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第二十章 冒険編其の二 さっちゃんの大冒険にゃ~
550 縄張りの分割にゃ~
しおりを挟む「皆、怪我が治ったのか??」
わしが張っていた落とし穴から落ちた普通のマンモスが怪我をしてしまい、信用ならないとブーイングが酷かったので、全頭を回復魔法で治してあげたら、巨大マンモスは驚いていた。
「感謝しろとは言わにゃいけど、治したんだから許してくれにゃ~。わざとじゃないんにゃ~」
「うぅむ……今回だけだ。次はないぞ」
なんとか巨大マンモスが許してくれたので、落とし穴に使っていた蓋は全て消し去り、そのまま東に進む。
クレーターになっているから迂回しないかと聞いてみたのだが、白や黒いマンモスの数も多いので、協力して問題なく登っていた。
少し時間が掛かりそうだったので、わしは巨大マンモスの頭から地面に飛び移り、リータ達と合流して、事の顛末を説明する。
「また戦えないのですか……」
「今回こそはと思ったのにニャー……」
「一匹ぐらい……」
リータ、メイバイ、イサベレはがっくし。イサベレは怪しい事を言っているので、逆に文句を言う。
「よくもまぁ、アレにわしが勝てると言ったにゃ? 全面戦争になっていたら、ヤバかったんにゃよ? わかっているにゃ??」
「うっ……ダーリンならいけると思ってた……」
「勝てるかもしれにゃいけど、時間が掛かるにゃ。その間、みんにゃが殺されていても不思議がないんにゃよ? 次からは気を付けてくれにゃ」
「ごめん……」
わしがマジ説教すると、イサベレだけでなく、リータとメイバイも肩を落とした。これでしばらくは戦闘熱が冷めてくれると有り難いが、どうなることやら。
とりあえず、マンモス達はほとんどクレーターから上がったので、巨大マンモスにリータ達の簡単な紹介をしつつ、全員を頭に乗せてもらって猫帝国に移動する。
その時、皆はモフモフの草原に下り立ったので、わしの説教は記憶に残ったか微妙だ。モフモフ言いながら転がっているし……
皆の事は少し心配だが、巨大マンモスが進むには木が邪魔だし、後ろを見たらへし折って進んでいたので、自然破壊は見ていられない。
なので、わしが木を切り倒して、次元倉庫に入れる。白い木は、売り払って魔道具の材料にしてもらう予定だ。
そうして進んでいたら、白い木の群生地に入ったところで巨大マンモスが念話を送って来た。
「ここは……良い! ここが小さき者の縄張りなのか??」
「少し前からにゃ。かなり広いし、開けている場所もあるから、お前でも寝転べそうだにゃ」
「うむ……しかし、本当に小さき者の縄張りなのか? 強い敵が居るから、我を連れて来たのではないのか??」
「倒したって言ったにゃ~。ま、にゃにも襲って来にゃければ、すぐに答えがわかるにゃろ」
マンモスの威を借る猫とはならず、中心に近付いても獣は出て来なかったので、巨大マンモス達は信じる事となった。
しかし、あまり進まれると廃墟となっている文化遺産が壊されてしまうので、廃墟の手前で一時停止。巨大マンモスの上からメイバイに写真を撮らせ、マンモスの居住エリアを話し合う。
廃墟のほとんどは建物の跡しか残っていないので、多く残す必要もないだろう。なので、赤い宮殿に設けた城壁から、100メートル離れた位置に新たな壁を作って、それ以外をマンモスの居住エリアと決定した。
それでも残りは十分な広さがあるので、巨大マンモスからも反対意見が出なかったから問題ない。逆に、わしの縄張りが小さすぎると恐縮していたので、これだけあれば広すぎるぐらいだと言っておいた。
外壁の外の建物は維持するコストが高過ぎるし、ほとんど壁しか残っていないので、もったいないけど更地にする。といっても、これはマンモスの仕事。白い木も抜いた物は端に集めておくように言っておいた。
あとは、城を囲む外壁を新築するだけ。皆にやらせると猫付きになるので、昼食を食べている内に、ダッシュで外壁を作る。だが、一周して戻って来たら、要所要所に、わしの石像が作られていた……
ひとまず作業が終われば、わしも遅ればせながらのランチ。コリスに少し取られながらもゆっくり食べる。
「それにしても、おっきいですね~」
「巨象より大きいニャー」
わしがモリモリ食べていたら、リータとメイバイとオニヒメが、石像作りを終えて戻って来た。
「そうだにゃ。でも、あいつがここを縄張りにするって事は、赤い宮殿を守ってくれるって事にゃ。あいつより上は、そうそう居ないにゃろ」
「本当です! これでオニヒメちゃんの故郷が守られますね!!」
「さすがシラタマ殿ニャー!」
リータとメイバイはわしを褒めて撫で回して来るけど、さっきまで戦おうとしてたよね? 象とは戦う気はさらさらなかったのですか。……本当ですか??
