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第二十一章 王様編其の四 ウサギ族の大移動にゃ~
595 ハンターギルド開業にゃ~
しおりを挟むソウの地下空洞から逃げ帰ったわしは、とある物を持ってウサギ族を集める。
「トウモロコシ種蒔き大会の開催にゃ~!!」
そう。地下空洞でポポルと奴隷に育てさせていたトウモロコシの培養が終わったので、さっそく植えようとウサギ族を集めたのだ。
ちなみにクリフ・パレスでは、培養が間に合わなかったからすでに作付けは終わっているので、ポップコーンと生食用は分けられなかった。なので、収穫の時に分けさせる予定だ。
うちは二班に分かれての作付け。今回は早く収穫したいから、裏技を使ってトウモロコシを作る。
農作業員はうじゃうじゃ居るから種を植える作業は早く終わりそうに思えたが、いまいち進んでいない。ウサギ族だけ呼んだのに、本日非番の住人が痴漢しに集まったから……
こんな壮観なウサギの群れは見逃せないのですか。でも、痴漢するなと言っておるじゃろう? いや、そんな顔をされても……。「ドントタッチミー」って言われたらやめるんじゃぞ? リータ達もじゃぞ??
いちおう王様の命令なので、ちゃんと言う事は聞いてくれるが、「ドントタッチミー!」は途切れない。王妃が率先して痴漢しまくるから、住人も止まらないみたいだ。
その迷惑そうなウサギの中から三十人ほど集めたら、別の仕事。栄養水をブレンドしてもらう。
近付くな! 繊細な作業をしておるんじゃ! リータ達もじゃ!! ゴロゴロ~。
さすがに危険な液体を扱っているので、わしは鉄壁ガード。住人は王様が怒っているので近付かないが、リータ達は近付いて来るのでわしが犠牲になる。
その姿に、三十人のウサギは感動していた。残り大多数は痴漢されまくっているから恨めしそうにわしを見ていたけど……
あとは栄養水を撒くだけ。痴漢のせいで思ったより時間が掛かってしまったので、わしが魔法で水撒きしてあげた。
農作業が終わると、全員解散。逃げ惑うウサギ族と追いかける住人を横目に見ながらキャットタワーに帰ったら、忙しい双子王女と面談だ。
「わしが各国から買い付けた服って、いつになったら届くにゃ? 苦情は入れてくれたんにゃろ??」
そう。ウサギ族は素っ裸で歩いているから、こんなに痴漢にあうのだとわしは気付いたのだ。
「「そ、それは……」」
「まさか隠したにゃ!?」
そのまさか。ウサギ族は素っ裸の生活しかしていなかったので、服を着たいと言って来なかったから、双子王女は服が届いても黙っていたのだ。
わしが各国の商業ギルドに苦情を入れようとした際にはバレると困るから、自分達から連絡すると言ったのだ。
「服はどこにゃ~。どこにあるんにゃ~。服はどこにゃ~。どこにあるんにゃ~」
双子王女は口を割らなかったので、わしはご乱心。キャットタワー内をおどろおどろしい声を出しながらうろつくのであったとさ。
さすがに王様がキレているという事もあり、役場職員がこっそり服のありかを教えてくれた。
キャットタワー地下の空き部屋に巧妙に隠された大量の子供服をゲットしたら、夜にウサギ族の居住区に行って配る。
ウサギ族はゴアゴアするから着たくなさそうだったが、わしが「痴漢が減るかも?」と言ったら外出する際は必ず着るようになった。
しかし、痴漢は半分しか減らなかった……
件数が半分じゃなくて、触られる面積が半分なので、痴漢件数は変わっていない。まぁこちょばい所をモフられる事は無くなったので、服はウサギ族にとって防具と受け取られているようだ。
これで多少はストレスが減ったらしいが、ウサギ居住区に強姦しに入る住人が続出……。どこで聞いたのか、寝る時は全裸だとバレてしまったらしい。
朝起きたら知らない子供が隣で寝ているケースが多発し、わしの元に陳情が殺到。「それは代表の仕事」と言ってみたが、双子王女は「なんとかする」とだけ言って、まったく動いてくれないらしい。
なので、王様勅令発動!!
『夜にウサギ居住区に入ったヤツは、猫の街から追い出すにゃ~!! シラタマ』
至る所にこのような殴り書きの看板を立てたので、わしがめっちゃキレていると住人に伝わり、ようやくウサギ族の安眠が守られるようになったとさ。
問題だらけのウサギ族移住に走り回っていたら、もうハンターギルド開業の日。
本当は四月一日から開始する予定だったが、桜を見る会があったから四月の真ん中にズラしてのんびりしてから式典に参加する予定だったのに、ウサギ族のせいで疲労困憊だ。
しかし、第一弾に王様が出席しないわけにもいかないらしいので、渋々猫穴温泉に作られたハンターギルドに猫ファミリーでやって来た。
ハンター協会からの見届け人は、会長と次期会長レイフの揃い踏み。ハンターギルドの訓練場では、長い白ヒゲを揺らす会長の長くて為になるお話と、レイフの超短い挨拶を聞いて、オオトリの王様の挨拶。
わしも短くしようと思っていたのに、レイフが「なせばなる! 頑張れ!!」と、二言しか言わなかったから、そこそこ喋らない事には格好がつかない。
「え~。本日はお日柄もよく……」
結婚式のスピーチのような枕で時間を延ばし、若い頃のハンター失敗談で笑いを取ったら最後の締め。
「にゃはは。若い頃と言ってもほんの数年前だったにゃ。にゃははは。そうそう、こんにゃこともあったにゃ~」
いや、受けが良かったので、もうちょっと喋ってから締め。
「危険にゃ仕事を進んでしてくれる君達を、わしは誇りに思うにゃ。……にゃんかこれでは兵士に挨拶してるみたいだにゃ。ま、無理なく命を大事に狩りをしてくれにゃ。狩りが出来ない者は、住人が困っている事を解決してやってくれにゃ。みんにゃの頑張りで、猫の国に笑顔が増えるんにゃ。頼んだにゃ~」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
わしのどうでもいい話が終わると、ギルド職員もハンターも笑顔で応えてくれるのであった。
それからわしはお偉いさんの相手。会長からは涙ながらに「助かった」と礼を言われた。まぁ犯罪者からメシを奢られただけで牢屋に入れられたんだ。わしもお会い出来て嬉しいと言っておいた。
だって、少なからずわしのせいでもあるんじゃもん。いや、レイフの容赦なさのせいじゃもん!!
