298 / 324
十三章 卒業前も後も夜遊び
298 手紙の返却、男子の場合
しおりを挟む呪いの手紙にフィリップが恐れもしないので、ボエルは口を滑らせて馬鹿にしたからには、フィリップの頬はプクーッと膨らんだ。けど、ボエルが口でナニかの機嫌を取ったらすぐに直った。フィリップの扱いに慣れたモノだ。
「てか、殿下にこんなこと書いて、この子、頭は大丈夫か? 殺されても文句言えないぞ」
「イヤだな~。そんなことで僕が怒るわけないでしょ~」
「いや、せめて怒れよ。第二皇子だろ?」
「第二皇子……あっ!?」
「立場だけは忘れるなよ~」
フィリップが自分の地位を完全に忘れていたので、ボエルもジト目だ。
「まぁ実在する名前が書かれてないんだから、怒っても仕方がないと言いたかったみたいな?」
「そうなのか? ちゃんと家名も書いてあるけど……」
「ボエルだったら正直に書くんだ~」
「うん。書かないな」
ボエルが差出人に納得したら、フィリップは他にも4通の手紙を広げた。
「これも似たような感じ。呪いの手紙だけじゃなく、罵詈雑言の手紙もあったの」
「ふ~ん……殿下って、そんなに嫌われてたのか」
「そんなワケないでしょ。え? 僕って、みんなから嫌われてたの?」
「いや……馬鹿にされることは尋常じゃないぐらいめちゃくちゃ多いけど、嫌いって声は聞いたことがない……変だな……」
「尋常じゃないとめちゃくちゃは同じ意味なんだから重ねないでくれない? 悲しくなっちゃう」
そこまで馬鹿にされていたのかとフィリップはオヨヨと泣いているが、ボエルは無視して考えていたら閃いた。
「あっ! 女関係だ! 酷いフリ方しただろ? もしくは、襲って無理矢理やったな!? だから恨まれるんだよ!!」
「ボエルさん? 決め付けないでくれません??」
「だって、殿下が恨まれる理由、それぐらいしかないだろ?」
「確かにそうだけど、やる前にちゃんと遊びで同意してもらってるから、別れる時も円満だよ」
「それ、円満だと思ってるの殿下だけじゃね? そもそも前提がひでぇ……よくそんなこと言えるな」
「だって第二皇子なんだも~ん」
ボエルがドン引きしてるのに、フィリップは口答え。「こんな時だけ地位を使うんだ」とさらに引かせてる。
そんな中、フィリップは腕を組んで手紙に目を落とした。ボエルの言い分はさもありなんと言えなくはないが、フィリップが帝都学院の女子にムリヤリ手を出したのはイーダのみ。
確かに恨まれている可能性はゼロではないが、卒業してからこの帝都に戻って来ていないのだから、犯人の可能性はゼロだ。
「あ……これって全部、筆跡違うくない?」
「う~ん……これとこれは違うと思うけど……つまり、殿下は5人に手を出したと言うことか?」
「それは一旦忘れて。そうじゃなくて、この手紙ってどうやって集めたかって聞きたいの。1人1人手渡し?」
「いや。ほとんどまとめて渡された」
「てことは、ボエルは差出人の顔と名前はほとんど一致しないんだよね?」
「まぁ……かわいい子は覚えてるけど……」
いまはフィリップが謎解きをしている最中。ボエルのボケにこけかけたけど、我慢だ。
「これはますます面白くなって来たな~」
「うわっ。また何か企んでる……メイド服の時みたいに酷いことしてやるなよ?」
ある程度考えがまとまったフィリップは悪い顔して、ボエルを不安にさせるのであった……
それからのフィリップは男子の手紙だけ読んでいるから、ボエルは何をしたいかがわからない。なので、フィリップが仕分けした面白い手紙を読んで笑い、途中まで仕分けした女子の手紙を読んでキュンキュンしてた。
翌日には男子の手紙は読み終わったので、ボエルに指示。その次の日に男子をとある大部屋に集め、手紙の返却プラス、フィリップが書いた文章を読ませる。
これはボエルは嫌がったけど、名代として命令されたので、渋々だが偉そうな感じでやらなくてはならない。
「フィリップ殿下は、卒業後は皇族に残るか公爵になるかまだ決まっていないと仰っている。したがって、誰かをお側に置くことも自分で決められないそうだ。
ただし、手紙は全てお読みになって、皆の熱い気持ちに感謝していらした。しかし、先程述べた理由もあるから、返事は全て断らざるを得ない。不甲斐ない自分を許してくれと仰っておられた」
珍しくフィリップが皇子らしい振る舞いの文章を書いて寄越したので、ここに集まった男子生徒は半分が感心して、半分が驚いた顔になっていた。
その顔を微妙な顔で見ていたボエルは、手紙を返却しろと言われていたので、男子生徒の名前を1人1人読んで手渡して行く。
「あの……この、12点という点数はどういう意味でしょうか?」
その手紙の封筒には点数が書いてあったので、一番始めに気付いた準貴族の者が手を上げた。ボエルは溜め息が出そうなのを我慢して、ギリギリ皆に聞こえる声で答えを告げる。
「それは~アレだ。手紙の文章がよくできているかの点数だ。まぁ、低くても高くても気にするな。殿下の基準だからな?」
「はあ……」
ボエルに気にするなと言われても、点数があるなら誰もが気になること。返却された者は、自分の点数を確認して高い者や低い者を探す。
ボエルは返却が終わると、ダッシュで逃走。この場に残っていると、何を言われるかわからないもん。
その男子生徒の中で、フィリップが100点を付けた手紙の伯爵令息が嬉しそうに自慢していたので、その伯爵令息に全員が群がった。
「「「「「ブハッ! あははははは」」」」」
「あんの、クソ皇子~~~!!」
男子生徒、手紙を読んだだけでノックダウン。全員に回し読みされた伯爵令息は、卒業まで『迷文の貴公子』と馬鹿にされて笑われるのであったとさ。
11
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
猫王様の千年股旅
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。
紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。
魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。
千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった……
☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。
できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。
初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも……
「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。
R指定は念の為です。
毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる