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第十一章 王様編其の二 外遊にゃ~

296 相談にゃ~

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 わしはスティナの膝に乗せられながら、時々胸の感触を楽しみ……恥ずかしくなりながら、世間話は続く。

「それでシラタマちゃんが、ギルマスの仕事に、なんで興味があるの?」
「王様だからにゃ。我が国には無いから、作るとしたらどうしたらいいかと思ってにゃ」
「あ~。なるほど……作りたいなら、女王陛下に言ったほうが早いわよ。たしか、けっこうお金が掛かるらしいけど、用意できるの?」
「そうにゃの!?」
「そりゃそうよ。これが年間の……」

 スティナは王都支部の運営費を見せてくれたが、莫大な金額が書かれていて目が飛び出しそうになった。初期費用には、さらにブッ飛んだ額が必要らしい。
 ハンター協会への根回し、ギルドの建設費用、出向者への給与、ギルド職員の雇用費。特に大変なのがハンターの確保で、協会から有名なハンターを借りるのに、アホみたいな金額を要求されるようだ。

「うぅぅ……ダメにゃ~」
「あはは。もう諦めるんだ」
「わしの国は貧乏なんにゃ~」
「そうなんだ……私がギルマスをしてあげようと思っていたけど、給料が貰えないんじゃね~」
「スティナはいらないにゃ~」
「なんでよ~。うりうり」

 またセクハラしてくるよ。胸を当てないで欲しい。ホンマホンマ。
 それよりも、ハンターギルドは保留じゃな。軍に狩り専門の機関を作って、時期が来たら、それを民営化した方が手っ取り早い。そうすれば、初期費用もハンターの確保も金が浮くからな。

 話が済むと、礼を言ってスティナの膝から抜け出る。セクハラのお礼では無く、相談のお礼だ。
 そしてリータ達にバレないように、乱れた毛並みをくしで整えて合流する。若干、睨まれたが、ギルドの銀行に逃げて事なきを得る。
 銀行で預金を半分ほど下ろしたいと言ったら、大金だから時間をくれと言われたので、後日下ろしに来ると言って、皆を連れてハンターギルドをあとにする。

 リータ達には乗って来た馬車で先に帰ってもらい、わしはさっちゃんの馬車に揺られて城に乗り込む。そこで女王に、コリスとワンヂェンのハンター登録の許可をもらう。わしの身を削ったので、なんとか許可証を書いてくれた。
 夕食を誘われたけど、今日はみんなと食べたいと言って逃げ出した。許可証だけ貰えば、あとは用がないからな。


 家に帰るとドンチャン騒ぎ。うるさい皆の中からエンマを縁側に連れ出し、酒を飲みながら相談をする。

「預金をですか……」
「ハンターギルドでも、二日掛かると言われたにゃ。商業ギルドでも同じくらいで出来るかにゃ?」
「ええ。でも、そんなに大金を下ろして、何に使うつもりなのですか?」
「わしの立場は、もうバレバレなんにゃろ?」
「まぁ……」
「国に足りない物の買い付けにゃ」
「王様みずからですか!?」
「こっちで自由に動けるのは、わしぐらいだからにゃ~」
「そうですか……わかりました。私が必要な物は手配しましょう」
「頼めるにゃ!?」
「手数料は掛かりますけどね」
「にゃ……」

 なんか眼鏡が光った! これはボッたくられるのでは? やはり予定通り、出来るだけ自分で動いたほうがよさそうじゃ。

 その後、リストを片手に「にゃ~にゃ~」言いながら、エンマには東の国で安く手に入る品を集めてもらう事が決定した。ちなみに商業ギルドを作る相談もしてみたが、こちらも大金が掛かると言われて保留するしか選択肢が無かった。
 相談をしていたわしは、途中からエンマの膝に乗せられてセクハラを受けていたので、リータとメイバイにめちゃくちゃ睨まれた。だが、王様の仕事をしていたので、おおとがめは無かった。




「猫君! 新作の服よ!!」

 相談が終わり、そのままエンマの膝でゴロゴロだらけた声を出していたら、フレヤにからまれた。

「にゃ~? 今日は疲れているんにゃ~」
「これだけ! これだけ着て!!」
「にゃ!? 服を脱がすにゃ~! いにゃ~ん」

 結局、エンマも協力し、着ぐるみ……身ぐるみを剥がされるわし。裸でいるわけにもいかないので、フレヤに渡された服を着るが、フリフリのドレスだった。
 そして、居間の中央に立たされて、ワンヂェンと並ぶ。

「ワンヂェンも、それ、着たんにゃ……」
「無理矢理着せられたにゃ~!」
「ワンヂェンは似合っているからいいにゃ~」
「シラタマだって、かわいいにゃ~!」
「ワンヂェンのほうが、かわいいにゃ~!」
「喋ってないで、こっちにポーズとってよ~!」

 わし達が「にゃ~にゃ~」と喧嘩をしていると、フレヤから文句が入り、渋々ポーズをとる。一着だけと言われていたのにそれで終わらず、何着も着替えてファッションショーが終わった。
 早着替えと何度もポーズをとらされたわし達は、フラフラになって二人で倒れるが、フレヤが近付いて来たら、ワンヂェンがわしをおとりにして逃げやがった。

「まだにゃんか着せるにゃ~?」
「ちょっと直すだけよ~」
「もういいにゃ~。あ、そうにゃ! コリスの服を作ってくれにゃ~」
「コリスちゃんの?」
「コリス~。こっちおいで~?」

 わしはコリスを生け贄に……服の相談をして、着せ替え人形……着せ替えぬいぐるみから、話を逸らす。コリスが来たら変身魔法を使わせ、さっちゃん2の体を測ってもらう。
 もちろんリスの体も協力して測り、変身が解けても破れない服を要求する。かなり難しい注文になったので、フレヤを黙らせる事に成功した。


 これでフレヤの魔の手から逃れられたので、コリス達と共にお風呂に向かうが、ガウリカが先に入っていた。
 わしは男だから、いちおう詫びを入れてから中に入り、ガウリカにシャワーを使われているので、水魔法と火魔法を使ってシャワーを浴びる。
 いつも通り、リータとメイバイにもみ洗いされ、コリスは三人がかりでもみ洗い。バススポンジは二匹もいるので、リータ達も早く洗い終わった。

 綺麗になったところで湯船に浸かるが、ガウリカも同時に洗い終わったようだ。

「ふぅ……やっぱり広い風呂はいいな」
「そう言えば、わしが居ない間、お風呂はどうしてたにゃ?」
「皆で金を出し合って、魔法使いのハンターを雇って魔道具の補充をしてもらったよ。まぁ広いと毎日入れないから、仕切って狭くしていたけどな」
「勝手に使っているんだから、それぐらいは当然にゃ~」
「だな」

 なごやかに喋りながらガウリカの顔を見ていると、わしはいい案が思い浮かんだので相談する。

「ガウリカって、バハードゥと連絡を取ってるんにゃっけ?」
「ん? ビーダールの貿易担当とはやり取りしてるけど、王様とはしていないぞ」
「前にハリシャと話してるって言ってなかったにゃ?」
「アレは、ハリシャ様から連絡して来たから、取り次いでもらったんだ」
「そうにゃんだ~。じゃあ、バハードゥと連絡取れないにゃ~」
「王様と話をしたいのか?」
「近々ビーダールに行こうと思ってにゃ。バハードゥと話したい事があったんにゃ」
「なるほどな~……」

 ガウリカは、無造作にわしを抱いて考える。でも、抱くなら、リータとメイバイに睨まれるから許可を取ってからやって欲しい。

「明日、取り次いでもらえるように連絡してみるよ」
「いいにゃ!?」
「猫の名前を出したら簡単だろう。それにあたしも、ビーダールに行きたかったところだったんだ。猫が行くなら、乗せて行ってくれないか?」
「ついでだからいいにゃ~」

 ガウリカには、バハードゥとのアポイントと会える日を指定し、明日にでも連絡してもらう事となった。この条件で無理なら会うのは諦めると言って、わし達はお風呂から上がる。これも国に関する事だったので、リータ達のお咎めは無し。
 ただ、夜の撫で回しは、それはもう凄い事だったけど……


 そして翌朝……

 リータ、メイバイ、ワンヂェン、コリスを連れて家を出る。朝早く出たので、皆で徒歩だ。
 道行く人は少ないが、わし達を見た人は、口をあんぐり開けて足が止まる。わし達はそんな人を無視して、ハンターギルドに入った。

 中に入ると込み合う時間帯だったが、ハンター達はわし達を見て固まっているので、ズカズカと歩く。そして、ティーサに女王の書状を見せてコリスとワンヂェンのハンター登録をしてもらい、そそくさと外に出る。
 わし達が外に出ると、ギルド内に忘れられていた音が戻ったが、大音量で弾けていた。

 ギルドから西門まで歩くと門兵の半分男に挨拶するが、こちらも固まっていたので、勝手に石板を当てて外に出た。何度も見ている作業だから、これで問題ないはずだ。
 そして飛行機を取り出して、皆を乗せて離陸。その機内では、リータに女王の書状を読んでもらい、ハンター証の確認をする。

「にゃあにゃあ? ワンヂェンのハンター証の職業は、にゃんて書いてあるにゃ~?」
「えっと……黒猫ですね」
「にゃ……」

 やっぱりか。女王は悪ふざけが過ぎるな……しまった! わしのペットも直してもらわなくては!! すっかり忘れておったわい。

「にゃんで黒猫なんにゃ~!」
「見た目かにゃ~? それでコリスは、にゃんてなってるにゃ?」
「リスです……そのままですね」
「まぁ……リスだもんにゃ」

 女王! もう少しひねってくれんかのう。そう言えば、リスさんの職業ってなんなんじゃろう? まさか被ってないじゃろうな?

「そうにゃ! シラタマの職業は、なんにゃ~?」
「わ、わしはいいにゃ~」
「にゃんか焦ってにゃい?」
「そんにゃ事は……にゃ! 魔法剣士にゃ~」
「嘘くさいにゃ~。にゃあにゃあ~?」

 くそ! 「にゃ~にゃ~」うるさい奴じゃな。ペットなんて言ったら、また「にゃ~にゃ~」うるさくなるから黙っていよう。

 わしがワンヂェンの追及を無視していると、メイバイまで質問して来る。

「そう言えば、シラタマ殿の職業って聞いた事なかったニャー」
「魔法剣士って言ったにゃ~」
「ぜったい嘘ニャー! リータは知ってるニャ?」
「えっと……」
「言わにゃいで~~~! ムグッ」
「同じ旦那を持つ私達に、秘密は無いはずニャー」
「あ、そうですね」
「ムームー!!」

 わしはメイバイに口を塞がれ、無情にもリータから職業が告げられる。

「ペットです」
「「ペットにゃ!?」」

 なにそのかわいそうな猫を見る目……。わしは段ボールにも、雨にも打たれておらんよ?

「シラタマにピッタリにゃ~」
「ほんとうニャー」

 なにその片言……そんなに哀れまないで! まだ笑われたほうがマシ……いや、ワンヂェンの笑い方は癇に障かんにさわるから、静かなほうがいいか。
 はて? なんだか誰かがお前も一緒だろうとツッコんでいる気がするような……


 その後、皆はわしを慰めてくれているのか、代わる代わる撫で回し、ゴロゴロと言いながら目的地の村に着く。
 車に乗り継ごうかと考えたが、面倒なので村の入口に降りてやった。

 飛行機が着陸すると、村人が何事かと集まって来るので、ひとまずわしが落ち着かせる為に外に出る。

「み、御使い様!?」
「村長、驚かせてすまないにゃ」

 ここはリータの村。わしが対応すれば、多少の騒ぎはすぐに収まる。

「ちょっと変わった友達を連れ来ているから、驚かないでくれにゃ」
「は、はあ……」

 村長がわしに、「立って喋る猫より驚く事があるのか?」と言う目を向けるので、「それがあるから言っておるんじゃ」と言う目を返す。
 そして、リータとメイバイを降ろし、ワンヂェンを降ろすと……

「「「「「黒猫!?」」」」」

 と驚き、コリスを降ろすと……

「「「「「キョ、キョリスだ~~~!!」」」」」

 と、パニックになった。

 どうやら御使い様効果は、白猫限定だったようだ。
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