そのレイフはと言うと、まったく気にせず「がはがは」笑いながら会長の背中をバシバシ叩きまくっている。
いい加減にしないと、会長死ぬぞ? 暗殺を企んでいるんじゃなかろうか……
虫の息の会長はわしが助けてあげて、レイフに「今日は親友の参謀は連れて来ていないのか?」と聞いたら、会長が居れば全てやってくれるから必要ないとのこと。
会長も、この参謀の傀儡なんじゃなかろうか……
気になる事はあるが、聞いておかないといけない事も多々あるので、うっとうしいレイフはその辺で遊んでいろと命令して、わし達は真面目な話。
各街の代表一人ずつと軍のトップクラス、それとギルマスとサブマスを交えての質疑応答。さすがは会長。どんな質問が来ても簡潔に答えてくれるので安心だ。レイフじゃこうも上手くいかんもん。
有意義な話を聞き終えて、ハンター登録と説明で忙しいはずの訓練場に移動したら、レイフがバカ騒ぎしてやがった。
本日は登録と説明だけで待ち時間は長くなるから、軽食と飲み物は用意していたのだが、どこから持ち込んだのか酒樽が何個も詰まれ、レイフを中心とした酒盛りとなっている。
イラッと来て注意しようとしたが、これも民間人の醍醐味だと会長に諭された。
どの国の軍も、仕官、徴兵関係無く、羽目を外せないのだ。ましてはわしが無理矢理兵士にした人間も居る。感謝する人も居たが、内心では抑圧されていたのかもしれない。
でも、レイフの人心掌握術、凄すぎない? わしはそこまで好きになれんのじゃけど……あ、位の高い者からは嫌われているのですか。それって、会長になった時、大丈夫??
レイフは無意識に弱者を惹き付ける特技を持っているらしいが、権力者に対しては通じないようだ。しかし、圧倒的大多数の弱者に守られると言う事は、圧倒的人数の兵を手に入れているようなもの。
本人には自覚が無く、いつでも先頭を走ってくれるから、皆もついて来てくれると会長が教えてくれた。
なんだか信じられない話だが、これだけの人間を惹き付けているのだから事実なのだろう。わし達も遅ればせながらバカ騒ぎに便乗するのであった。
でも、レイフに近付くとうっとうしいので、一定の距離を取るわし達であったとさ。
バカ騒ぎの中央、裸踊りをしているレイフを笑って見ていたら、いい装備を付けた女性パーティが近付いて来た。
「あ~……猫ちゃん。ちょっといい?」
「にゃ! アイ達にゃ!! わざわざ来てくれたんにゃ~。ささ、空いてる席に着いてくれにゃ~」
「出来たらこっち来てくんない??」
どうやらアイ達は、お偉いさんに囲まれた席なんかに同席したくなかったからわし達を呼び出したようで、移動の間に「鬼畜か!」とかツッコまれてしまった。
まぁわしは角を生やせる畜生だから間違いではないので怒る事もなく、訓練場の端にテーブル等を並べたらアイパーティと猫ファミリーで雑談する。
「だから拠点を移そうとね」
「へ~。しばらく猫の国で活動するんにゃ~」
「待ちに待ってました!!」
アイ達との雑談をかいつまんで説明すると、東の国は全て回ったから他国に遠征する話があったのだが、マリーの猛プッシュで猫の国に決まったらしい。しかしハンターギルドが無かったので、少し待たせてしまったようだ。
「ハンターギルドはまだ一個しかないけど、拠点にしてしまっていいにゃ?」
「適当に見て回るのも醍醐味だしね。猫ちゃんの作った国なら、どこを見ても面白そうよ」
「てっきり猫の街に作ると思ってました~。猫の街にもギルドを作ってくださいよ~」
「猫の街はいまのところ計画はないにゃ。それに立て込んでいるからにゃ~。来月にはソウも開業するから、そっちで我慢してにゃ~」
「「「「そこをなんとか!!」」」」
何やらアイ達の鼻息が荒いので何故かと思ったら、マリーはわしを撫でたいが為に来たがっていて、その他数人はわしの家をタダで使おうと考えていたようだ。
もちろんそんな勝手は容認できないので断っていたのだが、揉みくちゃにされて、つい、ポロッといらん事を言ってしまった。
「「「「「立って歩くウサギ!? 見たい!!」」」」」
こうしてアイ達は、仕事そっちのけで猫の街に滞在する事になったとさ。
当然、痴漢する為に……
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