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十一章 昼が忙しくても夜遊び

250 爆買い

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 帝都学院の2学期が始まると、フィリップはいつも通り最初は様子見。授業は寝て、あとからリネーアかボエルに話を聞くんだったら仮病使えばいいのに。
 ボエルから聞いていた通り、乗馬の授業はあったのでフィリップは体操服に着替えて出席。クラスメートが「あんなデカイのに乗れるのか?」とヒソヒソやっていると、フィリップは黒馬を連れて木陰に行ったら、黒馬を枕にして寝た。

「やっぱり乗れないんじゃね?」
「だよな~。乗馬してるなんて話、ひとつも聞いたことないもんな」
「これが第二皇子って……国は大丈夫か?」
「フレドリク殿下がいるから安泰だろ」

 その行動がフィリップのダメ皇子に拍車を掛けたが、一部の者は異常さに気付いた。

「なあ? 手綱も引かず、馬って操れるモノなのか?」
「ありえない。犬じゃないんだから……」
「だよな? 犬でもあんなに従順に従うかどうか……」
「その操り方が、ただ寝るだけって……」

 でも、もったいない使い方をしているので、フィリップの株は一切上がらないのであった。


 2学期が始まって1ヶ月。フィリップは仮病にもならず元気に学校で寝ているから、ボエルは微妙な感じ。体調がいいのはいいけど、生活態度に不満があるらしい。
 中間試験も良くも悪くもなく乗り切ったある日、フィリップとボエルは久し振りに街中に出る。今日の服装は茶髪町人風で、仲良し兄弟設定だ。

「なあ? ナンパしないのか??」

 ただ、フィリップは目的地があるのかズカズカ歩いて行くので、ボエルは何故か残念そうにしてる。

「欲しい物があってね~。市場とかってこっちで合ってるのかな?」
「確かそっちにあったと思うけど……あの子に聞いてみようぜ。な?」
「彼女いるのにそんなにナンパしたいんだ……」
「ち、違うぞ。道に迷わないために、な?」
「わかったよ。聞けばいいんでしょ」

 理由はナンパしたいだけ。フィリップは本当に市場の場所しか聞かなかったので、ボエルはめちゃくちゃ肩を落としていたから確実だ。


 立場は逆。フィリップがボエルの手を引いて歩いていたら市場に着いたので、フィリップは鼻をくんくんしている。

「さっきの子、いい匂いしたのにな~」
「まだ言ってるし……買い物終わったらナンパするから、それまで待ってよ」
「やった!」
「なんでこんな子になったんだろう……」
「で、殿下のせいです……」

 ボエルが喜ぶと、フィリップは冷たいツッコミ。その目でボエルも自分が浮かれていたことに気付いたけど、フィリップに罪をなすり付けてる。間違いなく師匠であるフィリップのせいだもの……

「てか、なに探してるんだ?」
「なんて言ったらいいんだろ……辛い? スパイシー? そんな香りの調味料」
「あ~。学食や寮の料理人に聞いてたヤツか。帝都学院の料理人が知らない調味料なんて、こんな場所で見付かるのか?」
「さあね~……でも、城とか学校はお上品な味ばかりだから、一般市民ならそういうの使ってるかも?」

 フィリップの答えに、ボエルは首をかしげた。

「なんで殿下は、そんな調味料のこと知ってんだ? 一般市民のメシなんか食べたことないだろ??」
「カールスタード王国で食べたからだよ。いろんな国の子が集まってるから、変わった料理が多くてね~。なんか食べたくなったの」
「そっか。大陸中の王族貴族が集まるから、宮廷料理もそれぞれか。オレもちょっと食べたくなったかも」

 花より団子。フィリップの大ウソでボエルもナンパを忘れて食材探しを真面目にしてくれるようになるのであった。


 そうして鼻をくんくして歩いていたら、フィリップはボエルの手を振り払って、タタタッと走って行った。ボエルはすぐに追いかけ、フィリップが止まると小声で喋る。

「おい、急に走るな。困る人がいるんだよ」

 そう。2人だけで出て来たワケではない。護衛が20人以上も囲んでいるから、急な行動は護衛が大きく動いて周りにも気付かれる可能性があるのだ。

「ゴメ~ン。やっと見付かったから~」
「この黄色い粉か? あ、確かに辛くて食欲をそそるような香りだな」
「でしょ? 問題はスパイスの配合なんだよね~……おばちゃんは他国の人? どんな感じで混ぜたりしてるの~??」

 露店のおばちゃんは、フィリップに親切に教えてくれて味見まで勧めてくれたけど、ボエルに止められた。

「待て。オレから舐める」
「あ……うん。頼むよ。でも、激辛かもしれないらちょびっとにしときなよ?」
「おう……からっ、え? いたっ!? これ、どっち!?」
「多く舐めすぎなんだよ~。おばちゃん、甘い飲み物ない? 水でもいいから」

 フィリップはこれでも第二皇子。こんな露店では衛生面は悪いし、毒殺の可能性もあるのでボエルから味見をしたけど、辛みは痛みをともなうので、毒かどうかも判別できないのであったとさ。


 毒かどうかわからない物は、フィリップの味見は禁止。ボエルもこれ以上の毒味は怖くてやりたくないってのもある。
 というわけで、フィリップが好みの味や調理方法を提示して、スパイスをブレンドしてもらった。ただ、おばちゃんも自信がないみたいなので、3種類だ。
 プラス、スパイスを大人買い。全種類をキロ単位で買ったから、おばちゃんも驚いていた。ボエルはもっと驚いてる。食べさせられると思ったのかな?

 それからも買い物を続け、荷物が増えたらその都度護衛が隠れて受け取り馬車に走っていたら、フィリップが欲しかった物は全て揃った。

「ニヒヒ。いい買い物ができた。そろそろ帰ろっか」

 大人買いどころか飲食店買いをしたフィリップは大満足。

「ナンパは? 殿下が女に目をやらないなんて、熱でもあるんじゃないか? 大丈夫か??」

 ボエルは不満を通り越して心配。あのフィリップが、今日は一度もエロイ顔をしていないから、自分のことよりも体が心配らしい。

「う~ん……お茶一杯ぐらいならいけるかな? それでいい??」
「やっぱ病気だって!? 帰るぞ!!」
「えぇ~。元気だよ~~~」

 いつもなら「宿屋にしけこまな~い?」とエロイ顔で無理を言うのだから、重病認定。ボエルに馬車に放り込まれて、寮に直帰するフィリップであったとさ。
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