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十四章 新居に移っても夜遊び
323 フレドリクの新居探索
しおりを挟むお酒を飲んでから部屋の中でドタドタ追いかけっこをしていたフィリップとペトロネラは、一気に酒が回ってパタリと倒れた。
なのでボエルは水を飲ませたりして介抱したら、2人を同じベッドに寝かせて部屋から出て行く。酔っ払いの相手、大変だもん。
次の日フィリップが目覚めたら、ペトロネラはもう起きていて、フィリップの下腹部辺りでペチペチ音を出して遊んでいた。
「な、何してんの?」
「何しても立たないの……」
「やめれ~~~」
フィリップの子種、お酒がまだ残っていたのでギリセーフ。でも、甲斐性が無いと思われたくないのか、朝からマッサージを頑張るフィリップであったとさ。
ボエルが起こしに来た時には終盤だったらしく、そのまま待機。というか、覗いてた。
それが終わって2分ほど置いてからボエルは寝室に入ったけど、早すぎたので覗きはフィリップにバレていた。
フィリップは特にやることがないので、二日酔いとか言ってベッドの上から動く気配がない。なのでボエルはペトロネラの着替えを手伝い、役得とか思ってた。
ペトロネラが出て行くと、フィリップも服を着せてもらって皇族食堂で朝食。帰り道は、何故かフィリップは道を逸れた。
「散歩でもするのか?」
「うん。こっちこっち~」
フィリップがズカズカ歩いていると、たまに擦れ違うメイドが頭を下げてクスリと笑う。やはりボエルが後ろにいると、小型犬が喜んで散歩しているように見えるらしい。
城の中、かなり遠くまでやって来たところで、ボエルもフィリップがどこに行こうとしているのかを気付いた。
「フレドリク殿下の新居に行くのか?」
「おお~。よくわかったね~」
「右翼まで来たら誰でもわかる。馬鹿にしてんのか?」
「ゴメンゴメン」
フィリップは心のこもってない謝罪。ここ最近、フレドリクの周りを調べさせていたのだから、もっと早く気付いてもいいもん。
「てか、いま行っても、フレドリク殿下は仕事中だから会えないぞ?」
「あぁ~……ま、新居がどんなところか見たいだけだし、会えなくてもいいよ。ウチより立派なのかな~?」
「だろうな~。絢爛豪華な佇まいしてる気がする」
「どんな屋敷なんだろうね~?」
なんだかんだで2人とも屋敷は気になるのか話が弾む。ちなみに右翼は騎士の宿舎もあるから、フィリップは「汗臭そう」とか言ってた。
でも、ボエル的には「こっちのほうが防犯面では優れているから皇太子殿下なら当然」とか言っていたので、フィリップは「差別されてる」って怒ってた。
そんな感じで雑談していたら、廊下の遠くのほうに2人の騎士が立っているように見えたのでフィリップの足が止まる。
「ねえ? もうそろそろ新居に着くよね? 僕もあそこまで厳重にしなきゃダメだったのかな?」
「う~ん……どうだろう? 万全を期すためなら、やってもいいかも??」
「廊下まで塞ぐ必要もないように思えるんだけどな~」
「まぁフレドリク殿下の場合はお妃様もいるから、厳重になってるんじゃね?」
「そんなもんなのか~」
ボエルの答えに些か納得がいかないフィリップであったが、歩を進めて騎士に近付いた。
「お引き取りください」
「はい??」
騎士はフィリップの顔を知っているはずなのに、第一声は挨拶でも止める言葉でも無く「帰れ」の一言だったのでフィリップの声も上擦った。
「僕、第二皇子だよ?」
「重々承知しております。しかし、皇太子殿下から関係者以外誰も通すなと命令されております」
「皇太子の身内は関係者でしょ?」
「仰られていることも重々承知しております」
「皇帝陛下でも通さないの?」
「はっ。命令ですので」
「う~ん……」
フィリップがボエルの顔を見ると「ありえないだろ」と書いていたので、ボエルのお尻をポンッと叩いた。
「それじゃあ仕方ないね。お仕事ご苦労様。ボエル、行くよ」
「いま、ケツ触ったよな?」
フィリップが踵を返すと、ボエルはセクハラの文句を言いながらついて行くのであった。
「なあ? 殿下のわりには引くの早くないか??」
騎士から充分離れたところでボエルは疑問を口にした。フィリップはワガママだから、あんな言い方されたら絶対にゴネると思っていたらしい。
「誰が引くって行ったのよ。外から回るよ。出口探して」
「やっぱり殿下はそうだよな~」
そのアンサーにボエルは激しく同意。悪ガキだから、フェイントでも入れてるように見えたらしい。
けっこう離れた位置まで来たら中庭に出る出口を発見したフィリップたちは、外からまた北上する。
「うわっ。外も騎士がうろついてやがる」
「めちゃくちゃ厳重だな。どうする?」
おおよそだが、廊下で立ち入り禁止と追い返された所を越えた場所には、壁に張り付くように騎士が歩いていたのでまたストップ。
「もうちょっと遠回りするか~」
「どこから行けば……あの道が使えそうだ」
ボエルが道を探したら庭園の入口があったのでそちらのほうへ。迷路のようになっているので、迷いながら北を目指して進む。
そうしていたら、木製の東屋を発見したのでフィリップはボエルに協力してもらって屋根に登った。
「なんか見えるか~?」
「うん……たぶんだけど、僕たちが止められた場所は、お兄様の新居のかなり前だったみたい」
「てことは~……どういうことだ??」
「さあ? そろそろ落ちるよ~??」
「落ちるなよ! あぶねっ!?」
フィリップはなんとなく答えは見えたので、背中から落ちてボエルがキャッチ。いくら余裕で受け止められると思っていても、第二皇子が自殺まがいのことをするので、ボエルの冷や汗は止まらないのであったとさ。
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