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第六章 ハンター編其の四 遊ぶにゃ~

148 盗賊を拷問するにゃ~

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 フェリシーがわしを知っている謎は解けたが、フェリシーを狙っている人物の謎はわからない。ローザが、わしが女の子に手出しをしていると言っているのを無視して、世話係のお姉さんと騎士のおっちゃんとの話を続ける。

「フェリシーちゃんは、よく盗賊に襲われるんだにゃ~」
「たしかに……今回で三度目だ」
「わしが二回助けて、もう一回はどうしたにゃ?」
「たまたま通りかかった王都一のハンター、バーカリアン殿に手助けしてもらった」
「その王都一ってのは、言わないといけないのかにゃ?」
「事実だろう。何がおかしい?」
「いや、そんにゃわけじゃ……」

 あのバカに言わされているのかと思ったが、バーカリアンは意外と人気があるのか?

「ローザも誘拐されていたけど、この辺は盗賊が貴族を襲うのが流行っているのかにゃ?」
「そんなわけでは……わたしの場合は護衛を付けていなかったせいです。わたしがあの時……」
「ごめんにゃ~。辛い事を思い出させてしまったにゃ」
「いえ。そんなことは……」

 ローザは盗賊に襲われた恐怖を思い出したのかうつむく。その姿を見て、わしはロランスに質問を投げ掛ける。

「つまり護衛のいる馬車は、基本的に襲われないのかにゃ?」
「そうね。貴族の子供を手に掛けたら討伐隊がすぐに組まれて、盗賊は追い詰められるわ。ローザの時は、隊が出発する時に戻って来たから驚いたのよ」
「にゃるほど……ちなみに、その三件は、誰がフェリシーちゃんを街の外に連れ出すように指示したにゃ?」
「奥様です……」

 ロランスからの情報を呑み込み、世話係のお姉さんに質問すると、わしは犯人の特定に至る。

「もう決定で、いいんじゃにゃいかにゃ~?」
「猫ちゃんの言い分もわかるけど、それだけじゃね」
「ロランスさんとボーデン家って、どっちが格上なんにゃ?」
「私だけど……どうしてそんな事を聞くの?」
「乗り込んで、叱り付けてやってくれにゃ」
「そんなに簡単にはいかないわよ」
「じゃあ、女王に告げ口して来るにゃ」

 わしが女王と言うと、ロランスは呆れた顔になった。

「またそんな冗談を」
「わしと女王は親友にゃ。簡単に出来るにゃ」
「あ、そんな噂があったわね」
「お母様。本当の事です。立て札にも書かれていました」
「うそ……」
「この短刀も女王から借りてるにゃ。返すのを忘れていたにゃ~」

 わしは次元倉庫から出した短刀をロランスに手渡す。

「王家の紋章……」
「だからわしをペットにしようとしちゃダメにゃ。わかったにゃ?」
「え~~~!」

 やっぱりそんな考えを持っておったか……


「奥様。よろしいでしょうか?」

 わし達が食事を終えて話し合っていると、食堂に入って来たメイドが、申し訳なさそうに口を挟む。

「どうしたの?」
「只今、門兵が来られまして、シラタマ様に盗賊の件でお話があると言っています」
「あ、手続きが終わったのかにゃ? 行って来るにゃ」
「待って。私も行くわ」

 ロランスの言葉にわしは断る事も無いので許可をする。思った通り、門兵は手続きが終わったとの事で、騎士のおっちゃんも連れて、ロランスの馬車に乗り込む。何故かローザもついて来たが、撫でたいのだろうと何も言わなかった。
 ロランスとローザに撫でられながらゴロゴロ言っていると、門に隣接された個室に通される。

「こちらが、盗賊の持ち物になります。全てシラタマ様の所有物となります。それと、依頼内容の盗賊団で間違いないので、証明書になります」

 門兵は部屋に置かれた金銀財宝、武器や小物に手をやり、わしの確認が終わると用紙を渡してくれた。

「盗賊討伐は初めて受けたんにゃけど、この証明書をギルドに提出すればいいのかにゃ?」
「はい。それで依頼完了となります」

 わしが初めてだと言うと、ローザが何やら食い付いて来た。

「初めてだったのですか。ねこさんは、どうしてこの依頼を受けたのですか?」
「欲しい素材が合ったから受けたにゃ」
「ねこさん……盗賊は素材になるのですか?」
「にゃらないにゃ~!」
「では、素材とは?」

 ローザが怖い勘違いをするので、わしは壁に立て掛けられている剣を手に取って説明する。

「この剣にゃ。王都では鉄が不足気味で高かったにゃ。だから、盗賊の剣に使われている鉄が欲しかったにゃ」
「鉄のためだけに、あんなに多くの盗賊を捕らえて来たのですか……」
「女王から護衛依頼を受けたから、急ぎで欲しかったにゃ。これで旅に出る準備が整うにゃ」

 わしがローザと話し込んでいると、ロランスが驚いた顔で割り込む。

「女王陛下から護衛依頼……陛下はどちらに行かれるの?」
「それは……言っていいかわからにゃいから、言えないにゃ」
「そうね。私達が聞いてもいい話じゃないかも知れないから、聞かないわ」

 すぐに引いてくれてよかった。いまのはわしの失言じゃったな。


 わし達の会話に区切りがついたと感じた門兵は、テーブルに広げてある袋を指差して質問して来る。

「シラタマ様。ロランス様に、この収納袋の中にあった、こちらの品を見せてもよろしいでしょうか?」

 手帳? 日記か? わしには関係なさそうじゃが……

「にゃんでわしに許可を取るにゃ?」
「こちらの品は、全てシラタマ様の物になっておりますので、領主様と言えども許可は必要になっております」
「別にいいにゃ」
「ありがとうございます」

 門兵はロランスに日記のような物を手渡す。わしはロランスが日記に目を通している間に、盗賊の持ち物を物色する。

 これが収納袋か……ただのショルダーバックにしか見えないな。アイ達も似たような物を持っていたけど、あれが収納袋じゃったのか。
 剣は持ち帰るのは必須として、収納袋もリータ達のお土産にしよう。ビックポーターじゃ、かさばるからのう。
 あとは食料品、衣服、金に貴金属か……。ロランスさんに頼めば被害者の元に戻るのかな? 亡くなっている人もいるじゃろうし望み薄かもしれんのう。
 じゃが、ロランスさんに任せれば、いいようにしてくれるじゃろう。……ん? あの宝石は……

 わしは気になる宝石を掴み、光に当ててよく見る。

 気になるが、よくわからん。何個か気になる物がまざっておる。こっちは気にならないが、あっちは気になる……。気になる宝石も持って帰って、リータに見てもらおうかな?

「ねこさん。どうしたのですか?」

 宝石をひとつひとつ確認していると、ローザが不思議そうにわしを見る。

「ちょっと気になっただけにゃ。収納袋と、これだけ貰っていいかにゃ?」
「え? 全部、ねこさんの物ですよ」
「いや、被害者の救済に当てて欲しいにゃ。頼めにゃいかにゃ?」
「やっぱりねこさんは、ねこさんですね」
「にゃ? 猫だにゃ~」
「そう言う意味じゃなくて……わかりました。わたしが責任を持って対応させていただきます」
「ありがとにゃ~」

 ロランスさんに頼もうと思っておったが、ローザが対応してくれるのか。前回もローザが任せろと言っていたし、頑張ってくれたのかな? やっぱりローザはいい子じゃ。


 わしとローザの話が終わるのと同時に、ロランスが日記を閉じた。日記を読み終えたロランスの顔は、普段の穏やかな顔と違い、険しい顔となっていた。

「どうしたにゃ? にゃにか怒ってにゃい?」
「いえ……。あなた、人払いをしてちょうだい。それと、この日記の内容は他言無用よ」
「はっ!」

 ロランスは門兵に指示を出すと、わしを抱いて席に着く。ロランスの険しい表情のせいか、皆、黙り込み、門兵が部屋から出て行く衣擦きぬずれの音と、わしのゴロゴロと言う音しか聞こえない。
 部屋にわしと騎士のおっちゃん、ローザだけになると、ロランスが重たい口を開く。

「乗っ取りよ」
「にゃ?」
「ああ。一から説明するわね。この日記には……」


 ロランスの話はこうだ。盗賊の親分は細かい性格だったみたいで、一日の出来事を事細かに書き記していたみたいだ。
 その内容は襲った人間の風貌ふうぼう、持ち物、売買相手、さらに仕事の依頼主の素性まで調べあげていたとのこと。そこには多くの貴族の名前、大商人から中商人、もちろんフェリシーの義母の名前も載っていた。
 その日記の中には、義母がフェリシーを殺し、息子を後継者にする計画が書かれているという。

