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第二十ニ章 アメリカ大陸編其の一 アメリカ横断ウルトラ旅行にゃ~

628 モノンガヘラ族の被害状況にゃ~

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 よし! 綺麗に花が咲きましたっと。

 落とし穴に落ちたアメリヤ兵は、漏れなく生き埋めにされ、地面から顔だけ出した花となった。

「た、助けてくれ~!」
「食われる~~~!!」

 アメリヤ兵は気絶している者も居るが、多くは怪我をした程度なので、わしが食べると言ったせいでうるさい。

きがいいのはどれかにゃ~? 一番声が大きいのが美味しそうだにゃ~。お前にしよっかにゃ~??」
「「「「「………」」」」」

 わしが選ぶようにウロウロしたら、叫び声はピタリと止まった。目も合わせてくれない。

「あっれ~? みんにゃ死んだのかにゃ~? あっちに生きてるのが居るかも知れにゃいし、食べに行こっかにゃ~??」

 ただ単に静かにして欲しかっただけなのだが、アメリヤ兵は食べられたくないが為に、死んだ振りをしてわしをやり過ごそうとするのであった。

 チョロ……面白いように脅しが通じるな。

「にゃ~はっはっはっはっ」

 こうしてわしは、笑いながら集落の中に消えて行くのであったとさ。


「シラタマさん!」
「シラタマ殿!」

 探知魔法で人の集まる場所を探して進み、広場らしき場所に着いたら、わしの顔を見たリータとメイバイが駆け寄って来た。

「にゃ~? 心配する必要なかったにゃ~」
「本当ですか? 無理してませんか??」
「トラウマを克服できて、気分晴れ晴れにゃ~」
「よかったニャー!」

 本当は完璧に克服できたわけじゃないけど、言う必要はないじゃろう。また苦しくなったら、二人を頼ればいいだけじゃ。

「それはそうと、さっきふざけていましたよね?」
「大笑いしてたニャー!」
「ちがっ……あいつらが全然攻撃して来なかったから怒らせていたんにゃ~」

 いちおう何があったか報告してみたが、夜にはモフモフの刑があるようだ。ただ撫でられるだけだからいつも通りと安心したけど、イサベレが舌舐めずりしているから超怖い。
 なのでリータとメイバイに守ってくれと必死にお願いしていたら、わしは二人に掲げられて、モノンガヘラ族への仰々しい自己紹介をされてしまった。

「えっと……猫神様じゃなくて、猫王様だからにゃ? 拝んでないでメシでも食おうにゃ~」

 リータ達が変な説明をするので、わしを猫神様と拝み倒すモノンガヘラ族。大きな黒い獣を出して捌いたら、ますます酷くなって来た。

「いいからさっさと準備しろにゃ~。いい加減にしにゃいとバチを与えるからにゃ~」

 もう猫神様としてモノンガヘラ族を扱ったほうが話が早い。わしを拝んでいたモノンガヘラ族は、バチがあると聞いて素直に動き出すのであった。


 モノンガヘラ族が料理の準備に取り掛かると、わし達はアメリヤ兵の処置。広場で拘束されていた者は車輪付きの檻に入れ、アメリヤ兵が咲き乱れるお花畑にご案内。きっちり顔だけ出して仲間に入れてあげた。
 リータ達にアメリヤ兵の武器を集めさせている間に、わしはジープまで走る。その時「パンッ!」と弾ける音がしたから、触るなと言ったのに誰かが銃の引き金を引いたのだろう。

 ジープに着くと、檻の中のテナヤ達が騒ぎ散らすので、静かにしないと檻から出さないと脅す。それでますますヒートアップしてしまったが、敵は全員倒したと説明したら、ようやく落ち着いて来た。

