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第一章 森編 猫の生活にゃ~

004 言い訳をするにゃ~

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 バシャッ!

「「にゃ~~~!!!」」

 水魔法の練習をしていたわしは、猫家族にバレないように遠くの草むらに水の玉を投げ捨てたが、兄弟猫二匹に掛かってしまった。

 おもいっきり兄弟達に水を掛けてしまった。どどど、どうしよう? 見られたか? いや、水なんて雨か川でしか見ないから、魔法で飛ばしたなんて気付かないはず。よし! 全力でとぼけよう!!

 わしの考えがまとまった頃におっかさんも姿を現し、兄弟達に近付いた。

「どうしたの?」
「おかあさん、水がとんできた~」
「つめたいよ~」
「あらあら。どうしてそうなったのかしら?」

 おっかさんは、獲物でも狙うかのような鋭い目でわしを見る。

「あっちのほうからとんできたよ~?」

 男猫はわしを指差す。

「兄弟ひどい……」

 女猫は確信を持ってわしを見る。そんなわしは、後ろを振り返った。

「「「犯人はお前だ~!!!」」」

 しかしながらそのボケは通じず。わしは満場一致で犯人扱いされてしまった。

 え、えええ~……なんでそんな人間的な発言が出るんじゃ? わしが兄弟達のちょっかいに対して、何度か言ったせいか……。口は災いの元じゃな。これからは、発言にも注意しないと。それよりも、いまは言い訳を考えねば。

「えっと……うんと……なんと言いますか……急に局所的に雨雲が集まり、大粒の雨を一粒作り出して消えたで御座る」

「「「そんなことあるか!!!」」」

 ツッコまれた!? 息ぴったりの仲良し家族だこと。これもわしが常日頃、ついついツッコンでしまったのが身についてしまったのか……
 て言うか、いまの説明でわかったの? こいつら猫じゃよな?? なんだかさらに自分の首を絞める発言をしてしまったような……

 わしがオロオロと言い訳にならない言い訳をしていると、おっかさんが優しい目で見詰めながら語りかけ掛けて来る。

「何も秘密にしなくてもいいのよ。私は風の魔法しか使えないけど、ご先祖様はもっと多くの魔法、もっと強い魔法を使えたと言うわ。だから、あなたのことをちゃんと教えてね」
「さっきの魔法だったの~?」
「どうやったの~?」

 ん~。どうしたものか……おっかさんの言い分だと使っても問題無いのかな? でも、猫の知らない魔法を使うのも気が引けるし……。まぁ使えると言っても、たいした魔法でもないか。

 ぐぅ~~~

 悩んでいると、わしの腹の虫が盛大に鳴ってしまった。

「あらあら。大きな音。昨日食べてから、今まで何も食べてないものね。魔法のことは後にして、先にごはんにしましょう」
「ボクも食べる~」
「わたしも~」

 どうやらおっかさん達は、魔力の使い過ぎでなかなか起きられないわしの為に、起きた時に食べられるように狩りに行ってくれていたみたいだ。
 今日は狼では無く茶色いウサギが捕れたらしい。額の角と1メートルを超す巨体には目をつぶり、みんなで美味しく(わし以外)いただきました。


 満腹満腹。お腹いっぱいになったら眠くなって来たのう……ぐっ!!

 わしは大きなあくびをして横になると、男猫と女猫がのしかかって来た。

「さっきの魔法、見せないと噛む」
「つめたかったの~」

 うっ……忘れてなかったか。最近男猫は兄貴肌を出して、すぐに脅して来るな。逆に女猫は妹みたいに甘えながら責めて来る。さて、どうしたものか……
 近頃暖かくなって来たけど、夜はまだ寒い。たしかに悪いことをしてしまったな。じゃが、けっこう魔力使ったんじゃよなぁ……そうじゃ! いいことを思い付いた。

「さっきの魔法より、いい魔法を見せてあげる。枯れた枝を集めて来て」
「さっきのより? すごくなかったら噛む」
「たのしみ~」
「どんな魔法なのかしらね」

 皆で枯れた木の枝を集めるが、枯れていない枝も多く集まる。猫には違いがいまいちわからないみたいだ。
 わしは枝を仕分けをしつつ、火がつきやすいように積み上げる。いわゆる焚火の準備だ。最後に枯れ葉も中に入れて燃えやすいようにしたら、準備完了。

「それじゃあ、やるよ~」

 さっきよりちょい強め。2%で着火!

 ボッ……パチ、パチパチ

 よし、成功。上手く火がついた。これでみんなも満足してくれるじゃろう。

 わしは焚火の成功にウンウン頷いていたが、家族の反応は思っている事とまったく違うものであった。
 明るい光が出たまでは興味津々で見ていたが、火が葉へ、葉から枝へ燃え移って行くと動物の本能が現れ、三匹は飛び跳ねて距離を取り、警戒態勢となった。

「「「シャーーー!」」」

 あれ? これは……やらかした?

「何してるの。離れなさい! それは危険なものよ!!」

 おっかさんまで慌ててこう言う始末……猫に火はダメじゃったか。魔法が存在するからいけると思ってしまった。どうしよう?
 消すか……いや。せっかくつけたから、毛が乾くまではなんとかしたい。女猫も寒そうにしておるし、無理かもしれないが説得してみるか。

「大丈夫だよ。近くに寄り過ぎなければ危なくないよ。そんなに怖がるなら消すけど……暖かいから試しに寄ってみて」
「こ、こわくないし!」
「あったかいの~?」
「火を怖がらないなんて、本当にあなたは不思議な子ね」

 皆は男猫を先頭に、恐る恐る焚火に近付く。

「思ったよりこわくない」
「ほんとだ! あったか~い」
「あっ! それより近付いたら熱いよ」

 わしが注意すると、男猫は後ろに飛び退く。

「驚かせるなよ!」
「いや、まさかそんなに驚くとは……」
「あったか~い」

 女猫はけっこう図太い性格をしておるみたいじゃな。それに引き換え男猫は、普段は強がっているけどビビりじゃのう。今度、ドッキリでも仕掛けてやろうか?

「なにニヤニヤしてんだ? 噛むぞ」
「ナ、ナンデモナイヨ」

 顔に出ていたみたいじゃ。顔をモミモミして直そうと思ったが、モフモフするだけじゃ。これだから猫又は……

「この火はとても危険なものよ。それなのに、こんな魔法どうやって覚えたのかしら?」

 おっかさんは、何か考えながらわしを見ておるな。兄弟達はチョロイけど、おっかさんには言い訳が必要じゃな。

「ほ、ほら! ご先祖様も多くの魔法を使えたんでしょ? だから、わしも使えてもおかしくないでしょう?」
「そうだけど、ご先祖様は長生きした経験から出来たことだと思うのよね。それに比べてあなたは……」
「ちょっと寒かったから、暖かくなりたいな~って思っていたら、偶然出来ただけだよ!」
「う~ん。今日のところはそう言うことにしとこうかしら? それよりも暖かいわね。家の中で使えないかしら?」

 おっかさんはわしが話したく無いのを感じ取って、話題を変えてくれたのか? じゃが、おっかさんは暖炉を御所望か。さすがに猫の生活に文明を持ち込むのは自重しておこう。それにススだらけになって、黒猫になるのも嫌じゃしな。

「き、危険なものだから、家の中ではちょっと……くさいし」
「たしかに、におうわね。それにそろそろ寒い日が終わって、暑くなるから必要ないわね」
「暑くなるの?」
「私達は毛があるから厳しくなるわよ」
「「へ~~~」」
「その時が来ればわかるわ。もう体も乾いたでしょ? さあ、日も暮れるし、家に入るわよ」
「「「は~い」」」

 夏があるのか……言われてみれば、わしが生まれた頃より少し気温が上がっている。気温の変化があるって事は四季もあるのかな? ここで聞くとまた勘繰られそうじゃから聞けないな。
 おっと帰る前に焚火を消して、残り火が無いように処理しなくては。水球を出して、バシャッとな!

「「お~~~」」
「それも便利そうね……」

 おっかさんの目がきらりと光った! 暖炉といい、わしに何を求めているんじゃろうか……
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