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十二章 最終学年になっても夜遊び

286 フラグ回収

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 ダンジョン実習の試験が終わればフィリップのモノ。仮病を使って、夜の街に繰り出す。そんなことをしていたらボエルから報告があった。

「リネーアたちは明日が試験だとさ。たぶん1位になるんじゃないか?」
「ふ~ん……」

 ボエルもリネーアの不幸は詳しく知っているから感情移入して嬉しそうに話をしているが、フィリップは興味なさそうな顔。

「なんだよ。気に掛けていたから、助言していたんじゃないのか?」
「別にそういうワケじゃないけど……試験が心配なだけ」
「リネーアたちなら、ワイバーンを倒して戻って来るに決まってるだろ」
「そういう心配じゃないよ。上級貴族から不正を疑われるだろうと思ってね~」
「あっ! やる! 子爵家程度じゃ潰される!!」

 いや、フィリップはわりと心配していたから難しい顔をしてたっぽい。

「明日はボエルもついて行ってあげて。僕は動けないから暇でしょ? 護衛もいるから大丈夫だよ」
「そういうことなら……見届けて来る!」

 翌日は予定通り、ボエルはフィリップの食事の準備だけしてリネーアパーティに付き添い。帰って来たらフィリップがサンドウィッチとかに手を付けないで爆睡していたから、心配で揺すって起こした。

「ふぁ~……おはよ~う」
「そのやり取りは朝にした。もう夕方だぞ? 何時間寝てんだよ」
「えっと……18時間ぐらい??」

 ボエルはそんなことを聞いてないって顔。単純にフィリップは夜遊びして起こす人がいなかったから、寝過ぎただけだ。

「はぁ~……リネーアたち、ワイバーン倒したぞ」
「あぁ~……昨夜そんな話してたね。先生たちはどんな反応だった?」
「驚いて褒めていたけど、これからどうなるかだな~……いちおう殿下の取り巻きだと釘を刺しておいたけど」
「ま、それなら苦情が入っても大丈夫でしょ。お疲れ様~」
「そろそろ起きたらどうだ?」

 フィリップはまた寝そうになっていたので、ボエルは釘を刺すのであった。


 それから中間試験までフィリップはダラダラ仮病を続け、その頃にいちおう教師に「ダンジョン実習の試験、リネーア嬢たちは何点だったの?」と直接釘刺し。
 中間試験の結果発表と共に、ダンジョン実習の順位も発表となった。

「殿下! 見てください! ダンジョン実習、私たち1位でしたよ!!」

 その結果に、リネーアはフィリップの部屋で興奮。フィリップも嬉しそうに聞いている。

「よかったね~。頑張った頑張った」
「はいっ! 全て殿下の助言のおかげです! ありがとうございました!!」
「助言だけじゃねぇけどな~……」
「ボエルはお口チャック」

 ボエルがいらんこと言いそうだったからすぐに止めたので、リネーアの耳には残らなかった。

「殿下は何位だったのですか?」
「僕? 僕は~……見てないな。ちょっと待って」

 フィリップは順位にまったく興味を示さないので、リネーアとボエルは「それぐらい見ようよ~」って生温い目。中の下と聞いたら、納得いかないって顔に変わった。

「何かの間違いでは? 殿下なら、もっと上でもいいと思うのですが……2人で3階まで行ったのですよね??」
「厳正な審査の結果でしょ。僕、1匹もモンスター倒してないし~」
「あ……そういうことですか」
「そういえば殿下、ダンジョン実習始まってから1匹もモンスター倒してねぇ……」
「そうなのですか!?」

 リネーアはフィリップが馬鹿皇子を演じているのだと納得したが、ボエルの一言に驚き。けっこう長い期間があったから、ゼロとは思いもよらなかったみたいだ。
 そのせいで、キャンプでのフィリップの発言は嘘だったのではないかと疑い出したリネーアであった。


 中間試験が終わった連休には、久し振りに皇帝からの呼び出し。フィリップはいつも通りビクビク登城して皇帝の膝の上だ。

「ダンジョン実習の成績、どうしてこんなに低いのだ?」
「へ? これぐらいがちょうどいいのかと思ったんだけど……」
「そんなワケなかろう。武力は自分を守る最大の武器だ。上位に入れば、そうそう手出しされなくなっていたはずだ」
「そっちだったの~? それならそうと言っておいてよ~」

 今回は、フィリップの読みは大外し。ただ、皇帝は言葉足らずだったので、口答えしてしまった。それで怒られると構えたフィリップであったが、撫でられただけ。皇帝も反省してるみたいだ。
 また第二皇子が第一皇子を暗殺未遂した話を聞いたところでタイムアップ。フィリップは執務室から出たら、いちおうボエルに成績のことを報告すると……

「だから言っただろ! オレ、クビになるのか!?」

 怒鳴られちゃった。

「また自分の心配してる……そんなに僕の従者続けたいの?」
「そりゃあ……彼女もできたし雇い先もあるから、もういいかも?」
「辞められたら僕が困る! 父上には言って聞かせるから、辞めないで~~~」
「お、おう……まさか殿下に泣いて止められる日が来るとは……」

 フィリップはボエルに抱きついているだけ。途中変更は面倒くさいってだけ。もっと言うと、こんなに面白いオモチャを手放すのはもったいないと思って、引き留める演技をしてるだけだ。ボエルから言質げんち取ったら、すぐに悪い顔してるし……


 皇帝との面会が終わったら、面倒くさい人とも面会。連休は城に残るので、夜にペトロネラの部屋を訪ねた。

「あっら~。フィー君ら~」
「もうデキあがってるし……」

 城に帰る前にアポイントは取っていたのに、ペトロネラは泥酔。この姿は人には見せられないからフィリップはペトロネラを押し込んで、ボエルには朝に迎えに来てもらう。

「なに~? 僕と会えるの、そんなに嬉しかったの??」
「ムフフ……ゴクゴクゴクゴク」
「飲まずに答えてくれない?」

 ペトロネラは含み笑いをしたと思ったら、ワインをラッパ飲み。そしてボトルをテーブルに叩き付けた。

「プハ~ッ! モテ期がぁ……くるぅぅ~」
「くる? 来たんじゃなくて? いつくるの??」
「いまでしょっ」
「往年のギャグしまくらないで」

 元の世界のツッコミはペトロネラに通じず。ただし、ペトロネラは酔って気分がいいからそのツッコミは気にならないみたい。モテ期の話がしたくて仕方ないとも言う。

「ふ~ん……急に見合い話が舞い込んでるんだ……」
「もう、選り取り見取り! どの子にしよっかな~? ゲヘヘ」
「若者狙いなのね……」
「そんなことないわよ~? 陛下に2回もお茶誘われちゃったもん」
「父上……本気だったんだ……」

 フラグ回収。ペトロネラに見合いを勧めたのはフィリップなのだが、皇帝まで旦那候補に入っていたのでは、あのとき不穏なことを考えるんじゃなかったと死ぬほど後悔するのであったとさ。
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