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第二十三章 アメリカ大陸編其のニ アメリカ横断旅行、延長戦にゃ~

670 サンダーバードの登場にゃ~

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 あ~あ……たまにはわしも一緒に戦いたかったんじゃけどな~。

 わしの目の前では、グリズリーの群れが猫パーティに蹴散らされる風景が作り出されている。

 リータは黒グリズリーを上から殴り、ほぼ一撃でほふっている。
 メイバイは小刀二刀流で首を狙い、素早く二回振って撃沈。
 イサベレも同じく、細身の刀で首を斬り裂いて一撃。
 二人の武器は同じ白銀の刀だが、わしの刀と違って斬れ過ぎるデメリットは無さそうだ。

 オニヒメは折り紙魔法。いまだにどうやっているかわからない気功を乗せているので、黒グリズリーの首に折鶴が当たった瞬間に首が破裂している。
 コリスには物足りない相手。リスパンチ、尻尾ベチコーンッで、余裕で黒グリズリーを倒している。そろそろわしと同じく待機組に来てくれそうだ。

 わしは待機と言われていたが暇なので……じゃなく、出来る猫なので、皆が倒した黒グリズリーを次元倉庫に入れて歩いている。
 黒グリズリーが減った頃にボスの白グリズリーとの戦闘になったが、リータ達で協力して簡単に倒していた。
 それを見て、グリズリーの群れは逃走。目的の白ヤマアラシが残っているので、リータ達はグリズリーは見逃してくれたから、わしはホッとする。

 それからリータ達は、毬栗いがぐりみたいな防御態勢を取っている10メートルオーバーの白ヤマアラシの処理を開始した。

 一度オニヒメに【三日月】を使わせ、白ヤマアラシのトゲの硬さを確認。傷すら付かないのを確認したら、イサベレとメイバイが頷き合ってトゲを斬り刻む。しかしトゲは長いので、本体に届くには時間が掛かりそうだ。
 その間、リータは黙って見ているわけでなく、コリスと一緒にトゲを抜けないか引っ張ったりしている。二人掛かりでなんとか一本折っていたがこれも時間が掛かるので、コリスとオニヒメに魔法も使わせていた。

 コリスは【咆哮】を撃ったり【三日月】を撃ったり。どちらもトゲに散らされてダメージになっていない。
 オニヒメはなんとか直角に【三日月】を入れようとしていたが、こちらも届いていない。しかし、【千羽鶴】は胴体の近くにまで潜り込めたのか気功が入って、白ヤマアラシは呻き声をあげた。

「シラタマさん! シラタマさ~ん!!」

 その時、グリズリーをつまらなさそうに回収していたわしに、リータとメイバイの大声が聞こえて来た。

「にゃ~??」
「シラタマ殿! そっち行ったニャー!!」

 そう。白ヤマアラシは痛みが走って驚いたのか、転がって攻撃していたのだ。

「にゃ!? にゃんでこっちに転がしてるんにゃ~!!」

 というわけで、白ハリセンボンの再現。わしは焦ってしまい、回転して近付いて来る白ヤマアラシから逃げ惑う。

「これ、わしがやっちゃっていいにゃ~??」
「考えますから、ちょっと待ってくださ~い!!」

 白ヤマアラシは何故かわしを追い回すのでちょちょいと倒したいのだが、リータから許可が下りない。わしなら【猫撫での剣】で一撃なのに~!


「シラタマさん! こっちです!!」

 わしが「にゃ~にゃ~」愚痴りながら白ヤマアラシから逃げ回っていたら、リータが準備が整ったと呼ぶので手の鳴るほうへ。

「そこでジャンプです!」
「とお~~~うにゃ」

 恐らく罠が張ってあると思って、わしはリータが立つ位置までジャンプ。スレ違い様にリータはウィンクしていたので、正解の行動だったようだ。

「【土壁】にゃ~」

 わしが振り向いたら、リータが土の壁を地面から直角に出していたが、白ヤマアラシのトゲが貫通して砕けた。しかし、ヤマアラシはこちらに転がって来ないで、地面に沈んで行った。

「落ちました!」

 前もって大きな落とし穴を掘っていたから、白ヤマアラシは土壁で推進力を削がれて落下したのだ。

「「【大水玉】にゃ~」」

 そこに、コリスとオニヒメの水魔法。二人が何発も水の球を撃ち込むと、ジャブジャブと穴の水位は上がり、あっと言う間に白ヤマアラシは水没した。狙いは溺死みたいだが、さっきナイアガラの滝で溺れたわしに見せないで欲しい。

「上がって来ましたよ!」
「やっと顔を見せたニャー!」
「ここからが勝負」

 いや、狙いは白ヤマアラシの防御態勢を崩すこと。トゲだらけでは攻撃しにくかったから、トゲの無い場所を引き出したのだ。
 そこからは決着が早い。リータとコリスで白ヤマアラシの顔面をぶん殴ったと思ったら、両サイドに分かれたメイバイとイサベレが首元に高速斬り付け。
 あと一撃で絶命と行きそうだったが白ヤマアラシが暴れたので、一時離脱。いや、計算通り。白ヤマアラシの傷にオニヒメの【千羽鶴】が数十羽入り込み、気功の内部爆発でトドメに持ち込んだのだ。

 こうして白ヤマアラシは、リータ達にタコ殴りにされて息を引き取るのであった。


 戦闘が終われば、この場を撤収。少し血の匂いが残っているので、十分距離を取ってからディナーにする。

「しかしリータ達が罠にゃんて珍しいにゃ~」
「こないだのベティちゃんとの訓練が役に立ちました」
「あ~。メイバイはこっぴどくやられてたもんにゃ~」
「その言い方はやめてニャー」
「ま、わしも悪いかもにゃ。直接的にゃ戦闘方法しか教えてなかったもんにゃ~」

 リータ達の戦闘に助言をしていたら、イサベレも話に入って来た。

「あの子、メイバイに勝ったの?? ありえない」
「普通にやったら勝てるわけないんにゃけどにゃ。メイバイはベティの土俵に持ち込まれて負けを認めるしかなかったんにゃ」
「ふ~ん……帰ったら私も遊んでもらおう」
「あまりイジメてやるにゃよ~?」

 イサベレのその顔は怖いが、たぶん大丈夫だろう。幼女相手にマジにならないだろう。ベティ、頑張れ……

 ベティの心配をしていても時間は過ぎて行くだけなので、夕食を終えたら班分けして、露天風呂と見張り。それから穴を掘ってバスの布団にて就寝となる。
 久し振りにこんな寝方をしたので、日ノ本へ向かう旅を思い出して、話の弾むわし達であった。


 そして翌日……

 わしは猫型で出掛ける準備。サンダーバードは強いと予想しているので、本気の構えだ。

「あ、えっと~……みんにゃはどこに行こうとしてるにゃ?」
「「「「「狩りにゃ~」」」」」
「わしの帰りを待たないにゃ!?」

 リータ達も本気の構えだったので、聞いてみたらこの始末。わしが【大風呂敷】の魔法を付与した、物が大量に入る車輪付きの黒いスーツケースを……いや、いつの間にか名前が付いていた「キャットケース」も奪われた。

「あんまり遠くに行くにゃよ~?」
「「「「「はいにゃ~」」」」」
「あんまり狩り過ぎるにゃよ~?」
「「「「「………」」」」」
「返事してくれにゃ~~~」

 リータ達に暴れられるとアメリカ大陸の生態系が乱れる。絶滅危惧種も居るかもしれないとコンコンと説得していたら、「わかったからさっさとサンダーバードを狩って来い」と、リータにポイッと遠くに投げられてしまった。

 距離が空いてしまっては仕方がない。けっこう遠くにぶん投げられては仕方がない。仕方がないっちゃ仕方がないけど、こんな森の中で投げるものかね~?
 あと、さらっと怖いこと言ってた!? 神殺しはしたくないんじゃけど……やっぱりリータ達は、アメリカの獣を狩り尽くす気じゃないじゃろうか……

