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第十二章 王様編其の三 猫の国の発展にゃ~
318 さっちゃんの誕生日パーティーにゃ~
しおりを挟む猫の国を出発して二時間。空の旅は快適で、ヤーイーも楽しんでくれたようだ。東の国王都に着くとバスに乗り継ぎ、貴族専用通路から中に入る。
今日はヤーイーが居るので、人混みに驚くと思っての配慮。馬を操る騎士の先導のもと、ノロノロと進めば、ヤーイーは辺りを見渡して楽しそうにワンヂェンに質問をしている。
王都の我が家に着くと、バスを次元倉庫に入れて、騎士に感謝の言葉を送る。ひとまずエミリは孤児院に挨拶に行かせ、わし達は中へ入る。
そうして居間の引き戸を開くと、見知った人物がゴロゴロしてやがった。
「にゃにしてるにゃ……」
「わ! シラタマ君。帰って来たの!?」
見知った人物の正体は、東の国魔法部隊副隊長のノエミだった。
「久し振り~」
「いや、勝手に人の家でくつろいで、にゃにしてるにゃ~!」
「昨日、泊まったんだけど、今日は休みだからどうしよっかな~って考えてたら、居心地がよくてね~」
どうやらノエミは、たまにアダルトフォーと飲んでいるようだ。休みの日に、わしが居ないかと訪ねたら、スティナ達と意気投合したとのこと。そこからは、ちょくちょく遊びに来ているらしい。
「にゃったく……」
「遊びに行くって言ったでしょ。ワンヂェンもコリスも久し振り~! 元気だった?」
ノエミはわしが呆れているにも関わらず、ワンヂェンに抱きつき、コリスにモフッとして、再会を喜ぶ。
ひとまずノエミの事は置いておいて、全員分のお茶を用意する。わしがお茶を入れ出したら、あたふたしたヤーイーに奪い取られた。なんでも、王様のやる事ではないらしい。
なのでお茶はヤーイーに任せ、わしはノエミとの話を再開する。
「今日、城でさっちゃんの誕生日パーティーが開かれているにゃろ? ノエミは護衛の仕事をしなくていいにゃ?」
「ちょっと前に、西の領主の娘さんがひどい怪我をしたらしくてね。それで私なら治せるかもと派遣されたのよ。二週間も王都を離れていたから、休みをくれたの」
「領主にゃら、それなりの回復魔法使いがいるんじゃにゃいの?」
「それが怪我が酷すぎて、治せなかったみたい。私が着いた時も、血を止めるのがやっとで、両足がぐちゃぐちゃだったわ」
「かわいそうにゃ~」
「あ、もう綺麗に治っているからね。今日もパーティーに参加しているはずよ」
「さすがノエミにゃ~」
「ううん。シラタマ君から教わっていなかったら、治せなかったわ」
あ~。そう言えば、ノエミに教えた事があったな。
「でも、行き帰りが疲れたわ~。片道五日なんて、シラタマ君がいれば、行って帰れたのに。ホント、シラタマ君って便利よね。一家に一匹欲しいぐらいよ」
こ、こいつ……わしを家電製品みたいに言いやがった!
「失礼にゃ~!」
「あはは。ごめんごめん」
「にゃったく……そうにゃ! ひとついい情報を教えてあげるにゃ」
「いい情報って?」
「おそらく、近々、遠い距離が近くなるにゃ」
「どういうこと? 言ってる意味がわかんないんだけど……」
「まぁ今日はここまでにゃ。明日、女王に会うまでの秘密にゃ~」
「なになに~? すっごく気になるんだけど~!」
わしはこれ以降、口を閉ざし、貝になる。ノエミのモフモフ攻撃には、ゴロゴロ喉がなってしまったが……
ノエミと再会の挨拶をしているとお腹が鳴ったので、広場で食い歩き。今日は城でパーティーが開かれているので、騒ぎが起こると悪いから、コリスとワンヂェンには変身魔法を使わせた。
そうやって皆で買い食いしていると、広場の者から多くの質問がやって来る。どうやらコリスとワンヂェンに会いたいようだ。だが、ここで変身魔法を解かせると、女王に怒られる可能性がある。
わしは許可しない……が、勝手に変身魔法を解きやがった。二人とも餌をもらえると聞いたから、抑え切れなかったらしい。
ワンヂェンは少食だからいいけど、コリスは無限に入るぞ? お嬢ちゃん。おこづかいからありがとね。そこのお姉さん! あげすぎじゃ!!
皆から餌付けされたコリスは、大きな頬袋になったのでドクターストップ。ワンヂェンは真ん丸なお腹になってギブアップ。
これ以上広場にいても、餌が集まって来そうなので、ハンターギルドを喫茶店代わりにして休憩。巨象と適当な獲物を売って、手続きもしてもらった。
暇な時間帯だったので、ティーサたち受付嬢もテーブルにまざり、雑談とマスコットは撫で回しを受けてから帰路に就く。
家ではアダルトフォーと飲み明かし、酔い潰れて朝になった。目を覚ますと、わしは全裸でガウリカに抱かれていたが、まったく記憶にない。
どうせ撫で回されただけだろうし、リータ達が降りて来る前に、着流しに袖を通す。その時、ノエミがスティナの胸に挟まって寝ていた。
あとで聞いた話だが、ノエミは変身魔法である部分が小さかったから、スティナで研究中だとか。家に通っているのも、巨乳が目的なんだって。
皆が目覚めると、朝食をとってからお着替え。わし達は正装に着替え、迎えに来た騎士の案内で城に向かう。ノエミも城の宿舎に帰るならバスで送ってやろうとしたら、まだ休みだから、もう何泊かするんだとか。
城に行く道中でエミリを見掛けたので、声を掛けたら宮廷料理長に挨拶に行くとのこと。目的地も一緒なので、バスに乗せて発進。城に着くと、エミリと別れてズカズカとパーティー会場に乗り込む。
と言っても、今日はさっちゃんに近しい者だけのパーティーなので、王族専用の食堂だ。扉を開けたら、出席者らしき二人の女の子がちょこんと座っていた。
「「ねこさん!」」
「ローザ、フェリシーちゃん。久し振りにゃ~」
二人はわしを見付けると、走り寄って抱きつく。
「「モフモフ~」」
モフモフ? あ、直訳すると、久し振りじゃったな。相変わらず似た者どうしじゃけど、本当に姉妹じゃないのか?
