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第十八章 日ノ本編其の四 釣り大会にゃ~
495 久し振りにモテモテにゃ~
しおりを挟むつゆとデートをしていた所をリータとメイバイに見られ、わしが言い訳していたら、玉藻と家康タヌキ耳太っちょおっさんバージョンも詰め寄って来た。
「ちょっといまは忙しいから、あとにしてくんにゃい?」
「「なんじゃと~~~!!」」
火に油。リータ達のほうが怖いから後回しにしようとしたら、よけい怒らせてしまったようだ。
「シラタマさん……それはないんじゃないですか?」
「夜に説教するから、いまはタマモさん達と話すニャー!」
「え~! 説教にゃらいま聞くにゃ~~~!!」
「にゃ~にゃ~」文句を言いたかったが、文句を言うと夜の説教が延びるらしいので、仕方なく玉藻と家康に挨拶する。
「久し振りにゃ~。でも、到着って、明日じゃなかったかにゃ?」
「今日で間違いない。リータ達は、三ツ鳥居の前で待っていたから間違いないぞ」
「にゃんですと!?」
二週間ほど前、キツネ店主にキャットコンテナを届けた際に、天皇家からの手紙を直接渡されて玉藻達の来訪は知っていたのだが、わしの記憶の中で一日ズレていたようだ。
そう言えば、朝、リータに訓練が終ったら魔道具研究所に集合って言われていたような……リータ達は訓練がてらソウから走って来ると言っていたような……これも説教案件ですか。そうですか。
「それはすまなかったにゃ。仕事が忙しくて明日だと思い込んでいたにゃ~」
「……絶対嘘じゃろ?」
「本当にゃ~」
まったく信用してくれない玉藻達であったが、立ち話もなんだからと言って、その辺のテーブルと椅子を集めて座らせるが、二人以外にも風呂敷を担いだ小さなキツネ少女が居たので、もうひとつ持って来て座らせた。
「相変わらず、そちは王らしくないのう……」
「王みずから配膳とは、お主は本当に王なのか?」
リータ達の椅子と露店のお茶もせっせと運んだせいで、玉藻と家康はブツブツ言っているが無視。テーブルセッティングは終わったのだが、玉藻の隣に座るキツネ少女の顔色が悪い。
「大丈夫にゃ?」
「は……はい」
「この子って、玉藻の従者にゃの?」
「違うぞ。質屋から猫の国に行くなら、連れて行ってくれと頼まれたから連れて来たんじゃ。そちの紋が入った英語の紹介状も持っておったんじゃが……知り合いじゃないのか?」
わしの紋? そんなもん、作った覚えも使った覚えもない……あ、リータの作ったハンコの事を言っておるのか? また何かにわしの顔を押したのか……
「ちょっと君、その紹介状を見せてくんにゃい?」
「あ、はい……」
キツネ少女がゴソゴソと巾着袋の中から手紙を取り出すと、受け取ったわしは読んで見る。
なになに……マジもんの紹介状じゃ。てか、リータ達は、いつの間にこんな小さなキツネを勧誘しておったんじゃ? まさか京全土に配っておったりしないじゃろうな?
猫の国が毛むくらじゃらになるのは嫌じゃぞ……ん? 池田屋……
「にゃ!? お春ちゃんにゃ!?」
「そんな……もう顔も忘れていたのですか……うぅぅ」
「違うにゃ~。顔は覚えていないけど、名前は覚えていたにゃろ~?」
「え~~~ん」
デジャブ……タヌキ少女つゆと同じく、わしはキツネの顔も見分けられないので、キツネ少女お春を泣かせてしまうのであった。
「こんなに器量好しの女子の顔を忘れるとは、そちの目は節穴か?」
「え~~~ん」
玉藻さんは、デジャブを再現してお春の傷を広げないで!!
