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第二十ニ章 アメリカ大陸編其の一 アメリカ横断ウルトラ旅行にゃ~

621 シャーマンに占ってもらうにゃ~

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 ハリケーン被害にあったキカプー族が拝み倒すので、井戸の設営と建物の説明に手間取っていたら、もう夕方。わしが井戸の蓋を作っていると、キカプー族が北の方向を見て騒いでいると思ったら、リータ達が戻って来たようだ。
 誰が作ったかわからない大型の荷車に荷物を山盛り積んで、リータとコリスが引っ張っていたからキカプー族は驚いていたらしい。そりゃ、大きなティピーテントを何個も丸々乗せているのだから驚くわな。
 珍しくリータ達まで拝まれて、恥ずかしい思いをしていた。これで、ちょっとはわしの気持ちが理解できたはずだ。

 リータ達も戻って来たので、まだ日がある内にバーベキューパーティー。黒い獣肉なんて滅多にありつけないらしく、塩を振っただけでもキカプー族は大満足。
 わし達はもっとうまい物を食べているけど、肉に騒いでいて近付いて来ない。でも、コリスは向こうに参加するのやめとこっか?

 キカプー族のごはんを奪いに走って行ったコリスを「メッ!」と叱って餌付けしていたら、めっちゃ老婆に睨まれていた。それはもう、ヤマンバかってくらいの凄い形相。
 一人で突っ立っていたところを見ると、たぶんわし達の食べている豪華な食事が食べたいのだろうと受け取って、超怖いが老婆に近付いて餌付け。

「うっま~~~!」
「にゃはは。ま、長生きしてくれにゃ」

 白い巨大魚の蒲焼きを食べた老婆は満面の笑み。わしも笑顔を返して立ち去ろうとする。

「はい。ありがとう……じゃないわい!!」

 しかし、礼を言い掛けた老婆は、何故かまたヤマンバに戻って怒鳴られた。

「にゃ~?」
「あんたのせいで、あたしゃの評判駄々下がりじゃないかい!」

 どうやら老婆はヤマンバではなく、シャーマンだったようだ。それが猫神様降臨で、今までの預言は嘘じゃないかと言われてるんだとか……

「そんにゃもん知らないにゃ~」
「せめてあんたから、あたしゃの預言は当たっていると言ってくれよ。そうじゃないと、あたしゃも娘夫婦も孫も食っていけないんだよ~」
「この際、転職しろにゃ~」

 わしが冷たくあしらうと、シャーマンの老婆は泣き落とし。くっついて離れてくれないのでリータ達に助けてもらったけど、こんなババアと浮気するわけないじゃろ?
 何故かわしの浮気疑惑に発展したので、老婆は占いが出来ると説明して、わし達の未来を占ってもらおうと言ったら、なんかノリノリになった。占いが好きとは、みんな乙女だったんじゃな。

 占いの道具はリータ達が回収した物の中にあったらしいので、準備が整えば、老婆は呪文っぽい事をブツブツ言いながら、枝やら骨やらをポイポイ投げている。

 う……嘘っぽい! こんな道具なら、拾って来る必要なかったんじゃね? そんなもんを後生大事にしやがって……折った!?

 わしが老婆を偽物と決め付けて見ていると、わし達の未来が見えたらしい。

「明るい未来だね。でも、あんた達には数多くの別れがあるから、しっかり支え合うんだよ」

 これって……当たってる? わし達が長寿だと言いたいのか?? いや、こんな抽象的な事ぐらい、わしでも言えるか。

「ちにゃみに、わしはにゃん年生きるにゃ?」
「あんたかい? あんたは途方もなく長くだよ。正直、あんたが一番心配だね。あたしゃじゃ耐えられないよ」
「にゃ……」

 マジかこのババア……年数は言い当てられなかったけど、長生きなのは正解じゃ。いやいや、白い生き物を知っているからかも……

「こっちのイサベレはどうにゃ?」
「その子も長生きだね。あたしゃの何倍も生きるだろうね。子供も……やめとこうかね。あまり知り過ぎると面白くないだろう」
「それ、ダーリンの子供??」
「私も教えてください!」
「私も聞きたいニャー!」

 子供と聞いて、イサベレ、リータ、メイバイの鼻息が荒くなるが、わしは違う。

 このババア……マジもんじゃ。数字はわざとボカして言っておる。ひょっとして、この地に来たのも、わしとの出会いが目的じゃね? 食べ物に建物、部族の発展に役立つと思ってぶつけたとか……
 それが、わしがやり過ぎて、功績を全て持って行ったから怒っていたのかも? いや、そんな正確な占いが出来るなら、わしに口添えなんて頼まんか……
 もしかしたら、睨んでいたらわしが近付いて来ると予言したとか? ……ババアにウインクされた!?
 え……この考えも筒抜けなの? 超怖いんですけど~??

 リータ達に「キャーキャー」持てはやされる老婆は鼻高々。本物の占い師だとは思うけど、そのドヤ顔が嘘っぽく見えるんじゃよな~。


 皆が一通り占ってもらったら、わしも、二、三質問してみる。

「東から驚異が来ると言っていたにゃろ? にゃにがあるんにゃ??」
「驚異は驚異だよ。悪意と言い換えてもかまわない」

 悪意か……なんじゃろ? スサノオが行けって事は、戦争でも起こりそうだから止めろってのが解釈として成り立ちそうじゃな。でも、アマテラスが止める理由がわからん。

「にゃるほど。あと、この土地に金色の鳥が居るらしいんにゃけど、どこに居るかわからないかにゃ?」
「『二つの土地が分かれる端』……そこから西に居るよ。あんたなら辿り着けるだろうけど、一人で行ったほうがよさそうだね」

 おいおい。迷いなく答えるな。でも、これは暗に、強いからリータ達を連れて行くなと言っておるのかのう。でも、そのウインクはキモイからやめてくれ。

「最後にゃ。さっきから道具を使わずに占っているけど、いいのかにゃ?」
「ああ。これかい? あんたが思った通り、ガラクタだよ。占いしてるっぽいだろ?」
「にゃ……」
「ヒッヒッヒッ。部族の者には内緒だよ」

 わしが言葉を無くすと、老婆は笑いながら立ち去るのであった。


 老婆が離れて行くと、リータ達から揉みくちゃにされて追う事も出来ず、子供の話を聞かされてちょっと怖い。あまり話を聞きたくないわしは、ちょうど日も落ちそうにだったので、キャットハウスを出して話を逸らす。
 中に入って「なんだか狐に摘ままれたような感じだな~」とか考え事をしていたら、子供の話も揉み洗いも終わって布団で横になっていた。

「シラタマさん!」
「にゃ?」
「サンダーバードの居場所はどこって聞いてるニャー!」

 どうやらわしがボーッと天井を見ていて、リータとメイバイの質問に答えていなかったから怒っているようだ。

「聞いてましたよね? 『二つの土地が分かれる端』って」
「ああ。ナイアガラの滝のことにゃろ」
「滝ニャー?」
「ここから北東辺りに大きな滝があるんにゃ。たぶんそこのことを言っていたんだと思うにゃ」

 わしが詳しく場所を言い当てると、メイバイ達は感嘆の声をあげる。

「ほへ~。あんな説明でよくわかるニャー」
「それもそうですけど、あのお婆さんも不思議な人でしたね」
「だにゃ。まさかここまで的確に当てる人だとは思わなかったにゃ~」
「それで、北と東、どっちに行くニャー?」
「サンダーバードも気になるけどにゃ~……わししか会えないんじゃ、みんにゃは面白くないにゃろ。東に行こうにゃ~」

 わしの決定に皆は頷いてくれるが、少し残念な気持ちもあるようだ。

「サンダーバードも見たいな~」
「私もニャー。シルコ君みたいに紹介してニャー?」
「話が通じる奴ならにゃ。白銀の動物の縄張りに入った時は、肝を冷やしたからにゃ~」
「何その話。私は知らない」

 リータとメイバイと話をしていたら、イサベレも話に入る。こうしてわし達は人助けをした一日だったのだが、不思議な体験をした事に話が弾み、夜が更けて行くのであった。


 翌日……

 酋長のケネソーとこれからについて少し話し合ったらなんとかなりそうだったので、旅立ちの準備。キャットハウスから出ると、キカプー族全員に見送られる。

「この度は、我等の危機にお助けいただき有り難う御座いました」
「気にするにゃ。わし達が勝手にお節介をしただけにゃ。元気に暮らすんにゃよ~?」

 わしとケネソーが別れの挨拶をしていたらどよめきが起こり、人混みが真っ二つに分かれて道が出来た。そこをシャーマンの老婆が女性を二人引き連れて歩き、わしの目の前で止まった。

「にゃんだ~。信仰心が揺らいでるってのは、嘘だったんにゃ~」
「ヒッヒッヒッ。嘘ではない。二人はそう思っているぞ」
「たった二人にゃ~。てか、まだわし達を占ってくれるにゃ?」
「ああ。言い忘れたことがあってね。あんたは東に行くんだろ? 試練があるから、仲間を頼んな。それと、あんた達は、旦那を支えるんだぞ」

 老婆はわしだけでなく、リータ達にまで予言をしてくれる。それでまたどよめきが起こっていたが、わしは気にせず続ける。

「もっと詳しく教えてくれたら助かるんにゃけどにゃ~」
「それはあんたが望んでいないからだ。知り過ぎたら面白くないだろ?」
「まぁにゃ。有り難いお言葉、感謝するにゃ~」
「ヒッヒッヒッ。もしも道に迷うことがあるなら、あたしゃの一族を頼りな。必ずや助けになるだろう」

 老婆が二人の女性に手をかざすのでわしは疑問に思ったが、時間も迫っているので別れの挨拶をしてしまう。

「また近い内に顔を出すにゃ。その時は婆さんに占ってもらうからよろしくにゃ~。それじゃあ、バイバイにゃ~ん」

 こうしてわし達はキカプー族と別れて、アメリカ横断の旅を再開するのであった。
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