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第一章 森編 猫の生活にゃ~

023 刀を作るにゃ~

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 ハンター達を森の入口まで送った翌日、わしはいつものように朝食をとりながら今日の予定を考える。

 今日の朝食は、ルウの作った熊スープの残りじゃ。次元倉庫に入れていたから、あっつあつじゃから少し冷まして……あ、人型になって食べてみよう。
 土魔法で作った器とスプーンを用意して注ぐ。うん。人の食事みたいじゃ。

「いただきます」

 お、飲める! 猫型よりも熱を感じないな。そりゃ、器に直接舌を入れてたら熱いわな。昨日も美味しかったけど、ぬるかったから物足りなかった。やはりスープは、あっつあつじゃのう。

 さて、今日は何をしようか?
 重力は掛けておるし、魔力も吸収し続けているから普通に生活していても強くなるから、特にやる事がない……いかんいかん。修行っぽく見える事をしなくては。
 朝は縄張りのパトロールをするじゃろ。これは全力で走るとすぐに終わるんじゃよな~……人型にも慣れて来たし、人型で三周しよう。
 ほんで昼からは、木刀の素振りをして……あっ! そろそろ、鉄もいい具合に集まったし、刀を作ってみようか。そうしよう。

 いまははとりあえず、ダッシュじゃ!

 わしは森の中を駆け回り、我が家に戻る。

 う~ん……人型で走ったのに思ったより早く終わってしまった。わらじも早々に破れてしまったわい。改良の余地有りじゃ。
 まぁいいや。それよりも刀を作りたいから、早めにお昼を食べてやってしまおう。作るのは面倒じゃし、調理済みの肉でいっか~。

 次元倉庫から焼いただけの肉を取り出したら、わしは刀作りの工程を思い出しながらムシャムシャと食べ終えた。


 さあて、まずは準備。土魔法で平らで硬い台を作り、その横にお湯を入れた大きな水槽も作る。次元倉庫から集めた鉄を全て取り出し、台に並べる。
 う~ん。同じ鉄魔法で集めたのに、何故か色が違うんじゃよなぁ。白と黒か……黒い方も普通の鉄と色が違う気がする。考えてもわからんし、黒いほうが量が多いから、こっちを打刀。白いほうは脇差でいいか。
 打刀は長いからわしの身長じゃサイズが合わんから、脇差をメインにする予定じゃ。

 鍛冶の事は専門じゃないから、切れ味のいい刀は作れそうにない。だから丈夫で重たい刀を作ろうと思っておる。
 それなら鉄の棒でいいんじゃないかと言われそうじゃが、見た目がいいから気にしない。わしの格好は着流しじゃ。刀以外、受け付けん!

 たしかテレビで見た刀の作り方は、鉄に熱を加えて折り返しては叩いてって、何度も繰り返しておったな。ほんで、形を作ってお湯に突っ込んで完成じゃったか? 灰も必要じゃったような? うろ覚え過ぎる……まぁ形になってくれさえすればいいか。失敗しても、魔法で元の鉄にすればいいだけじゃしな。

 まずは刀を作る鉄の量を決める。
 いま使っている木刀は普通の大きさの打刀を作るのに、1.5倍の大きさに削った木刀に重力を掛けて普通の大きさまで圧縮できたから、鉄は硬いし3倍ぐらいの量でいけるかのう?
 鉄の量もわかりづらいから、木刀を隣に置いて鉄魔法で形を似せる。それを三本作って合体。

 これで鉄の量は決まった。この鉄を溶ける程の火魔法の【火の玉】に入れる。

「あっつ~!」

 鉄が溶ける火を扱うには近過ぎた。けっこう魔力も入れたから、台も溶けてしまいそうじゃ。浮かしながらやるか。

 わしは鉄魔法と火魔法を操作して浮かし、距離を取って鉄をね繰り回す。

 ちょっと遠いけどなんとかなるか。こうやって鉄を折り曲げて延ばす、折り曲げて延ばす。これでは鍛冶ではなくて、飴細工でもしてるようじゃのう。しかし、これはなかなかしんどい。
 二属性を長時間維持して遠隔操作なんてl初めてするな。魔力もガンガン減って行く感覚がある。わしの魔力量でも持つか心配じゃ。でも、これも魔法の鍛錬になってるかも? 

 わしは黒い鉄を折って延ばすを二十回繰り返し、止めようかと思ったが念の為、五十回まで繰り返した。そして刀の形を、圧縮した時に合うように整え、お湯に浸ける。刀の浸かったお湯はブクブクと泡立ち、水蒸気が上がった。

 ふう。魔力は持った。あとはヒビが入ったり曲がったりしていない事を祈るばかりじゃ。泡も落ち着いて来たし、それそろ上げてもいいかのう。

 わしは鉄魔法で黒い物体を空中に引き上げ、まじまじと見詰める。

 ヒビは無いな。曲がりは……無い。ひとまず上手くいったってところか。ビギナーズラックかのう。しかし圧縮する前段階じゃから、デッカイ包丁みたいじゃ。ここから上手く刀になるかな?
 圧縮するのは、もうちょっと熱が引くまで待つか。その間に脇差もやっておきたいが、魔力が三割程度しか残って無い。
 ちょっと走って回復してこよう。同じ場所で取り過ぎるのはマズイからのう。


 わしは縄張りを小走りに一周して魔力を回復する。そして、打刀と同じ作業を脇差で繰り返す。

 この鉄はなんじゃろう? さっきより扱いが難しい気がする。このままじゃわしの全魔力でも足りないかも? ストックは使いたくないけど致し方ない。少し足そう。

 わしはうなりながら作業を続け、包丁みたいな形に整えた白い物体をお湯から引き上げて確認する。

 ヒビも曲がりも無いし、色も奇麗じゃのう。こっちのほうを打刀にすればよかったか? 混ぜて作ってもよかったかもな。
 まぁやってしまったし、冷ましたらこのまま圧縮しよう。黒い方は冷めたみたいじゃし、魔力を回復したら圧縮を始めるか。

 わしはもう一周縄張りを走り、魔力を回復する。回復すると包丁みたいな黒い物体を空中に浮かべ、均等に重力を掛けて行く。

 うぅ。かなり時間が掛かりそう。でも、いきなり強い圧力を掛けると折れてしまいそうじゃから、ゆっくり。ゆっくりとじゃ。

 圧力を掛けること一時間……

 おお! 無骨じゃが、刀の形にはなったな。圧力を掛けたせいか、また熱を持って熱い。あとは砥石を掛けるだけじゃが熱もあるし、もう夕方じゃ。脇差と仕上げは明日じゃな。
 しかし、疲れた~。魔法も使ったし走り回ったから疲れるわな。これは修行したって感があるのう。物作りじゃから仕事か……今日は風呂に入って一杯マタタビやってから寝るかのう。


 翌朝、人型に変身すると、朝食をとって脇差の圧縮に取り掛かる。

 昨日の事を考えると、脇差に魔力を使ってからパトロールしたほうがよさそうじゃのう。昨日と同じように重力をゆっくり、ゆっくりとじゃ。

 二時間後……

 はぁはぁ。やっと出来た……なんじゃこの鉄は? 打刀より小さいのに、倍の時間が掛かったぞ。レアメタルか何かかのう?
 ま、考えても仕方ないし、パトロールに行こう。

 パトロールをしながら魔力を吸収し、遅めの昼食を済ましたわしは打刀と脇差を触りながら考える。

 打刀はこのまま研いでもよさそうじゃが、脇差はまだ熱いのう。いっぺんに済ましたいし、他の事でもするか。

 こないだハンターの女の子達と出会った時に竪穴式住居を作ったが、テントのような物があったら便利そうじゃ。今後泊りで出掛ける事もあるじゃろうし、雨で動けない事もあるかもしれん。
 毎回、作って壊すのも面倒じゃ。次元倉庫に入れておけば出し入れも自由じゃし、作っておいても邪魔にならんじゃろう。

 大きさは、わしサイズで作ろう。念の為、数人は寝れるようにしておくか。ベッドとソファーがあれば寝床には困らんな。雨でも移動できる様に車輪も付けよう。土魔法で車輪ぐらい回せるじゃろう。
 動くとなったら揺れも気になりそうじゃし、サスペンションも付けたほうがよさそうじゃ。窓もガラスにすれば、運転に支障が無い。集めておいてよかったのう。あとは……


 わしはブツブツと独り言を言いながら機能を付け足しまくり、数時間後……移動式住居を完成させた。

「ハイエースか!」

 そして、見覚えのある救急車みたいな形にツッコンだ。

 わしが作ったんじゃった。作ったんじゃが、ツッコミたくなってしまった。空気抵抗を考えて、前方に角度を付けたのが失敗じゃったな。
 四角にし過ぎてもバスみたいじゃし、大差ないか。またやり過ぎたかのう? まぁ人里で走らせなかったら問題無いじゃろう。
 キッチンを付けたから移動するなら、八人ぐらいが限界かな? 横になって寝るなら、運転席を使えば四人ってところか。
 てか、自分用に作ったはずなのに、大きくなってしまった。兄弟達が帰ってきたら、みんなでドライブでもしようかのう。女猫の喜ぶ顔が目に浮かぶわい。

 そろそろ脇差の熱も取れたかな? まだ少し温かいが、これぐらいならいけそうじゃな。それじゃあ、打刀から研いで行こう。
 土魔法で、石の粒の細かい土の板を作って……


 一時間後、二本の刀が研ぎ終わる。

 こんなもんかのう? あとは着流しじゃし、武士のような飾りのある刀ではなく、つばの無いシンプルな柄でよかろう。柄は土魔法で作るとして、鞘は木で作るから後日じゃのう。

 刃紋が作れないのが残念じゃが、打刀は黒光りしてかっこいいし、脇差は白くて美しい。自分に名前は無いけど、わしの作った物じゃし名前を付けよう。名刀と言えば「虎鉄」「政宗」「菊一文字」か……
 よし。お前達の名前は、名刀【黒猫刀】、【白猫刀】じゃ! 安易すぎたか……ネーミングセンスは無いんじゃから勘弁しとくれ。
 元の世界でも、ペットの名前は家族に付けさせてもらえんかったし……。試し切りじゃ試し切り! 気分もすっきりするじゃろう。

 わしは土魔法で穴を掘ると【黒猫刀】と【白猫刀】用に、二本の太い木を地面に突き立てて固定する。

 まずは【黒猫刀】から切れ味を見させてもらおうか。しかし、長いのう。わしが持つと、小次郎の「物干し竿」みたいじゃ。
 それにしても、刀を振るなんて何十年振りじゃろうか。十代半ば、道場に通っていたとき以来か……懐かしいのう。軽く素振りしてみるか。

 わしは昔に習った型に添って刀を振るう。縦、横、斜め。唐竹、袈裟切り、右薙ぎ、右切り上げ、逆風とブンブンと振るう。

 覚えているもんじゃのう。そろそろいってみよう。息を整え、集中して……袈裟切り!

 ガシッ!

 おっと。いまの斬り方じゃ、押し当てているだけじゃ。斬れるわけがない。斬るには引かなくてはダメじゃったのう。昔、師範のじい様に叱られたことを、そのままやってしまった。
 もう一度素振り。こう……こうじゃったかな? いくぞ、袈裟切り!

 ザシュッ!

 おお! 切れた。一刀両断じゃ。じゃが、わしの速度と刀の重さなら技術は関係ないか。木の切り口も悪いのう。まぁこれだけ切れたら動物くらい一発じゃろう。
 次【白猫刀】いってみよう。袈裟切り~!

 スパッ!

 うそ~ん。文字通りスパッと切れたぞ。【黒猫刀】と同じ作り方なのに何が違うんじゃろう? 素材か??
 まぁ元々、身長の関係で脇差を刺して歩く予定じゃったし結果オーライじゃ!

 これにて、猫侍の完成じゃ! 見た目はぬいぐるみと変わらんがのう……
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