泣き続けるお春のせいで話が進まないのは、玉藻と家康に悪いので、頭を撫でまくって餌付けして、とりあえずリータ達に預ける。その時、好きなようにしていいかと聞かれたので許可する。どうせモフりたいだけなのであろう。
とりあえず、テーブルにはわしと玉藻と家康だけになったので、仕切り直して話をする。
「もう浜松は大丈夫にゃの?」
「ああ。元の生活に戻るにはまだまだ時間は掛かるじゃろうが、妾達の手を離れて、いまは城主が頑張っているはずじゃ。のう?」
「ああ。まさかここまで早く復興できるとは思わなんだ。これもそれも、シラタマ王のおかげじゃ。本当に感謝しておる」
「わしじゃないにゃ~。被災者、日ノ本が一丸となって頑張ったからの成果にゃ。みんにゃを褒めてやれにゃ~」
「コンコンコン。相変わらず感謝を受け取ってくれんのう」
「ポンポコポン。ちょっとは自分の功績と言ってもいいものなのにのう」
二人がべた褒めするので、恥ずかしくなったわしは話を変える。
「そう言えば、留学生を多く連れて来てるんにゃろ? どこに居るにゃ??」
「遣猫使は、先に旅館に向かわせておる」
「遣猫使……にゃにそれ?」
「天皇陛下の命で、猫の国で学ぶ者の通称じゃ。その昔に居た、遣唐使、遣隋使から取っておる」
おお~い! そんなヘンテコな名前を付けたら、後の歴史書に乗って笑われてしまうじゃろう。
「変にゃ集団に見えるから、ただの留学生にしにゃい?」
「陛下の使節団じゃから、名は必要じゃ」
「それにゃら猫は外してくれにゃ~!」
「猫の国に来るのだから、猫は必要じゃろう!」
今度は玉藻と「にゃ~にゃ~」と喧嘩になるが、リータ達の鶴の一声で、正式に遣猫使を猫の国が受け入れるのであった。
……これで、説教はひとつ減りますか? 有り難う御座います!
恥と引き換えに説教を減らしたわしは、気を良くして玉藻達を連れて、役場に向かう。
ちなみにつゆは、急にデートが終わった事に残念そうにしていたが、日ノ本最高家臣の手前、何も言えずに工房に帰って行った。
ちなみにお春は、役場までついて来て、メイバイに我が家のゲストルームに連れて行かれた。どうやら我が家に住み込みで、役場全般のメイドとして働くらしい。
わしは聞いてないんじゃけど……好きなようにしていいと言ったからですか。そうですか。給金は……やっぱりわしのポケットマネーなんですね。
役場に戻ったら、書類仕事。前もって作っていた留学申請書、英語の物と日本語に翻訳した物に、玉藻と家康の連名でサインをしてもらう。
玉藻は少しローマ字を習っていたからスラスラ書けるが、家康には手助けが必要なので、わしが書いた名前を写させた。
この書類に書かれている事を要約すると、猫の街の学校で、英語と西の地の常識を学ぶ事と、お金の話。エルフ達なら猫の国の国民だから国で費用を持てるが、他国の者にはびた一文払えない。
なので、宿代、食費、学校代の費用を日ノ本で持つか、仕事をして費用の足しにするかを選んでもらった。
もちろん日ノ本が全額負担。ヤマタノオロチを売った大金を渡したので、そこから支払われる。
そのほうが勉強に集中できるので、早く英語を覚えられるだろう。ただ、日本語をタダで教えてもらう契約にしていたのに、家康にバレてしまって、割り引きする契約に書き直させられてしまった。
わざと小さく書いたのに、このタヌキジジイが……
少し揉めたので契約書のサインは時間が掛かり、夕刻になってしまったから、ゾロソロと旅館に移動。双子王女を筆頭に、役場職員も日ノ本歓迎会に出席するらしいから、大量について来てしまった。
「え~……本当は、もっと早くに日ノ本と国交を結ぶ予定だったんにゃけど、不幸があったので少々遅れてしまったにゃ。こんにゃ宴会をするのもちょっと不謹慎にゃんだけど、今日だけは許してもらおうにゃ。では、猫の国と日ノ本の友好を願って、かんぱいにゃ~!」
「「「「「かんぱいにゃ~!」」」」」
わしの音頭で始まる宴会。遣猫使の公家もキツネもタヌキも、わしの口調をマネして近くの者とグラスを重ねる。そして猫の国の者ともグラスを重ねて笑い合う。
大人数だから料理が飛ぶように売れるので、日本庭園風に作られた庭でもバーベキュー。この高級肉は、わしからの奢りだ。
騒がしさが落ち着いて来ると、話の合いそうな者で集まり、念話入り魔道具を使って語り合っているようだ。猫の国の者は、尻尾を撫でたいが為に近付いている節があるが……
わしはというと、玉藻と家康に挟まれて難しい話。浮かれて飲みたいのだが、そうは問屋が卸してくれない。
「お礼参りの話は明日でよくにゃい?」
「いや、他国を知らないのでは、無礼があるかもしれない。作法はどうなのじゃ?」
「そうじゃぞ。日ノ本の代表が、粗相をするわけにはならん。国の特徴と、人と柄も教えておいてくれ」
「わしも詳しく知らないにゃ~」
「「お前は王じゃろうが!!」」
タブルツッコミを入れられても、しらんもんはしらん。ここは、双子王女先生の召喚!!
「「王様の教育を忘れていましたわ……」」
「にゃんとかにゃるから大丈夫ですにゃ~!!」
双子王女のシンクロ冷めた目から逃げ出したわしは庭に出る。そこでは、キツネ少女お春が肉を焼いている姿があったので、話し掛けてみる。
「にゃあにゃあ?」
「はひ! なんでしょうか……」
「いちおう主役にゃんだから、座って楽しく食べにゃい?」
「いえ……こちらのほうが落ち着きますので……」
「ふ~ん……ま、それにゃらいいにゃ。そう言えば、にゃんでまたうちで働こうと思ったにゃ?」
「あの……その……」
「にゃ~?」
わしの質問に、お春は顔を真っ赤にしてモジモジするので質問したら、変な事を言い出した。
「す……好きになっちゃいました! どうか、私をめかけにしてください!!」
デジャブじゃ……これまた、デジャブじゃ。つゆの再来じゃ……何故に、こんな丸い猫がモテモテなんじゃ? わしの体から、そんなフェロモンが出ておるのか??
それともアレか? 低周波……猫のゴロゴロには、リラックス効果があるとか聞いた事がある。リラックス効果じゃなくて、モテモテ効果が出ておるのかもしれん。
てか、さっちゃんとローザをなんとかフッたのに、補充されておる! しかも、愛人希望者なんて、どうしたらいいんじゃ~~~!!
「こんなわたしじゃ、ダメですか? うぅぅ……」
わしが頭を抱えていると、お春は目を潤ませてわしの足にしがみついて来た。
何この時代劇みたいなシチュエーション……わしに蹴飛ばしてフレとでも??
「あ……えっと……ちにゃみに、お春ちゃんはいくつにゃ?」
「ぐすっ……今年、十となりました」
アウトー! そんなもんめかけにしたら、わしがお縄になってしまう。いや、セーフじゃ! まだ年端のいかぬ少女ならば、問題を先送りに出来る。
「じゃあ、大人ににゃって、いい女ににゃっていたら、めかけにしてあげるにゃ~」
「いい、女……ですか?」
「そうにゃ。わしの好みはいい女だからにゃ。ちょっと歳が足りてないから、その間に、もう少し女を磨いてくれたらいいだけにゃ」
「わたしはフラれてない……」
「そうにゃ。楽しみに待ってるにゃ~」
「が、頑張ります!!」
これよりキツネ少女お春は、女磨きに化粧なんかをして、たまに白キツネになったりするのであった。
変化を解いてキツネ耳になったほうが、わし好みだと思うんじゃけど……
もちろんわしは微笑ましく見て、お春だけでなく、つゆにもアドバイスは一切しないのであったとさ。
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