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第九章 戦争編其の二 帝国と戦うにゃ~

231 リーダーは辛いにゃ~

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 猫耳族が奴隷から解放された話をして欲しかったのに、まったく関係ない話ばかりするメイバイとズーウェイは退場。二人を下がらせたわしは、子供との会話を続ける。

「さっきの二人は奴隷だったにゃ。それをわしが解放したにゃ。わしが解放した奴隷は、あの二人だけじゃなく、たくさんいるにゃ」

 わしの話を聞いたヨキとシンは、顔を見合わせる。

「信じられないと思うけど、この国の猫耳族は、わしが全て解放するにゃ。だから心配せずに、全てを話してくれにゃ」
「……はい」

 ヨキの話では、二日に一度、人が訪れ、少ないが食料を与えてくれているらしい。獣を捕る罠の作り方も、その人が教えてくれたとのこと。
 その人物はわしの思った通り、猫耳族の者らしい。だが、何が目的で助けてくれているかはわからないみたいだ。

 やはり猫耳族だったか。街の外に出てほどこしをしているという事は、帝国と戦っているのではなかろうか? なんとか接触をしてみたいな。

「最後の質問にゃ」
「はい」
「どうしてわしの肉を取ったにゃ~!」
「シラタマさん。また食べ物の事ですか……」
「食いしん坊にも程があるニャー」

 わしが怒りながら質問すると、リータとメイバイは呆れている。しかし、ヨキはちゃんとわしの質問に答えてくれる。

「それは……ぬいぐるみだと思っていたから簡単に取れるかと……」
「誰がぬいぐるみにゃ~!」
「シラタマ君よ」
「リータ~、メイバ~イ。ノエミがイジメるにゃ~」

 わしはヨキのぬいぐるい発言に「ムキ―」っとなるが、ノエミが辛辣な事を言うので、リータ達に泣き付いてしまった。

「シラタマさんも、ちびっことか言ってたじゃないですか」
「ババアとも言ってたニャー。こんなにちいさい子に言う言葉じゃないニャ」
「ちいさい子って言うな!」
「ニャ?」

 ノエミを助けたはずのメイバイであったが、ノエミに怒鳴られて不思議そうな顔をするので、わしが事実を教えてあげる。

「これでも四十代にゃんだって」
「「「「「「ええぇぇ~~~!!」」」」」」

 皆は一人残らず悲鳴のような声をあげる。その声にノエミは怒っていたが、怒り方がどう見ても子供。最終的に、皆に謝られながら頭を撫でられ、頬を膨らませていた。




「それじゃあ、ヨキとシン。仲間の所へ案内してくれにゃ。ノエミもついて来るにゃ~」

 わし達はチームちびっこを結成して、ヨキの仲間の元へと向かう。これは子供ばかりの場所に、大人がいないほうがスムーズに事が進むと思った配慮だ。中身はどちらもジジイとババアだけど……
 ヨキとシンは迷う事なく廃墟の街を歩き、元はお屋敷だったと思われるボロボロの建物に入って行く。わし達もそれに続き、建物に入った。

 ローザの屋敷ぐらいある建物じゃな。外もボロボロじゃったが、中も酷いな。どこまで行くんじゃろう? ……地下?

 ヨキとシンは階段を下りて地下へと進む。

 地下牢かな? これなら扉が何個もあったし、獣も入ってこ来れないか。しかし、においが酷いな……衛生面が心配じゃ。

「ただいま。戻ったよ」

 ヨキは牢屋に近付き、声を掛ける。すると牢屋の扉が開き、男の子が出て来た。

「ヨキ兄さん。罠はどうだった?」
「いや……」
「どうしたの? ……猫!?」

 男の子はわしを見るなり驚いた。

「ぬいぐるみ?」
「猫だにゃ~」
「喋った!! ヨキ兄さん……何こいつ?」
「コウム。いや、みんなに話がある。シラタマさんは、ちょっと待っていてください」
「わかったにゃ~」

 わしとノエミは牢屋の外で待つ。シンも何故か残っているが、撫でていないで中に入らなくていいの?

