306 / 356
十三章 卒業前も後も夜遊び
306 卒業パーティー
しおりを挟むリネーアパーティから帝都学院の思い出を聞いたフィリップは、全員追い出す。友達のいないフィリップにそんな話をしたから、怒らせたと思って謝罪しまくるから腹が立ったらしい。
それでも執筆意欲は生まれたので、フィリップはリネーアパーティから聞いた思い出話をメモしたモノを見ながら答辞の作成。ボエルが余計なことを書いてないかと覗こうとするので、命令で排除。
思ったより早く書き終えたフィリップは、昼はボエルたちとマッサージしたり5人組とダンスの練習したり。夜には我慢できずに街に繰り出しフレドリクの動向を探ったり、奴隷館の裏口からコッソリ入ってキャロリーナとマッサージしたり。
忙しく毎日を過ごしていたら、期末試験の勉強を忘れていたけど、成績は真ん中辺りをキープ。
ついに特に待ってもいない卒業式の前夜、帝都学院名物、煌びやかな卒業パーティーの開幕だ。
フィリップは5人組の中で、身分は関係なく一番背の低い女性2人と腕を組んで入場。それでも背が足りないから、人間に捕まった宇宙人みたいになってる。
卒業パーティー出席者は拍手で出迎えてはいたが、その顔は半笑い。どう見ても、2人の姉に弟が連行されて見えるらしい……
その目にフィリップは気付いていたけど、生徒会が用意してくれていた特等席に陣取る。ここで5人組を侍らせていると、生徒会が開会を告げて楽団が音楽を奏でた。
それを合図に卒業生がパートナーを伴い、ダンスホールに流れ込んだ。
「殿下、卒業おめでとうございます」
「うん。おめでとう。卒業式は明日だけどね~」
しばらくすると、リネーアがパートナーと共に挨拶に来たけど、フィリップがその挨拶を台無しにするので苦笑いだ。
「てか、そっちの彼って……モブ君?」
「また忘れていたのですか……」
「覚えてるって~。久し振りに見たから顔を忘れてただけだよ~。名前と彼氏ってのは覚えていたでしょ?」
「名前はコニー・ハネスです……」
「そうそう! そんな名前だったよね~……すっげぇモブっぽい名前だな……」
さらにコニーのことが記憶に無かったので、リネーアとコニーも苦笑いを通り越して呆れてるよ。それでもコニーは言いたいことがあったので我慢だ。
「殿下のおかげで、無事、近衛騎士に合格しました。ありがとうございました」
「僕のおかげじゃないでしょ? カイが勝手にやったこと……」
「仰りたいことは重々承知しております。しかし、今日だけはお許しください。本当にありがとうございました!」
「わかったわかった。2人を祝福するよ。よかったね」
「「ありがとうございます!」」
今日だけの無礼講。フィリップは笑顔で祝福し、少し話をする。
近衛騎士になるには推薦が必要なのは当然だが、それでも試験はあったらしい。普通の貴族ならコネで入るから形式的な物なのだが、フレドリク付きの近衛騎士は実力主義だから、それは狭き門。
かなり多くの希望者はいたが、今回受かったのはコニーを含めて4人しかいなかったとのこと。
そこからフレドリクが皇帝に進言し、皇帝が認めてからコニーは騎士爵をもらって、晴れて貴族の当主となったそうだ。ちなみにカイは、一年先に近衛騎士になっていたんだって。
「うん。やっぱりモブ君の実力だね。その力でお兄様を守ってね」
「はっ!」
「んじゃ、そろそろ踊って来な。急がないと僕が邪魔するよ~?」
「コニーさん。行きましょう」
「うん。行こうか」
挨拶の終わったリネーアとコニーは、頬を赤らめてダンスホールに消えるのであった……
それから3曲ほど音楽が流れたら、フィリップは立ち上がる。それと同時に、会場の灯りが一斉に消えた。
フィリップの出番だ。
フィリップはスポットライトを浴びると5人組の1人と腕を組んで特等席を下り、ダンスホールの中央に立つと音楽に合わせて踊る。
そして頃合いになると特等席の下で待っていた5人組の一員とチェンジ。それを5回繰り返す。
その間、卒業生は1人目の時には「こいつ、こんなに踊れたのか」と感心して拍手をしていたが、2人目にチェンジすると「こいつはまた……」と呆れた顔に変わる。
それ以降は、ダンスパートナーが変わる度に「やりたい放題だな」と諦めと侮蔑の目で拍手を繰り返すのであった……
ダンスホールを独り占めしたフィリップは手を振って退場すると、卒業生が雪崩れ込む。特等席に戻ったフィリップはやることがないので、5人組を侍らせたまま料理をツマミながらダンスを鑑賞。
その5人組は、フィリップに自由時間をもらっているので、最低2人を残してパートナーと踊ったり友達の輪に加わって談笑したり。
そこでフィリップは質問。5人組の彼氏はどんな人物でどこまで進んでいるかを根掘り葉掘り聞いてるよ。
5人組も自分のことは聞かれないから喋っていたけど、ローテーションを組んでるんだから次の順番では顔が真っ赤。フィリップは5人組がキス程度で顔を赤くしているから、セクハラしまくっていた。
そんなことをしていたから、5人組にかなり嫌われて最後のほうは喋ってくれず。その時、生徒会長のレオナルドが特等席に登って来たから助かった。
「卒業生とパートナーの皆々様! 名残惜しいですが、前夜祭はそろそろお開きの時間となりました。今年の最後は、フィリップ殿下を楽しませるために生徒会から余興を用意しましたから、是非とも皆様ご参加ください」
レオナルドがフィリップの名を出したのだから、卒業生に断る選択肢はない。それから生徒会が数人掛かりで簡単なレクチャーをしたら、卒業生は大きな輪を作って男女で手を取り合った。
「さあ、演奏のスタートです!」
チャ~ラチャラチャラチャ~ン♪ チャ~ラチャラチャラチャ~ン♪
楽団の音楽に合わせて、男女が手を繋いで踊る。一区切りがつくと、礼をして男女のパートナーが変わって踊り出す。
そう。フィリップが生徒会にやらせたのは、所謂、フォークダンスだ。
最初は困惑していた卒業生であったが、しばらくすると笑顔で楽しそうに踊るのであった……
11
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
猫王様の千年股旅
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。
紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。
魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。
千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった……
☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。
できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。
初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも……
「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。
R指定は念の為です。
毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる