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第二十一章 王様編其の四 ウサギ族の大移動にゃ~
598 ウサギ族保護法にゃ~
しおりを挟む産業革命の翌日……
今日は久し振りのお休み……と言いたいところだが、皆がウサギを連れて来いとうるさいので下準備。つゆと工場の打ち合わせをして、三ツ鳥居を取りに白い森に転移。
そこで地下室に入れておいた全ての三ツ鳥居を回収して、白ヘビに感謝の餌付け。ついでにお昼寝。これぐらいの休憩は、当然の権利だ。
そうして夕方前に猫の街に帰って、小腹が減っていたから買い食いしようと露店に繰り出したら、ベンチに腰掛けるアイパーティを発見。何故か全員、暗い顔をしてウサギを抱いていた。
「またウサギ族を撫でてたにゃ~? 解放してやってにゃ~」
「猫ちゃん……合意の上よ。はぁ~……」
合意の上じゃと? そう言えば、ウサギ達はみたらしだんごでも食べたような口をしておるな。綺麗に食べる勉強もさせないといけないのか……じゃなくて!
周りにもウサギを抱いている住人がそこかしこに居る!? これって、ウサギ族が身を売ってエサを貰っているのか??
アイ達の溜め息も気になるが、ウサギ族のほうが気になったので、先に質問。
どうやら住人に「奢るから抱かせてくれ」と言われて、エサに釣られて抱かれているとのこと。タダで撫でられるぐらいなら、美味しい物を食べて撫でられるほうがよっぽどマシだと割り切っているらしい。
なんだったら、自分からウロウロしてエサを集るウサギも居るようだ。
たしかに賢いように思えるが、なんだか売春しているようにも見える。止めるべきか止めざるべきか……まぁ住人も、そこまで余裕のある暮らしをしているわけでもないし、資金が尽きたら止まるか。
……いやいや、ダメじゃ! 自分の食べる物を貢いで、そっから犯罪に走る恐れがあるぞ。早急に対策を練らねば!!
ウサギ対策は帰ってからするとして、とりあえず「はぁ~はぁ~」溜め息をついてチラチラわしを見ているアイ達と話をしてみる。
「それで、わしにどうして欲しいにゃ?」
たぶんわしに何かして欲しいのだろうから、枕を飛ばして質問してみた。
「リータ達って凄く強くなってるじゃない? それなのに先輩の私達がこんなんじゃ恥ずかしくって……」
「つまりは強くしてくれってことかにゃ?」
「もう! なんで結論を先に言っちゃうのよ~」
「わしは忙しいんにゃ~」
悩み事を一から聞いている暇のないわしは、帰ってから話そうと言って、その辺で買い食いして戻る。
「だから~。ウサギは離せにゃ~」
一向にウサギを手離さないアイパーティを連れて……
家に帰ったら、10階食堂にてまたモグモグ。その席で、アイパーティの悩みを解決する。
「猫の街では、侍講習と気功講習をしてるにゃ。弟子特典でタダで受けさせてやるから、そこに出ろにゃ」
「講習??」
「宮本武志ってのを誕生祭で見たにゃろ? 気功もリンリーのところで説明したはずにゃ」
「あ……あんな戦い方が出来るようになるの!?」
「それは本人次第にゃ。リータ達も苦戦したから、時間は掛かるだろうにゃ」
アイの質問に答えていたら、マリーがそろりと手を上げた。
「魔法使いの私はどうしたらいいでしょうか?」
「マリーも受けたらいいにゃ。気構えだけでもわかれば、戦闘が楽になるはずにゃ。特に気功は、近接戦闘の苦手な魔法使いには打って付けにゃ~」
リータ達に、明日、各先生をアイパーティに紹介するように言っておけば、これで解決。問題はウサギ族と住人だ。
「やっぱりウサギ族を撫でせさない法律を作ろうにゃ~」
「「「「「な、なんで……」」」」」
「にゃんで死にそうにゃぐらい驚くにゃ~~~!!」
一同見た事もない顔で驚くので、先ほど見た売春婦のようなウサギを説明する。
「双子王女は買い食いなんかしにゃいから、知らなかったにゃろ?」
「「まさかそんなことになっていたとは……」」
「このままいくと治安が悪化するにゃ~。統治する者がそれでいいにゃ? 王妃がそれでいいにゃ??」
「「「「ぐっ……」」」」
四人は血を吐く思いで……いや、ちょびっと血を吐きながら、法律作成に協力するのであった……
「にゃに自分だけ助かろうとしてるんにゃ! それに抜け穴だらけにゃ! そんにゃ穴だらけの法律は却下にゃ~~~!!」
法律を骨抜きにしようと企む四人とわしは戦いながら、法律作成は続くのであった……
「まぁこんにゃもんかにゃ?」
「「「「ううぅぅ……」」」」
結局わし一人でウサギ族をガッチガッチのガードで守る法律を作ったら、リータ達からめっちゃ恨まれた。なんか悪霊でも乗り移ったかのような顔をしているので、希望の糸を垂らしてみる。
「ウサギ族を守っても暴動が起きそうにゃし、ちゃんとガス抜きする場も作るから元に戻ってにゃ~」
「「「「ガス抜き??」」」」
ガス抜きと聞いて、四人から悪霊が半分離れた。なので、ここで完全に悪霊退散!!
「猫の街、初の娼館を作るにゃ~!」
「「娼館……」」
「「その手がありましたわ!!」」
娼館と聞いて、リータとメイバイの悪霊は少し体に戻ったが、双子王女からは完全に離れた。
「言い方が悪かったにゃ。ウサギ族を撫でられる憩いの広場を作るにゃ。お金を貰って撫でられる仕事にしたら、ウサギ族も多少は我慢してくれるにゃろ。でも、住人があまりのめり込んでしまうと中毒になる可能性があるから、月の入場制限はするからにゃ」
「「「「100回ぐらい??」」」」
「それが中毒だと言ってるんにゃ~~~!!」
ウサギ中毒がすでに蔓延していそうなので、早目に手を打たなくてはならない。本当は翌日にウサギ族を迎えに行く予定であったが、ウサギとの触れ合い広場を作らなくてはならないので、一日延期……
ダメ? どうせ夜に行くからお昼寝しなければ大丈夫なんですか。わしはお昼寝が必要なんですが……早く作って仮眠を取ったらいいのですか……
文句を言っていてもお昼寝時間が減るだけなので、商業地区に大きな建物を作る。デザインは双子王女、現場監督はメイバイ、親方はリータなので、いろいろ注意を受けていたら建物は、お座りをしているウサギみたいになっていた。
中は娼館と同じデザイン。でも、わしも行った事がないから適当だ。だから適当だと言っておるじゃろ?
本当は行った事はあるが、そのような行為をする前に逃げ帰ったので、嘘ではない。いや、嘘だ。
リータとメイバイが、わしの江戸での夜遊びを思い出したようだから吉原に乗り込んでもいいように、まったく違う内装にしてみた。
おそらくと言うか当然と言うか、大人数が集まると確信しているので、トイレは多数完備。
中央にはダンスフロアのような丸い空間。全て板張りにしたから、ここでウサギと戯れる事が出来る。要は、猫カフェみたいなものだ。
ダンスフロアを囲むようにオープンキッチンとテーブル席を作り、飲み物や軽食をオーダー出来るようにしておく。メイドカフェみたいな事をやらせようという腹だ。
注意事項で、オープンキッチンと飲食スペースに居るウサギはお触り禁止。皿やグラスが割れたら危険だからのう。
出入口から逆の正面には、ステージも作ってみた。ここで、ウサギにラインダンスでもさせたら受けるかもしれない。この案は宝塚から取っている。もちろん、ステージに上がったウサギもお触り禁止だ。
二階には個室を作って、ステージが眺められる。一人につき二人までのウサギを呼び込めるので、より深い関係になれるけど、たぶん撫でられるだけだろう。もしも暴力行為があった場合は、いかつい筋肉猫、シェンメイ姉妹が出て来る。
まぁここは教養のあるVIP専用なので、そんな事は起こらないだろう。起こらないと信じている。他国のVIPの場合、猫の国から出れなくなるから、マジで守って欲しい……
「「うわ~。いいんじゃないかにゃ~?」」
完成したウサギ族との憩いの広場を見たリータとメイバイは絶賛。だが、わしには思う事がある。
美味しいところをパクリまくり……見た目はキャバレー……なんだかストリップ小屋にも見えなくはない。本当に、これでよかったのじゃろうか??
またわしはやらかしてしまったのではないかと考えていたのだが、キラキラした目のリータとメイバイに抱きつかれた。
「「それで名前は??」」
「勝手に決めてにゃ~」
「「じゃあ、猫小屋で……」」
「どこに猫の要素があるんにゃ~~~!!」
さすがにわしのツッコミは二人の心に染み渡り、ウサギ族との憩いの広場は、『ラビットランド』と、どこかで聞いた事のあるような名前に決まるのであったとさ。
「そんじゃあ行って来るにゃ~」
ラビットランドを建てて仮眠を取ったわしたち猫ファミリーは、クリフ・パレスに転移。今回もアメリカ時間の朝に訪れ、さっそく移住の準備に取り掛かる。
ヨタンカに移住者第三弾を集めさせている間に、わしとコリスは用心棒で雇ったエルフ夫婦と面会。これまでの暮らしはどうだったかと質問する。
初日こそは、ウサギ族から距離を取られたらしいが、大物の獲物を持ち帰ったら態度は一変。めちゃくちゃ撫でさせてくれるようになったそうだ。
仲良くなったのはいい事なのだが、それでいいのかウサギ族……なんか奥さんはウサギを侍らせてるし……
いちおう警備を兼ねているのでエルフ旦那から詳しく聞くと、近くにはそれほど危険な獣はいないようだ。いまのところ白い獣は確認していないが、空からはもしもの事もあるので、ヨタンカと避難計画は話し合うように指示を出す。
まぁそれもこれも、移住が終わって千人規模の集落になってからだ。その規模を想定して考えるように言っておいた。
あとはエルフ用の食料を足して、ウサギを侍らせているリータ達と合流する。
だからついて来たのですね。ここでなら法律が無いからモフり放題だと思って……
わしがエルフも居るから大丈夫だと言ったのに不思議に思っていたら、リータ達はウサギハーレムが目的だったらしい。
だが、その楽しい時間も、もうおしまい。時間が来たので三ツ鳥居をセット。開いたらウサギ達を走らせて、猫の国にて揉み洗いと言う洗礼を受けてもらう。
その二日後には、ラビットランドのオープンだ。
『え~……先日発表がありにゃした通り、今日を持って、道端でのウサギ族の撫で回しを禁止するにゃ~』
「「「「「えぇぇ~~~」」」」」
わしが音声拡張魔道具を握って大事な発表をすると、ラビットランド前に集まった住人からの落胆の声は凄まじいが、落ち着くのを待って話を続ける。
『その代わり、この建物内では自由に撫でてくれてかまわないにゃ』
「「「「「おお~~~!!」」」」」
「「「「「キャ~~~!!」」」」」
『聞いてにゃ! 聞いてにゃ~!! 自由と言ってもルールはあるからにゃ! 守らない者は出禁になるからにゃ~~~!!』
住人の騒ぎ声に負けないように叫んだわしは、リータ達に目配せしてから、さらに声を張り上げる。
『では、ラビットランドのオープンにゃ~~~!!』
こうしてラビットランドは初日から、大混乱の中オープンとなるのであった。
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