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第二十三章 アメリカ大陸編其のニ アメリカ横断旅行、延長戦にゃ~
672 苦労話にゃ~
しおりを挟む「すっごい音ですね」
「シラタマ殿かニャー?」
空から鳴り響く爆音や雷鳴は、狩りをしていたリータ達の耳にも聞こえていたので、リータとメイバイは空を見上げて喋っていた。
「ん。ダーリン」
「あんな強いのと、よく戦おうと思うよ」
イサベレとオニヒメは危険察知能力があるので、サンダーバードの強さは遠くてもある程度はわかるようだ。
「なんとか見れないですかね?」
「たまに近付いているけど、一瞬でどこかに行くから難しい」
「速すぎて見えないね」
「木の上に登ってみようニャー」
リータの質問にイサベレとオニヒメが答えていたら、メイバイが案を出す。その案に、皆も気になっていたから近くにある一番幹の太い黒い木に集合した。
そこから、オニヒメとコリスの【突風】に乗って頂上へ。各自、枝を握ったり乗ったりして空を見上げる。
「もうこれ、雷にしか見えませんね」
「ほんとニャー。せめて近くで止まってくれたらいいのにニャー」
上空では、シラタマとサンダーバードがひっきりなしに動いているので、雷が行き来しているようにしか見えない。
「サンダーバードに近付かれたら倒れると思う」
「うん。アレは見ることも難しいね。モナカより何倍も強いよ」
「そうですか……ここで倒れたら困りますね」
白銀猫のモナカをひと目見て倒れた事のある猫ファミリーは、あの時の恐怖を思い出してブルッと体を揺らした。
「あ……止まったニャー! 金色ニャ! 金の鳥が居るニャー!!」
「本当です! サンダーバードですよ!!」
運良く皆がギリギリ見える位置にサンダーバードが来たので、リータ達は盛り上がる。
「モフモフ~! がんばれにゃ~!!」
その時、コリスから応援の声があがり、リータ達は頷き合って続く。
「「「「「がんばれにゃ~!!」」」」」
皆の「にゃ~にゃ~」言う応援に応えたのか、上空で動きがあった。
「アレはシラタマさんの【青龍】……」
「全部当たったニャー!」
大きな氷の龍がサンダーバードに迫ったのだ。
「でも、ここまでですね。北に行ってしまいました」
「サンダーバードが見れただけで感動ニャー!」
「ですね。それじゃあ私たちも狩りを再開しましょうか」
こうしてリータ達は興奮覚めやらぬまま地上に下りて、オニヒメの見付けた白い獣に突撃して行くのであった。
* * * * * * * * *
リータ達がサンダーバードを視界に収める少し前……
わしとサンダーバードは空中戦を繰り広げていたが、そろそろ【参鬼猫】が解けそうだ。
「むっ……楽しくなって来たところだ! こんなところで終わりとか言うわけないだろうな!!」
わしが敵意を解いて空中でホバーリングをしていたら、サンダーバードに怒鳴られてしまった。
ちょっと力を見るだけじゃなかったんか~い。もう目的を忘れておるよ。この辺が潮時だと思ったんじゃけどな~。
ま、わしもそろそろ【参鬼猫】が使いこなせそうじゃし、もう少し付き合ってもらおうか。
「ちょっとした休憩にゃ。こ~んにゃ小さいと、疲れてしょうがないにゃ~」
「嘘つけ。お前は我とぶつかる度に動きが鋭くなっている」
「本当にゃ~。だから全力を出し切るから、わしが倒れたら体は治してくれにゃ。お願いにゃ~」
「フンッ。体は治してやるが、その代わりもっと楽しませろよ」
「にゃはは。それは自信ないにゃ~。【青龍乱舞】にゃ~~~!!」
「な、なんだ!?」
【参鬼猫】を掛け直したら、四体の氷の龍を召喚。サンダーバードは見たこともない生物に驚いて動きが遅れ、全てヒット。【青龍】はサンダーバードの体に巻き付いて凍り付かせる。
「ぐっ……うおおぉぉ~~~!!」
しかし、サンダーバードは【青龍】を強引に引きちぎり、ダメージを受けた箇所も一瞬で回復した。
おっと、ナイアガラの滝があんな所に。派手に魔法を使いたいし、海上まで移動しようか。
サンダーバードに追撃を加えようとしたわしであったが、ナイアガラの滝が目に入ったので【大鎌】で牽制しながら北上。あっと言う間にカナダと北極の中間地点にまで移動したら、空中戦の再開。
【参鬼猫】100%の動きに侍攻撃も加われば、二倍の力量差だってなんとか食らい付ける。なんだったら、先の先、後の先を取れるわしのほうが攻撃を入れる回数が多い。
しかし相手は力量差のある化け物。わしの与えたダメージは軽いので、多少の怪我はすぐに治されてしまう。さらにサンダーバードはダメージ覚悟のカウンター。
大きな翼で殴られ、大きな爪で引っ掻かれ、大きなクチバシもそこまで迫る。【吸収魔法・甲冑】によって多少のダメージは軽減されているが、一発でもまともに入れば大ダメージ確実だ。
どの辺に手心を加えているかツッコミたいところだが、ツッコんでいる余裕はない。
足を動かし大魔法を乱発し、なんとか拮抗を保つ。
「【四獣】にゃ~!!」
後の先からの、複数属性の魔法。今回は【玄武】の出番は無し。【朱雀】【青龍】【白虎】【水海豚】が空を舞う。
風の虎がサンダーバードの首を噛んだと同時に氷の龍が脚に絡み付き、水で作られたイルカと火の鳥が背中から突撃。
【水海豚】がサンダーバードとぶつかった瞬間に【朱雀】と科学反応が起こり、大爆発を引き起こした。
「まだまだにゃ! 【レールキャット】にゃ~~~!!」
わしは攻撃の手を緩めない。【御雷】からの突撃だ。
わしの口から発射された雷ビームはサンダーバードを貫くには力不足。
雷の速度を遥かに凌駕するわしの気功ネコパンチは効いているかわからない。
ただし、推進力は過去最大だ。
わしとサンダーバードは、さらに北へと飛び去るのであった……
つう~……痛いの痛いの飛んで行け~。
【レールキャット】は強者に使うには自爆技なので、両前脚の骨が折れていたからわしは急いで回復魔法で治し、サンダーバードを探す。
どこに行った? 下か……てか、ここどこ!?
