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第二十章 冒険編其の二 さっちゃんの大冒険にゃ~

556 北極圏探検終了にゃ~

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 北極点到達記念の石碑の数々が泣く泣く作られたら、キャットハウスを出してランチ。それから転移して帰る予定だったが、皆はオーロラをもう一度見たいとのこと。
 今晩出るかどうかはわからないが、わしも見たかったので、もう一泊する事となった。

 夜まで少し時間があったので、やる気のないペンギン(仮)とまたたわむれてから、オーロラ観賞。
 感動冷めやらぬままキャットハウスで一夜を明かすと、チェクチ族の集落に転移。族長のヴクヴカイと面会して、猫の国に来る者の準備はどうなったか聞いたら、終わっていたようだ。

「そんじゃ、このまま連れて帰るけど、大丈夫かにゃ?」
「うむ……しかし、どれぐらいの期間で帰れそうなのだ?」
「一ヶ月から二ヶ月ってところにゃ。まぁちょくちょく顔を出す予定にゃから、その時に近況は伝えるにゃ~」
「わかった。すぐに荷物をまとめるように言ってくる」

 不安が少しだけ解消したヴクヴカイは一度部屋から出て、戻って来たら商談に移る。

白鉄しろてつ黒鉄くろてつだったかにゃ? 余ってたら売って欲しいんにゃけど」
「冬場は採掘できないからな~……弓矢を持って行かせればいいか」
「大事にゃ武器じゃにゃいの?」
「何百本もあるから問題ない」
「お~。それは助かるにゃ~」

 白い弓矢と黒い弓矢は、いったいどれだけの値が付くかわからないので、ツケにしてもらう。これの売上が留学生の滞在費に当てられると言ったら、さらに十本も包もうとし来たので、一本でもお釣りが来ると教えてあげた。

 商談が終われば、二人の留学生の紹介をしてもらう。どちらも族長の子供で、娘のゲウトワリと息子のナヴガン。ナヴガンは先日キャットハウスに来ていたが、メシをガッツいていて話をしていなかったので、人となりを少し聞いておいた。
 ナヴガンは、ゲウトワリより二歳下。長男なので次期族長らしい。そんな者をわしに預けていいのかと聞いたら、わしの事を信頼してくれているようだ。どちらかというとオニヒメ狙いで、くっつけようと思っているのかもしれない。
 まぁそんな事はわしの目が黒い内には絶対させないので、連れて行く事を了承する。

 でも、わしって本当に千年生きるとしたら、オニヒメが一生結婚できない事になってしまう……むむむむ……


 悩み事が増えてしまったが、ヴクヴカイと二人もバスに乗せて黒い壁に移動し、白い弓矢と黒い弓矢を三本ずつ受け取る。値段がわからないので、いちおうお互いの文字で念書を書いておいたから、わしが騙さない限り念書は有効だ。
 それからヴクヴカイと別れの挨拶をして、ゲウトワリ達を無理矢理引き剥がし、バスに乗せて連れ去る。

 だって、族長が今生の別れかってぐらいわんわん泣いて離れてくれなかったんじゃもん。だから人攫ひとさらいじゃなくて、猫じゃ!

 無理矢理バスに押し込み発車させてしまったからナヴガンに若干疑われたが、集落から離れて森に入ると、ここで準備。暇な時間に作っておいた土で出来た偽三ツ鳥居を次元倉庫から取り出し、ゲウトワリとナヴガンに目隠しの布を渡す。

「なんで目隠しなんですか?」
「やっぱり人攫い……」
「違うにゃ~。簡易三ツ鳥居を初めて使う人の中には、酔う人が居るらしいんにゃ。聞いた話だと、景色がぐにゃ~って歪むんにゃ。酔わない為の措置にゃだけだし、数分で終わるから、ちょっとだけ我慢してにゃ~」

 嘘をペラペラ喋って二人に目隠しをしてもらうと、リータとメイバイに手を引かせ、鳥居を潜ってもらう。そして四人が固まって止まったら全員そこに集まり、鳥居をしまって転移。
 たんに、二人に転移魔法を知られたくなかったからひと芝居を打っただけで、猫の街の三ツ鳥居集約所に転移したのだ。


