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九章 物語が終わるまで夜遊び
199 フィリップの知り合い
しおりを挟むダンマーク辺境伯派閥のパーティーを1時間ほどお邪魔した皇族一同は、パーティーのハシゴ。
大きな派閥の場合は40分から1時間で移動。中規模は30分以下で終了。小規模でも昨年の活躍によっては足を運び、20分ほど滞在する。
皇帝は当主やその他貴族と少し喋り、フレドリクも似たような感じ。ラストにはエステルとのダンスを見せる。
フィリップも喋るは喋るけど、全員、塩対応。挨拶だけで、その後は無言でやり過ごす。
「パートナーがいないと不便ですよね? 娘なんかどうですか? ゆくゆくは妻に……」
「……」
「あの……」
「……」
「はい。失礼しました……」
こんなやり取りばかりだからだ。最初は断っていたけど、しつこいから声を出すこともやめたのだ。
何組ものパーティーを回った皇族一同は、夕方になるとお城へ帰宅。フィリップは自室に戻ると、綺麗な服のままベッドに飛び込んだ。
「ほら? シワになるだろ。脱げ」
「バンザ~イ」
「脱がされる時だけは従順なんだよな~……」
ボエルは呆れながらもフィリップの服を脱がし、今日の出来事を喋る。
「それにしても、フレドリク殿下とエステル様、仲直りしたみたいでよかったな」
「ボエルにはそう見えたんだ~」
「あん? 笑顔で喋ってたし、息の合ったダンスだったじゃねぇか」
「やっぱりガサツだね~。お兄様は仕事だから、そう演じていただけだよ」
「アレが演技だと??」
ボエルの手が止まると、フィリップは自分で最後の1枚を脱いだ。
「そそ。その証拠に、お兄様から一度も喋り掛けてないよ。エステル嬢があんなに喋り掛けてたのにね」
「そういえば……」
「エステル嬢は健気だな~。かわいそ」
「確かに……てか、なんでパンツまで脱いでんだ??」
ボエルは最後の1枚は脱がすつもりはなかったのに、フィリップはいつの間にかスッポンポン。
「ストレス溜まっちゃって~。お風呂の前にマッサージして~」
「裸で甘えるな! スカート捲るな! 脱がそうとするな~~~!!」
今日はオフィシャルな場だったので、メイド姿が仇に。フィリップに何かを脱がされたボエルは、仕方なくマッサージに付き合うのであった。
フィリップはそれでは足りなくて、娼館にダッシュで行っていたけど……
翌日からもパーティーのハシゴ。ボエルはフレドリクとエステルを凝視して、フィリップの言うことは本当だったと驚いていた。
次のパーティー会場もフィリップだけ不機嫌そうに貴族たちを追い払っていたら、数少ない知人が挨拶に来たのでパッと表情が明るくなった。
「エイラだ~。久し振り~」
「お久し振りでございます」
ここはエイラの夫が派閥に属するパーティー。2人はこないだ会ったばかりだけど、フィリップはごまかそうとしているとエイラも気付いて、同じような挨拶を返した。
そしてすぐにエイラは顔を近付け、小声で喋る。
「先日は大丈夫でしたか? お怪我はありませんでしたか??」
「なんのこと?」
「あとから護衛を送ったのですが、殿下が消えたと聞きまして……」
「あ~。アレ、エイラのとこの人だったんだ。つけられてたから気持ち悪かったから、振り切ってやったの」
これは大ウソ。エイラが護衛を送って来たから、1人で来たことがバレないように逃げただけだ。それでも病弱だったフィリップの成長がエイラは嬉しいのか感動してる。
「殿下はそんなに走れたのですね……」
「やだな~。いつの話してるんだよ~。僕だって、カールスタード学院で逃げ足ぐらい習ってるって~」
「お元気になられて……え? 逃げ足??」
でも、変なことを言われたので涙は流れず。エイラは周りの目もあるので長くは喋れないのか、首を傾げて夫の下へ戻るのであった。
この日はもう1人、知り合いが出席しているパーティーがあったので、フィリップは上機嫌だ。
「ダグマーだ~。元気にしてた~?」
「はい。殿下もお体は大丈夫でしたか? 勉強もしてますか??」
「元気元気。勉強はそこそこだね~」
積もる話はあるが、フィリップは1人に対してそんなに時間を割けないので、ダグマーはほどほどの会話で撤退。ボエルと話し込んで、フィリップの点数アップにかなり驚いていたんだとか……
ちなみにフィリップは誰にもこんなににこやかな対応をしないから、喋り終わったエイラとダグマーの下へ貴族たちが群がって助言を求めていた。
しかしマッサージのことは言えないので、「いつもそんなもん」と返したらしい。女の好みも聞かれていたが、フィリップから明確に聞いたことがないので、2人とも自分の容姿を答えたらしい。けっこう引きずっているみたいだ。
その日の夜も、フィリップは自室で「疲れた~」とベッドの上でバタバタしていたら、ボエルから質問が来た。
「殿下が喋っていたエイラさんって、どういう関係なんだ?」
「初めての人……じゃなかった。初めてのメイド。いや、メイド長が初めてのメイドになるのかな?」
「マジか……あんないい女とやってたのか……」
「あら? 好みのタイプだった??」
「ちょ、ちょっとな。もう少し歳は下だったら完璧かな?」
「僕的には、歳相応の美しさがあると思うんだけどな~。すっごく献身的にマッサージしてくれたし」
「マジか……ゴクッ」
エイラの話でエロイ話に花が咲く2人。「何歳上まで行ける~?」とか、高校生みたいな会話になってるな。
「ダグマー先輩ともしてたんだろ? 羨ましい」
「ダグマーはボエルとは合わないと思うよ」
「あ……ドSだったんだった……それって本当に気持ちいいのか?」
「人それぞれじゃない? 僕は気持ちいいというより楽しいが勝るし。旦那さんみたいな本物のドMじゃないと、ダグマーは落とせないよ」
「美人なのにもったいない」
「そこがいいんだよ。わかってないな~」
今度はフェチの話で盛り上がっていたら、ボエルは急に難しい顔になった。
「ボエルだって、僕のお尻狙って来たじゃ~ん……って、どうしたの?」
「いや……結局、殿下がちゃんと喋っていたの、その2人しかいなかったから……友達がいなくて寂しくないのか?」
「1人が好きなんだから、別にいいでしょ~」
どうやらボッチのフィリップを哀れんでいたっぽい。このあとボエルは涙ぐみ、献身的にマッサージをしたそうな……
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