 サンダーバードは土着の神。神をも恐れぬリータ達を心配しながら、わしは西に向かって駆けるのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 一方、リータやメイバイ達は……

「たしかにシラタマさんの話は一理ありますね」
「だニャ。狩り尽くしたらごはんが食べれなくなるニャー」
「それでは、強い獣だけを倒して、他は逃がしましょう」

 いちおうシラタマの言葉は胸に響いていたので手加減するようだ。皆からも返事をもらったら、オニヒメとイサベレの危険察知頼りに獲物を探し、一匹残らず殲滅……

「あ……やってしまいました」
「私も忘れてたニャー!」

 殲滅してから、さっきの約束を思い出した一同。頭をポリポリ掻きながら「全部黒いオオカミだったからいんじゃね?」って話に落ち着いた。

「まぁこのキャットケースもどれだけ入るかわからないですし、次から気を付けましょう!」
「「「「「にゃっ!」」」」」

 こうしてリータ達は走り出し、次に見付けた巨大な獣の群れに、目を爛々として突撃して行くのであったとさ。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 そろそろ着いてもいい頃合いだと思うんじゃけど……

 一方わしは、黒い森を走りながら、サンダーバードが居るであろう白い木の群生地を探していた。

 これは一度上から見たほうが早そうじゃ……いや、着いたか??

 白い木がチラホラ後方に消えて行くような景色になったので、スピードを落として走っていたら、真っ白な景色に変わった。

 おお~。過去最高のプレッシャー。おやっさんより強い生き物が居るかも??

 わしは何かの縄張りから一度出ると、少し考える。

 あのプレッシャーの正体はサンダーバードだと思うんじゃけど、こんなに強いとは……白銀の生き物が一番強いと思っておったが、その上がおったとはビックリじゃわい。
 戦闘になったら嫌じゃな~。【参鬼猫みきねこ】を使っても勝てるかどうか……てか、上手く使いこなせないから、確実に負ける。でも、逃走には使えるか。話をしてみて戦闘になりそうだったら逃げてやろっと。

 わしは【参鬼猫】を発動して、狭い額に三本の白銀のアホ毛がピョンッと立つのを確認したら、【吸収魔法・甲冑】で防御も固めて準備完了。
 覚悟を決めて白い木の群生地に入るのであった。


 たぶんこっちのほうだと思うんじゃけど……なんか一匹どころじゃない気がするから探知魔法を使いたいんじゃけど、使ったら攻撃していると思われそうで怖いんじゃよな~。

 【参鬼猫】の活動時間もあるので小走りに圧力があるほうに向かっていたら、上から見られている感覚があったので歩みを止める。

 白銀の鳥が二羽おる……あっちには白……黒に青に紫に赤……なんかめっちゃ見てるんですけど~~~!?

 そう。わしの不安は的中。白い木の枝には、巨大な鳥が複数とまっており、カラフルな果物が逆向きに実っているように見えるのだ。

 こ、この数はマズくないか? 白と黒はなんとでもなるが、白銀はマズイ。まさかサンダーバードを拝む事も出来ずに逃げ帰る事になるとは……ん?

 わしが後退あとずさると、白銀の鳥がわしの進行方向に飛び立ち、もう一羽は後方でホバーリングしている。

 ついて来いと言ってるのか、はたまた逃がさんと言っているのか……虎穴に入らずんばと言いたいところじゃが、後門の鳥では前に進むしかないか。

 わしは緊張を一段高めて、白銀の鳥のあとを追う。するとわしを囲んでいた鳥もあとを追い、しばらくしたら開けた土地に出た。

 居た! 居たけどニ羽もおる!! てか、金色だけでも目が痛いのに、カラフルすぎるぞ!!

 わしの眼前には金色のコンドルがニ羽地上に立っており、周りには多くの鳥が木にとまっていたり飛んでいたり。大きさもまちまちで色とりどりの鳥が数多く居るから、この絶体絶命の幻想的な景色に目をやられるわしであった。
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