サンダーバードはわしの最強コンボを受けて墜落していたようだが、海で戦っていたはずなのに、目下には青々とした森が広がっていたのでわしは驚いている。
えっと……【レールキャット】を撃った時、太陽はどっちにあったっけ? たしか体の右側だったような……いまも右にあるってことは、北に向かって撃ったんじゃよな?
てことは~……北極が見当たらないし、アレ、アマゾンじゃね?? ひょっとしてわしって、地球を半周して南半球まで来ちゃった!?
【参鬼猫】からの【レールキャット】の威力にわしがあわあわしていたら、上空から殺気が降って来てゾッとする。
なっ……誰じゃ!?
サンダーバードは下に居るはずなので、他の生き物が参入して来たのかと思って上空を見上げると、そこには翼を大きく広げたサンダーバードが浮いていた。
「さっきのはかなり痛かったぞ! フハハハハ」
サンダーバードさんでしたか。そりゃそうじゃな。でも、痛みで喜ぶって、どんだけマゾなんじゃ。
「今度はこっちの番だ! フハハハハ」
サンダーバードは手加減抜きのバードアタック。翼を閉じて空気抵抗を減らした突撃は、わしの【レールキャット】より速度が出ていると思われる。
そんな攻撃、地面に突き刺さったらどうなるか……
巨大なクレーターは確実。下手したらマントルまで届くかもしれない。火山の大噴火が起きなくても、砂煙が地球を覆って氷河期がやって来そうだ。
「アホにゃの!? 【四獣】にゃ~~~!!」
せめてもの抵抗。【朱雀】【青龍】【白虎】今度は【玄武】を一列に走らせる。サンダーバードのバードアタックで蹴散らされているが、少しでも減速してくれと願い、さらに【レールキャット】で追い討ち。
「喰らえ~~~!!」
「にゃ~~~ご~~~!!」
最後の【玄武】が木っ端微塵に飛び散る中、わしとサンダーバードは超高速の接触。
大気を揺らす大激突となった……
「がはっ!?」
わしが目を覚ますと、そこは森の中。緑が目立つので、アマゾン辺りだと思われる。
はぁ~……地球は守られたか。
わしの倒れている場所はクレーターはあるが、わしの形程度なので、サンダーバードの衝撃はほとんど相殺できたようだ。
しかし、わしの体の骨はぐちゃぐちゃ。最後の記憶では、サンダーバードのクチバシを避けて両目の中央辺りにぶつかったので、この程度の怪我で済んだのだ。
痛いの痛いの……アレ?
わしの回復魔法の発動前に体の痛みが和らいだので上を見たら、サンダーバードがバッサバッサと飛んでいた。
「フハハハハ。約束は守ってやったぞ」
上機嫌じゃな。でも、まだ完全に治ってないんじゃけど~?
サンダーバードは鳥以外を治すのは苦手みたいなので、わしはまだ痛い。なので、自分の回復魔法を使って完全に治したら立ち上がる。
「満足してくれたかにゃ?」
「おう! 最後の激突は、我も死んだかと思ったぞ。フハハハハ」
「よく言うにゃ。どう考えてもわしが生きてることが奇跡にゃ」
「そうでもない。気付いたら地面に横たわっていたなんて、初めての経験だ」
あら? あちらさんも寝ていたのか。どれぐらい寝ていたかわからんけど、太陽の感じだと長くて一時間ってところかな?