「これから開けるけど、わしはまだ被害状況を知らないにゃ。どんにゃ被害状況でも、恨みを晴らすのはわしの許可を得ろにゃ。わかったにゃ?」

 いちおう全員頷いてくれたから檻は消し去るが、約束を守ってくれると信じるしかないだろう。そうしてわしが奴隷にしたアメリヤ兵に指示を出していたら、テナヤ達はジープや馬に乗ったので、わしの運転で集落に戻った。

「みんにゃはたぶん広場でごはんを食べていると思うけど、わし達はあとから行くから、食べてなかったら先に始めているように言っておいてくれにゃ」
「はい!」

 集落に着いたら全員駆け出したのだが、テナヤは捕まえて、伝言を頼んでから送り出す。その時、アメリヤ兵のお花畑を二度見。いや、四度は見てから走って行った。


「また騒いでるにゃ~? にゃんか聞かれたにゃ??」

 わしがリータ達に近付くと、埋まったアメリヤ兵は静かになる。

「助けてくれと言われたのですが……シラタマさんは、人間を食べるのですか?」
「食べるわけないにゃ~」

 リータがわしのジョークを真に受けていたので、ちょっと脅しただけと説明。それをアメリヤ兵に聞かれて、一段とうるさくなってしまった。

「こんにゃかで一番偉い奴……返事しろにゃ!」
「お、俺です!」

 まだ少しうるさいので、声の主がわからない。なのでリータ達にも探すのを手伝ってもらって、声の主の前で腰を下ろす。

「お前の階級はなんにゃ?」
「軍曹です」
「ふ~ん……その軍曹さんに聞きたいんにゃけど、奴隷狩りに失敗した者の末路って、どうなると思うにゃ?」
「そ、それは……命だけは……命だけは……」
「まぁわしが決める事じゃないにゃろ。被害にあった者に、裁判をしてもらってから決めるとするにゃ。沙汰があるまで静かにしていろにゃ。あんまりうるさいと、このまま首を切り落とすからにゃ」
「はい……」

 軍曹が諦めると他のアメリヤ兵も静かになったので、トラックに残していた奴隷兵を呼び寄せる。

「これ、水にゃ。順番に飲ませてやれにゃ。お前達も飲みたかったらお構いにゃく」
「「「「「はっ!」」」」」

 わしが命令したら、奴隷兵はタンクの水を水差しに移してまとまって動き出した。すると、軍曹が大声を出していたので話を聞いてあげる。

「な、なんで、あいつらがあなたの命令を聞くのですか?」
「わしの奴隷になっているからにゃ。これからアメリヤ王国に乗り込んで、全員わしの奴隷にするから安心するにゃ」

 軍曹は驚愕の表情を浮かべながらも聞きたい事はあるようだ。

「あなたはいったい……」
「わし? わしは猫の国、シラタマ王にゃ」
「猫の国の王……」
「お前達がやっているように、奴隷が欲しくなってにゃ~。いや、国を丸ごと奪うってことは、植民地だにゃ。アメリヤ王国から搾取して搾取しまくるにゃ。わしは生かさず殺さずのさじ加減がわからにゃいから、慣れるまでに、にゃん千、にゃん万人死ぬんにゃろ? 楽しみだにゃ~」
「あ、悪魔……」
「猫だにゃ~。にゃははは」

 軍曹は悪魔を見るような目を向けるが、わしは笑いながら手を振って離れるのであった。


 時刻はもう日暮れ間近という事もあり、コリスがエサを寄越せと言って来たので、適当な串焼きを支給。皆にも支給して、モグモグしながら広場に戻った。
 そこでは、高級肉を美味しく食べるモノンガヘラ族。だが、あんな事もあったのでどこか元気がない。
 そのモノンガヘラ族を横目に見つつ、テーブルをふたつ出して、ひとつはコリスとオニヒメ用の料理を並べる。もうひとつは、リータ達用とゲスト用。適当に料理を並べたらテナヤを呼び出して、今現在、一番偉い人を連れて来てもらった。

