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第六章 ハンター編其の四 遊ぶにゃ~
165 デート其の四にゃ~
しおりを挟むデート? エミリの場合……
「おはようございます」
「おはようにゃ……料理長??」
「シラタマ様。おはようございます」
今日はエミリが来る日だったので、わしが出迎えに出たら、意外な人物までやって来たので驚いた。
「料理長がわしの家に、にゃにか用かにゃ?」
「エミリに聞いたのですが、海魚と言う珍しい食材があると聞きまして、お邪魔させてもらいました」
「料理長さん、それで料理したいんだって。料理させてあげてください!」
「そんにゃにお願いする事じゃないにゃ。わしも料理長の料理が食べれて嬉しいにゃ~」
「ありがとうございます」
わしは料理長とエミリをキッチンに通し、次元倉庫から数匹の魚を取り出して,
二人の様子を見守る。
料理長は、さすがに魚の捌き方が上手いな。川魚を捌く事があったのかな? 最初はエミリが教えていたのに、もう逆になっておる。
しかし、仲睦まじい光景じゃな。父親と娘みたいじゃ。わしがエミリの父親のつもりじゃったが、取られてしまった。これではわしが、おじいちゃんに格下げじゃな。
おじいちゃんは家族を微笑ましく眺める役じゃ。この光景なら、いつまでも眺めていられる。
そんな事を思っていた時もありました……
どちらも職人気質の完璧主義者。しだいに雲行きが怪しくなり、料理の味付けでぶつかり合う。
繊細で古典的な味付けを好む料理長と、革新的で新しい味付けを好むエミリとの料理バトルに発展した。
「「どっちが美味しいですか!?」」
そこに巻き込まれる一匹の猫。どちらも美味しくて答えが出ない。
「ど、どっちも美味しいにゃ~」
「「そんなわけありません!」」
息ピッタリじゃな。このままでは、答えを聞くまで、二人とも帰らなそうじゃ。わからないモノはわからないし、一人で悪者になるのも嫌じゃし……
と、言うわけで、暇そうにしていた三王女を連れて来ました! 舌の肥えた三人なら、些細な味の違いがわかるはず。
王族代表の双子王女とさっちゃん。猫代表のエリザベスとルシウス。庶民代表のリータとメイバイも巻き込みました。わしはどこのグループに入っていいかわからないので、進行役に徹します。……食べるけど。
「素材は海魚にゃ。料理は各自三品までにゃ。その三品のバランスも審査に影響するから、気を付けるにゃ。それでは……調理開始にゃ~!」
「「はい!」」
料理長とエミリは、庭に土魔法で作られたキッチンに歩き出す。水もコンロもあるので料理するには支障はない。オープンキッチンで審査員のさっちゃん達も楽しめる作りだ。
料理が始まるとわしも審査員テーブルに戻り、さっちゃんの隣に座る。
「シラタマちゃんは、また変な事をしてるのね」
「変じゃないにゃ~! ただの料理バトルにゃ~」
「その料理バトルが変なのよ。料理は闘うものじゃないもん」
そうなの? テレビではよく闘っていたのに……
「でも、面白い余興ね」
「そうね。料理を作るところを見るなんて、初めてだわ」
双子王女には好評か。王女様は見る機会なんてないもんな。
「たしかに……あ! 火がボワッとなった!」
「「おお~」」
「あれはフランベにゃ」
「「「フランベ?」」」
三王女がわしの説明に、同時に不思議そうに見て来たので、司会から実況に変わる。
「酒のアルコールを飛ばして風味付けするにゃ。さすが料理長にゃ」
「へ~。エミリは両手に包丁を持って、何してるの?」
「あれはたたきかにゃ? それとも、もっと細かく切って団子にするのかもしれないにゃ」
「「「へ~~……」」」
三王女は同時に感嘆の声を出していたと思ったら、同時に睨まれてわしはギョっとする。
「「「なんでそんなに詳しいのよ!!」」」
「にゃ!? えっと……エミリが作るの見ているからかにゃ?」
「「「怪しい……」」」
「じゃあ、猫だからにゃ」
「あ、なるほど」
「猫だから料理に詳しいのね」
「猫だものね」
あれ? 納得した??