どうやら二人はアイラーバを思い出して戦うつもりは無かったらしいが、絶対ウソだと思う。なんかわしを黙らせようと、めちゃくちゃ撫で回すし……
これ以上追及してもわしの毛並みが乱れるだけなので、一旦距離を取り、巨大マンモスと別れの挨拶をする。
「いいにゃ? 他はどうなってもかまわないけど、あの壁を壊さないように気を付けてくれにゃ」
「わかっている。これだけ広ければ、何も不自由がない」
「あと、お前が負けそうにゃ敵が現れたら、逃げるんにゃよ? わしの縄張りを、命懸けで守ってくれなくていいからにゃ」
「これだけ魔力の満ちた地だ。逃げるわけがないだろう」
「別に奪い取られろと言ってないにゃ。協力して倒せば元通りにゃ。無駄に怪我をする必要はないと言ってるんにゃ。考えておいてくれにゃ~」
「うぅぅむ……」
巨大マンモスはあまり乗り気ではないが、考えるだけはしてくれるようだ。
それからわしは、他の縄張りに住んでいるからたまに見に来ると言って、写真を撮らせていたメイバイ達と共に、赤い宮殿に戻るのであった。
「さてと……やる事はやったし、心配事も片付いたから、冒険の再開といこうにゃ!」
「「「「「にゃ~~~!」」」」」
こうして北極へ向けた旅は、少し寄り道をしてしまったが、オニヒメ出生の謎の解決という大きな成果を土産に、再出発するのであった。
「にゃ!? 鳥だらけにゃ! チェクチ族はどこ行ったにゃ!?」
いや、チェクチ族の集落にあるキャットハウスを回収しようと転移したら、事件が勃発。
「明日、出発する」と報告をしに、族長であるヴクヴカイの屋敷に向かおうとキャットハウスを出たら、何匹もの黒くて大きな鳥に遭遇して出発できそうにない。
「あの黒い建物じゃないでしょうか? 避難所と言ってたでしょ??」
「たしかに……じゃあ、わしが族長を探すから、リータ達は鳥を引き付けてくれにゃ。ここからだと、西門の近くがいいかにゃ?」
「ですね。そこでなら、建物から鳥を離せそうです」
「よし! 作戦開始にゃ~!」
「「「「「にゃっ!」」」」」
リータと作戦を擦り合わせたわしは、しばし皆と一緒に行動。西に駆け、雪原にて【大光玉】を空に浮かべる。
目立つ光で鳥が集まって来る間に、装備を整える。といっても、マンモス騒動でリータ達はいつもの装備のままだったから、コリスに巨大盾を渡しただけ。
敵は空からなので、リータの盾だけでは足りないだろうと思っての判断だ。コリスがリータの指示通り動いてくれたら、被弾する確率はぐっと下がるだろう。
黒い鳥が集まって来たら、わしはダッシュで建物に走り、影の中に身を隠す。予定通り、リータ達が黒い鳥と戦いながら西に移動し始めたら影から出て、次は建物の陰に隠れながら避難所に走る。
黒い建物の扉をノックすると、恐る恐る住人が顔を出してくれたが、すぐに扉を閉められた。
「開けてくれにゃ~! シラタマにゃ~! 族長の客人にゃ~~~!!」
どうやら住人全てにわしの顔は知れ渡っていなかったので、猫が襲いに来たのかと驚いて閉めてしまったようだ。
なので「にゃ~にゃ~」ドンドン扉を叩いていたら、わしに弓を射ったという男が「うるさい!」と、怒鳴りながら出て来てくれた。
その男からヴクヴカイの居場所を聞くが、正直、どの避難所に居るかわからないとのこと。なので、予想の建物を教えてもらい、走って向かう。
一軒目の避難所は空振りで、猫問題で少し時間が取られたが、二軒目でヴクヴカイを発見。中に通してもらって話を聞く。
「にゃんでこんにゃ事になってるにゃ?」
「わからん。森から獣がわんさか出て来たから対応していたら、鳥まで出て来たんだ」
どうやらチェクチ族は、森から出る獣には、黒い壁の上から巨大弓を使ってなんとか倒していたようだ。しかし鳥では壁は役に立たず、全員に避難所へ逃げるようにと警笛を鳴らし、鳥が去るまで引きこもる作戦に変更したらしい。
「にゃるほど……でも、こんにゃ事は、にゃん度もあるのかにゃ?」
「いや、かなり古い時代に、一度あったぐらいだ」
「その時の原因はわかっているにゃ?」
「ああ。森の奥から強い獣が出て来たんだ。それに追われて、獣や鳥が押し寄せたらしい」
強い獣か……たしかに巨大マンモス辺りが近付いて来たら、同じ現象が起きそうじゃな。でも、うちでも似たような事があったな。あの時の原因は……スサノオか。あんな強烈な光を浴びたら……
そう言えば、阿修羅との戦闘でかなり派手な音を出したけど、まさかそれが原因とかじゃないよな? うむ。スサノオ様が違うと言っている気がするから、違うじゃろう。
「そう言えば、お前は西を見に行くとか言ってたよな? お前だけ何日も姿を見せなかったけど、何をしてたんだ??」
「あ~……えっと……森林浴にゃ~」
「……何か隠してないか??」
「隠してないにゃ~。隠してないけど、今回は無償で助けてやるにゃ~」
「おい、待て! 話は終わってないぞ!!」
怪しんで質問するヴクヴカイは置き去りにして、わしは早足で逃げ出す。無償で助けてやると言ってもますます怪しんでついて来たが、わしは無視して避難所からも外に出る。
さすがに外は危険なので、わしが外に出るとヴクヴカイは追いかけて来なかったが、「危険だから戻れ」と注意してくれた。ただ、ヴクヴカイの顔には「何をして来た~!」と書いていたので無視してやった。
あっちゃ~……猫帝国まではかなり距離はあるから、ここまで獣が届くのは時間が掛かったのか。
やっちまった……わしのこの手で、チェクチ族を危険に晒してしまった。族長も怪しんでいたし、どう揉み消したものか。
走りながら、チェクチ族の集落の危機よりも、自分のやらかした事がバレる心配をするわしであったとさ。
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