 わしのマーキングした場所は一番奥の小部屋だった為、そこの壁に再び偽三ツ鳥居鳥居を置いてから、二人の目隠しを外す。

「なんで建物の中に……」
「暖かい……」
「これが簡易三ツ鳥居の効果にゃ~」

 ゲウトワリとナヴガンは、壁に四方を囲まれて驚いていたので、リータ達に手を引かせて外に連れ出す。
 しかし、集約所の扉は配達の時間ではなかったので、外からかんぬきが掛かっていて開かない。なので、扉に手を触れ、土魔法を使って無理矢理開けてやった。

「わ! 雪がない!!」
「暖かい……」

 外に出るとゲウトワリは思った通りの反応をしてくれるが、ナヴガンはボキャブラリーが足りない。いや、驚き過ぎて、頭が回らないのだろう。
 二人は驚いて歩いてくれなかったので、バスに乗せて役場に向かっていたら、わしの帰りに気付いた住人が「おかえり」と手を振ってくれている。
 ここでようやく二人から質問の嵐になって、リータとメイバイが答えるのに大変そうだ。

 薄着や猫耳や建物。チェクチ族の集落では見た事の無い物ばかりで、二人は別世界に来たかのような驚きようだった。


 我が家兼、役場に帰ると、いつものように役場職員のお出迎え。二人を軽く紹介して、夜になったら歓迎の宴と冒険談。予想通り、双子王女がからんで来た。

「「チェクチ族は猫の国に入れずに、東の国に入れたらどうですの?」」
「もうそのやり取りは、イサベレとしたにゃ~~~!!」

 ゴリッゴリッの双子スパイは、レアアースの超豊富な土地を東の国の物にしたいが為に、わしにハニートラップを仕掛けるが、リータとメイバイが奪い取ってくれたので、豊満な胸から抜け出せた。

「ところで、ガイドさんは空いてるかにゃ? 明日はチェクチ族の案内をして欲しいんにゃけど」
「たしか、今日、南の国の貴族が帰ったところでしたわよね?」
「ええ。数日は手が空きますから、担当者に声を掛けておきますわ」
「じゃ、よろしくにゃ~」

 猫の街への旅行客が増えたので、数人の猫耳ガイドを育成していたが、人気だから空いていてよかった。人気の理由は、やはり猫耳と尻尾。旅行客は、猫耳族と密な接触が出来るから嬉しいようだ。
 作った理由は、新天地の者をいつもわしが案内していたので、面倒臭くなったから。誰からも王様の仕事じゃないとツッコミを受けるので、いちいちボケを考えるのは大変だったのだ。

 ガイドの件がまとまったら、衣食住の相談。食と住は、日ノ本組が使っている屋敷の部屋が空いているので、すぐに決定。明日には服も用意してくれるようだ。
 学校も遣猫使で使った制度があるので、街の案内が終わったら、担当者に説明を丸投げ。しかし、仕事の全てを職員に割り振ってしまったので、双子王女の顔が険しくなって来た。

「「小説家の取材は……」」
「やるにゃ~。でも、明日は剣の修理に行きたいんにゃ~」

 武器の修理は時間が掛かるから、先にやりたいと言ったらおとがめはなし。ただ、頑丈な【白猫刀】が真っ二つに折られたと聞いて、双子王女はとんでもない敵と戦って来たのだと喜んでいた。

 次回は、さらに強い敵と戦って来いって……わし、死に掛けたんじゃからな? これ、マジじゃからな?
 わしが死んだら猫の国は東の国が守るじゃと!? わしに死んで来いと言っておるのか! そうじゃろ!!

 どうも小説にかこつけて、わしの暗殺を企んでいたようだ。双子王女は話を逸らし出したから決定的だ。
 この事もあって、二人を追い出してやろうと考えるわしであったが、双子王女が居ないと楽が出来ないと思い、頭を悩ませるようになったとさ。


 そして翌日、わしは朝早く起きて出掛ける準備。昨夜はひと悶着あったが、メイバイとイサベレを連れて江戸の近くに転移する。
 そこからダッシュで江戸城に乗り込み、タヌキ侍に将軍と面会したい旨の手紙を渡す。その時、「出来るだけ早く会いたいな~」と言ってみたら、忖度そんたくしてくれて、三十分後には面会となった。

 わし達は江戸城敷地内にある道場にて、刀の素振りをしているタヌキ将軍秀忠の姿を発見したので声を掛ける。

「鍛練中だったにゃ? 邪魔してすまないにゃ~」
「かまわん。父上からは、シラタマ王が来たら、手厚く接しろと言われているからな。それで今日は、どういった用件だ?」
「一番腕のいい刀鍛冶を紹介して欲しいんにゃ」
黒刀こくとうを奪っただけでなく、刀鍛冶を紹介しろだと……」