「「「そんなわけあるか!!」」」
ですよね~。双子王女だけでなく、さっちゃんまでシンクロ攻撃できるのか。
この後、三王女はわしの言い訳は納得しなかったが、調理方法が気になったのか、わしに質問を投げ掛ける。わしもわかる事は答え、わからない事は予想を述べる。
そうこうしていると盛り付けは終わり、審査員席に料理が並んだ。
「「どうぞ!」」
料理長はいいとして、エミリは三王女に緊張しないのかな? お茶会に連れて行った時は魂を吐き出していたのに……。料理人モードでもあるのか?
まぁいい。いまはこの料理じゃ。料理長は欧風の料理で纏めてきて、エミリは和風の料理で纏めて来たのか。どっちもうまそうじゃ。
「うん! 美味しい!」
「そうね。料理長のムニエルは絶品ですわね」
「エミリの煮付け? これも新しくて美味しいですわ」
おお! エミリの料理が褒められている。票が割れているように見えるし、やっぱり僅差なのか? さっちゃんは……どっちがいいかわからんな。
「どっちも美味しくてわからないです~」
リータも悩んでおるな。わしと一緒じゃ。手の込んで繊細な料理長の料理もさすがにうまい。エミリの料理は元の世界の味付けで好きだけど、少し荒さがあるので、同点と言わざるを得ない。
「「「ニャーーー!!!」」」
うん。メイバイは兄弟達と一緒の猫代表になってしまった。魚料理にしなきゃよかった。これでは庶民代表が、リータだけになってしまう。
わし達は二人の料理に舌鼓を打ち、各々批評する。食べ終わると皆、静かになり、どちらの勝利かを悩み出す。
「それじゃあ、審査員のみにゃ様。お手元の札を持ってくれにゃ。まずは猫代表の三人。上げてくれにゃ~」
わしの司会に、ルシウスとエリザベスは応えてくれるが、メイバイは動かない。
「ルシウスが料理長でエリザベスがエミリにゃ。メイバイはどっちにゃ?」
「え? 私は庶民代表じゃなかったニャ?」
「もう……猫でいいにゃ」
「シラタマ殿より猫じゃないニャー!」
「いいから上げるにゃ~!」
「うぅ。納得いかないニャー」
「料理長に一票入ったにゃ! これで料理長が一歩リードにゃ~」
料理長、ガッツポーズしておる。子供相手に大人気ない……。大人としてのプライドかな?
「庶民代表、リータ。どっちにゃ?」
「どっちも美味しかったですが……エミリちゃんで!」
「おっと。ここでエミリが並んだにゃ! 勝負は三王女様の決定で決まるにゃ~」
おう……今度はエミリが跳び跳ねておる。まだ同点なんじゃがな。
「次期王女のさっちゃんは最後にして、双子王女の……」
わしが名前を言おうとして口ごもっていると、双子王女は呆れた顔になった。
「名前……覚えてないの?」
「そう言えば、お母様の名前も言えなかったですわね」
「にゃ!? 怒らにゃいで~!」
「はぁ……わたくし、ジョジアーヌは料理長に一票よ」
「わたくし、ジョスリーヌはエミリに一票を入れるわ」
「ここでも並んだにゃ~! 最後の一票はさっちゃんにゃ。これで勝敗が決まる、重大な一票にゃ~!」
「え~~~! どっちも美味しくて決めれないよ~」
お子様のさっちゃんには厳しい選択か。じゃが、次期女王なんだから、選ばないといけない。究極の選択なんてのもあるんじゃからな。ここは甘やかすわけにはいかない。
「さっちゃんは、これからもっと厳しい選択をしなくちゃいけないにゃ。この程度の選択で、放棄しちゃダメにゃ」
「サティ。シラタマちゃんの言う通りですわ」
「そうよ。これも勉強ですわ」
わしの説得に双子王女も加わると、さっちゃんは下を向いてしまった。
「うぅ……」
「さあ。どっちにゃ!?」
「うぅぅぅ」
さっちゃんの出した答えはドロー! 両方上げやがった。
「どっちも美味しかった。揺るぎ無い事実よ!」
「それはズルいにゃ~」
「だったらシラタマちゃんが決めなさい! シラタマちゃんだって食べたんだから出来るでしょ!!」
「にゃ……」
「そうね。筋は通っていますわね」
「もしかして、自分で決められないから、私達に決めさせようとしたのかしら?」
双子王女さんの正解! そうじゃよ!!
「「「やっぱり……」」」
「にゃ!?」
双子王女までわしの心を読みやがる。迂闊な事は考えられない。じゃが、ここ最近わかったが、日本語で考えている時は読めないんじゃったな。でも、皆が英語を使っているから、ついつい綴りを考えてしまうんじゃよな~。
おっと、いまは料理バトルじゃ。まさか、勝敗が決めれなくて押し付けたのに、わしに戻って来るとは思わなんだ。致し方ない。どうにでもなれ!
「わしは料理長に一票入れるにゃ」
わしの決定に、エミリはわしに詰め寄る。
「どうしてですか!?」
「エミリの料理は好きだし美味しいにゃ。でも、技術が追い付いていないにゃ。もっと料理長に技術を習って、美味しい料理を作って欲しいにゃ~」
「シラタマちゃんが、まともな事を言ってる……」
「さっちゃん! 失礼にゃ~」
「あ、ごめ~ん」
わしがいい話を……とてもいい話をしているのに、さっちゃんが茶化す。そうして騒いでいると、エミリは元気なく口を開いた。
「そうですよね。料理長さんの料理、すごく丁寧に作られていますもんね」
エミリの完敗宣言に、料理長は優しく微笑む。
「そう悲観しなくてもいいですよ。エミリも素晴らしいアイデアを出せます。これから学んでいけば、もっと美味しい料理が作れますよ」
「料理長さん……わたし、がんばります!」
「期待していますよ」
エミリと料理長はお互いを称え合い、握手を交わす。それを見たわしは頃合いと見て、大きな声で叫ぶ。
「料理バトル、勝者……料理長にゃ~~~!」
わしの勝利宣言と共に、皆からも温かい拍手が送られるのであった。
しかし二人は……
「でも、あの料理にはこっちの調味料のほうが合いますぅ」
「エミリの料理だって、もっと柑橘系を加えると美味しくなったはずです」
「「ぐぬぬぬぬぬ」」
「あの~。いい感じで終わったんにゃが……」
「「こうなったら勝負です!!」」
こうして新たなバトルが始まるのであったとさ。
* * * * * * * * *
デート? ガウリカの場合……
「また来たにゃ?」
「ああ。また捕まった」
「逃げればいいにゃ~」
「まぁアレだ。ここに来ればコタツがあるだろ? 東の国の寒さは堪えるんだよ」
ここ最近、ガウリカはアダルトフォーの一員になり、毎日やって来る。コタツが目的と言っているが、付き合いがいいからだと思う。
文句を言う事が多いが、きっと本心じゃない。遠い異国に来て、初めて出来た友達だから大事にしたいのだろう。
「はぁ~。あったかいな~」
「ほい。ウィスキーのお湯割りにゃ」
「お! サンキュー」
「毎日来てるけど、お店は忙しくないにゃ?」
「ああ。もうすぐオープンだから忙しいよ」
「忙しいにゃら、家で休んだほうがいいにゃ」
「家か~……借りてる家だと狭いから、あたし一人が抜けるほうがちょうどいいんだよ」
「そうにゃんだ~」
少し暗い顔をしたガウリカであったが、周りを見渡してから笑顔を見せる。
「それに、ここに来ると騒がしいけど楽しいんだ」
「いい友達が出来てよかったにゃ」
「そうだな。猫には感謝してるよ」
「ガウリカに感謝されると、気持ち悪いにゃ~」
「なんだと~!!」
「冗談にゃ。あと、そのフリフリの服、とっても似合っていてかわいいにゃ」
「猫! 見るな~~~!!」
「にゃ!? 頭をグリグリするにゃ~」
と、ガウリカは毎日、わしとケンカをしにやって来る。
「もう! シラタマちゃんは! むにゃむにゃ」
「シラタマさん。怒りますよ? むにゃむにゃ」
「これも着なさ~い! むにゃむにゃ」
もちろんアダルトフォーの、スティナ、エンマ、フレヤとも、時々ケンカするわしであった。
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