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第二十一章 王様編其の四 ウサギ族の大移動にゃ~

601 前々、前夜祭にゃ~

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 建国記念日前夜祭の前日……

 ポポル親子は太陽も見えない場所で訓練漬けだったので、息抜きに祭りに連れ出そうと、わしはソウの地下空洞に顔を出した。

「あ! シラタマさん。訓練の成果を見てください!!」

 わしを発見したポポルは嬉しそうに手を振っているので近付いたら、ルルも寄って来てわしの腕に絡み付いて来た。

「ウフフフ。お久し振りです。ウフフフ」
「う、うんにゃ。久し振りにゃ」
「行きますよ? 【鎌鼬】にゃ~!」

 ルルの笑い方が気持ち悪いが、ポポルが風魔法を使ったようなのでそっちに目を持って行く。ポポルまで語尾に「にゃ」が付いているのは、オニヒメから習ったせいだと思われる。
 ポポルの放った風の刃は大きな四角い土の塊にぶつかると、減り込んで霧散した。

「凄いでしょ! 僕って天才じゃないですか?」
「また調子に乗ってるにゃ~? あんにゃの獣に当たっても怪我するだけにゃ~」
「そんなわけないです! 瞬殺です!!」
「はぁ……【鎌鼬】にゃ~」

 わしが溜め息を吐きながら【鎌鼬】を放つと、一瞬でブロックを貫通。ついでに操作して、何度もブロックを斬り、真っ二つにしてやった。

「うそ……」
「まぁこんにゃの出来るのは、わしかオニヒメぐらいにゃ。でも、貫通するぐらいはやってもらわにゃいと困るからにゃ」
「はい……」

 ポポルの二本目の鼻っ柱もへし折ってやったら、ルルがよけいな事を言い出した。

「ウフフフ。ちゃんとお父さんの言い付けを守るのよ。ウフフフ」
「え……お父さん? そういうこと!? ……わかりました。お父さん!!」
「いつからわしはポポルの父親になったんにゃ~~~!!」

 察しのいいポポルはルルの味方に付くのでうっとうしい。ルルもマジでわしとの再婚を目指しているので笑い方が怖い。もう、このままクリフ・パレスに強制送還したほうがいいのではないかと思うわしであった。


 ポポル親子はソウからの出席者と共に飛行機に乗せてモフられる。
 猫の街に着くと、ホウジツ達はキャットタワーの五階より下の空き部屋にご案内。他の代表にもキャットタワーの空き部屋を割り当てたので、建国記念日の間はここに滞在してもらう。

 しかし、各代表はエレベーターに幽閉されてしまった……

 理由はエレベーターで遊び過ぎ。最上階の王族居住区にまでやって来て騒ぐし、エレベーターウサギをモフりつつ、自分達で操縦していたから電力が尽きたのだ。

「明日使う電力も無いにゃ……どうしてくれるんにゃ?」
「「「「「申し訳ありませんでした……」」」」」

 せっかく太陽光発電で貯めた電力を使われたのなら、わしはオコ。緊急魔力電源に切り換えて助けてあげた代表達は、しゅんとして謝るのであった。

 まぁこれぐらいのお茶目は、ビル初体験の者ならやり兼ねないとある程度想定していたので、説教は短時間。ぶっちゃけ、クールダウンさせるには閉じ込めたほうが早いと思っていたから好きにさせていたのだ。


 皆も反省しているようなので、猫会議前夜祭の開始。内容は、ただの会食。美味しい物を食べながら雑談するだけだ。
 この雑談から明日の猫会議の議題が増える場合もあるが、「上手くやってね~」と言うだけ。ところがトウモロコシ料理を食べさせたせいで、猫会議のフライングが始まった。