二人はモフモフ言ってなかなか離れないので、他のモフモフにくっつけて、幸せになってもらった。コリスなら全身でモフモフを味わえるので、モフモフ好きならたまらないのであろう。
そうして、二人のモフモフ語を適当にあしらい、わし達は各自用意された席に着く。わしだけ、皆から遠くに座らされたのは、そう言う事だろう。
しばらくすると、ソフィ、ドロテ、アイノもドレス姿で入って来たので、茶化して……綺麗だと褒めてあげた。
かなり緊張しているように見えるので、女王や王のオッサンはわしが相手をするから、さっちゃんを祝う事に全力を出すようにと助言する。
ついでに緊張しているヤーイーも、仲間に入れてくれるように頼んでおいた。
そうこう皆と談笑していると、おめかしをしたさっちゃんと女王が入って来た。その姿に、皆は立ち上がって、口々に挨拶の言葉を述べる。ちなみにオッサンは仕事で遅れるらしい。
あらら。ワンヂェンまで場の雰囲気に呑まれておるな。ドーンと構えておるのは、わしとコリスだけじゃ。いや、コリスは何が起きているかわからないから、小首を傾げておるな。
わしが皆の姿を見ていると女王が、座っているわしの頭を鷲掴みにする。
「にゃ、にゃんですか?」
「シラタマは王なんだから、もう少し王らしい振る舞いは出来ないのかと思って……」
「猫にゃ~! この国では猫で通してるにゃ~!!」
「プッ……」
「サティ?」
「さっちゃん?」
「あはははははは」
「「にゃ~~~?」」
わしが女王に怒られていると、さっちゃんが笑い出す。女王まで「にゃ~?」と言っているのは謎だ。
「お母様。今日は仲間内の会ですので、堅苦しい事は無しですよ。シラタマちゃん、みんなも楽しんで行ってね」
笑顔のさっちゃんに、わしと女王は顔を見合わせ、吹き出して笑う。さっちゃんはわし達の笑い声の理由はわかっていないのか、頬を膨らませていた。
その笑いに釣られて皆も緊張が解け、誕生日パーティーが始まる。さっちゃんは主賓なのに、ソフィ達の元へ近付き、皆から祝いの言葉を掛けられて照れている。
まぁさっちゃんの手がワキュワキュしているから、早くコリスにモフッとしたくて、たまらないのだろう。
その姿を見ながら、わしと女王は言葉を交わす。
「まさか、さっちゃんが女王を止めに入るとはにゃ~」
「うふふ。珍しい物が見れたわ」
「それだけ仲間を大切にしているって事にゃろ」
「次期女王としては、落第点かもしれないけどね」
「そうでもないにゃろ? 仲間を大切に出来ない者は、民も大切に出来ないにゃ」
「でもね~」
「女王だって笑っているんだから、それが答えにゃろ?」
「そうね。サティが大切に思っている者は、ずっとサティを大切にしてくれるわね」
わしと女王が微笑ましくさっちゃんを眺めていると、さっちゃんが戻って来た。
「シラタマちゃん!」
「どうしたにゃ?」
「まだ祝いの言葉を聞いてないわよ!」
「にゃ……そうだったにゃ。さっちゃん。誕生日おめでとうにゃ~」
「うん! ありがとう。それでプレゼントは~?」
「もう着てるにゃ~」
さっちゃんは、だいぶ前にわしがプレゼントした振り袖を着ている。デザインは、藍色に花が散りばめられ、もちろんわしも隠れている。
「こ、これは……誕生日の前だったじゃない?」
「着てくれたのは嬉しいんにゃけどにゃ~」
「どう? 似合ってる?」
「うんにゃ! 今日は大人っぽいにゃ~」
金髪に何が似合うか考えたけど、重たい色にして正解じゃったな。子供っぽさが消えて、おしとやかな大人の女性に見える。外人さんは、成長が早いのう。
「えへへ。昨日も着たんだよ~。すっごく評判もよかったんだから!」
「それはよかったにゃ」
わしがさっちゃんを褒めると、さっちゃんはくるりと回り、笑顔を見せる。すると、女王が何か言って来た。
「そう言えば、私の本当の誕生日……何も貰ってないんだけど……」
「にゃ!? 誕生際でアレだけあげたんだから、勘弁してくれにゃ~」
「この着物を見ちゃうとね~……私も欲しい!」
「お母様。今日はわたしの誕生日なんですから……なんかちょうだ~い!」
「ゴロゴロ~」
こうして女王とさっちゃんは、わしを撫でながらおねだりしてくるのであった。
だからわしにたかるな! この似た者親子め!!
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