155 / 324
七章 珍しく昼遊び
155 お買い物
しおりを挟む高級料理店ではボエルの口調をフィリップが注意しまくって食べ終えると、支払いの話になっていた。
「僕、お金なんて持ってないんだけど~?」
「ああ。オレが預かって来てるぞ」
「よかった~。無銭飲食になるかと思ったよ~。ちなみにいくら入ってるの?」
「ちょっと待て……うおっ!?」
ボエルが革袋を開いて中を確認すると、仰け反って椅子ごと倒れそうになっていた。
「なに? なんかビックリする物でも入ってたの??」
「白金貨が5枚も……」
「それって金貨より高いの??」
「高いぞ! 100倍だ! なんで知らないんだよ!!」
「僕、お金なんて見たことないも~ん」
「マジか……これが本物の金持ちか……」
フィリップの大ウソを信じてしまったボエル。なので、ボエルのお金持ち像がこの日、更新したのであった。
支払いはどっちが男役をやるかの話になったけど、ボエルは白金貨で払うのが怖いらしく、ニコニコフィリップ払い。でも、お釣りの金貨が多すぎたので結局ボエルがビクビク受け取っていた。
大量の金貨と少量の銀貨等を革袋に入れて、ボエルの腰に括り付けたら次に移動。今度はショッピングをしに、大きな建物にやって来た。
「外観はデパートっぽいね」
「なに言ってんだ。デパートだぞ」
「あっ、これが本で読んだデパートなんだ~」
フィリップの言った「デパート」は元の世界の百貨店のことであったが、この世界には同じデパートが存在していたとは知らなかったので、慌てて言い訳。
不思議そうな顔をしているボエルから質問が来る前に、手を引いてドアマンが開けてくれた入口から中へと入った。
「「広っ……少なっ……」」
すると、2人の感想が一致。中は広い割には商品が少なすぎるので、よけい広く感じるらしい。
「てか、どこに何があるんだろ?」
「オレも初めて来たからな~」
「そうなの? 親に連れて来てもらえなかったの??」
「お袋からは何度か誘われたけど、オレはその頃、剣を振ってたほうが楽しかったから」
「女子力ゼロだったんだね……」
ここまでボエルが使えないのでは、ショッピングを楽しめない。フィリップは護衛を呼び寄せようかと思ったが、なんとなく来るんじゃないかと思って指を「パチリ」と鳴らしてみた。
「「「「「ようこそ。第二皇子殿下~」」」」」
「来すぎ」
すると一気に10人も店員が釣れたので、フィリップは冷たいツッコミ。その中で一番美人の女性を案内係に任命していた。
そんなことをしていたらボエルがメモを取っていたので、フィリップは「なに書いてるんだろ?」と近付いた。
「なるほど……指を鳴らしたら案内係が来るんだな……」
「来ないよ? 第二皇子だからだよ? ね??」
「はい。またはお得意様ぐらいですね。フフフ」
「笑われた!?」
ボエル、勘違いした上に真面目だったので、案内係に笑われる。そのせいで、ツッコミを入れたフィリップが二次被害。ボエルにめっちゃ睨まれているよ。
「ところで、ここは何が置いてあるの?」
「アクセサリーと服がメインとなります。服飾関連も揃っていますので、プレゼントを選ぶ方もよく参られておりますよ」
「なるほどね~……じゃあ、男物の服から見ようかな?」
「こちらになります」
案内係に軽く質問したフィリップは、ボエルの手を取って後に続く。
「にしても、殿下は慣れた感じだな。本当に初めてだよな?」
「質問しただけじゃん」
「オレだったら、気後れしてその質問すらできない。何も知らないと思われそうで恥ずかしいし……」
「彼女の前で知ったかしてバレるよりはマシでしょ。こういう時は堂々と質問したほうが、彼女によく思われると思うけどな~」
「ああ~。オレもちょっと感心した。アリだな」
2人の会話の意図が読み取れないって顔の案内係に連れて来てもらった場所は、紳士服売り場。商品は数える程しかないので、選べそうにない。
「こんだけ?」
「はい。こちらに飾ってある服をベースに、デザインを足したり布などを選ぶシステムになっております」
「オーダーメイドか~……そういうの苦手なんだよね~」
「でしたらイメージだけ伝えてもらえれば、デザイナーが絵を描いて服に仕立ててくれますよ」
「それならいけるかな? ボエルも書いてもらいな」
フィリップがボエルに振ると、ちんぷんかんぷんって顔になってた。ここでも役に立ちそうにないので、フィリップはボエルを隣に座らせてアドバイスしながら絵を描いてもらう。
「結局、男物……」
ボエルの頭の中を具現化した絵は、飾りっ気のないシンプルな細身のスーツなので、フィリップのアドバイスをまったく聞いてない。フィリップがミニスカートを穿かせようとしていたからこうなったんだけど。
「いいだろ。てか、それは殿下が着るのか?」
「ううん。ボエルの」
「んなエロイ服、着るか!!」
フィリップの頭の中を具現化した絵は、ノンスリーブで胸が大きく開いたドレス。スカートには大きなスリットが入っているので、美脚も際立つデザインだ。
「お姉さんはどう?」
「私もちょっと恥ずかしいです……」
「えぇ~。いいデザインだと思うのにな~……誰か着たい人、お金出してあげるよ~?」
というわけで護衛からも募集してみたけど、誰からも手が上がらないのであった。
「私は画期的なデザインだと思いましたよ? 女性特有の線が綺麗に出そうですし」
「だよね? デザイナーさんは褒めてるよ~??」
諦めの悪いフィリップがデザイナーの男性を味方に付けても、誰も手を上げないのであったとさ。
10
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
離縁してほしいというので出て行きますけど、多分大変ですよ。
日向はび
恋愛
「離縁してほしい」その言葉にウィネアは呆然とした。この浮気をし、散財し、借金まみれで働かない男から、そんなことを言われるとは思ってなかったのだ。彼の生活は今までウィネアによってなんとか補われてきたもの。なのに離縁していいのだろうか。「彼女との間に子供ができた」なんて言ってますけど、育てるのも大変なのに……。まぁいいか。私は私で幸せにならせていただきますね。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
転生特典:錬金術師スキルを習得しました!
Lunaire
ファンタジー
ブラック企業で働く平凡なサラリーマン・佐藤優馬は、ある日突然異世界に転生する。
目を覚ますと、そこは見知らぬ森の中。彼に与えられたのは、「錬金術師」としてのスキルと、手持ちのレシピブック。
素材を組み合わせてアイテムを作る能力を持った優馬は、錬金術を駆使して日々の生活を切り開いていく。
そんな彼のもとに集まったのは、精霊の力を持つエルフの少女・リリア、白くフワフワの毛並みを持つ精霊獣・コハク。彼らは王都を拠点にしながら、異世界に潜む脅威と向き合い、冒険と日常を繰り返す。
精霊の力を狙う謎の勢力、そして自然に異変をもたらす黒い霧の存在――。異世界の危機に立ち向かう中で、仲間との絆と友情を深めていく優馬たちは、過酷な試練を乗り越え、少しずつ成長していく。
彼らの日々は、精霊と対話し、魔物と戦う激しい冒険ばかりではない。旅の合間には、仲間と共に料理を楽しんだり、王都の市場を散策して珍しい食材を見つけたりと、ほのぼのとした時間も大切にしている。美味しいご飯を囲むひととき、精霊たちと心を通わせる瞬間――その一つ一つが、彼らの力の源になる。
錬金術と精霊魔法が織りなす異世界冒険ファンタジー。戦いと日常が交錯する物語の中で、優馬たちはどんな未来を掴むのか。
他作品の詳細はこちら:
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
無能の料理人と言われ領地を追い出されたが、何故か料理じゃなく戦いで頭角を現し無双します。俺を追い出したあいつは没落していくが、仕方ないよな
ぐうのすけ
ファンタジー
「犯罪者の無能が!」無実の罪と無能の烙印を押され、主人公【ハルト】は、パーティー・学校・ブラック領と3連続追放に追い込まれる。
追放されたハルトは、心も体もボロボロになりながらホワイト領にたどり着く。
「大丈夫!?今助けるわ!」ハルトは温かくホワイト領に迎えられる。
「こんなに良くしてもらったんだ。恩返しをしよう!」
ダンジョンで魔物を倒す生活を続けるとハルトの能力が覚醒する。
このことをきっかけにハルトの力でホワイト領の問題を解決していく。
周りの人に恵まれ、何人もの美少女に気に入られ、多くの人を助け慕われ、ハルトの暮らすホワイト領は発展していく。
一方ハルトを追放したパーティー【ブラックセイバー】のリーダーにして、ブラック領の当主である【テイカー】は、ハルトの料理スキルの恩恵を受けられなくなり、ダンジョン探索を失敗し続ける。さらにその傲慢な性格からパーティーの人間は離れブラック領の経営も傾き、没落していく。
これは無能と言われた少年が覚醒し、大逆転の成功を収める物語。
なろう・カクヨム・アルファポリスに投稿しています。
魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】
流水斎
ファンタジー
死後、神様に頼まれて転生したが特にチートな加護も無く、魔王を倒すのに十年掛かった。
英雄の一人ではあったので第二の人生を愉しもうかと思ったが、『狡兎死して走狗煮らる』とも言う。
そこで地方で内政に励む事にして、トロフィー代わりに砂漠の緑化を目標に定めた男の物語である。
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
集団転送で異世界へ。 ~神の気まぐれによって?異世界生活~
武雅
ファンタジー
永遠の時に存在する神ネレースの気まぐれによって? その創造神ネレースが管理する異世界に日本から30000人が転送されてしまう。
異世界に転送される前になぜか神ネレースとの面談があり、提示された職業に自分の思い通りの職業が無かったので神にダメ元で希望を言ってみたら希望の職業と望みを叶えられその代償として他の転送者よりも過酷な辺境にある秘境の山奥に送られ元の世界に戻りたい以前に速攻で生命の危機にさらされてしまう!
神が面白半分で決めた事象を達成するとその順位により様々な恩恵を授けるとのこと。
「とりあえず町を目指せ!村ではなく町だ!!」とそれ以外特に神ネレースより目的も与えられず転送された人々は・・
主人公は希望の職業を要求した代償としていきなり森を彷徨いゴブリンに追われることに。
神に与えられた職業の能力を使い、チートを目指し、無事に異世界を生き抜くことを目指しつつ自分と同じ転送された人々を探し現実世界への帰還を模索をはじめる。
習慣も風俗も法律も違う異世界はトラブルだらけで息つく暇もなく、転送されたほかの人たちも暴走し・迷走し、異世界からの人々をめぐって国家単位で争奪戦勃発!?
その時、日本では謎の集団集団失踪や、令和のミステリーとして国家もマスコミも世間も大騒ぎ?
転送された人々は無事に元の世界にかえれるのか、それとも異世界の住人になって一生をおえるのか。
それを眺め娯楽とする神の本当の目的は・・・。
※本作は完結まで完成している小説になりますので毎日投降致します。
初作品の為、右も左も分からず作った作品の為、ですます調、口調のブレが激しいですが温かい目でお読み頂ければ幸いでございます。
勇者を庇って死ぬモブに転生したので、死亡フラグを回避する為に槍と魔術で最強になりました。新天地で領主として楽しく暮らしたい
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
現世での残業の最中に突然死。目が覚めたら俺は見覚えのある土手に居た……え? これ昨日やってた死にゲーの街にそっくりじゃね?
俺はどうやら【シャオン】というゲーム序盤のイベントで、主人公である勇者を守って死ぬモブキャラに転生してしまったようだ。
折角転生したのに死んでたまるか!モンスター溢れるこの世界では、人類はモンスターに蹂躙される食物連鎖の下位でしかないのだから……
先ずは死亡フラグを叩き折り理想の異世界セカンドライフを送ってやる!と硬く決意するものの……えっ? シャオンて公爵家の次男? それも妾の子とか面倒ごとは勘弁してくれよ……
少しづつゲームの流れとはズレていき……気が付けば腹違いの兄【イオン】の命令で、モンスターの支配領域の最前線都市アリテナで腹違いの妹【リソーナ】と共に辣腕を振い。あるときは領主として、またあるときは冒険者としてあらゆる手段を用いて、シャオンは日常を守るために藻掻いていく……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる