631 / 755
第二十ニ章 アメリカ大陸編其の一 アメリカ横断ウルトラ旅行にゃ~
621 シャーマンに占ってもらうにゃ~
しおりを挟むハリケーン被害にあったキカプー族が拝み倒すので、井戸の設営と建物の説明に手間取っていたら、もう夕方。わしが井戸の蓋を作っていると、キカプー族が北の方向を見て騒いでいると思ったら、リータ達が戻って来たようだ。
誰が作ったかわからない大型の荷車に荷物を山盛り積んで、リータとコリスが引っ張っていたからキカプー族は驚いていたらしい。そりゃ、大きなティピーを何個も丸々乗せているのだから驚くわな。
珍しくリータ達まで拝まれて、恥ずかしい思いをしていた。これで、ちょっとはわしの気持ちが理解できたはずだ。
リータ達も戻って来たので、まだ日がある内にバーベキューパーティー。黒い獣肉なんて滅多にありつけないらしく、塩を振っただけでもキカプー族は大満足。
わし達はもっとうまい物を食べているけど、肉に騒いでいて近付いて来ない。でも、コリスは向こうに参加するのやめとこっか?
キカプー族のごはんを奪いに走って行ったコリスを「メッ!」と叱って餌付けしていたら、めっちゃ老婆に睨まれていた。それはもう、ヤマンバかってくらいの凄い形相。
一人で突っ立っていたところを見ると、たぶんわし達の食べている豪華な食事が食べたいのだろうと受け取って、超怖いが老婆に近付いて餌付け。
「うっま~~~!」
「にゃはは。ま、長生きしてくれにゃ」
白い巨大魚の蒲焼きを食べた老婆は満面の笑み。わしも笑顔を返して立ち去ろうとする。
「はい。ありがとう……じゃないわい!!」
しかし、礼を言い掛けた老婆は、何故かまたヤマンバに戻って怒鳴られた。
「にゃ~?」
「あんたのせいで、あたしゃの評判駄々下がりじゃないかい!」
どうやら老婆はヤマンバではなく、シャーマンだったようだ。それが猫神様降臨で、今までの預言は嘘じゃないかと言われてるんだとか……
「そんにゃもん知らないにゃ~」
「せめてあんたから、あたしゃの預言は当たっていると言ってくれよ。そうじゃないと、あたしゃも娘夫婦も孫も食っていけないんだよ~」
「この際、転職しろにゃ~」
わしが冷たくあしらうと、シャーマンの老婆は泣き落とし。くっついて離れてくれないのでリータ達に助けてもらったけど、こんなババアと浮気するわけないじゃろ?
何故かわしの浮気疑惑に発展したので、老婆は占いが出来ると説明して、わし達の未来を占ってもらおうと言ったら、なんかノリノリになった。占いが好きとは、みんな乙女だったんじゃな。
占いの道具はリータ達が回収した物の中にあったらしいので、準備が整えば、老婆は呪文っぽい事をブツブツ言いながら、枝やら骨やらをポイポイ投げている。
う……嘘っぽい! こんな道具なら、拾って来る必要なかったんじゃね? そんなもんを後生大事にしやがって……折った!?
わしが老婆を偽物と決め付けて見ていると、わし達の未来が見えたらしい。
「明るい未来だね。でも、あんた達には数多くの別れがあるから、しっかり支え合うんだよ」
これって……当たってる? わし達が長寿だと言いたいのか?? いや、こんな抽象的な事ぐらい、わしでも言えるか。
「ちにゃみに、わしはにゃん年生きるにゃ?」
「あんたかい? あんたは途方もなく長くだよ。正直、あんたが一番心配だね。あたしゃじゃ耐えられないよ」
「にゃ……」
マジかこのババア……年数は言い当てられなかったけど、長生きなのは正解じゃ。いやいや、白い生き物を知っているからかも……
「こっちのイサベレはどうにゃ?」
「その子も長生きだね。あたしゃの何倍も生きるだろうね。子供も……やめとこうかね。あまり知り過ぎると面白くないだろう」
「それ、ダーリンの子供??」
「私も教えてください!」
「私も聞きたいニャー!」
子供と聞いて、イサベレ、リータ、メイバイの鼻息が荒くなるが、わしは違う。
このババア……マジもんじゃ。数字はわざとボカして言っておる。ひょっとして、この地に来たのも、わしとの出会いが目的じゃね? 食べ物に建物、部族の発展に役立つと思ってぶつけたとか……
それが、わしがやり過ぎて、功績を全て持って行ったから怒っていたのかも? いや、そんな正確な占いが出来るなら、わしに口添えなんて頼まんか……
もしかしたら、睨んでいたらわしが近付いて来ると予言したとか? ……ババアにウインクされた!?
え……この考えも筒抜けなの? 超怖いんですけど~??