 わしは秀忠に微妙に嫌われている。関ヶ原でボコボコにした事はヤマタノオロチ騒動でチャラになったのだが、その後、家康の名を借りて宮本武志たけし用の刀をかつあげしたからだ。
 元々秀忠の愛刀を二本も折った事を根に持っていたところに、さらに二本の刀を奪い取ったから嫌われてしまったのだ。その上、家康が息子の自分より楽しそうに喋る事も気に食わないらしい。

「前回は無理を言ったけど、今回はちゃんと支払いするから機嫌を直してくれにゃ~」
「また食べ物で釣るのか……」
「まっさか~。これで払うんにゃ~」
「矢? ……こ、これは!?」

 秀忠には餌付け効果が薄くなっていたから……ではなく、わしも悪いと思っていたので、黒魔鉱で出来た長くてぶっとい矢を取り出すと、秀忠の目の色が変わった。

「これで黒鉄くろがねの刀が、五、六本は作れるにゃろ?」
「こ、こんなに貰っていいのか?」
「将軍には借りが多いからにゃ~。もっと欲しいにゃら、有料で承るにゃ~」
「どこにこんなに黒鉄が……」
「最近、旅に出た先でにゃ~」

 簡単にチェクチ族との出会いを説明して、猫の国に入れたと嘘を言う。これで徳川家は狙えないし、わしから買うしか方法が思い付かないだろう。


 とりあえず、わしとのわだかまりが少し解消したらしく、将軍みずから刀鍛冶を紹介してくれる事になったので、バスに乗って移動する。
 そうして江戸の外れにある屋敷で刀鍛冶の老人と面会して、わし達の壊れた武器を見せてみたら、秀忠と老人は引っくり返った。

「そんにゃに驚く事にゃの?」
白鉄しろがねがこんなに……父上の槍にしか使われていないのに……」
「わしの刀は関ヶ原の時に見たはずにゃろ~」
「あの時は、まさか白鉄とは……そんなにあるなら、白鉄も買えないか??」
「いいにゃ」
「無理を承知で……いま、なんと言った??」
「いいって言ってるにゃ~」

 わしが了承しているのに、秀忠はいまひとつ信じてくれないので、これまたぶっとい白魔鉱の矢を取り出して見せたら、また引っくり返った。

 やっぱり将軍はお茶目じゃのう。


「商談はまた今度にして、直せるかどうか教えてくれにゃ~」

 将軍劇場はもう少し見たかったが、イサベレとメイバイに肘でこつかれたわしは、老人との話に移る。

「れいぴあとないふと言いましたか。どちらも見た事も無い形ですからな……作った所に持ち込んだほうがよろしいかと……」
「まぁそうだろうにゃ~……似たようにゃ長さの刀にゃら作れるにゃ?」
「それならば……」
「イサベレ、メイバイ。形は変わるけど、刀を作ってもらいたくにゃい? プレゼントするにゃ~」

 二人に問うと、わしからのプレゼントなので即答。どちらも刀を作ってもらう事で落ち着いた。

「ところで、わしの刀は直せるのかにゃ?」
「無理ですな。くっ付けたとしても、すぐに折れます」
「やっぱりにゃ~。じゃあ、わしも新調するにゃ」
「この刀をですか……こちらとしては、どこの誰が作ったか教えて欲しいぐらいです。この技術があれば、私の生涯で一番の刀を作ることが……」
「あ、それはわしが作ったにゃ~」
「なんですと!?」

 老人がまた引っくり返ろうとするので、わしは服を掴んで阻止する。それから【白猫刀】に手を合わせて供養したら、鉄魔法を使って元の大きさに戻す。重力魔法で圧縮していた事もあり、【白猫刀】より三倍も大きな刀となってしまった。
 イサベレのレイピアでも、日ノ本では手に入らない白魔鉱の量なのに、まさか一本の刀にこれほどの量の白魔鉱が使われていたと知って、老人と秀忠は驚きすぎてバク中するのであった。

 綺麗に着地したな。このジジイ……只者ではない。

 秀忠ならまだしも、まさか老人が綺麗なバク中をするとは思いもよらず、わしも驚くのであったとさ。
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