「私が酋長しゅうちょうのシランです。この度は、我等を救っていただき有り難う御座いました」
「お~。酋長はすぐに殺されているもんだと思っていたけど、よく生きていたにゃ。とりあえずそこに座って、メシでも食いながら被害状況を教えてくれにゃ」
「は、はは~」

 と、初老の男シランはかしこまって椅子に座ったのだが、料理が美味し過ぎて話をしてくれない。わし達も悲惨な話をメシ時に聞くものじゃないかと思い、ガツガツ食べ終えてから、腹をさすっているシランとの話を再開する。

「死者は五人。負傷者はそちらの方に治してもらったので無しです。それと、犯された女が、二人……です」
「こう言っちゃにゃんだけど、思ったより少ないにゃ」
「……はい。すぐに負けを認めたのがよかったようです。どうも、出来るだけ多く我々を連れて帰ろうとしていたのも一因かと」
「ま、連れて行かれたら、悲惨にゃ労働化に置かれていただろうから、こんにゃ軽微じゃにゃかったにゃ」
「労働……ですか?」
「奴隷と言ってにゃ。十分にゃメシも与えずに、死ぬまで働かせる制度があるんにゃ」

 シランは奴隷なんて言葉を知らなかったので簡単な説明をしていたら、メイバイが実体験を語ってくれた。
 その生々しい声に、シランは怒りの表情を浮かべ、わし達も同じ気持ちで顔にも出ていた。

「まぁ今回の出来事は、最小限の被害で助かったと受け取ってくれにゃ。怒りをぶつけたい気持ちはわかるんにゃけど、明日までは、どうかその怒りを収めてくれにゃ。頼むにゃ~」

 わしが頭を下げると、シランは焦り出す。

「頭をお上げください! 助けてもらっただけで、我々は感謝しかありません。猫神様の仰せの通りにいたします」
「そう言ってもらえてよかったにゃ。あ、そうにゃ。空いてるスペースで寝させてもらうけどかまわないかにゃ?」
「そ、そんな。猫神様を外でなんて……誰かの家を空けますので、そちらをお使いください」
「わし達は家を持ち歩いているから大丈夫にゃ~」

 シランは意味不明って顔をするので、集落の外れにキャットハウスを出したら、なんか「さすが猫神様です!」と納得。少し納得するのが早い気もするが、わし達は中に入ってお風呂を済まし、ダイニングにて話し合う。

「まさか西洋人が海を越えていたとはビックリにゃ~」
「「「西洋人??」」」
「アメリヤ兵は英語を使っていたし、東の国の人と似てたにゃろ?」
「あ……そう言えばそうです!」
「本当ニャー!」
「どういうこと??」

 わしの発言に、リータ、メイバイ、イサベレと驚くので、地球儀を出して説明する。

「ここに東の国にゃろ? そんでここの長靴みたいにゃ所が、イタリアって国にゃ。たぶんイタリア周辺の人が、東と西に向かったんだとわしは考えているんにゃ」

 三人はなんとかついて来ているようだから、そのまま続ける。

「東に向かった者は、西の国や東の国とかに分かれて暮らすにゃ。それとは逆に、西に向かったら海にぶつかるにゃろ?」
「「「うんうん」」」
「昼に得た情報だと、方舟はこぶねに乗ってアメリカ大陸に渡ったと言っていたにゃ。つまり、東の国と同じ人種は、船で海を越えて、アメリカ大陸で増殖したってことになるにゃ~」
「と、いうことは……」

 リータ、メイバイ、イサベレは、顔を見合わせて声を合わせる。

「「「地球は丸いにゃ~」」」
「だからそう言ってるにゃ~~~」

 やっとわしの理論を信じてくれたようだが、納得のいかないわしであっ……

「「「まだ平面の可能性が……」」」
「平面だと一周できないにゃ~~~」
「「「筒状……」」」
「それ、球体より無理じゃにゃい??」

 わしの理論を信じてくれない三人は、何故か新理論を発表するのであったとさ。
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