「うちでもトウモロコシを作りたいです!」

 センジだ。国民の腹を満たす農業地区の代表なので、一枚噛ませてくれと鼻息が荒い。

「いいんにゃけど……その話は明日でもよくにゃい?」
「「もう譲るのですの!? せめて一年は……」」
「双子王女までにゃに~? 明日やろうにゃ~」

 楽しい会食が猫会議に発展してしまったので、早く寝る為には落ち着かせる必要がある。

「ウサギ小屋……三軒買います!!」
「うちもウサギ小屋をひとつ作りたいです~」
「うちもウサギ小屋を……」

 資料用に作っておいた工場の写真を見せたのも大失敗。ホウジツとセンジだけでなく、他の街の代表にまで火がついた。

「それも明日にゃ~。てか、ウサギ小屋じゃなくて工場だからにゃ? 工場にはウサギは付かないからにゃ?」
「「「「「そこをなんとか!!」」」」」
「ウサギが目当てにゃのか~~~!!」

 写真に映っているのはウサギばかりなので、皆はこの素晴らしい技術に気付かず、ウサギ小屋と思って買いたいらしい。
 なので一から説明してやったら、さらに倍プッシュ。工場とウサギ族を欲しがって、猫会議前夜祭は長引くのであった。
 ちなみにポポル親子はオニヒメとエミリにモフられて眠っていたので、ルルはわしの元へ近付けなかったとさ。


 翌日は、建国記念日の前夜祭。今回は各国の参加も緩和したので、また各国の王族が全員集まって来た。たいした事はしないと説明はしたのだが、うちの料理がうまいから来たかったらしい。
 しかし、一月前に日ノ本へ行った事もあり、各国の王は仕事が立て込んでいるらしいので、三ツ鳥居で移動したい模様。そんな時の、猫の国!

 三ツ鳥居レンタル業も始めてみた。

 一番のネックは魔力の補充。ソウの地下空洞を使えば楽なのだが、雷魔道具等で魔力を奪っているので枯渇が心配。なので、エルフに補充を任せている。
 元々魔力の多い種族だ。いくら多くの魔力を注がないといけない三ツ鳥居でも、十人でやれば一日に二個は補充できる。
 ただし、全員でやると里の防衛に支障をきたすかもしれないので、一日に補充する人数は一割程度。それに他国でも補充にかなりの人件費が掛かるので、うちもけっこうなボッタクリ価格に設定したから、そこまで多くは必要ないだろう。

 あとは三ツ鳥居をキャットコンテナに入れてキャットトレインで運搬すれば、遠くの国でも短時間で移動する事が出来る。
 ちなみに返さない場合は、その国に経済制裁する契約になっているので、必ず帰って来ると信じている。性善説ではなく、力業ちからわざでうちに勝てないからな。もしも盗賊に奪われでもしたら、死ぬ気で取り返すだろう。


 猫の国にやって来るVIPの相手は猫ファミリーのお仕事。王族関係は三ツ鳥居集約所に現れるからリータ達で対応して、バトンタッチした役場職員に宿やキャットタワーに案内してもらっている。
 あとで聞いた話だが、コリスとオニヒメも頑張ってくれたようだ。まぁ首輪の付いていない巨大リスと鬼が揃って挨拶したら、王族でも素直に従うわな。「コリスだよ~」とか「オニヒメだよ~」とか言われても……


 わしはと言うと、猫会議で忙しい。今日はチェクチ族とウサギ族もお試しで出席させたから、代表女性陣がモフモフうるさいのでなかなか始まらない。もう面倒なので、あとで撫でさせてやってくれと頼み込んだ。

 チェクチ族からは、留学生のナヴガンとゲウトワリ。英語を完璧に話せるようになっていたので挨拶をさせる。
 まだ猫の国に入るかどうかは決まっていないが、鉱石の豊富な地だと説明したらホウジツがロックオンしたので、たぶん勧誘が始まると思う。

 ウサギ族からは、代表名代のカレタカと、代表予定の女性だと紹介されたウサギ。片言の英語で挨拶させ、ウサギ族の話をする。
 出会った経緯、ウサギ族の現状、五千人もの移住、その後のクリフ・パレス。まだ決め兼ねているが、アメリカ旅行なんかも計画している。たぶん、モフモフ旅行で終わると思うけど……

 いちおうどちらも拍手で受け入れられたけど、ウサギ族の他の街への移動はまた今度じゃ!