 しばらく撫でられながら待っていると、ヨキに入るように言われたので、牢屋に入る。そこで、ヨキがわしの事を紹介してくれるようだ。

「こちらがさっき話したシラタマさんだ」
「シラタマにゃ。みんにゃの事は……」
「「「「ねこさんだ~!」」」」
「にゃ!? やめるにゃ! いにゃ~ん!! ゴロゴロゴロゴロ~」

 わしは挨拶も早々に、子供達にめちゃくちゃにされる。

「シラタマ君。大丈夫?」
「ゴロゴロ~。ノエミ。説明、代わってくれにゃ~。ゴロゴロ~」
「はぁ。わかったわ」

 わしの代わりにノエミが説明するが、子供達はわしに夢中で聞いているのかどうかわからない。だが、食事を用意したと言った瞬間、お腹がへっていたのか、わしからノエミに興味が移った。

「それじゃあ、行くわよ~!」
「「「「うん!」」」」

 ノエミを先頭に子供達は歩き出す。ノエミは引率の先生のつもりだろうが、身長は同じくらいなので、どうみても子供達のリーダーにしか見えない。
 そんな子供達に取り残されたわしとヨキは愚痴る。

「僕がリーダー……」
「ヨキ……わしにゃんて、撫で回されただけで捨てられたにゃ」
「ハハハ」
「にゃはは」
「「はぁ……」」

 わしとヨキはため息を吐いてから、牢屋を出て歩き出す。建物を出ると、ノエミは帰る方向がわからなくなっていたらしく、外で待っていた。
 なので、ヨキはリーダー復活と言わんばかりに子供達を船頭して歩く。わしは仲間だと思っていたヨキにも捨てられ、石を蹴りながら歩くのであった。

 広場に着くと、料理をしてくれていたズーウェイ達に子供達が群がり、またヨキがわしの所に来たが、裏切り者は許さない。今度は慰めずに、ズーウェイ達から料理を受け取っている子供達の列に並ぶ。
 だが、ヨキの前に並んでいたのに、メイバイに飛ばされた。さすがに悲しくなったわしは、料理を受け取ったら広場の隅で皿をつつく。

 そうして拗ねていたら、料理を配り終えたメイバイとリータが近付いて来た。

「なんでそんな所で食べてるニャー?」
「………」
「どうしたのですか? 毛並みも乱れてますよ?」
「ちょっと悲しい事があったにゃ……」
「さっきのニャ? あれはヨキ君の前に並んでいた、シラタマ殿が悪いニャー」
「悪くないにゃ~。ヨキがわしを裏切ったからにゃ~」

 わしはさっきの出来事を話すが、二人はあきれて何も言わない。でも、櫛で毛並みを整えてくれたから、少しはねぎらってくれているみたいだ。


 子供達は久し振りにお腹いっぱい食べられる食事に、嬉しそうに食べ続ける。そうしてお腹が膨らむと、子供達は次々にズーウェイにお礼を述べる。
 ズーウェイは困ってわしを見るが、わしは知らんぷりを決め込む。リータとメイバイに、ゴロゴロ言わされて忙しいからだ。

 そんな中、突如、轟音が響く。

「何か来た! みんな、屋敷に戻るぞ!!」

 轟音が響くと、ヨキが子供達に指示を出す。それを、わしが待ってましたとさえぎる。

「待つにゃ! ここから離れるにゃ!!」
「シラタマさん。ここにいたら危険だ。すぐに逃げないと!」
「いま、動くほうが危険にゃ」
「でも……」
「【大土壁】にゃ~~~!」

 わしはヨキの心配を解決する為に、子供達を守る高い壁を作り出す。

「え……」
「にゃ~? もう安全にゃ。リーダーにゃら。取り乱すにゃ」
「……はい」
「ズーウェイとノエミは、子供達のそばで安心させてやってにゃ」
「はい」
「わかったわ」
「リータ、メイバイ。あと、ケンフも行くにゃ~」
「「にゃ~~~!」」
「ワン!」

 三人の変な掛け声に、三人以外は首を傾げていたが、無視して壁の外に出る。もちろんわしも、首を傾げていたのは当然だ。
 外に出ると開けていた穴を完全に塞ぎ、何が来ているか確認する。

 う~ん。けっこういるな。獣が三十匹以上。ボスっぽいデカイ奴もいる。派手に料理をしたから、匂いに誘われたか。

「シラタマさん。どういった状況ですか?」

 わしが探知魔法で辺りを確認していると、リータが状況説明を求める。

「獣が三十匹以上向かって来てるにゃ。わしはボスを相手取るから、いつも通り、ザコをお願いするにゃ」
「ケンフさんはどうしますか?」
「リータの指揮下に入ってもらうにゃ。拳法家……素手で戦うスタイルだから、リータの勉強になると思うにゃ」
「……なるほど」

 リータの確認が終わると、最後に注意事項だけ伝える。

「そんにゃに強い相手じゃないけど、油断だけはするにゃ」
「「はい(ニャ)!」」
「ワン!」
「見えたにゃ!」

 獣は四方から、木や建物の間を通って姿を見せる。狼だ。黒い5メートル程の狼がいるので、こいつが壁を破壊して街に入ったのであろう。
 わしは【白猫刀】を抜くと、一人でボス狼の元へ駆け出す。リータ達なら狼ぐらい、何て事はないからだ。

 飛び掛かるザコを斬り裂き、すぐにボス狼と対峙。話し掛けられると故郷の黒狼を思い出して殺せなくなりそうだから、刀を頭に突き刺し、一瞬でかたを付ける。
 すると、ボス狼の死に気付いた狼は散り散りに逃げ出し、残るはリータ達の近くにいた五匹の狼となった。

 今回はリータも攻撃に参加しているみたいじゃな。三人で背中を合わせて、飛び掛かって来た狼を一撃で撃退してるって感じか。
 お! 終わったみたいじゃな。最後の一匹も、リータが拳骨で遠くに吹き飛ばした。リータの前だけ何も残っておらんな。

「もう大丈夫にゃ。残りは逃げて行ったにゃ」

 わしが駆け寄って声を掛けると、メイバイがリータを褒める。

「相変わらず、リータのパンチは凄いニャー」
「そ、そんな事ないです」
「ケンフの倒した狼を見てみるにゃ。近くに残ったままだけど、リータの前にはにゃにもないにゃ。リータは強くなってるにゃ~」
「シラタマ殿の言う通りニャ。もっと自信を持つニャー」
「はい!」
「さあ、子供達も心配してるだろうから、安心させてあげるにゃ~」

 わしは【土壁】に近付くと、土魔法で壁を消し去る。すると子供達の驚きの顔が現れ、次に倒れている狼を見て、歓喜の声をあげる。そして、わしの元に駆け寄って来る……が、わしを通り過ぎ、ケンフにお礼を言って抱きついた。

「にゃ……」
「シラタマさん……」

 わしが呆気に取られていると、ヨキがニヤニヤした顔で近付き、肩をポンっと叩いた。

 くそ! わしが一番仕事をしたのに、ケンフに手柄を横取りされてしまった。ヨキのニヤケたつらが、さらに苛立たせる。このガキー!

「ま、まぁいいにゃ。ヨキ達は解体できるにゃ?」
「大きいのはやった事がないけど、小さいのなら何人か出来るよ」
「それじゃあ、ヨキ達で手分けして、解体してくれにゃ」
「あんなに多くは保管できないよ」
「余ったら、わしが預かるから大丈夫にゃ」
「……どうやるかわからないけど、わかった」

 わしは大きなテーブルを土魔法で数台作ると、子供達だけでは心配なので、リータ達にも解体を指示する。そして、黒狼は次元倉庫に入れて、次の作業に移る。


 ひとまずこの広場でいいじゃろう。子供が二十人強か……。子供達だけで残すなら、住みやすさよりも頑丈さじゃな。
 まずは土台。さっきの屋敷と同サイズでいいか。こんなもんかな? ここに壁と柱を伸ばし、二階建て。屋上も付けてやろう。真四角で味気無いが、こだわっている時間は無い。

 階段を付けて部屋割り。二階は八つの部屋が出来るように壁を付けてっと。一回は三部屋とお風呂、トイレと食堂でいいじゃろう。
 次に地下を掘って氷室。もう一度一階に登って、もうひとつの地下室。こっちは浅く作って、もしもの場合の避難部屋。まぁ出番は無いじゃろうけどな。

 よし! 家は完成。頑丈さを優先して窓は小さくて薄暗いけど、硬く作ったから、さっきの狼ぐらいなら間違い無く寄せ付けんじゃろう。ここまで来ると、家と言うよりシェルターじゃな。
 それじゃあ、外の作業に移るか。


 わしは引き戸を開けて外に出る。すると、そこには解体を終えたのか、全員がそろって待ち構えていた。

「えっと~……にゃんですか?」
「「「「「四角!?」」」」」

 どうやらわしにツッコミを入れたくて待ち構えていたみたいだ。

「そうですにゃ。にゃにかおかしいですかにゃ?」
「「「「「おかしい!!」」」」」

 丁寧に対応しても、しばらくツッコミは止まらないのであった。
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