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第二十ニ章 アメリカ大陸編其の一 アメリカ横断ウルトラ旅行にゃ~

610 ウサギ族の移住、完了にゃ~

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 我輩は猫又である。名前はシラタマだ。ウサギは見飽きた……

 クリフ・パレスからウサギ族の移住を開始して早二ヶ月半。ついに五千人の移住が完了した。
 猫の街の人口のおよそ三分の一と言う事もあり、道行く人にウサギが目立つ。猫耳族より人数が多いので、もうこれは、猫の街と言うよりウサギの街だ。

「モフモフが増えたからいいんじゃないですか?」
「モフモフならなんでもいいニャー」
「「モフモフも増えて産業も増えたからいいじゃないですか」」

 その事を王妃のリータとメイバイ、代表の双子王女に相談してみてもこの始末。本当にモフモフならなんでもいいようだ。

 いつか猫の街は、ウサギが増殖して乗っ取られるんじゃなかろうか……

 ウサギ族の仕事は、英語をマスターした者はサービス業をしているが、ほとんどはまだまだ勉強不足なので、農業と工場勤め。
 農業ではトウモロコシを担当し、二度目の収穫も終えている。工場では太陽光発電機、家電、服飾、食品と様々な物を作って猫の街を盛り上げてくれている。当然、ラビットランドのアルバイトも頑張ってくれて大繁盛だ。

 小金の入ったウサギ族はと言うと、日に日に太っていっている……
 給料は、生活必需品と着流しの予備を一着買っただけで、ほとんど食べ物に消えているようだ。いまは適正体重に戻るまでは様子を見ているが、将来設計の為のお金の勉強も必要かもしれない。


 お金持ちのチェクチ族の姉弟はと言うと、姉のゲウトワリはおこづかいを減らして農作業をしていたので適正体重に戻っている。と、思われる。ダイエットに嵌まっていたから、前より痩せてるかも?
 弟のナヴガンは東の国にも勉強に行かせたので、戻って来た頃には街運営に詳しくなっていた。どうやら商業ギルド見学や、わしが無理言ってお願いした女王の仕事見学がいい勉強になったようだ。

 あまり構ってあげられなくて長期滞在になってしまったが、これで全ての勉強は終了。一度チェクチ族の集落に戻す事にしたけど、ゲウトワリが大反対。あんなド田舎、嫌なんだって。
 しかし、いい加減連れて帰らないと族長のヴクヴカイが心配して夜も眠れないかもしれない。商談ついでに無理矢理連れて帰ってやった。


「おお~。戻ったか。宴をやろう!」

 娘と息子の帰還と言う事もあり、ヴクヴカイがノリノリで宴会を開いてくれたのだが……

「マッズ……何これ?」
「今までこんなに不味い物を食べていたのですか……」

 都会の味に慣れたゲウトワリとナヴガンは酷い。わし達も舌に合わないので自分達の用意した料理を食べていたら、ヴクヴカイはめっちゃへこんだ。

 でも、ヤケ食いするなら自分達のを食べてくんない? わしも生鳥は苦手なんじゃ!

 どうもヴクヴカイは子供の帰りも待っていたようだが、わし達の料理も心待ちにしていたようだ……


 軽い宴会が終われば、難しいお話。リータとメイバイが猛プッシュで猫の国加入を勧める中、ゲウトワリも倍プッシュ。ナヴガンは詳細な報告。わしはだんまり。
 これでどうなるかと見ていたら、猫の国加入が決定してしまった。ゲウトワリの食に対する熱も凄かったが、冷静なナヴガンの都会話で決断に至ったようだ。

 まぁ有り余る富があったとしても、猫の国としか三ツ鳥居を繋いでいないのでは宝の持ち腐れ。上手く使って集落を発展させる自信も無いようだし、ナヴガンがわしの下についたほうが発展が早くなると押していた。
 それに、わしがウサギ族の為に尽力していた事もナウガンには受けがよく、少数民族であってもないがしろにされないと聞いて、ヴクヴカイの迷いは消えたようだ。

「じゃ、そんにゃ感じでよろしくにゃ~」
「「「「「かるっ……」」」」」

 猫の国加入条約書にサインしてもらって握手を交わしたが、わしの挨拶が軽すぎて皆から冷たい目で見られてしまった。
 これでは王様の威厳がないとリータとメイバイにこづかれたので、超難しい話。専門用語を使いまくってヴクヴカイを倒してやった。

「「やりすぎにゃ~」」

 よかれと思ってやったのに、ヴクヴカイの頭が爆発したら、またリータとメイバイにこづかれるわしであったとさ。

 息を吹き返したヴクヴカイは、わしの事を王と認めてくれたから問題ないだろう。もう一人の代表を家族以外から選び、集落に欲しい技術を学ぶ留学生を集めるように指示を出す。

 それから鉱山の視察。6月とあってさすがに雪は無かったが、道があまり整備されていないので工事は必要だろう。鉱山の中も整備されていないので、道と壁の補強の仕方をレクチャー。
 明かりには松明を使っているから粉塵爆発の危険があるので、光の魔道具、もしくは太陽光設備なんかも必要になるから次回売り付ける。魔鉱がわんさか取れるのだから、お金には困らないだろう。

 ただ、急激に採掘すると値崩れも起こるだろうし、枯渇した場合の仕事も考えておかないといけない。それに冬にはドカ雪で仕事がなくなるだろうし、考える事がいっぱいだ。
 とりあえず鉄工業の盛んな街を目指して行く方針を立てたが、どうなることやら。
 三ツ鳥居は二個設置したから、週に二回は繋げる事が出来る。チェクチ族は割と魔力は多いみたいだが、絶対に指定した日以外は使うなと言っておいた。

 食料品の商談も終われば、ナヴガンだけ残して猫の国に帰る。ゲウトワリは「移住した~い!」と駄々っ子になったので、チェクチ族関係の仕事を任せる事で落ち着いたから連れて帰った。

 その次の日には、案の定、族長家族が勝手に三ツ鳥居を通ってやって来たのでキレた。しかし、わしの剣幕以上に泣いて懇願して来たので、日帰りだけの約束で観光を許したが、三日後、街中で見掛けたから追い返した。

 こうしてチェクチ族も猫の国に加わり、集落が発展して行くのであった。


 ウサギ族移住を終え、チェクチ族も猫の国に加わったある日の深夜……

「シラタマ殿……シラタマ殿! リータも大丈夫ニャー!?」

 メイバイに体を揺すられてわしは目を覚ました。

「ふにゃ~。うなされてたにゃ~?」
「そうニャー。二人とも苦しそうだったニャー。いったいどうしたんニャー?」
「またあいつらにゃ。リータのところにも来てたにゃ?」
「はい~。ツクヨミ様の愚痴を聞いてました~」

 どうやらメイバイは、わしとリータがうなされていたから起こしてくれたようだ。

「ひょっとして、神様が夢枕に立ってたニャー?」
「そうにゃ。あいつら超迷惑なんにゃ。でも、にゃんでリータのところはツクヨミだけ行ってたんにゃろ?」
「わかりません。シラタマさんは誰が来ていたのですか?」
「アマテラスとスサノオにゃ。また喧嘩して夢の中がぐちゃぐちゃだったにゃ~」
「御愁傷様です。うちは愚痴だけだったから、まだ平和なものです」
「まぁどっちもどっちだにゃ。にゃははは」
「そうですね。あははは」

 わしとリータが笑っていると、メイバイがうらやましそうにする。

「いいニャー。私も愚痴でもいいから神様と会ってみたいニャー」
「シッ! めったにゃことを言うにゃ!!」
「そうですよ! 会わないに越したことはありません!!」
「なんで二人は慌てているニャー?」
「ツクヨミはかまってちゃんなんにゃ!」
「そんなことを言うと、喜んで出て来てしまいますよ!」
「う、うんニャ。気を付けるニャ……」

 メイバイはわしとリータの剣幕にたじたじ。でも、わし達に聞こえないようにボソッと「ツクヨミ様に会いたい」とか祈っていたので諦めたわけではないようだ。
 わしとリータは三柱の夢の話をしていたので、その事に気付かなかった。

「うちは愚痴だけだったのですけど、アマテラス様達は、どうしてシラタマさんの夢に現れたのですか?」
「にゃんかスサノオがアメリカ大陸の東に行けとか言って来たんにゃけど、アマテラスが反対して喧嘩になったんにゃ」
「だから私のところにツクヨミ様が一人で現れたんですね……」
「二柱がわしのところに居るからチャンスと見たのかもにゃ。にゃははは」

 わしが笑っても、リータは何やら考え込んでいる。

「東ですか……何があるのでしょう?」
「さあにゃ~? 神のみぞ知るってヤツにゃ」
「じゃあ、次の旅は東に行くのですか?」
「南に行きたかったんにゃけどにゃ~……毎日夢枕に立たれたら困るし、東に行くしかないにゃろにゃ」
「二人で喋ってないで私も入れてニャー!」

 わし達の話に入って来れなかったメイバイには詫びを入れて、わしが南に行きたい理由を説明していたら、三人とも眠気がやって来たので就寝するのであった……





 う、うぅん……また夢か。なんか今回は、メイバイがわしにチュッチュッチュッチュッしておるけど、さっきの事があるから、いまはいい夢でも見たくないのう。

 わしが夢の中のメイバイに好きなようにさせていると、第三者が止めに入る。

「メイバイさん、ズルいですよ! 私も~」

 夢の中のリータが現れて、わしとメイバイの寝転んでいるベッドに飛び込んで来たのだ。

「ニャ? 私の夢なんだから、私の好きにさせて欲しいニャー」
「いえ。私の夢ですよ。なのに私を差し置いてそんなことしないでくださいよ~」
「えっと……わしの夢だと思うんにゃけど……」

 三つ巴。メイバイもリータもわしも自分の夢だと主張するが、わしとリータは引っ掛かる事がある。

「これって……まさかにゃ?」
「はい……まさかですよね?」
「また二人で通じてるニャー! 私の夢なんだから私と喋ってニャー!!」

 メイバイが怒りをあらわにしたその時、ついにあいつが現れた。

「呼ばれて飛び出て、ジャジャジャジャーン! メイバイさん、初めまして。僕があなたの会いたくてやまないツクヨミですよ~! ぺ~らぺらぺらグチ……」

 ツクヨミだ。なんか巨大でキラキラしたツクヨミが空から舞い降りて、自己紹介したあとは愚痴が始まった。
 それからメイバイは「キャーキャー」言って喜んでいたが、十分もの愚痴を聞かされたら目が死んだ。

「この愚痴、いつ終わるニャー?」
「「シーーーッにゃ!」」
「こんなの愚痴じゃないですって~。ぺ~らぺらぺらグチ……」

 わしとリータは黙って愚痴を聞いていたのだが、メイバイがいらんことを言ったので、また愚痴が延びる。当然、こんなに長時間の愚痴を聞いていたら、あいつらも現れた。

「ツクヨミ! お前はいったいどこから入り込んでいるんだ!!」
「また私のおもちゃにちょっかいかけてるの!?」

 巨大なスサノオとアマテラスだ。これだけ巨大だと、もう怪獣大戦争だ。

「ほら! メイバイがいらんこと言うから来ちゃったにゃろ~~~!!」
「責任取ってくださ~~~い!!」
「あわわわわわ」

 誰の夢なのかわからないが、夢の世界は口からビームを吐く三匹の怪獣が暴れて、てんやわんや。わしはリータとメイバイを抱えて逃げ惑うのであったとさ。




「ごめんなさいニャー!」

 夢の中から生還したメイバイは土下座。めちゃくちゃ反省しているので言いにくいが、死の宣告はしておかないといけない。

「たぶん、もう遅いにゃ……」
「ツクヨミ様は、きっと来ます……」
「そんニャーーー」

 こうしてツクヨミにロックオンされたメイバイは、わし達よりうなされる夜が続くのであったとさ。
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