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十四章 新居に移っても夜遊び

330 新居の完成

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 お宅見学ツアーは、庭でのお茶会で締め。フィリップは感謝の言葉を残し、笑顔のフレドリクたちと別れて馬車に乗り込んだ。

「なあ? あの扉の先って、城の通路だよな??」

 フィリップは馬車に乗り込んだ瞬間に難しい顔に変わり、何か考えて黙っているから、ボエルは同じことを考えていると思って口に出した。

「いや、用具置き場だよ」
「そんなワケは……」
「用具置き場。お兄様が用具置き場と言えば、そこは用具置き場だ。これが、次期皇帝と関わることで一番大事なことだよ。ボエル……間違えないで」
「そ、そういうことか……今後、気を付けます」

 皇帝が黒と言えば白でも黒く染まる。そのことを深く心に刻んだボエルであった……


「さあ! お引っ越しだ~!!」
「「「「「おお!」」」」」

 数日後、ついにフィリップのお家は完成。護衛騎士に部屋にある物を全て運び出してもらう。
 フィリップとボエルは馬車に乗ってお出掛け。帝都学院の寮にやって来たら、寮の前には背の低い女子生徒が数人とボエルの彼女が立っていた。

「「「「「おはようございます!」」」」」
「やあやあ。出迎えご苦労様。例の物、用意できてる?」
「あちらに!」
「ボエル、馬車に積み込んじゃって」
「あ、ああ……」

 ボエルは何がなんだかわからないまま、アクセーン男爵家の次女に手で指された布袋を握って馬車に積み込む。その間、フィリップは女子生徒と喋って、手に何かを握らせていた。
 女子生徒はフィリップと握手をして嬉しかったのか、少し離れた場所でキャッキャッと喜んでいる。

「んじゃ、みんなありがとね。あと、勉強も頑張ってね~?」
「「「「「はいっ!」」」」」

 それらが終わると、フィリップは馬車に乗り込み撤退。女子生徒は頭を下げて見送るのであった。


 ボエルに袋の中身を聞かれたが、フィリップは「秘密~」と喋らないまま新居に帰宅。そこでは護衛騎士が引っ越し作業をしていたので、フィリップは指示だけ出したらその辺のベンチでゴロンとお昼寝。
 そうしてランチの時間になったら起こされたので、1階の長方形になっている広々としたエントランスに新居の改築に関わった全ての者を集めて、真っ昼間から宴会だ。

「え~。みんな、今までご苦労様。ま、長い話なんてしてもつまんないだろから、さっさと飲め! 食え! 今日は無礼講だ! かんぱ~~~い!!」
「「「「「かんぱ~~~い!!」」」」」

 フィリップの短い挨拶で、全員グラスをかかげて一気飲み。用意されたたくさんの料理に舌鼓を打つ。
 フィリップはそんな笑顔でむさぼり食う面々の隣に行っては感謝の言葉。プラス「ボーナス~」とか言ってはポケットに金貨2枚を入れて行く。みんな銀貨だと思っていたのか、帰ってから驚いたんだって。

 夕方頃になると宴もたけなわ。手分けして片付けると、大工や庭師は帰って行く。護衛騎士は、今日からここが職場兼、宿舎だ。
 戸締まりをしたら1階のお風呂で疲れを落として、個室で就寝となる。今まで相部屋だったから、ここへ来てよかったと喜んだんだとか。ただし、1人は見張りで寝ずの番だ。

 フィリップの寝る場所は2階。ボエルと一緒に上ると、靴からスリッパに履き替えさせる。

「なんでだ?」
「この板から土足禁止なの。そのほうが掃除が楽だからね」
「ふ~ん……そんな家もあるのか……あ、この袋はどうする?」
「そっちのドアがふたつ並んでるとこ、どっちでもいいから入れといて」

 ボエルは初めての風習に少し気になっていたが、郷に入れば郷に従え。寮で受け取った袋は、右側の部屋にまとめて放り込む。
 そしてフィリップがドアを開けっぱなしにしていた部屋に遅れて入った。

「おお~。全部板張り? なんかいい匂いがする」
「ニヒヒ。いいでしょ~? ここならいくらでもゴロゴロできるよ??」

 フィリップは広いリビングを転がり出したので、ボエルははしたないと思いながらもマネしてみる。

 このリビングは、大工が四苦八苦して作った逸品。釘をなるべく減らした上に、ツルツルに仕上げろというフィリップの無茶振りを叶えてくれたのだ。
 まぁフィリップが元の世界の板の加工方法をうろ覚えだが知っていたから、大工もチャレンジできたんだけどね。

 一通りコロコロ転がった2人は、「何してんだろ?」と立ち上がってお風呂へ。2人で入っても充分な広さの湯船に浸かって疲れを取る。

「なんつ~か……従者のオレまでこんなにゆっくりしていいのか?」
「いいんじゃない? ここは誰の目も届かないんだし。防音もバッチリだよ」
「あ……そういうことか!? 新しいメイドともここでイチャイチャする気だな!?」
「まぁ……そのための屋敷だし……」
「おお~い。せめて彼女としろよ。そんなんじゃ、いつまで経っても結婚できねぇぞ~」
「ボエルに心配された!?」

 まさかボエルに結婚の心配をされるとはフィリップも思っていなかったらしい。なのでショックを受けていたけど、あとから「彼女自慢か?」と怒っていた。
 お風呂から上がり体を拭いてもらったフィリップは、裸のままベッドルームへ。ボエルはなんとなくタオルを巻いてついて行った。

「ベッドルームもいいな……というか、2階に丸々全てを詰め込まれているような……」
「フフン♪ 気付いた? キッチンもあるから、人間が生きる上で必要なことは、ここで全てをできるよ。導線も完璧だ」

 フィリップの部屋は、2階のフロアをほとんど使った豪華なスウィートルーム風。アイランドキッチンに冷蔵庫も完備。トイレも近くにあるから入り放題だ。

「すっげぇ便利な部屋だな。オレも同じような部屋に住みたいかも? あそこで彼女が料理してるところが見えるってのも、いいな~」
「その彼女が裸でエプロンなんかしてたら、なお良しだよね~?」
「なんだその破廉恥な格好……いや……エロッ!?」

 ボエル、未来の奥さんが裸エプロンをしているところを想像しただけで鼻血がツーっと垂れる。その興奮を発散するために、フィリップの新居に泊まった女、第一号になっちゃうのであったとさ。
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