夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

ma-no

文字の大きさ
上 下
198 / 386
九章 物語が終わるまで夜遊び

198 派閥のパーティー

しおりを挟む

 初めてのパーティーは、第二皇子に取り入ろうと貴族の娘のメイドが群がり出したので、フィリップは安全地帯に退避。
 皇帝とフレドリクの間なので、つまらない話ばかりを延々と聞かされて、やっとこさ城の自室に帰って来たら、ボエルがニヤニヤしながら声を掛ける。

「お疲れ……プププ。めっちゃ疲れてんな」
「笑わないでよ~。あんなにつまらないパーティーなら、誰だって疲れるって~」
「それが仕事だろ。なに甘えたこと言ってんだ」
「僕、13歳になったばかりだよ? まだまだ子供なのに働かせるって、どんだけブラックなんだよ~」
「皇子だからだ。フレドリク殿下なんて、5歳から立派にパーティーに出てたらしいぞ」
「お兄様は頭がおかしいんだよ~」
「殿下のほうが恐ろしくおかしいぞ?」

 フィリップが何を言おうとも、ボエルには通じず。しかしフィリップが「明日から出ない!」とか言い出したので、ボエルも機嫌を取ってマッサージするのであった。


 翌日のフィリップはブーブー言いながらも着替えてくれたので、ボエルも一安心。フィリップを皇族用の馬車に乗せたら、ボエルは従者用の馬車にスカートの中ほどを掴んで走る。
 皇族用の馬車に乗った皇帝の膝に乗ったフィリップがやって来た場所は、大きなお屋敷。今日のお仕事は、ここの当主がパーティーを開いて招待状を送ったから、顔を出すだけの簡単なお仕事だ。

 正確にいうと、このパーティーは派閥以外の貴族を呼び込むパーティーで、接待して派閥の規模を大きくすることが目的。
 そこに皇帝が出席すると重要視しているとわかるから、次の日から主催者がモテモテになって、派閥が自然と大きくなるのだ。

 皇族がパーティー会場に到着すると、パーティーはそっちのけで注目を集める。もちろん主催者は、従者から報告を受けているので会場の入口にてお辞儀をして待っていた。

「ようこそ。皇帝陛下。存分に楽しんで行ってください」
「うむ。楽しませてもらおう」
「フレドリク殿下。こちらへどうぞ」
「……ああ」

 顔を上げたのは、ダンマーク辺境伯一家。当主のホーコンは皇帝と喋りながら奥に向かい、エステルはフレドリクと腕を組んで跡に続く。

「え? 僕は??」

 でも、フィリップは誰も参加するとは思われていなかったのか忘れ去られていたので、キョロキョロするしかできないのであったとさ。


 あとから入って来たニヤケ面のボエルに肩をポンッと叩かれたフィリップはグチグチ。ボエルは忘れられていることに大笑いしたかったけど、皇族が揃っているのでこれが限界の笑い方らしい。
 そんなことをしていたら、ダンマーク辺境伯のメイドが焦りながら走って来たのでフィリップは文句。ここのメイドは城とは違い平民なので、第二皇子が怒っているから切腹する勢いで謝罪していた。

「冗談冗談。怒ってないから、パンツ見せて~」
「はいっ! 寛大な処置……パンツ??」
「無視してくれ。殿下は本当に怒ってないから、無視して大丈夫だ」
「はあ……」

 怖がらせてしまったとフィリップが反省したまではよかったが、セクハラするモノだからボエルが対応。メイドは首を捻りながらフィリップたちを皇帝たちのテーブルに案内するのであった。


 ここでしばしご歓談。ホーコンは皇帝と喋っていたが、途中から「独り占めはよくないな」と言って、派閥の者を紹介する。
 その者は1人だったり家族だったりと皇帝に挨拶だけして、お隣のフレドリクやフィリップに当たりさわりのない言葉を掛ける。その時、エステルが「誰それ」と紹介することが婚約者の仕事のひとつだ。

 フィリップはやっぱり面白くないと、聞いてるフリして品定め。女性ばかり見ていたら、知り合いが目の前にいることに気付くのが遅れた。

「フィリップ殿下……どこ見てるのですか?」
「大人の女性~。てか、イー……なんだっけ? 先輩だよね??」
「イーダです! 挨拶しましたよね!?」

 エステルの取り巻きだ。イーダも親に挨拶して来いと言われたから、マルタと一緒に来たけど、あんなことをしているのにフィリップが名前を呼んでくれないから怒ってしまった。
 フィリップは名前を言い掛けたから、皆に知り合いと思われないようにごまかしただけなのに。

「そっちの子も見たことある……デ、デ、デ……」
「マルタです……かすりもしてません……」
「ゴメ~ン。顔と名前覚えるの苦手なの~」

 マルタは一文字目から出て来なかったので、イーダは少し勝利した気分。ちなみにフィリップが言おうとした名前は、マルタのふくよかな体型を表した言葉。マルタが止めてくれたから「セーフ」とか思っているけど、完全にアウトだ。
 そんなこととは露知らず、挨拶の終わったイーダたちはそのまま近くに残って、他の生徒はどうするのかと見てる。

「フィリップ殿下、終業式以来ですね」
「……誰だっけ?」
「クラスメートです!」
「……マジで??」
「もういいです!!」

 クラスメートすら覚えていなかったので、イーダは勝ち誇った顔。フィリップは上級生や下級生にも挨拶されていたが、全員名前を言えず怒らせていた。

「まだ顔を覚えていたからマシですね」
「ええ。クラスメートがかわいそう……」

 なので、イーダもマルタも呆れて自分の席に戻るのであった。


 それから社交ダンスになったら、フレドリクとエステルはキレッキレのダンス。一曲だけで時間いっぱいとなったので、皇族は退場となる。
 フィリップは馬車に乗り込むと皇帝の膝に乗ったけど、フレドリクが来ないまま扉は閉められた。

「お兄様は?」
「エステルと違う馬車だ」
「あ、婚約者だからか。次は僕もそっち乗ろうかな~?」
「俺と2人きりは嫌ってことだな……」
「イ、イヤなら膝に乗ってないよ~」

 本当は皇帝と2人きりも膝の上も嫌なフィリップだが、皇帝が怒ったような顔をするので、どちらも嫌と言えないのであった。

 皇帝のこの顔は、悲しんでいる顔らしいけど……
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...