623 / 755
第二十ニ章 アメリカ大陸編其の一 アメリカ横断ウルトラ旅行にゃ~
613 神剣の試し斬りにゃ~
しおりを挟む白メガロドンは焼いただけでも大好評。サメだから変な臭みがあると思っていたが、黒や白なら旨味が勝って少しの臭みがクセとなると寿司屋の大将から教わったので、普通に調理しても問題ない。
なんなら、今まで食べた肉の中で一番うまい。さすがは千年物のサメだ。もしかしたら、玉藻も……
「なんじゃその目は? 食えと言ったのはそちじゃろうが」
「いや、にゃんでもないにゃ……」
わしの不穏な考えはギリセーフ。玉藻は九本の尻尾と両手に串焼きを持っていたから、奪われる心配をしたようだ。食い意地が張っていて助かった。
わしが物理的に食べようとしていたと知られたら、絶対リータ達に怒られる。たぶん比喩的に食べると思って浮気疑惑になるんじゃもん。
白メガロドンは生でもいけたので、焼き時間を待つ間は刺身醤油でつまんでいたから、すぐにおなかいっぱい。全員食べ過ぎて動けなくなってしまった。
どうもとんでもなくうまいので、自分の食べられる量を遥かに超えて食ってしまったようだ。白イルカにも好きなだけ食べさせたが、大食い一位はコリス。頬袋に詰められるだけ詰めたので、かつてないほど頬が膨らんでいる。
それ……いつ食べるの? モゴモゴか~。でも、かわいい!
何を言っているかさっぱりわからないが、頭を撫でておいた。明日も食べる予定だけど、その時には元に戻っているだろう。
コリスを撫でていたら、腹を押さえる皆が腹ごなしをしたいと言うので、大振りの白メガロドン肉を取り出して、鱗に攻撃させる。
わしは後ろで押さえて見えていないが、あまり攻撃は通ってない模様。リータのパンチでさえ、鱗が硬くて痛かったようだ。唯一通じた攻撃は、メイバイ達に作ってあげた白銀の武器。斬り込みが入ったらしい。
「わしもやらしてにゃ~」
それならばわしも興味があるので、腰の物を抜いて一閃。玉藻の付けた傷より大きく斬れた。
「くっ……負けた……」
「扇と刀じゃ用途が違うにゃろ~」
「たしかにそうじゃが……小刀も作ってくれんか?」
「扇があれば十分にゃ~」
何を競っているのかわからない玉藻を宥めていたら、刀マニアの家康も話に入って来た。
「儂にも一振りお頼み申す!!」
しかも、「男がひょいひょい土下座をするな」とか言っていたくせに、土下座までして来やがった。
「刀が欲しいからって、わざとやってるにゃろ?」
「どう受け取られても構わん! 何卒、何卒……」
「わかったから頭を上げろにゃ~。玉藻は土下座しても作らないからにゃ?」
「うっ……」
玉藻も土下座しようと膝を曲げたところで釘を刺し、秀忠に顔を向ける。
「忘れていたんにゃけど、例の物、持って来てたにゃ。ここで出すにゃ?」
「お、おお。そうだな……桐の箱に入っているのか?」
「注文通りにゃ~」
「ならば出してくれ」
秀忠からは、馬鹿デカイ桐の箱を送られて来たので、注文の品はその中に入れてある。プレゼント用とは聞いていたけど中身は見えないので、広い場所に次元倉庫から出してやった。
「父上……私からの贈り物です。どうかお納めください」
「なんじゃ畏まって……こ、これは……」
家康が桐の箱を開けると、そこには白くて巨大な軍配。わしが壊してしまった家康が使っていた黒魔鉱の軍配と同じサイズの、白魔鉱の軍配だ。
「長年使っていた軍配を直そうかと考えていたのですが、猫の国は鉱石が豊富と聞き、シラタマ王に無理を言って作っていただいた品です」
「ふむ。そうか……有り難く頂戴しよう」
家康は白い軍配を握ると、数度振って使い心地を確認したら顔をほころばせた。
「気に入った!」
「はは~」
「しかし、前の軍配より倍は重くないか?」
「そ、それは……」
「製造方法は秘密にゃ~」
秀忠が言いにくそうにわしを見るので、答えは代わってあげる。
「まぁ白鉄を見た目の二倍は使っているとだけ答えてやるにゃ」
「そんなに使っておるのか……あいわかった。それだけ聞けたなら、もう儂からは何も言うまい」
「にゃはは。潔いにゃ~」
「儂の刀も、その製法で作ってくれるのであろう?」
「にゃはは。そっちが狙いだったんにゃ」
「頼んだぞ。ポンポコポン」
プレゼントに喜んでいる家康に、ケチを付ける必要はないだろう。あとで請求書を見て驚けばいい。こんな馬鹿デカイ白魔鉱の軍配が安いわけがないんだからな。
秀忠もローンにしてくれと泣き付いて来たのに、また馬鹿デカイ刀の二倍圧縮を発注するんだ。お金持ちの玉藻ですら出し渋ったんだからな。
