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十一章 昼が忙しくても夜遊び

251 クッキング

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 街に出たフィリップがエロイ顔を一切しなかったから病気認定。急いで寮に帰りボエルに看病されていたけど熱もない。胸を見せたら飛び付いて来たから、ボエルも一安心だ。
 この日はもう日が暮れそうなので、そのままボエルとマッサージして就寝。その翌日、フィリップは調味料を運ばせた寮の調理場に来ていた。

「授業は?」
「サボリ」
「堂々とサボんなよ!?」

 らしいです。そりゃボエルにツッコまれるよ。でも、フィリップも早く実験したいからここは譲れない。

「美味しい料理が食べたいニャン」
「もうそれやってねぇんだよ。いつの話してんだ」
「そっか~。昨日のナンパ未遂しかネタないか~」
「今日は熱が高かったもんな~」
「チョロッ……」

 バカップルは卒業していたから、シンプルに脅し。これで心置きなく実験できるので、料理長に試作品を作るように指示を出す。

「これは西側の南方にある国の調味料ですね」
「あ、知ってるの?」
「いちおう……これを使ってしまうと、香りと味が全て持っていかれるので、帝国では好まれて使われないのですよ」
「そういうことか~……ま、僕はこの味が食べたいから、美味しく仕上げてよ。スープにトロミがつく感じでね~。こっちはこの鍋を使ってふっくら仕上げて」
「なかなか難しい注文ですね……なんとかやってみましょう!」

 料理長はチャレンジ精神を持っている人みたいなので、フィリップの細かい注文にも応えてくれる。味見兼、毒味も料理長がやってくれるのでボエルも安心だ。
 しかしなかなかフィリップ好みの味は完成しないので、スパイスの配合を変えて実験は続くのであった……


「うん……まあまあかな? 時間もないし、今回はこれで我慢するよ」

 数日後、完成した料理は、みんな大好きカレーライス。元の世界の味よりまだ劣るので、フィリップは辛口判定だ。

「いや、めっちゃうまいぞ? いくらでも食べられる」

 ボエルは甘口。料理長もフィリップと同じ感想なのに、バクバク食べてる。

「てか、ボエルがこれを作ることになるのかな? 大丈夫そう??」
「はい? なんでオレが……」
「ほら? 近々野外訓練あるでしょ? それ用のメニューだよ」
「はあ!? そのためにやってたのか!? だったらそう説明しろよ~~~」

 フィリップ、また説明足らず。秘密にしていつ気付くか待っていた節はあるけど。

「なんとなくボエルって、料理苦手な気がして……」
「まぁ……男子は普通、キッチンなんて立たないもんな」
「ボエルは女子だよ?」
「こ、これでも準貴族だから、料理は使用人がやってたみたいな?」
「ふ~ん……準貴族は使用人なんて雇えないから、お母さんとかがやってたと思ってたよ~。ちなみにお母さんの料理で何が一番好きだったの?」
「そりゃ骨付き肉を焼いたヤツ……あっ!?」
「早いチョロイ、ワイルド!?」

 ボエルが簡単に誘導尋問に引っ掛かるのは面白かったけど、家庭料理が原始人レベルだったから驚くフィリップであったとさ。


 それからボエルは料理を習っていたが、思ったより簡単だってのですぐにマスター。したと思っているのはボエルだけ。どうしても雑なので、見栄えは悪い。
 そのためにフィリップが考えた料理だから、味は及第点。野外訓練に挑む。

「お、おばよう……いま、ぶぐぎぜでやるがらな」
「すんごい鼻声だけど大丈夫?」
「だ、だいじょうぶ。ゲホゲホゲホゲホッ!」
「クマでも風邪引くんだね……」

 でも、ボエルは風邪を引いたらしく、一泊二日のキャンプなんて到底無理。フィリップも決断するしかない。

「今日は休み。命令ね」
「で、でも、1人でいがぜるわげには……」
「リネーア嬢のとこのメイドさんに面倒みてもらうよ。それに護衛は大量につくんでしょ? その中の美人さんを張り付かせるから大丈夫」
「ぜめで男にじろ」

 それなら大丈夫と思ったボエルだったが、護衛に手を出そうとしていたのでツッコミは忘れない。それで力を使い果たしたのか前のめりに倒れそうになった。
 フィリップはそんなボエルを担いでベッドに寝かせたら、リネーアに調査させていたボエルの彼女、カロラが仕えるソフィア・アクセーン男爵令嬢の部屋にダッシュ。ノックして扉が開くと、カロラもソフィアも固まった。

「朝早くゴメンね~」
「な、なんで殿下が私の部屋なんかに……」
「ちょっと君んとこのメイド借りたいんだけど、大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です……あっ! うちのメイドが殿下に粗相をしたのですね!? ど、どうかお許しください!!」
「いや、うちの従者と仲良しってだけだから、頭上げて。メイドさんはちょっとこっちに」

 カロラだけ廊下に連れ出したら、念の為の確認。

「主人にはボエルとの関係、何も言ってないの?」
「は、はい。混乱させると思いまして」
「だろうね。じゃあ、ひとまず友達ってことにしておこうか。それでなんだけど、ボエルが酷い風邪で寝込んでるの。僕、2日ほど部屋を開けないといけないから、主人に迷惑にならない程度でいいから看病してもらえる?」
「エル君が!? 大丈夫なのですか!?」
「大丈夫大丈夫。てか、君付けで呼ばれてたんだ……言わないワケだ。プッ」

 ボエルは普通に呼ばれてると言っていたから、フィリップも初めて聞いてくすり。ただ、時間があまりないので、ひとまずカロラには部屋のカギを預けて御案内。
 豪華すぎる部屋にカロラは恐縮しっぱなしだったけど、ボエルを押し付けたらフィリップは大きなリュックを背負って外に出た。

 この姿は乙女ゲームの野外訓練でルイーゼがしていたから「ヒロインみたいだな」とフィリップは思い出し笑い。そのまま上機嫌で厩舎きゅうしゃに寄って黒馬を受け取ったら、後ろを歩かせて野外訓練に参加するクラスメートと合流する。

「やあやあ。お待たせ~……なんか静かだね。なんかあった?」
「「「「「い、いえいえ~……」」」」」

 フィリップが遅れて来たことは許容範囲だが、第二皇子が従者も連れずに大きな荷物を背負って現れたモノだから、野外訓練参加者は呆気に取られてそのことに触れられないのであった。
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