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十二章 最終学年になっても夜遊び

282 1週間……

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 ローエンシュタイン公爵家のペトロネラとやっちまったその日は、フィリップは部屋に戻ってからボエルと下世話な話。食事とトイレ以外は部屋から出ずに、たまにボエルを外に出して情報収集させていた。

「2人で夜を過ごしたってのが話題の大半で、ペトロネラ様の雰囲気が柔らかくなったって声も多いぞ」
「メイクだけじゃ足りなかったか……ま、それぐらいの変化があったほうが噂に信憑性が持てるかな?」
「噂じゃねぇし。事実だし」

 噂では「あの2人付き合ってるらしい」だが、やっちまってるのだからボエルの意見は真っ当。

「彼女じゃないも~ん」

 でも、フィリップは最低。付き合ってるってところだけは違うと主張しやがった。

「ひでぇ……でも、羨ましい……オレもそんなことしてぇ~~~!!」
「やればいいじゃん」

 そのフィリップから師事されたボエルは、願望が口から出てしまうのであった。けど、それをしてしまうと「馬鹿皇子になってしまう」と、なんとか我慢するのであったとさ。


 その夜……

「約束してなかったはずだけど……」
「来ちゃいました。てへ」

 ペトロネラが押し掛けて来たので、フィリップも招き入れるしかない。

「ボエルは帰しちゃったから、何もおもてなしできないよ?」
「ちゃんと準備して来ました! こちらへ!!」

 その後は、アレよアレよ。ペトロネラの付き人が入って来て、着替えや日用品なんかを設置したらお辞儀をして去って行った。

「僕の部屋が……ここで暮らすとか言わないよね?」
「そこまで図々しくはありません。最低限、身の回りに必要な物を持って来ただけですよ」
「この大きな箱は?」
「ワインです」
「何本入ってるの!?」

 酒豪、ペトロネラ。とりあえず3日分持って来たらしいが、聞いていた1日の摂取量と数が合わないよ。

「ま、まぁそれはいいや。それより毎日は大変だろうから、マッサージする日は決めておこうよ。週2ぐらいでどう?」
「できれば週10ぐらいで……」
「1週間は7日しかないよ??」

 ダメだこりゃ。ボエル再び。こんなに気持ちいいことを知ったがために、ペトロネラもサルになっちゃった。

「はぁ~……ひとまずやる?」
「はいっ! クビグビクビグビ!!」
「飲まないとやってられないのはこっちなんだけど……」

 落ち着かせようと思ってさっそくマッサージを提案したフィリップであったが、気付けにワインをラッパ飲みするペトロネラを見て、性欲は減退するのであったとさ。


 翌日……

「なんだこの荷物……」

 フィリップの部屋にボエルが合鍵で入って来たけど、昨日は無かった物が大量にあるので不思議に思いながら寝室を開けた。

「ゲッ……うわ……めっちゃいい体だな……」

 そこにはフィリップと裸で抱き合って眠るペトロネラの姿。一瞬驚いたボエルであったが、ペトロネラの裸体に目が離せなくなっている。そのままフィリップをコッソリ引っ込抜いて、リビングのソファーに置いてから起こした。

「どういうことだ?」
「ふぁ~……そういうこととしか言いようがない。もう、昨夜は大変だったんだよ~」

 フィリップはペトロネラが押し掛けて来たことから説明して、ついでにプレイ内容も報告。ボエルは羨ましそうに聞いてるな。

「ボエルが起こす?」
「もう目に焼き付けたから大丈夫だ」
「スケベ~」

 これ以上はボエルも理性が抑え切れられないので、その大役は泣く泣く我慢。フィリップがペトロネラを起こして、これからのことを少し話してから追い出したのであった。


 それから1週間、フィリップたちは毎日のようにランチやお茶をして、夜にはお互いの部屋を行き来している。ここまで目立つように行動しているのだから、城の中は2人の話題で持ち切りだ。
 第二皇子がペトロネラに手を出しただとか、ペトロネラが第二皇子を体で落としただとか、ペトロネラのテクニックで第二皇子はサルになっているだとか。その逆なのにね。

 中にはフィリップはペトロネラの隠し子で、最近カミングアウトしたから毎日通っているとの誤情報。またはフィリップがペトロネラに母親を重ねているから付き合ってあげている等々。
 これらの噂は尾ヒレが付き、膨らみ続けて終わりが見えない。

 そんな中、フィリップはニヤニヤ。出歩いても求婚目的のメイドもお偉いさんも近寄って来ないので歩きやすい。それに狙い通りメイドの鬱憤うっぷんも解消されて、仲良くなりつつあるみたいだ。
 唯一の誤算はペトロネラ。言うことは聞かないし毎日求めて来るので、夜の街に繰り出せない。このままでは息が詰まりそうなんだとか。昼間はボエルとマッサージしてるクセに……

 そこに久し振りに皇帝からの呼び出し。いつも通りビクビクしながら執務室を訪ね、膝の上に乗せられた。

「今度は何をたくらんでいるのだ?」

 もちろんペトロネラとのこと。ただ、フィリップのことだから何か裏があると読んで答え合わせに呼んだみたいだ。

「メイドの憂さ晴らしをちょっとね~……僕の悪い噂だけじゃ効き目が薄いって聞いたから」
「やはりか……しかしあの方を動かすとは、いったいどうやったのだ?」
「あの方って……ペトロネラさん?」
「そうだ。俺が子供の頃はよく遊んでもらっていたのだ」
「あぁ~……親戚のお姉さんだったんだ~……父上より年上!?」

 いまさら皇帝の年齢に驚くフィリップ。ペトロネラは39歳で皇帝は37歳。フレドリクが今年17歳なのだから、何も不思議ではない年齢だ。

「俺のこと、何歳だと思っていたのだ?」
「ご、50代……」
「そこまで老けて見えるのか……」
「いや、貫禄が凄まじいを超えてえげつないの。まさに、王の中の王。皇帝って、父上にしか似合わない言葉だよ」
「そ、そうか」

 フィリップが恐る恐る真実を告げると皇帝は暗い顔。しかし理由を聞くと珍しく頬が緩んだ。でも、フィリップの言い分は嫌味に近いんだけど、嬉しすぎて皇帝は気付けないみたいだ。

「ところで夜な夜な行き来しているみたいだが、本当に何もないのだな?」
「父上まで疑ってるんだ……」
「そういうワケではない……とも言い切れない。あの方が以前より美しくなっているから、不思議でならないのだ」

 実はペトロネラは皇帝の初恋の人。いまは何も感情を抱いていなかったが、最近顔を合わせたら気になって仕方がないらしい。

「たぶんアレだね。愚痴に付き合ってあげたの。言う相手がいなかったから、スッキリしたんじゃないかな~?」
「ほう……それ以外は?」
「思い付かない。というか、酒癖悪いから相手するの大変なんだよ~? あ、そうだ」

 皇帝がなんだかしつこいので、もう少しペトロネラの秘密を流してみる。

「ここだけの話、ペトロネラさん、結婚したがってるの」
「そうなのか? 興味がないのだと思っていた……」
「それは仕事が好きだから忘れていただけだよ。したいと思った時にはいい歳だったから、男からも声を掛けられなくなっていたから諦めたんだって」
「なるほど。時を同じくして両親も諦めていたから、縁談話を持って行かなかったワケだ」

 この話は皇帝は興味を持ってくれたので、さらに足してみる。

「今なら縁談を勧めたら食い付くと思うよ? でも、仕事にはプライドを持ってるみたいだから、結婚しても仕事を辞めさせないって人がベストだと思う。親御さんが健在なら、そういう条件で探すように助言してあげたら? あ、夏休みの間はやめてね。夏休み明けにやれば、メイドたちの話のネタになるからね」
「ふむ……もう行っていいぞ」

 ここでタイムアップなのか、皇帝はフィリップを撫で回すことなく膝から下ろして追い出した。

「お父さん……『俺でもいけるか?』とか言ってたけど、本気なのかな~??」

 ただし、皇帝の独り言はフィリップの耳に届く。

「お父さんとブラザーはイヤだな~……神様、そのご縁は何卒なにとぞ叶えないでくださ~い」

 こうして帰り道はフィリップがずっと祈っているので、ボエルは怒られたのだと決め付け「ざまぁ」って顔でついて行くのであったとさ。
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