リータ達に「キャーキャー」持て囃される老婆は鼻高々。本物の占い師だとは思うけど、そのドヤ顔が嘘っぽく見えるんじゃよな~。
皆が一通り占ってもらったら、わしも、二、三質問してみる。
「東から驚異が来ると言っていたにゃろ? にゃにがあるんにゃ??」
「驚異は驚異だよ。悪意と言い換えてもかまわない」
悪意か……なんじゃろ? スサノオが行けって事は、戦争でも起こりそうだから止めろってのが解釈として成り立ちそうじゃな。でも、アマテラスが止める理由がわからん。
「にゃるほど。あと、この土地に金色の鳥が居るらしいんにゃけど、どこに居るかわからないかにゃ?」
「『二つの土地が分かれる端』……そこから西に居るよ。あんたなら辿り着けるだろうけど、一人で行ったほうがよさそうだね」
おいおい。迷いなく答えるな。でも、これは暗に、強いからリータ達を連れて行くなと言っておるのかのう。でも、そのウインクはキモイからやめてくれ。
「最後にゃ。さっきから道具を使わずに占っているけど、いいのかにゃ?」
「ああ。これかい? あんたが思った通り、ガラクタだよ。占いしてるっぽいだろ?」
「にゃ……」
「ヒッヒッヒッ。部族の者には内緒だよ」
わしが言葉を無くすと、老婆は笑いながら立ち去るのであった。
老婆が離れて行くと、リータ達から揉みくちゃにされて追う事も出来ず、子供の話を聞かされてちょっと怖い。あまり話を聞きたくないわしは、ちょうど日も落ちそうにだったので、キャットハウスを出して話を逸らす。
中に入って「なんだか狐に摘ままれたような感じだな~」とか考え事をしていたら、子供の話も揉み洗いも終わって布団で横になっていた。
「シラタマさん!」
「にゃ?」
「サンダーバードの居場所はどこって聞いてるニャー!」
どうやらわしがボーッと天井を見ていて、リータとメイバイの質問に答えていなかったから怒っているようだ。
「聞いてましたよね? 『二つの土地が分かれる端』って」
「ああ。ナイアガラの滝のことにゃろ」
「滝ニャー?」
「ここから北東辺りに大きな滝があるんにゃ。たぶんそこのことを言っていたんだと思うにゃ」
わしが詳しく場所を言い当てると、メイバイ達は感嘆の声をあげる。
「ほへ~。あんな説明でよくわかるニャー」
「それもそうですけど、あのお婆さんも不思議な人でしたね」
「だにゃ。まさかここまで的確に当てる人だとは思わなかったにゃ~」
「それで、北と東、どっちに行くニャー?」
「サンダーバードも気になるけどにゃ~……わししか会えないんじゃ、みんにゃは面白くないにゃろ。東に行こうにゃ~」
わしの決定に皆は頷いてくれるが、少し残念な気持ちもあるようだ。
「サンダーバードも見たいな~」
「私もニャー。シルコ君みたいに紹介してニャー?」
「話が通じる奴ならにゃ。白銀の動物の縄張りに入った時は、肝を冷やしたからにゃ~」
「何その話。私は知らない」
リータとメイバイと話をしていたら、イサベレも話に入る。こうしてわし達は人助けをした一日だったのだが、不思議な体験をした事に話が弾み、夜が更けて行くのであった。
翌日……
酋長のケネソーとこれからについて少し話し合ったらなんとかなりそうだったので、旅立ちの準備。キャットハウスから出ると、キカプー族全員に見送られる。
「この度は、我等の危機にお助けいただき有り難う御座いました」
「気にするにゃ。わし達が勝手にお節介をしただけにゃ。元気に暮らすんにゃよ~?」
わしとケネソーが別れの挨拶をしていたらどよめきが起こり、人混みが真っ二つに分かれて道が出来た。そこをシャーマンの老婆が女性を二人引き連れて歩き、わしの目の前で止まった。
「にゃんだ~。信仰心が揺らいでるってのは、嘘だったんにゃ~」
「ヒッヒッヒッ。嘘ではない。二人はそう思っているぞ」
「たった二人にゃ~。てか、まだわし達を占ってくれるにゃ?」
「ああ。言い忘れたことがあってね。あんたは東に行くんだろ? 試練があるから、仲間を頼んな。それと、あんた達は、旦那を支えるんだぞ」
老婆はわしだけでなく、リータ達にまで予言をしてくれる。それでまたどよめきが起こっていたが、わしは気にせず続ける。
「もっと詳しく教えてくれたら助かるんにゃけどにゃ~」
「それはあんたが望んでいないからだ。知り過ぎたら面白くないだろ?」
「まぁにゃ。有り難いお言葉、感謝するにゃ~」
「ヒッヒッヒッ。もしも道に迷うことがあるなら、あたしゃの一族を頼りな。必ずや助けになるだろう」
老婆が二人の女性に手をかざすのでわしは疑問に思ったが、時間も迫っているので別れの挨拶をしてしまう。
「また近い内に顔を出すにゃ。その時は婆さんに占ってもらうからよろしくにゃ~。それじゃあ、バイバイにゃ~ん」
こうしてわし達はキカプー族と別れて、アメリカ横断の旅を再開するのであった。
0
お気に入りに追加
1,171
あなたにおすすめの小説
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる