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七章 珍しく昼遊び

168 決着

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「ぐるああ~~~!!」

 フレドリクパーティとドラゴンとの戦闘が最終局面に入った頃、前衛のカイが狂ったような雄叫びをあげた。

「あ、あれは……カイ様の狂化!?」

 それと同時に、モブ生徒が驚いてフィリップに助言を求める。

「使って大丈夫なんですか!?」
「えっと……僕、使ってるとこ初めて見たんだけど、何か問題があったの?」
「カイ様がフレドリク殿下に襲い掛かったんですよ!」
「へ~。そんなことあったんだ……」

 狂化とは、理性と引き換えに身体能力をとんでもなく高める技。危険だから今まで隠していたみたいだけど、それを見逃したフィリップはガッカリしながら戦闘に目を戻した。

「対策は練ってるみたいだから、とりあえず大丈夫じゃない?」
「でも……」

 一番カイに襲われそうなフレドリクは下がっているから、フィリップは楽観論。しかしモブ生徒は、まだ心配みたいだ。

「リーダーは賭けに出たんだと思うよ」
「賭けですか?」
「僕個人の判断なら、アリだね。いや、ここしかないタイミングで使ったとリーダーを褒めたいぐらいだ」
「じゃあ……勝てるのですね!」
「そこまでは言ってない……」
「「あっ!!」」

 モブ生徒が先走っていたのでフィリップが否定したその時、狂ったようにブンブンと大剣を振り回していたカイが、ドラゴンの前足で殴られて吹っ飛んだ。

「「おお~……」」

 その瞬間、フレドリクが光の速さと見間違うくらいの速度での突き。その突撃はドラゴンの胸に突き刺さり、そのまま背中まで貫通してフレドリクが飛び出したのであった。


 勝負有り。フレドリクが剣を高々と抱えて雄叫びをあげるなか、ヨーセフとモンスが走り寄り、ルイーゼは怪我の酷いカイの下へ向かった。

「勝った! 勝ちましたよ!!」
「だね~。はらはらドキドキの展開で面白かったね~」

 その後方では、モブ生徒が飛び跳ねて喜び、フィリップはシンプルに拍手を送っていた。

「んじゃ、君もアイツらのとこに行ってやりな」
「え……ボクがあの中にですか?」
「なに言ってんの。荷物持ちってショボイ仕事だけど、アイツらを支えた事実は変わらないよ。それにアイツら、HPもMPもスッカラカンじゃない? ポーション渡しに早く行ってあげなよ」
「は……はい! ありがとうございました!!」

 フレドリクパーティの中に入ることを躊躇ちゅうちょしていたモブ生徒をフィリップが励ますと、悩んでいた気分が吹き飛び、感動した顔で走って行く。
 フィリップはできるだけ近くの隠れられる場所に素早く移動して、盗み聞きするのであった。


 それからしばらくして、フレドリクパーティがドロップアイテムを抱えて帰還アイテムを使い、このフロアからいなくなるとフィリップは姿を現した。

「さすがに最後は、モブ君も感謝されてたな~。よかったよかった」

 フレドリクパーティはモブ生徒から回復ポーションを受け取っても、しばらくは5人だけの世界に入っていたのでフィリップはヤキモキしていたけど、全員と握手していたので胸を撫で下ろした。

「でも、こんなところで聖女ちゃんのおっちょこちょい発動しなくてもよかったんだけど……こけてモブ君に抱きついていたけど、大丈夫かな?」

 最後の最後は、モブ生徒がいいところを持って行って、野郎共からめっちゃ睨まれていたのでフィリップも心配。酷い目にあわないことを両手を合わせて祈る。

「さあ~て……最後のお楽しみだ~~~!!」

 そんなことをしていたらドラゴンが復活したので、フィリップはファフニールソードを握って走り出したのであった……


「なんかあったの?」

 フィリップが寮に戻ると生徒たちは大騒ぎ。その声を聞きながら自室に忍び込むと、リビングのソファーに座っていたボエルに尋ねてみた。

「どこ行ってたんだよ! フレドリク殿下が凄いことやったんだぞ!!」
「凄いこと??」
「だから!!」

 全て知っているフィリップに、ちょっとしか伝え聞いていないボエルが怒鳴りながら説明。ボエルは、フレドリクがダンジョンの隠し階層を発見して最下層にいたドラゴンを倒したと聞き、持ち帰ったドラゴンの生首も見たらしい。
 ちなみに、フィリップとドラゴンの戦闘は楽勝。最強魔法で空飛ぶドラゴンを地に落とし、それと同時に片翼を切り落とした。あとはヒットアンドアウェイでドラゴンのHPを削り取り、掛かった時間は10分。
 ドロップアイテムはフレドリクがドラゴンの生首だったけど、フィリップはドラゴングローブというカッコイイ籠手とお金。使いようのない生首なんかよりよっぽどいいと喜んでた。

「へ~。そんなモンスターいたんだ~」
「もっと驚けよ! 兄貴のことだろ!!」
「ボエルがそんなに驚いていたら、僕が驚けないよ~」

 とりあえずフィリップはボエルを落ち着かせようとしてみたが、ぜんぜん落ち着かない。

「そうだ! 祝い! 殿下も一言伝えに行かないと!?」
「そんなの明日でもいいんじゃない? お腹すいた~」
「んなわけないだろ! 行くぞ!!」
「ごはんは~~~??」

 というわけで、やる気のないフィリップは、焦りまくったボエルの脇に抱えられ、祝勝会をしているフレドリクの下へ連れて行かれるのであったとさ。
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