「盗賊も馬鹿だにゃ~。そんにゃ証拠を大事に取っておくにゃんて」
「脅しにでも使うつもりだったんでしょう。でも、これでボーデン家に手を出せるかもしれないわ」
「盗賊が嘘を書いている可能性はないかにゃ?」
「なくもないでしょうけど、立場の弱い商人から捕らえて行けば、事実だと確証出来るわ」
「にゃるほど。外堀から埋めるんだにゃ」

 わしが納得していると、ロランスは日記を開いて難しい顔をする。

「ただ、所々、読めない箇所があるのよね。ここに重要な事が書かれているんだと思うんだけど……」
「そんにゃの、親分に聞けばいいにゃ」
「すんなり吐いてくれたらいいんだけどね」
「じゃあ、わしが吐かせてやるにゃ。ローザは……待ってるにゃ」

 子供に見せるモノではないと判断したわしだが、ローザは見たいらしく、ロランスに近付く。

「拷問するのですよね? お母様……後学の為に、見てもよろしいでしょうか?」
「少し早いけど……いいわ。でも、気持ち悪くなったら、すぐに離れるのを約束して」
「はい」

 時期当主の勉強って事か? 拷問なんて見ないでも、他の者にやらせておけばいいものを……それとも、拷問なんて酷い仕事を他の者だけにやらせたくないのか? ローザなら後者を迷わず選びそうじゃな。


 わし達は街の外にいる盗賊の元へ向かう。人数が多いので、街の牢屋には入りきらないらしく、わしの作った檻を改良して開け閉めを出来るようにしておいた。
 わしは檻の中に入ると、殴り掛かる盗賊逹を風魔法で反対側に張り付け、その中に居る親分の首根っこを掴んで引っ張り出す。親分の顔は風の圧力で、かなり変形していたが気にしない。

「ねこさんは、簡単に凄い事をしますね」
「そうかにゃ? こんにゃの騎士のおっちゃんでも出来るにゃ。にゃ?」
「出来るか! 常識の無いお前と一緒にするな!!」

 わしのどこが常識が無いんじゃ? 見た目か……うん。ツッコムのはやめてやろう。それより、抱き石の刑の拷問器具に親分をセットしてっと。

「さっきの続きにゃ」
「待て! なんでも話す。話すから猫以外にしてくれ!」

 わしが土で出来た拷問器具に親分を正座で座らせ、固定して話し掛けると、親分はこの中で一番偉いだろうと思われる綺麗な服のロランスに、必死にお願いしている。

「このおびえようなら、猫ちゃんに任せたほうが良さそうね。始めて」
「だってにゃ。それじゃあ、まずは……」
「待てって! 手に持ってる、その日記の事だろ?」
「昨日の晩飯は、にゃんだったにゃ?」
「肉! 肉だ!!」
「肉だけじゃ体に悪いにゃ~。一枚目にゃ~」

 わしの問いに、親分はすかさず答えたが、納得のいかないわしは石の板を膝の上に乗せる。

「ぐわ~」
「次の質問にゃ」
「日記に読めない箇所があっただろ?」
「お母さんの喜ぶ顔を、最後にいつ見たにゃ?」
「お、覚えてね~!」
「親不孝は一枚追加にゃ~」
「ぎゃ~~~!」

 またしてもわしの納得のいく答えで無かったので、石の板を乗せたら、重さが倍となって痛みも倍になったので、親分は先ほどより大きな声を出した。その酷い拷問を見たローザは、ロランスに質問している姿があった。

「お母様……これが拷問なのですか?」
「拷問と言えば拷問なんだけど……」

 ローザとロランスは、どうも拷問とは受け取れていないようだ。そんな二人を無視して、わしは親分に問い掛けるのだが……

「次の質問はお待ちかね……」
「やっとか……」
「楽しかった思い出を聞こうかにゃ~?」
「「「「「日記の事を聞け~~~!!」」」」」

 総ツッコミ。わしはこの場に居る全ての者にツッコミを入れられてしまった……

 盗賊の親分の楽しい思いでは、次回に……続かない。
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