628 / 755
第二十ニ章 アメリカ大陸編其の一 アメリカ横断ウルトラ旅行にゃ~
618 アメリカ大陸横断にゃ~
しおりを挟むウサギの街に一泊した翌朝……
わしたち猫パーティは、多くのウサギに見送られて、コロラド州南西部にあるウサギの街から飛び立った。
戦闘機で東に進むには太陽光が眩しいので、全員サングラスを着用。わしとコリスが似合わないと一通り笑ったら、ツクヨミ被害者の会が発足されていた。
「どうしたらいいと思う?」
「誰かが起こしてくれるのを待つしかないニャ。あとはスサノオ様が、いつ気付いてくれるかによるニャー」
イサベレの質問にメイバイ曰く、どうやらいちおうツクヨミ攻略法があるらしい。これは何度もツクヨミ被害にあっているメイバイならではの解決法。
メイバイの夢はわしと違って、アマテラスが現れないから喧嘩に発展しないで、スサノオがツクヨミの通信を切断するだけで終わるらしい。しかし夢のチャンネルは多数あるらしく、ツクヨミが巧妙に入り込むから見付けるのが遅れるとのこと。
その件について、スサノオから正式に謝罪があったそうだ。
「そんにゃことが出来るにゃら、わしの時も切断して欲しいにゃ~」
「私も頼んでみたけど、アマテラス様が居るとどうしても熱くなるみたいニャー」
「あ~……仲が悪いからにゃ~」
「あの二人に何があったニャー?」
「日ノ本に古事記って古い本があるんにゃけど、その中に出て来てにゃ~……」
わしが古事記を語ると、コリス以外は興味津々。でも、スサノオのウンチ話はコリスにもウケた。
ただし、わしもうろ覚えだから、もっと詳しく知りたいなら玉藻かちびっこ天皇に聞いたほうが確実だろう。もっと確実なのは、三柱に直接聞くこと。
所々間違っている箇所があるから本人に聞いたほうがいいと言ってみたら、リータ達は唸り出した。
そりゃ、毎回、愚痴や兄弟喧嘩に巻き込まれたくないのだろう。聞き出すには何千年掛かるかもわからないので保留になっていた。
そうこう話をしていたら、コリスが噛んで来た。どうやらお昼のようだ。なので着陸しようとしたら、黒い森の手前で着陸しろとのこと。
いちおうそこに降りたら、ランチを食べて戦闘機に乗……
「みんにゃどこ行くにゃ?」
「「「「「狩りにゃ~」」」」」
乗らずに、黒い森に侵入。リータ達はアメリカ固有の獲物を狩りたいようなので、わしも続くしかなかった。
しかし、獲物を手当たりしだい狩られては、旅のスピードが落ちる。絶対に東へ直進するように進む事を約束させた。
「次は南東」
「いや、直進……」
「行きますよ~!」
「「「「にゃ~~~!」」」」
「待ってにゃ~~~」
いちおう約束の半分は守ってくれるリータ達。イサベレの危険察知を頼りに、ジグザクに走って獲物を狩るのであったとさ。
「ほら~。日が暮れちゃったにゃ~」
獲物を狩りまくって、黒い森を抜けた頃にはもう夕暮れ。さすがにリータ達も反省しているだろう。
「数は居ましたけど、強い獣は居なかったですね」
「本当ニャー。白い森が近くにないと楽しめないニャー」
いや、全然反省していない。リータとメイバイは反省会はしているけど、移動速度については一切触れないのだ。
「はぁ……もうちょっと森から離れて野営しようにゃ~」
こうしてアメリカ大陸縦断一日目は、ちょっとしか距離を稼げず、狩りをしただけで終わるのであった。
翌日は、キャットハウスから出たら戦闘機で東に向かうのだが、皆は双眼鏡で白い森ばかりを探している。しかし、なかなか見付からないので顔が怖い。
「かわいい顔が台無しにゃ~」
「どこか白い森がありそうな場所を知りませんか?」
「知らないにゃ~……にゃ!!」
本当は以前撮った航空写真があるから調べたらわかるが、移動速度が落ちると困るのでとぼけるしかない。もちろんバレ掛けたが、わしが大声を上げるとリータからの追及は来なかった。
「見付けたのですか!?」
「煙にゃ! 集落があるにゃ!!」
「なんだ。集落ですか……」
「こにゃいだまで騒いでたにゃ~」
珍しくわしがテンション上げているのに、リータ達はサゲサゲ。今まで何個も集落を発見しているし、面白い物が見付かる事も少ないので、興味が薄れているようだ。
しかし、わしの旅の醍醐味は、狩りより人との触れ合いだ。お昼休憩ついでに集落に寄る事に決定した。
ここはカンザス州の中央辺り。そこで発見した集落から離れた場所に戦闘機を着陸させたら小会議。リータ達はまた人見知りが出ているので、わしから声を掛ける事となった。
「あ~あ……これにゃらさっちゃんを連れて来たらよかったにゃ~。さっちゃんだったら上手く説得してくれるのににゃ~」
歩きながら愚痴ってみたら、リータが手を上げる。
「私がやります!」
「私もやるニャー!」
「やってみる」
リータだけでなく、メイバイとイサベレも立候補。どうやらさっちゃんの名を出して頼りにしているような事を言ったので、ヤキモチを焼いているようだ。
たぶん、わしに褒めて欲しいのかな? なんか勝手にご褒美がチューになってるし……
しかしやる気を削ぐと猫騒動が起こるので、ここはなんとか任せたい。作戦会議も様々な案を出してくれたから、とりあえず乗っかってみる事にする。
目指す集落は、森が遠くにあるので大きな壁はない。軽く柵があるだけなので、獣被害は少なそうだ。門らしき物もあるが質素で、家もあばら家みたいなのが数十軒あるのみ。猫の国の村よりも生活水準は低いかもしれない。
長居はしないが、いちおうコリスはさっちゃん2でマント。オニヒメとメイバイもマントのフードを被り、集落に走って近付いたら、門らしき場所に立つ日焼けした半裸の男達に止められた。
「なんだお前達は! どこから来た!!」
わし達の姿は、原住民には見慣れない姿なので警戒されて槍を向けられる。そこに、リータとイサベレの説得。
「私達は旅人です! いまは、念話という力で話し掛けています。少し気持ち悪いと思いますが、話す為には必要なのでご了承ください!」
「私達に敵意はない。少し話をしてみたいから寄った。すぐに出て行くから、長と会わせて欲しい」
二人の説得に、男達はゴニョゴニョと話をして結論を言い渡す。
「酋長と相談して来る。しばし待て」
一人の男が集落の中に向かおうとすると、リータは止める。
「ちょっと待ってください。これも、入れていいかも聞いて来てください」
「これ? どれだ??」
「これです……」
作戦の概要はこうだ。わしは一切喋らず、リータに抱かれる。話し合いが上手くいったら、わしが挨拶する、だ。
ちなみに拗れたら、臨機応変に対応する事になっている。
リータに両手で前に出されたわしは、念話で話し掛ける。
「こんにゃちは。わしはシラタマと申すにゃ。悪い猫じゃないにゃ~」
わしが話し掛けると、男達の頭にクエスチョンマークが浮かんだ。
「それ……動物か?」
「えっと……はい。生きています」
「喋るのか??」
「ん。立って歩く」
「ちょ~と、待ってくれ。聞いて来る」
男が混乱しながら後退ると、またリータが止めて、メイバイ、コリス、オニヒメがマントを脱いでから紹介した。
「尻尾が動いているな……本物か?」
「本物ニャー。コリスちゃんもニャー」
「なんで人間に角なんて……」
「そういう種族なんです。全員、いい子ですからあなた達に危害を加える事はありませんよ」
「そ、そうか……わかった。その旨も酋長に聞いて来る。そこに座って待ってろ」
「お、俺も行く!」
メイバイとリータの説明を聞いた見張りの男達は考える事をやめて、全員で酋長の元へと走り出したのであった。
* * * * * * * * *
「はあ!? お前達は何を言っているんだ??」
見張りの男達からシラタマ達の報告を受けた初老の酋長は、変な見た目を聞いて困惑している。
「角の生えた人間に、獣耳に尻尾? 極めつけに猫が喋っただと??」
「はい……全て事実なんですが……」
「わはははは。真面目なお前がそんな冗談を言うとはな。そんな奴が居るなら見てみたいわ」
「では、お会いになるということですか?」
「フッ……まだ続けるのか。その嘘、たしかめてやろうじゃないか。どうせ、儂を驚かそうと企んでいるのだろ?」
「いえ……事実のまま言ったのですが……」
「さっさと連れて行け」
「はあ……」
酋長はまったく信じず、男達をぞろぞろと引き連れて集落の門に向かう。そうして門を出ると……
「「「なんか食ってるし~~~!!」」」
「あわわわわ」
テーブルでランチしてるシラタマ達を見て男達は驚き、酋長は事実だと知ってあわあわするのであったとさ。
* * * * * * * * *
時は少し戻り、男達が集落の中に走って行った直後……
「ぷっ……にゃははははは」
「「「「「「あはははは」」」」」」
わし達は大爆笑。リータ達の策が上手くいったというよりは、男達のコロコロ変わる表情が面白すぎて笑いを堪えきれなかったのだ。
「にゃは、にゃははは。初めて敵対されなかったにゃ~」
「あははは。でも、成功なんですかね? あはは」
「あはは。攻撃されなかっただけマシニャー。あはははは」
「見たにゃあの顔? にゃははは」
「思い出させないでよ~。あはははは」
「「「「「「あはははは」」」」」」
しばしわし達は笑い転げ、男達が戻るのを待っていたが遅かったので、先にランチ。座って待ってろと言われていたので、テーブル席にてごはんを食べて待っていたら……
「「「なんか食ってるし~~~!!」」」
「あわわわわ」
さっきの男達が戻って来て、ツッコまれた。
おっと。食べて待っているのは失礼じゃったか。一人だけあわあわ言っているじいさんが居るけど、あれが酋長かな? またリータに対応してもらおっと。
わしはリータとメイバイに食事を勧めるように指示を出して、自分はテーブルセッティングを開始する。
「ご一緒にどうですか? うちの料理、すっごく美味しいんですよ」
「いま、シラタマ殿が用意してくれてるニャー」
リータとメイバイが誘っても、酋長はしばし固まっていたが、首をブンブン振って再起動した。
「尻尾! 角!! 猫!? ほ、本当だったのか……本当だったのか~~~!!」
「にゃははははは」
「「「「「「あはははは」」」」」」
酋長がどんな説明を受けたかわからないが、男達よりすんごい顔をして驚くので、わし達は笑いが再燃してしまうのであったとさ。
0
お気に入りに追加
1,168
あなたにおすすめの小説
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
半身転生
片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。
元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。
気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。
「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」
実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。
消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。
異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。
少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。
強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。
異世界は日本と比較して厳しい環境です。
日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。
主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。
つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。
最初の主人公は普通の青年です。
大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。
神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。
もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。
ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。
長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。
ただ必ず完結しますので安心してお読みください。
ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。
この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる