚えている人のほうが少ない。これぐらいの嘘ならバレないかと思ったが、リータ達にしつこくモフられてわしの一日が始まるのであった。
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