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八章 夜遊びの自主規制
179 馬鹿中の馬鹿
しおりを挟む夕食の席でリネーアとマーヤを笑わせたフィリップはしてやったり。さらに畳み掛けてやろうと思ったら、ボエルに「身長のこと悪く言ってゴメン」と本気で謝られたのでヘコンでた。
それでも笑いを取りに行こうとしたら、大スベリ。全員、愛想笑いで食事を終えていた。
ボエルたちが夕食の片付けをするなか、フィリップとリネーアはお勉強。フィリップがわかりやすく教えてくれるので、リネーアは何度かフィリップの顔を見ていた。賢いことが信じられないみたい。
ほどほどの時間になったらお風呂。フィリップはマーヤと入る案を出したけど、ボエルが却下。マーヤが死にそうな顔してるもん。
結局のところ、見張りが増えたことでボエルがフィリップとリネーアを洗い、マーヤは1人で入ることに。フィリップの覗きはボエルの鉄壁ディフェンスだ。
寝る時間になったら、フィリップだけソファー。ここは悪ふざけなし。酷い目にあっていた2人がよく眠れるように、フィリップは寝たフリをしてやり過ごす。
フィリップのベッドなら大人が3人寝てもまだ余裕があるけど、ボエルがド真ん中なので「襲わないかな?」とフィリップが心配していたら、寝室からボエルが出て来た。
「なんかあったの?」
「ヤバイ……興奮して眠れない……」
「あのメイドさん、そんなにいい体なんだ~」
「ちょっとアレしてくれ。それで性欲吹き飛ばす」
「声を出さないようにできるかな~?」
「なんとかする。かかってこい!」
こうしてボエルは、とてもそんなことをしているとは思えない表情でタオルを強く噛み締めて、フィリップのマッサージを受けるのであった。
翌日は、フィリップだけスッキリ。女性陣はリネーアがうなされるのであまり眠れなかった様子。ボエルは2日連続なので、グロッキー状態だ。
「とりあえず、ボエルは休みな。メイドさん、料理の場所はわかるよね? ボエルのフォローしてあげて」
「は、はい!」
「リビングに置けるベッドも手配してほしいけど……」
「それぐらいならオレがやる」
「じゃあ任せるよ。くれぐれも無理しないでね」
ここはフィリップが指揮を取って、各々の役割を決めていたらリネーアが小さく手を上げた。
「わ、私は何をしたらいいですか?」
「リネーア嬢は勉強。教科書置いて行くから使って」
「それでは殿下が勉強できないではないですか」
「僕、授業中はいつも寝てるから使わないの。気にしないで」
「それはそれでどうかと……」
フィリップの答えにリネーアは助けてほしいのかボエルを見た。
「そういえば……昨日はカバンすら持って行かなかったな」
「ホントだね。いつもボエルが持ってくれてたから忘れちゃった。アハハ」
「そんなので中間試験大丈夫か? もうすぐだぞ??」
「大丈夫大丈夫。今回は自信あるんだ~」
「やっぱり教師を買収してるんだな? 陛下は御存知なのか??」
「シーッ。内緒だよ~?」
「言えるか! いや、言わないとダメなのか? オレはどうしたらいいんだ~~~」
ボエルが頭を抱えるなか、フィリップは「今日も遅刻だ~」とか言いながら手ブラで自室を出るのであったとさ。
それから数日、フィリップはいつも1人で学校に通っていたら「ついに従者から見放された」とか噂が広がっていた。そんな噂は毎日寝てやり過ごしていたら、帰り際にニコライが近付いて来た。
「例の件、どうなってます? 明日からですよ??」
「もちろんバッチリ。泥舟に乗ったつもりで安心してくれたまえ」
「泥舟では沈んでしまいます……」
「あ、そっか。君、賢いね~。アハハハ」
ここまでバカならニコライも大丈夫かと思えて信用することにしていた。
「それとなんですが、そろそろアイツを返していただけないかと……」
「アイツ?」
「アイツですよ。我々も溜まっていまして……」
「あぁ~……」
フィリップは一瞬怒りの表情をしたが、ニヤニヤ顔で語り掛ける。
「なかなかいい子だから、まだ楽しんでる最中なの。皮を剥いでも声を出さないとは、お前は凄い調教師だね」
「皮を剥ぐっ!?」
「両手両足を切り落としても声を出さないのかな~? それが終わったら返してやるよ。あ、そうなったらアレしかできないか。アハハハハハ」
フィリップが狂ったように笑うと、ニコライたちもドン引き。ただ、自分のオモチャをそこまで壊されるのは困るみたいだ。
「ま、待ってください! それではもう私が使えないではないですか!?」
「なに~? それを覚悟で僕に貸し出したんじゃないの??」
「そ、そこまでするとは思っていなかったので……」
「いいじゃん。女なんて腐るほどいるんだし。後片付けは任せるから、終わったら取りに来てね」
「は、はい……」
第二皇子がとんでもなくクレイジーだったので、ニコライは反論もままならず。フィリップは笑いながら帰って行くのであった……
それからテスト期間は毎日ボエルが心配していたけど、テストが全て返って来たらやっぱり不安。
「なんであの程度の勉強で、平均60点なんだよ~」
そう。フィリップの成績がアップしていたから、教師に金を払ったと確信したのだ。
「けっこう頑張ったも~ん。毎日ボエルに教えてもらっていたし、テスト前はリネーア嬢とやってたもんね?」
「はい。わかりやすく教えてもらいました」
「殿下が~~~??」
馬鹿なところしか見ていないボエルでは、リネーアの援護射撃も通じず。誰にいくら払ったのかと、フィリップから聞き出そうとするボエルであった。
翌日……
「殿下! これはどういうことですか!!」
朝っぱらからフィリップはニコライに絡まれていた。
「うっさいな~。眠いんだから大声出すなよ」
「しかし!!」
「なんなの~? 点数でも悪かったの??」
「そうです! 上がっていないどころか、最下位だったんですよ!!」
「プププ……頭、悪っ。アハハハハハ」
「何がおかしいんだ!!」
フィリップが笑うとニコライは怒鳴ったが、フィリップは相手にせずに取り巻きの2人に質問する。
「君たちは何位だったの?」
「「その……」」
「僕に噓をついたら……わかってるね?」
「「は、はひ!」」
取り巻きの順位は下の上ってところなので、フィリップは笑いを堪えきれない。
「アハハ。お前たちなんなの? バカばっかじゃん。僕でも60点取れたのに。アハハハハハ」
その笑いに、ついにニコライは秘密をブチまける。
「殿下のそれは、教師に金を積んだからだろ! 皇族がそれで恥ずかしくないのか!!」
それは、教室中に聞こえる大声だったので静寂が訪れた。
「ぜんぜん。それが、本当の力だ。お前の見せかけの力と僕の力を一緒にするなよ。この三下が!!」
そこにフィリップが初めて怒鳴ったものだから、教室にいる全ての人間が「この人、怒ったりするんだ」って、不思議そうに見ている。
「なんてね。馬鹿が馬鹿に騙されて馬鹿をみただけ。これに懲りたら、馬鹿を頼らずちゃんと勉強しな。アハハハハハ」
こうしてフィリップは大声で笑いながら帰って行くのであっ……
「先生来たら、早退するって言っといて」
「「「「「はあ……」」」」」
まだ1時間目も始まっていない時間だったからフィリップは戻って来てそんなこと言うので、クラスメートは「何しに来たんだ?」と同時に首を傾げたそうな。
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