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第十一章 王様編其の二 外遊にゃ~

298 我が儘にゃ~

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 コリスショックに続き、猫王ショックで村に騒ぎが起こり、わし達はコリスを撫でながら待つ。しばらくして復活したお義父さん達は、村から移住する事を躊躇ためらうが、村長の説得に負けて、猫の国に移住する事に決まった。

 リータ家族総出で玉の輿躍りをしていたが、村から離れるのが寂しいみたいで覇気がない。ひとまず、わし達の帰還に合わせて移住の準備をするように言ってみたが、時間が掛かりそうなら急がなくてもいいとも言っておいた。
 その時、メイバイもわしの妻だと説明したけど、それまでのショックが大きかったのか、「あ~。はいはい」と、適当にあしらわれた。

 その後、用事を済ませたわし達は、飛行機に乗って王都に帰る。王都では、バスに乗り換えて貴族専用の門にしれっと行ってみたら、半分男に愚痴られた。
 どうやらわし達が街を歩き、勝手に外に出た事が、女王の耳に先に入って怒られたらしい。
 勝手に出たのは事実なので謝罪すると、バスのまま街を走るのか聞いて来たので、どっちがいいと質問したら、バスのまま入って欲しいと言われた。

 なので断って、堂々と歩いてやる。わしは天邪鬼あまのじゃくじゃからな。

 もちろん王都の住人は、コリスを指差し、ワンヂェンを指差し、わしまで指差す。やっぱりバスで走ればよかったと後悔した。
 ワンヂェンは恥ずかしがって引っ掻くし、リータとメイバイはわしを非難するし、散々だ。

 なんとかかんとかハンターギルドに到着すると、固まるハンター達を押し退け、買い取りカウンターに向かう。
 そこで、今日の収穫を取り出して売り付ける。黒鹿、黒亀、どちらも高く買い取ってもらえたが、黒亀は希少種だったのか喜ばれ、おっちゃんはコリスに感謝して握手をしていた。
 そうしてティーサに報告書を提出すると、ワンヂェンとコリスは、早くもEランクに昇級した。

 ティーサも二人を褒めていたけど、撫でたいだけじゃろ?

 ワンヂェンがゴロゴロと恨めしそうにわしを見るので、明日の時間だけ確認して帰路に就く。

 すると……

「シラタマちゃん! どう言うことよ~!!」

 怒ったさっちゃんに出迎えられた。

「さっちゃん。ただいまにゃ~」
「おかえり~……じゃない!」
「にゃんかわからにゃいけど、中でいいかにゃ?」
「う~。聞いてよ~」
「これでいいにゃろ?」
「あ! モフモフ~」

 地団太を踏むさっちゃんをお姫様抱っこすると幸せそうな声を出したので、そのまま居間に運ぶ。ちなみにコリスは、お湯をぶっかけ、綺麗にしてから家に上げた。
 居間に入ると、さっちゃんの愉快な仲間達がいたので、挨拶をして座布団に座る。

「モフモフ~」
「頬擦りしてにゃいで、用件を言ってにゃ~」
「モフ……お姉様の事よ!」
「あ~」

 そう言えば、キャットランドでさっちゃんは、コリスに餌付けしていたから聞いてなかったな。

「わたしも行きたい~!」
「そうは言っても、女王が許可しないにゃ」
「うぅぅ……それに、お姉様と離れて暮らすなんて……」
「双子王女から、さっちゃんの為だと聞かなかったにゃ?」
「聞いたけど~」

 まぁ寂しいんじゃろうな。しかし、どう言ったものか。秘密のあの事は言えないし……

「出来るだけ会えるようにするから、双子王女の望みを尊重してあげてにゃ~」
「でも~」
「もう少し国が落ち着いたら、遊びに連れて行ってあげるからにゃ? わしと一緒にゃら、すぐに行けるからにゃ?」
「うぅぅ」
「それに、わしもちょくちょく出稼ぎに来るつもりにゃ。その時も顔を出すからにゃ?」
「ほんと?」
「約束するにゃ~」

 またしても、わしの身を切ってさっちゃんを宥める。それからさっちゃんがわしを撫で回していると、ソフィたち愉快な仲間達も撫で回して来るけど、帰らなくていいの?


 しばらく談笑して、どうやって家に入ったのか聞いてみたら、アイ達も出掛けて誰も居なかったらしく、合鍵で勝手に入ったとのこと。帰って来たアイ達に、かなり驚かれたとソフィが教えてくれた。
 わしが居ない間も勝手に入ってなかったのか聞いてみると、全員に目を逸らされた。ちょうどエンマが帰って来たのでこっそり聞いてみたら、たまに居間でゴロゴロしている姿を見て驚いていたそうだ。
 現在は、わしが撫でられてゴロゴロしてるけど……

 さっちゃん達と話をしていると、あっと言う間に時間は過ぎ、夜になりそうなのに、帰る気配がない。いや、帰る気がない。
 仕方がないのでエミリに料理を頼んで、女王に告げ口しに城に走る。だが、女王とイサベレまでついて来た。どうやら、明日は休みをとったらしい。

 女王の馬車に乗ってゴロゴロ帰宅すると、皆、家主より先に晩メシを食ってやがった。だが、女王登場でピタリと止まる。
 さすがにこの大人数では居間が狭くなるので、離れに行きたい人を聞くと、さっちゃん以外、全員手を上げたので、アダルトフォーとアイパーティを逃がしてあげた。


 わし達が落ち着いて食事を食べていると、庭で、コリスVSルシウス。ワンヂェンVSエリザベスのじゃれあいが始まった。
 ルシウスは動き回ってネコパンチを繰り出すが、コリスの反射神経でガードされ、捕まっては撫でられまくる。
 エリザベスは風の玉をワンヂェンにぶつけようとするが、ワンヂェンも同じく風の玉で相殺。魔法の強さではエリザベスが上だが、魔力の量ではワンヂェンが上なので、魔法勝負は互角のようだ。

 ルシウス達のじゃれあいはたいした事がないが、エリザベス達のやり取りは近所迷惑になるので、腹ごなしに二匹を止めに割って入る。うるさいから、二匹で「にゃ~にゃ~」言って、引っ掻かないで欲しい。
 何故、こんな事をしたのかと問いただすと、ルシウスは、たんにコリスに挑戦したかっただけ。エリザベスは、ワンヂェンにわしと似てないから本当に兄弟かと言われて怒ってくれたそうだ。

 ひとまずエリザベスにはモフモフロックで機嫌をとり、ワンヂェンには、「謝らないと一食抜くぞ」と脅す。それで謝るとは思っていなかったが、エリザベスがまさかここまで怒るとは思っていなかったようなので、素直に謝っていた。
 ただ、エリザベスが人間の言葉を理解している事がさっちゃんにバレて、話し掛けられまくって、困った顔をしていた。


 仲直りが済むとお風呂に向かうが、モフモフ全員で向かったので、プラスアルファがついて来た。

 さっちゃんはわかるけど、女王も入るの? 入るんですか。そうですか。

 女王がついて来てしまったので、リータとメイバイは逃げて行き、ワンヂェンも逃げようとしたので取っ捕まえて道連れにしてやった。
 かと言って、さっちゃんに洗われると泡だらけになるので、ワンヂェンを生け贄にしている間に、最速の動きと魔法によって、コリスと兄弟達をピッカピカにして湯船に送り込む。
 それが終わると涙目のワンヂェンの泡を流してあげ、バススポンジになって、さっちゃんと女王を洗う。

 わしとさっちゃん達が湯船に入ると、熱いと言って上がって行くモフモフ四匹の水分を消して、ゆっくり浸かる。そこで、女王に双子王女の話を聞くが、さっちゃんが暗い顔をするので抱きついてご機嫌とり。
 お風呂から上がると、居間で丸くなっているコリスにさっちゃんをもたれさせ、わしと女王は、酒を片手に縁側で涼む。

「ん! なかなか美味しいわね」
「にゃはは。それは米と言う、穀物から作られたお酒にゃ」
「穀物……どんな食べ物なの?」
「ちょっと待つにゃ」

 わしは次元倉庫から皿に乗ったおにぎりを取り出して、女王の前に置く。

「丸いわね」
「小麦だって、調理すると形が変わるにゃろ? それと一緒にゃ」
「食べてもいい?」
「いいにゃ」

 女王は恐る恐るおにぎりをひとかじりすると、味を確かめながら平らげた。

「なるほどね。パンと同じようにお腹に溜まるわね」
「将来的には、これを輸出するつもりにゃ。まだ先だけどにゃ~」
「そう……まだまだ面白い事を考えていそうね」
「そりゃそうにゃ。王様にゃもん。国の利益になるにゃら、頑張るにゃ~」
「ウフフ。そうだったわね」

 笑われた! 猫が王様をしているからか?

「いまのは違うわよ」

 マズイ! 心の声を聞かれておる。会談の時のように、慎重に……

「それより、双子王女をわしに預けるって、どうして許可したにゃ?」
「二人が行きたがったからよ」
「それだけにゃ~? わしの国にスパイを送り込もうとしてにゃい?」
「まぁそれもあるわね」
「やっぱりにゃ!!」
「そんなの、どこの国でもやっているわよ。貴族を結婚相手として送り込んだりとかね」

 たしかに戦国時代でも、同盟国の娘と婚姻を結んで人質にしたりしておったか。内通しておった者も居たらしいし、人質と言いながらも、スパイ活動もしておったかもな。

「でもにゃ~。堂々とそれをやられると、わしの立場が悪くなるにゃ~」
「そこは、出したくない情報は上手く隠しなさい。いちおうは、猫の国を良くしようと働くんだから、二人も伝えていい情報かどうかは考えると思うわよ」
「それだといいんだけどにゃ~」
「シラタマちゃん!!」

 女王の膝に乗せられて世間話をしていると、さっちゃんが割り込んで来た。

「大きな声を出すにゃ~」
「ビーダールに行くって……本当!?」
「にゃ……」

 わしが誰に聞いたのか探そうとすると、リータとメイバイが謝る仕草をするので、ため息まじりに質問に答える。

「仕入れに行くだけにゃ。けっして遊びに行くわけじゃないにゃ~」
「わたしも行きたい~」

 まただよ。今日は我が儘が酷いな。久し振りに会っているから、わしと離れたくないのか? でも、女王が睨んでいるから、いい加減にしないと怒られるぞ?

「ほら、さっちゃん。女王に怒られるから、我が儘はやめるにゃ」
「あ……」
「はぁ。まったく次期女王が何をしているのよ」
「……すみません」

 さっちゃんがしゅんとして謝ると、女王は優しい顔をして頭を撫でる。

「今回だけよ?」
「え?」
「今回だけは許すわ。行ってらっしゃい」
「お母様……ありがとうございます!」

 う~ん。まだわしは、連れて行くとは一言も言ってないんじゃけど……。さっちゃんが女王に抱きつくから、王族サンドで声が出せない。若干、苦しくなってきた。


 結局、さっちゃんのビーダール行きは決定してしまい、旅の日取りを話し合って眠りに……

「猫ちゃん!」
「シラタマちゃん!」

 アイパーティとアダルトフォーからも、ビーダールについて来たいと待ったが掛かり、その後、さっちゃんと女王に抱かれて眠りに就くわしであったとさ。
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