どっちみち折半した魚から差っ引くだけだと思うけど……
わしと家康は笑っている意味は違うが、がっしり握手をして友好を深めるのであったとさ。
メガロドン祭りが終わると玉藻と家康に酒を勧められたが、わしも学習している。この二人と飲むと、いつも飲まされ過ぎてリータ達に嫌われるから断ったのだが、肩を組まれて拉致られた。
あまり飲み過ぎたくないわしはさっさと用件を聞いたら、訓練方法を聞かれた。
「別にアレはわしの力じゃないにゃ。ツクヨミノミコトから力を授かっただけにゃ。ま、信じられないだろうにゃ。にゃははは」
当然二人は信じてくれないので、なんとかわしの強さの秘密を聞き出そうと酒を注ぎまくるので、杯はひっくり返した。
「も、もうこの辺で……ヒック」
「まだまだいけるじゃろ」
「まだいつもの半分じゃぞ」
「わかったにゃ! わかったから飲ますにゃ~。ヒック」
もうここらでやめないと、またわしは寝室から追い出されてしまう。リータ達と寝るには言うしかないのだ。
「わしが思うに、二人は不完全にゃ生き物だと思うんにゃ」
「「不完全??」」
「本来、多尾の白い生き物は、もっと強くて大きいにゃ。それは魔力濃度が関係しているとわしは見ているんにゃけど、日ノ本は魔力濃度が低すぎるから、不完全になったんにゃ」
「「ということは……」」
「てか、白いサンゴ礁巡りしてるんだから、出会った頃より強くなってると思うんにゃけど……自覚はあるかにゃ?」
玉藻と家康は、手を握ったり肩を回しながら自分の力を確認する。
「そう言えば、元の姿に戻った時、少し大きくなったような気がする……」
「儂もじゃ……足も速くなっている気がしてたんじゃ」
「にゃ~? 日ノ本には白い森は無いけど、白いサンゴ礁はあるにゃ。いや、新津で訓練したほうが手っ取り早いにゃ~。ま、その歳からわしと同じ速度で強くなれるかは知らにゃいけどにゃ」
訓練方法を聞いた玉藻と家康は顔を見合わせて数秒後、わしを褒め称える。
「さすがシラタマじゃ!」
「外から見ない事には気付けない事じゃな!」
「「ささ、飲め飲め!!」」
「だから飲ますにゃ~! プハーーー!!」
結局この日も、二人に飲まされまくったわしは寝室に入れてもらえず、一人で眠るのであったとさ。
翌朝は、また二日酔い。リータ達には白メガロドンを食わして怒りを逸らす。それからエリザベスキャット号は動き出したが、ちょっと寄り道。
せっかく樺太がすぐそばにあるのだ。スリスリしまくって上陸させてもらった。ただ、そのせいで以前わしが言った嘘が事実となってしまった。
「アイヌか……海を越えた先にもアイヌはおるのじゃな」
「日ノ本のアイヌと同じ暮らしをしておるのう」
さっき空から見付けた集落に寄ってみたが、玉藻と家康がこんな事を言うので、樺太は日ノ本の土地だと思っていたわしは肩を落とす。
「シラタマさんは、どうして落ち込んでいるのですか~?」
「元の世界でも、日ノ本じゃないんじゃなかったニャー?」
「ここは日ノ本の土地にゃ~! 樺太にゃ~!!」
わしは怒られてもかまわない。断固として歴史認識を曲げないので、玉藻と家康は併合しようかと話し合うのであった。
樺太アイヌはわし達を見ても、意外と驚かない。理由を聞いたら、獣と子を成す伝承があるので、神様が現れたのだと思っているようだ。
なので宴の席を用意してくれたが、たいして美味しそうな物も面白そうな物も無いのでさっさと撤収。
わしは話を聞きたかったんじゃけど……
興味があったのはわしだけ。ここに時間を掛けるより、皆は巨大魚ハントをしたいらしく、首根っこを掴まれてエリザベスキャット号に乗せられてしまった。
エリザベスキャット号は南下し、これまで回った白いサンゴ礁に突入すると三周目ともあり、大きくても30メートル程度の主しか居なかったので、わしの出番は無し。リータ達がノリノリで戦っていた。
秀忠は松前藩(北海道)から帰る予定だったらしいが強制連行。猫又船団に組み込まれて必死に戦っている。どうも強い敵と戦う事に慣れていなかったようだ。
わしはと言うと、足場を作ったあとは暇潰し。皆が魚に気を取られている内に家康用の刀を作ってみた。5メートルのタヌキ使用だから何度か失敗してしまったが、たぶんボチボチの品が出来ただろう。
三倍圧縮は金額がバカ高くなるので二倍。玉藻は親友としての順位だと思っているようだけど、こっちの刀のほうが白魔鉱の量が多い。完成した刀は少し研ぎは荒いので、あとの事は研師に頼むように言っておいた。
柄は土魔法で嵌めておいたが、帰りには取り外す予定にして、試し斬りをさせてみる。
「お、おお……これこそ神剣じゃ……」
10メートルの白い魚がひと振りで真っ二つ。さずがにわしも驚いたが、家康と秀忠は、なんか刀に向かって土下座している。
家宝にするらしいが、名前に猫を入れるのはやめようね? あと、ご老公にしか使えないと思うから、ひょっとしたら無駄になるかもしれないよ?
いくら凄い刀でも、使い手を選ぶなら宝の持ち腐れ。言われた通り作ったが、秀忠が家康ぐらい大きくなるかは不明。家康亡きあと、寺か神社に祀られると思われる。
巨大刀の名付けは一時保留。どうしても猫の付く名前でしっくり来る物が無いようなので、帰ってから決めるとのこと。柄だけは外して、土で固めた箱に入れてあげた。
微動だしないようにしたが、衝撃を与えると貫通するかもしれないので運搬には気を付けて欲しい。運搬するだけで人が死んだら、『妖刀猫又』とかになりそうなんじゃもん。
試し斬りを終えるとまた白いサンゴ礁巡り。わしの出番は少ないのでダラダラお昼寝し、その日の夜には舞鶴に到着した。
これでわしの任務は終了。そのまま帰ろうと思ったが、ここで一泊。漁村は白イルカ効果で人口が増え、出稼ぎ漁師も多数いるので何軒も旅館が建てられていたけど、エリザベスキャット号に戻った。
だって、わしそっくりの招き猫がそこかしこに居るんじゃもん。みんな拝み倒して来るんじゃもん!
どうも元々の村民が、わしと出会ってから好景気に発展したから神のように崇め奉っていたので、廃れた漁村は居心地の悪い港町に様変わりしたようだ……
0
お気に入りに追加
1,168
あなたにおすすめの小説
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
半身転生
片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。
元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。
気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。
「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」
実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。
消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。
異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。
少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。
強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。
異世界は日本と比較して厳しい環境です。
日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。
主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。
つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。
最初の主人公は普通の青年です。
大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。
神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。
もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。
ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。
長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。
ただ必ず完結しますので安心してお読みください。
ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。
この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる