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第十二章 王様編其の三 猫の国の発展にゃ~

320 キャットトレインの運行にゃ~

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 キャットトレインの試乗会が終わると、さっちゃん達には別れの挨拶をして帰路に就く。家ではアダルトフォープラスノエミと一緒にどんちゃん騒ぎ。
 ノエミも試乗会に来ていたので、わしが遠い距離が近くなると言った意味が伝わったようだ。

 翌朝目覚めると、全裸でエンマの足を抱いていた。まったく記憶にないが、撫でられただけであろう。なので、リータ達にバレない内に離れようとしたら、引き戸が開いた。
 残念ながら、こないだより目覚めるのが遅く、リータとメイバイに見られて、朝からガミガミと怒られてしまった。こうなっては平謝り。スリスリとびて、説教から解放される。

 騒がしく朝食を済ませると、アダルトフォーの出勤を見送り、皆で我が家の掃除をする。ノエミは客でも、勝手に寝泊まりしてるんだから手伝え!
 ブーブー言うノエミと、わしの掃除を止めるヤーイーを宥め、皆と掃除をしていたら、玄関から声が聞こえたのでわしが向かう。

「はいにゃ~。にゃんですか~?」
「「モフモフ~!」」

 わしが玄関の引き戸を開けると、二人の女の子にタックルされた。

「にゃ~? おはようにゃ~」

 おそらくおはようと言われたので返事をする。女の子の正体は、ローザとフェリシーちゃんなので正解だろう。

「えっと……どうしたにゃ?」
「「モフモフモフモフ」」

 う~ん……言ってる意味が、さっぱりわからん。ここは後ろの人に聞いてみよう。着ぐるみを着ていないけど、紫の髪という事は……

「リスさん。おはようにゃ~」
「ええ。おはよう」
「それで、にゃんかご用かにゃ?」
「今日、帰るんでしょ? 二人が一緒に帰りたいみたいだから、同行させてくれない?」
「いいんにゃけど、二人の親御さんはどうしたにゃ? いきなり居なくにゃったら、誘拐したと思われちゃうにゃ~」
「ホドワン様も了承済みよ。これ、手紙を預かって来たわ」

 どうやらフェリシーちゃんのお父さんは領の仕事が忙しいようだ。そこで、さっちゃんの誕生日パーティーには、お目付け役のローザのじい様、ホドワンが連れて来てくれたとのこと。
 ホドワンも、まだ王都で数日仕事があるようで、ローザがここに残っていても楽しくないだろうと、一日で領地に帰れるわしに頼むことにしたようだ。

 ハンターでの指定依頼として仕事をくれたのはいいのだが、血文字はよけいだ。「孫達に手を出したなら殺す」と書いていたが、そんなに嫌ならわしに頼まなければいいのに……
 それにフェリシーちゃんまで、いつの間に孫になったんじゃ!


 とりあえず了承するとして、モフモフうるさい二人を居間に案内する。居間にはコリスが丸くなっていたので、ローザとフェリシーちゃんはコリスにくっつける。
 リスさんも手をわきゅわきゅしているので、くっついて待っているように言って、わしは掃除に戻る。

 お昼前に掃除が終わり、エミリに料理を作ってもらって美味しくいただく。その時、リスさんがリスの着ぐるみに着替えていた。なんで着替えたのか聞くと、着ぐるみのほうが楽なんだとか。コリスが首を傾げているからやめて欲しい。
 昼食が終わるとノエミに別れの挨拶をして、皆で王都を歩く。王都の者は、コリスにもだいぶ慣れて来たのか、驚く人が少なくなっている。だが、コリスが通り過ぎるとリスの着ぐるみが現れるから、二度見する人が多い。

 道中、ハンターギルドへ寄ってホドワンからの指定依頼を受けると、王都を出て飛行機を取り出す。ローザとフェリシーちゃんは、久し振りに乗ったので嬉しそうだ。
 そうして一時間後、東の街に着いて門兵にローザ達を預ける。フェリシーちゃんは、ここで数日過ごして帰るらしい。

 最後の撫で回しを受けたわしは、ローザ達に手を振り、猫の国に向けて飛び立つのであった。


 猫の街に戻った早々、双子王女にからまれた。どうやら女王からキャットトレインの一報が入っていたようだ。

 こんな情報を隠すなんてどうかしていると言われたが、女王にチクるじゃろ? ちゃんと目を見てくれんかのう?

 わしの目を見てくれない双子王女に旅の成果を話すと、微妙な顔で褒めてくれた。これから外貨が安定的に入るのだから、文句を言われる筋合いはない。
 それに猫の街から東の国王都まで、三日で帰れるようになるのだ。これには、双子王女は嬉しそうにわしを撫で回すのであった。



 猫の国に戻ってからは、わしは忙しく過ごしていた。

 双子王女にキャットトレインの件を教えたので、線路を内壁まで移動して利便性を上げる。
 線路を内壁まで移動したので、外壁に付けるキャットトレイン用の門の配置が必要になる。これはわしの魔法でやったほうが早いので、ちょちょいのちょいで作ってやった。

 これで、ソウの街、猫の街、猫耳の里への直通便が完成となった。 

 そうしていると、ソウのホウジツからキャットトレイン完成の一報が入ったので、次の区間を作る。次は、キャットトンネル、ラサの街、猫の街、猫耳の里までの区間。
 ここはわしが手伝う必要がないので軍に任せようとしたら、ウンチョウから指揮する人が足りないと言われて渋々手伝う事となった。といっても現場監督なので、線路を作る兵士を見ているだけだ。

 コリスと共に作業を見守っていると、女王からトンネルについてのダメ出しが入ったと双子王女から連絡が来た。その事をウンチョウに伝えたら、ここは副将軍に任せてトンネルをなんとかしてくれと言われた。
 なんでも、わしがダラけきって見ているのが、兵士のやる気を削ぐんだとか……双子王女にもわしの態度は伝わっていたので、罰としてトンネルはわしの仕事となってしまった。

 現場監督だけって聞いてたのに~~~!

 なので「ブーブー」……「にゃ~にゃ~」言いながら転移。森の我が家からコリスと追いかけっこして、東の国の砦に入る。
 砦には、女王から連絡は来ていたらしいが、逆から来るとは思っていなかったのか、獣が攻めて来たのかと驚かせてしまった。まぁ似たようなモノなので、謝ってトンネルに入る。

 女王からの苦情は、線路の安全性だったので、入口から柵を作っていく。
 線路はレールも枕木も無く、真っ直ぐで平らなので、猫の国でも線路に入る馬車が続出している。悪路を走るより、走りやすくなっているから気持ちはわかる。
 なので、キャットトレインを優先してくれるなら入っていい事にし、事故に関しては自己責任。
 国で作った道をタダで使わせてやっているのだから文句を言わせないし、言わせないように法律も作って、街と村には立て札も立てた。
 キャットトレインの警笛を聞いた馬車も、素直に避けていると報告は聞いているので、事故が起きない事を祈る。

 しかし、トンネルでは避ける場所が少ないので、柵は必須。元々付ける予定だったが、忙しいから後回しにしただけだ。
 キャットトレインが稼働すれば馬車で入る者は居なくなるはずだけど、通信魔道具の点検や、間違って入る者も居るかもしれないので、念の為の安全確保は必要だろう。
 というか、柵から中に入って事故にあったら、そいつが悪いと押し切るリスク管理の意味でもある。

 トンネルでの作業はコリスにバスを運転させて、わしは【光玉】で辺りを照らし、移動しながら土魔法で柵を作る。コリスも楽しそうだし、わしも楽チン。ウィンウィンだ。
 だが、わしより魔力の少ないコリスでは、四分の一も進まずにギブアップ。手押し車に変更して押してもらうが、速い! 何度か馬車とぶつかりかけた。
 東の国の商人は驚いて固まり、猫の国の商人は手を振り、わし達の通過を見送る。

 順調に作業は続くが、トンネルを抜けるには馬車で四日は掛かるので、さすがに一日で終わらなかった。とりあえず、この日はコリスと車中泊。久し振りにのびのびと、コリスの上に乗って眠りに就いた。


 こうして柵も線路も完成し、キャットトンネルに一台、猫の国では三台のキャットトレインが走り回るのであった。


 猫の国のキャットトレイン運行が順調に進んでひと月。暑さがこたえるようになって来た。

 本格的な国のお金の話し合いも、猫会議を開いて滞りなく終わり、わしは今日もリータとメイバイの訓練に付き合っている。

「これをわしが入れたら『パー』にゃ。ホウジツはそれを入れても、『ボギー』だにゃ~」
「うぅ……外してくださ~い!」
「お昼ごはんを賭けてるんにゃから、外すわけないにゃろ。よっと……にゃはは。わしの勝ちにゃ~」
「くう~~~!」

 地下空洞に作られたゴルフ場で遊びながら……

 二人の訓練は実戦訓練もするが、魔力量の増加と体作りの時間が長いので、わしは暇になる事が多い。なので、暇潰しにひとホール作ってみた。
 わしが遊んでいるとホウジツに見られ、金の匂いがすると寄って来たので、たまに一緒に遊んでいる。

「また負けてしまいました~」
「勝率はわしが上にゃけど、ホウジツも上手くなってるにゃ~」
「本当ですか!?」
「本当にゃ~」

 手加減はしているけどな。わしが本気を出すと、毎回ワンオンじゃ。まぁワンオンどころか、ぶっ飛んでOBじゃけど……それも醍醐味か。

「しかし、お猫様とも勝負できるとは、面白いゲームですね」
「やり方を覚えればにゃ。普及させるには、課題はあるにゃ」
「国に広がれば、ボールとグラブでひと儲け出来るんですがね~」
「貧乏国家じゃ、まだまだ先にゃ~」
「残念です~」
「あ、ゴムボールはどうなったにゃ?」
「難しいようですが、試作品は出来たようです」
「お! 帰りに貰って行くにゃ。あとは量産できるかどうかだにゃ」
「ゴムの木を増やさない事にはなんとも……センジさんからは、土壌が合わなくて育成が難しいので、増やすには課題があると聞いています。でも、そんなに増やしてどうするのですか?」
「キャットトレインのタイヤに使えないかとにゃ。いまは鉄製だから、乗り心地が悪いにゃろ?」
「なるほど……いまより、さらに乗り心地が良くなるのですね!」
「生産者と技術者しだいにゃ。これも時間が掛かるにゃ~」
「お猫様の商売の貪欲さ、感服いたします~」

 わしとホウジツがにこやかに商売の話をしていると、リータとメイバイが寄って来る。

「シラタマさん。昼までのメニューは終わりました」
「シラタマ殿は……また遊んでたニャー?」
「こ、これは、儲け話をしていただけにゃ。にゃ~? ホウジツ?」
「はい~。お猫様の儲け話は勉強になります~」

 たしかに遊んでいたが、ホウジツは空気を読んで、わしの意見に即座に賛同してくれた。二人は信用していないけど…… 
 とりあえずはおとがめ無しなので、寝ていたコリスを呼んでランチにする。ホウジツも誘ってあげたけど、居心地が悪いのか、そそくさと逃げて行った。

 賭けの代金は忘れてないからな!

 ホウジツが離れて行くと食事を始め、わしとコリスは、エミリに作ってもらったお弁当をバクバク食べるが、リータとメイバイは何か考え込んで、チビチビ食べている。

「どうしたにゃ?」
「私達は、強くなっているのでしょうか?」
「強くなってるにゃ~」
「魔法は多く撃てるようになったけど、実感がないニャー」
「大丈夫にゃ。リータのパンチもメイバイのナイフも、最初と比べて、段違いでよくなってるにゃ」
「シラタマさんはそう言ってくれますが……」
「本当にゃ~。コリスもそう思うにゃろ?」
「うん! つよくなった!!」
「コリスちゃんも強いから、いまいちわからないニャー」

 二人の意見はもっともか……わしとコリスでは、力の差があり過ぎる。コリスも現在進行形で強くなっているから、差が縮まらんしな。
 わしの見立てでは、イサベレぐらい強くなっていると思うんじゃが……ちょうどいい相手と闘わせてみるかな?

「わかったにゃ。帰ったら、シェンメイとケンフに相手してもらおうにゃ」


 わしはそう言って、リータ達に早くごはんを食べるように促す。そして、午後の訓練メニューを消化すると、猫の街に帰るのであった。
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