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八章 夜遊びの自主規制

173 イベントの阻止

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 フィリップが女子の体育の授業を植え込みに隠れて覗き見ていたら、コニーに見られてしまったので服を掴んで仲間に引きずり込んだ。

「てか、君って授業どうしたの?」
「ランニングだったんですけど、さっきの3人にコース外に連れ出されてしまいまして……」
「だから、そのままサボろうとしてるってワケね」
「いえ。戻ろうと思ったらフィリップ殿下を見掛けたので、何をしてるか気になりまして」
「見ての通り、覗きだよ」
「授業サボってまで!?」
「シーッ! 大声出すな!!」

 サボりの理由が覗きでは、コニーもビックリ。フィリップも焦って口を塞いだ。

「これもお兄様に言ったら怒るからね? 僕主催のねちっこいイジメの的になりたくなかったら、絶対に誰にも言うな」
「は、はい。元々言うつもりもありません!」

 コニーはダンジョンでも地上でも、フィリップに脅されまくり。そのせいで既視感があるのか首を捻ってる。

「あぁ~……エステル嬢のオッパイ、ポヨンポヨンしてるよね~?」
「はあ……まぁ……」
「いま、お兄様の婚約者をエロイ目で見たね?」
「え? 殿下が指差したから見ただけですよ!?」
「僕のお願い聞いてくれるよね? このこと、お兄様にチクるよ??」
「きたなっ!?」

 エステルが走る姿を見せるだけの雑すぎるハニートラップのせいで、コニーも言葉が乱れた。

「皇家に敬意も払えないのか~……」
「うっ……何をすれば……」
「簡単なことだよ~」

 それも脅しのネタに使うので、コニーはフィリップのお願いを聞いてしまうのであった。


「まだだ。まだだよ~? いま! イケイケイケイケ!!」
「はいっ!」

 フィリップが合図を出したら、コニーは全力疾走。そして運動場にいる女子の集団にある程度近付いたら、手を頭の辺りでバタバタしながら叫び出した。

「うわぁぁ~! ハチ、ハチ! うわぁぁ~!!」
「「「「「キャーーー!!」」」」」

 とか言いながら女子の集団に突っ込んだのだから、女子生徒は散り散りに逃げ惑う。ただ、何も飛んでないとバレそうなので、フィリップがアクセント。

「パーン! パーン! パパーン!」

 氷の礫を飛ばしてそれっぽく演出してる。そんなことをしていたら、コニーはそのまま走り抜けて授業に戻って行き、女子生徒は授業もままならなくなるのであった。


「これで聖女ちゃんが悪役令嬢に足を掛けられて怪我しないかな?」

 フィリップがこの騒ぎを起こしたのは、2人同時に助けるため。本当は自分でなんとか止めようと思っていたけど、ちょうどいい手駒が近くにいたからコニーを使ったのだ。

「あれ? 誰か倒れてるな……聖女ちゃん?」

 でも、その騒ぎでルイーゼが倒れていたのでフィリップも失敗したかとよく見ている。

「悪役令嬢たちは離れているから……他の生徒がやったのか? うそ~ん。強制力、早すぎるよ~」

 残念ながら、フィリップの策略は微妙に失敗。一番の敵は強制力だと、改めて思い知らされたフィリップであった。


「今日の騒ぎって、殿下がやったのですか?」

 このイベントがまだ続くかどうか、念の為イーダに聞きに来たフィリップは疑われていた。

「なんのこと?」
「体育のことですよ。男子がハチを引き連れて来て大変だったんですよ」
「僕が寝てる時にそんなことあったんだ~。見に行けばよかったな~」
「寝てるのもおかしいですけど、授業は抜け出しちゃダメですよ?」
「僕は第二皇子だから、いいのいいの」

 しかし、フィリップが変なことしか言わないので、疑惑は払拭。ボエルには「どこ行ってたんだ!」って怒られてたけど。

「でも、その男も酷いね~。袋叩きにした?」
「いえ……ルイーゼがこけて怪我したので、みんなよくやったと……」
「てことは、そいつがお兄様に怒られたのか~」
「いえ。ハチに追われていたのは事実でしたので、皆で許してくれるように頼みましたから、大丈夫だと思いますよ」
「それは、口裏合わせしたと言うのでは??」
「まぁ……そうとも言います……」

 コニーが酷い目にあわないのはいいことだが、今回のイベントはフィリップが手を出したせいで完全犯罪となってしまったので、やっぱり失敗だったと実感させられたのであったとさ。


 イーダから情報を仕入れたところ、いちおう体育イベントはクリアというより消化したみたいなので、フィリップは小休暇。娼館でハッスルして、閉店間際の酒場にやって来た。

「あれ? お姉さん、もうお店に出てるの?」

 酒場では、ミアがカウンターに突っ伏していたのでフィリップは隣に座った。

「つ、疲れた……」
「あ~。赤ちゃん育てるの大変って言うもんね~」

 どうやらミアは、産後鬱さんごうつ気味。だから夫が気を遣って「ちょっと外に出て来たら?」と言ったら、ミアは自然と実家の酒場に足が向かったらしい。
 ひとまずフィリップは愚痴に付き合ってあげていたら、ミアも気分が晴れて来たみたいだ。

「子供にこんなこと言ってゴメンね」
「いいよいいよ。子供じゃないし、僕とお姉さんの仲でしょ。まだオッパイ飲ませてもらってないし」
「そういえば約束してたな~……この際、気晴らしにやっちゃう?」
「え……もうできるの? 旦那さんにバレて離婚とかならない??」
「バレなきゃいいのよ~」
「マスターが凄い顔してるから、もうバレてると思うな~??」

 さすがに新婚子持ちの女性とはフィリップでも気を遣うらしく、後日、日時を合わせて浮気とミルクを堪能させていただいたそうな……
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