 ただでさえ押しているのに、ウサギ族ばかりに時間は使ってられない。各地の報告や懸案事項を聞いて「上手くやってね~」と言っておく。
 その後は工場の話。現在生産している各地の物を確認して、どのような工場が欲しいかと聞いていく。
 その結果、ラサは穀物を挽く工場。ソウは鉄鋼業が楽になる工場。猫耳の里と猫穴温泉は食品工場。エルフの里は特に無し。

 これら全てが完成したら失業者が増えるかもしれないので、次の猫会議で報告を聞いてから、次なる工場の話をする事にした。

 これで猫会議の議題は全て終了。雑談しつつ他の懸案事項を炙り出そうとするが、チェクチ族を口説いているホウジツ以外の興味はウサギばかり。
 ただ、猫会議に出席していたチェクチ族とウサギ族が煙を吐いて思考停止し掛かっていたので質問してみたら、高度すぎる会話についていけなかったみたいだ。
 まぁ辺境の部族にはない文化と技術のオンパレードでは、そうなっても仕方がない。ウサギ族とチェクチ族の留学生には、学校でもう少し高度な勉強を受けられるように双子王女に手配してもらった。


「じゃあ、こんにゃもんかにゃ? あとは祭りを楽しんでくれにゃ~」

 もう夜という事もあり、解散を言い渡すと……

「「「「「ラビットランドって、まだやってます?」」」」」
「これ、VIPルームのチケットにゃ。夜8時までだからにゃ~」
「「「「「ぴょ~~~ん!!」」」」」

 ほとんどの代表はわしの出したチケットを乱暴に受け取って、ラビットランドに走るのであったとさ。


 ラビットランドに興味の無い、もしくは、もう行っていた者を引き連れてエレベーターに乗ると、わし達は各国のVIPの相手。
 10階大食堂では給仕をしているウサギが捕まって仕事にならない。まぁぶっちゃけホステスで大量投入していたから、他の住人が給仕をしているので問題ない。
 本日のメニューは、フィッシュアンドミート。どちらも白い生き物なので好評だと思う。それと、トウモロコシ尽くし。珍しい食品だから好評だと思うけど、ウサギに目が行っていてよくわからない。

 わしは簡単な挨拶をして回り、ウサギの発注は受け付けず、トウモロコシの感想を聞き、日ノ本の出席者のテーブルでは軽く雑談する。

「玉藻、陛下、久し振りにゃ~」
「ああ。久し振りじゃな。しかしエライ騒ぎになっておるのう」
「もう、これが毎日で大変だったにゃ~。日ノ本のキツネやタヌキは、こんにゃことにならなかったにゃ?」
「そうじゃな。撫でる奴などおらんかった」
「うちとにゃにが違うんにゃろ?」
「うぅぅむ……」

 玉藻が唸りながら考えていると、焼きトウモロコシをかじっていたちびっこ天皇が予想を言う。

「どちらも天皇家と徳川家の縁者だと思われたんじゃない?」
「あ~。にゃるほど。偉い人と勘違いされてたんにゃ」
「それで節度を持って対応していたのが、今日こんにちまで続いているわけじゃな。さすがは陛下。聡いのう」
「てことは、もう手遅れなんにゃ~。あ~あ。こんにゃことにゃら、陛下に助言を聞いておけばよかったにゃ~。そしたら全員わしの親戚とか言っておいたのににゃ~」

 わしがグチグチと愚痴っていたら、ちびっこ天皇と玉藻は声を揃える。

「「無理じゃね?」」
「にゃんでにゃ~。これでも高貴にゃ王様にゃ~」
「王様とかじゃなくて、猫じゃない?」
「うむ。猫とウサギが親戚ってのは無理がある」
「「アホなのか??」」
「アホって言うヤツがアホなんにゃ~~~!!」

 どうやらわしの耳の長さが足りないから、ウサギを親戚とは認められない二人であった。

「いや、だから種族が違うと言ってるだろ」
「耳が問題じゃないんじゃ」
「わかってるにゃ~~~!!」

 何やらわしの心の声まで馬鹿にして来るので、しばらく二人と喧嘩になるわしであったとさ。
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