「もうわしはくたくたにゃ~。縄張りまで送ってくれにゃ~」
「うむ。背に乗るとよい」
ここから自力で帰るのは面倒なので、頼んでみたら簡単に許可が出た。それだけわしは、サンダーバードに気に入られたのだろう。
サンダーバードが体を屈めてくれたので背中に乗り込もうとしたその時、わしはいい物を発見したのでちょっと待ってもらう。
「木の実なんてどうするのだ?」
「美味しそうだから持ち帰るにゃ~」
「変わった奴だな」
とりあえず、サンダーバードが目を離した隙に風魔法で木を伐採。何本かを一瞬で切って倒れる前に全て次元倉庫に入れたら、サンダーバードに乗り込む。
「サンダーバード1号……発進にゃ~」
こうしてわしは、よけいな事を言ってしまったとあとで後悔し、サンダーバードの縄張りまで帰るのであったとさ。
鳥の帰巣本能を頼れば、道に迷う事なくサンダーバードの縄張りまであっと言う間に到着。そこでサンダーバードからわしの強さを聞いたであろう鳥達が褒めてくれたが、自傷行為は止めた。
だって、わしが羽根を欲しがってると思って自分で抜くんじゃもん。黒いのはまったく欲しくないんじゃもん。
それならばと、わしは交渉して写真撮影。人型も見せて写真を撮りまくってやった。インスタントカメラで撮った写真は鳥達にプレゼント。
皆、自分がこんな姿だったのかと惚れ惚れして見ていたので、土魔法とガラス魔法で作った額もプレゼント。密閉したからかなり長い期間持つはずだ。
あとは飾る場所をわしが土魔法で作ってあげて、サンダーバード達の感謝の声を聞きながらお別れするのであった……
「くさっ! くさいにゃ~~~!!」
リータ達との待ち合わせ場所、野営地に戻ったら、全員素っ裸で超くさい。わしは皆に近付けずに、鼻を押さえてのたうち回っている。
「シラタマさ~ん」
「シラタマ殿~」
「ダーリ~ン」
「パパ~」
「モフモフ~」
「来るにゃ! 頼むから近付かにゃいで~~~!!」
リータ、メイバイ、イサベレ、オニヒメ、コリスは、涙目でゆっくり近付いて来るが、わしにはゾンビにしか見えない。触られたら確実にわしもゾンビになってしまうので、心を鬼にして逃げ回るわしであったとさ。
風上に移動して通信魔道具を投げて連絡を取ってみたら、どうやら白い獣と戦って、こんな酷い事になったらしい。
「あ~……スカンクだにゃ。くさい分泌液を吹き付けられたんにゃ~」
「うぅぅ……どんなに洗っても落ちないんです~」
リータから聞いたところ、白スカンクは少し戦ったところで勝てないと悟り、ガス状の分泌液を撒き散らして逃げて行ったとのこと。リータ達は目も開けられない事態となって、追う事も出来なかったそうだ。
それからオニヒメの水魔法で目を開けられるようになったので、ナイアガラの滝で行水と洗濯。恐ろしい事に、においを落とそうと滝行まで行ったそうだ。
わしは近付きたくないのだがこのまま放置もかわいそうなので、土魔法の防護服に入ったら、リータ達の服を石鹸と高級薬草入りのお湯で洗濯。リータ達も石鹸と高級薬草入りの露天風呂に入ってもらったが、まだくさい。
何度もお湯を換えてにおいを落とそうと頑張ったが、やっぱりくさい。しかしリータ達は鼻がバカになっていて、においが弱まったら綺麗になったと勘違いしていた。
たしかにかなりマシになったので、ようやくディナー。皆、鼻がバカになっているので、美味しい料理を食べても味がわからないみたいだ。
「災難だったにゃ~」
「今度見付けたら、コリスちゃんとオニヒメちゃんの遠距離魔法で仕留めてやるニャー!」
「「うん!!」」
メイバイ達がわしを頼らない事はいい事なのだが、出来たらもうスカンクに近付かないで欲しい。一撃で仕留められなかったら、今日の二の舞になりそうだ。
「それより、サンダーバードのことは聞かなくていいにゃ?」
「「「「「あっ!!」」」」」
わしだって大変な思いをして来たのに、誰も聞いてくれないので自分から言っちゃった。
「これがサンダーバードにゃ。んで、白銀の鳥にゃんかも居たにゃ。もう、色とりどりの鳥が居て、超綺麗だったにゃ~」
「「「「「うわ~~~」」」」」
インスタントカメラで撮った数枚の写真を並べると、全員釘付け。それで証拠には十分なのだが、色とりどりの羽根も並べ、わしとサンダーバードの戦闘を聞かせてあげるのであった……
*************************************
さて、二十ニ章から始まったアメリカ横断の旅は、猫さんが忘れていたサンダーバードとも戦ったので、二十三章で終了となりました。
けっして筆者が忘れていたわけではありませんw
それといまさらなんですけど、タイトル変更のお知らせです。
『アイムキャット!!?~異世界キャット驚く漫遊記~』
カクヨムだけ違うタイトルで投稿していたのですが、いつか『アイムキャット』に統一しようと思っていたのに長期間放置してしまったので「もういっそ合わせちゃえ~!」って感じでこのタイトルになりました。
今後とも宜しくお願いいたします。
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